耳を劈くような音。爆音とも称すべきそれは、落雷の轟音。
「あらあら」
先制雷撃と言えば何だか聞こえはいいが、やっていることは空中からの絨毯爆撃と然程変わらない。
その爆撃の餌食になったのは、偶然隠れながら進行しているのを見つけた『兵士』二人と『僧侶』。避ける術も防ぐ暇もなく、落雷に消し炭にさせられた三人。死ぬ直前に
その爆雷を放った主、朱乃は「どうしましょう」とでも言いたげに微笑む。魔力の充填を行う傍ら、 空を漂っている。
「あら、アレは……」
朱乃は遠くに赤く輝く光を見る。炎の輝きだ。揺らめくそれは旧校舎に向かっていった。
「……あらあら、ちょっと……いえ、かなり不味いわ」
その光景に冷や汗を流す。そして、魔力の溜まっていない自分が行っても足手纏い。その事実に朱乃は歯噛みした。
「……リアス。聞こえるかしら──」
朱乃は『今取れる最善』を取るべく主へ連絡を入れる。
もはや、『物語』は『ぶれ』どころでは収まらぬ歪みが生まれはじめていた。
★
一方、そんなことも露知らずのイッセー達は、旧校舎付近に到達していた。
「……見られていますね」
「うん、そうだね」
小猫と優美は互いにそう確認しあう。イッセーもまた「こりゃまずったか?」と思いながら籠手を出現させて力をためている。……イッセーは脳を回転させる。考えろ、考えろ……!
はたと顔を上げたイッセーは突然地面に手をつくと魔力で椅子を作り上げる。そして、それに突然座ってみせた。
「イッセーくん!?」
流石の優美もこの行動には驚く。無論小猫も驚く。しかしイッセーは全く動じず、懐から棒状のクッキーのような、いかにも水分が取られそうな非常食を囓りながら、笑みを浮かべる。不敵な笑みだ。
「別に良いだろ。
これはひどい。社僎とか、そういうレベルではない。ひどい低レベルな挑発だ。優美はドロドロに思った。小猫もぶりぶりに思った。
イッセー自身も内心「流石にこれは無いか……」と思っていた。こんな挑発に引っかかる単細胞が───
「そんな事を言われて黙っていられるか! 騎士としてあの男を斬る!」
いた。その少女、ライザーの騎士が一人、カーラマインである。剣馬鹿である。
剣馬鹿ーラマインは怒りを露わにし、炎の剣をイッセーに向ける。
「オラァッ! 次の瞬間貴様は『不意打ちだと卑怯だぞ恥を知れ』という」
その剣馬鹿の背後をあっさり取って殴り飛ばし、そう宣言するイッセー。流石のカーラマインも不意打ちに吹っ飛ばされながらも受け身を取る。
「くぅっ!? 不意打ちだと、卑怯だぞ! 恥を知れ! ……ハッ!」
そしてお約束のようにそう言うカーラマイン。ここまで来れば逆に褒めたいレベルである。小猫と優美も他の敵がでてこないかと警戒している。が、何故か二人ともチラチラとイッセーを見ていた。
「いいか、貴様らにとっては手を抜いても勝てるかもしれないがこっちは這いつくばってでもやらなきゃ引き分けもできねぇ! なら、方法なぞ選んでいる暇などない!! 貴様らとは『飢え方』が違うんだよッ! オ ラ ァ ッ !」
イッセーはそう吼えると、カーラマインを仲間の気配のする方へふっとばし、優美と小猫を抱え上げ、飛翔。そして──
「纏めて吹き飛べ!」
『Explosion!!』
魔力砲を発射。魔力砲は地面に着弾すると爆発するかのように広がっていく。しかし、それ自体に意味は無い。魔力砲に見えたものは粉塵だった。しかし、その粉塵はイッセーの魔力でつくられたものなので、もし爆発すれば不死鳥の眷属とてひとたまりもない。
「不死鳥の眷属が火で倒れるってのはどうだ?」
イッセーは目を白黒させて展開について行けない小脇に抱えた小猫と優美を尻目に、胃の中に火種を作り出し、そのまま吐き出す。それはまさに
『ライザー・フェニックス様の『騎士』二名、『戦車』一名、『
これで、後は僧侶一人─予測された噂の妹である。
「全く、野蛮な殿方ですわ」
「すまねぇな、生憎つい数週間前までは人間だったからよ」
お嬢様口調の金髪ロール……押さえるところを押さえたまさに「強気のお嬢様」のテンプレートである。イッセーは脳内で既に八通りほどの攻略方法を編み出していた。この男、飢えがどうのとか言う割にはかなり余裕である。というか女を既に二人も囲っているのにまだ増やそうとするのか。いいぞもっとやれ。
それはさておき無傷のレイヴェルは炎の翼で一誠の近くまで飛ぶと優雅に一礼。
「レイヴェル・フェニックスと申しますわ。今回は愚兄が迷惑をかけたようで。ええ、お察しの通り妹です」
「ご丁寧にどうもお嬢様。俺は兵頭一誠、知っての通り赤い龍の宿主だ。どうやらお急ぎのようだな」
互いに会話を交わし、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる二人。どうやら持っている空気が似ているらしく、互いの言いたいことが手に取るように分かるようだ。正確に言えば、独特な言い回しのイッセーと遠回しな言い方のレイヴェルの波長が合った、というところか。
事実、レイヴェルの遠回しな言い方はライザーや家族にも伝わりづらいらしく、レイヴェルはこれまで楽しく会話を楽しめていなかった。暗喩とか何かと別の物に例える癖とかが悪いのだが、本人はとんと気づいていない。
「殿方とお話しして心躍るのは久方振りですわ」
「そいつぁ男冥利に尽きるってもんだ。心躍り口も緩みそうだな」
「ふふ、面白いお方。しかしこのゲームは本当に遊戯ですわね」
「的を射ているな、まさに遊戯だ。しかし無粋な者もいたと見える」
「ええ、ええ。無粋な闖入者ですわ。王の名を騙り駒を惑わします」
「どうやら下手人は愛がお好きで」
「どうやらそのようで」
二人は本当に楽しげに会話を楽しんでいるように見えた。少なくとも抱えられてポカンとしている小猫と優美にはそう見えた。
「さて、風はどこで渦巻く?」
「どうやら。貴方の陣に」
「どうやら鳳はこれで決めるおつもりらしい」
「では、貴方に祝福の風があらんことを」
「……お前、良い女だな。もし縁があったら文でも認めてくれよ」
「記憶の片隅に留めておきますわ──」
イッセーはくるりと身を翻して新校舎に向かう。
『部長──プロモーションの許可を』
『許可するわ』
リアスの即座の返事。少し息が荒い気がしたイッセー。しかし気にしている暇など、ない。
イッセーは新校舎の屋上に降り立つ。そして──
昇格、女王。
この時、レイヴェルがとても愉しそうに微笑んでいた。
「お馬鹿なお兄様は頭を冷やすべきですわ」
そう、とても愉しそうに──。
・レイヴェル・フェニックス
原作乖離影響者その一。
喋り方のイメージは某妖怪の賢者様。
やっぱりジョジョネタをやっていると東方ネタをぶち込みたくなる。何故か。それは東方がジョジョパロ割と多めだから。