今後ともよろしくお願いいたします。
「く、この!」
落雷から復活したライザーは炎を撒き散らす。しかし、その硬直を狙うかのように再び落雷。朱乃、えげつねぇな……普通の人間なら気絶しかねな……あ。思いついた。『気絶』させりゃあいいんだ。いくら不死鳥といえど、気絶くらいはさせられるはずだ。ただ一つ問題があるとすれば、気絶させられるほど近づけないってことだ。
「いい加減に落ちろ!」
『イッセー、左に跳べ!』
「よっ! この!」
今はドライグのアドバイスもあって避けていられるが、それも時間の問題だな……どうする? いや……考えるまでもないか。
『Boost!!』
「ほらほらどうした、当たってないぞ!」
「チッ……ならこれだ!」
俺が煽ればライザーは炎をより煩雑に撒き散らす。小猫たちも攻めあぐねている感じか……リアスもまだ魔力が溜まってないし、朱乃さんも落雷で魔力が底をつきかけているのか、防御に徹し始めている。
『Boost!!』
「そらそら!」
「無駄だっ!」
『Boost!!』
3回目の倍加。まだだ、この炎を突破するためにはあと一回足りない……!
「ふんっ!」
クソ。一発貰ったか! だが、あと五秒……!
「オラァ!」
魔力砲を撃つ。が、やはり再生される。だがこれは時間稼ぎだ!
『Boost!!』
……よし、ここで倍加停止! そして……避けるの も撃つのもやめだ!
『Explosion!!』
『速力』だけを倍加して、このまま一直線に突っ込む!
「っオラァ!」
驚くライザーへどんどん近づく。それに気を取られて一瞬だけ炎の攻撃が止む。チャンスだ! そのまま羽ばたいて更に加速、頭をぶん殴る!
「ぐ!?」
「終わりだ……!」
メキリ、と頬に拳が突き刺さる。
「……この程度!」
一瞬白目を剥いていたライザーが意識をすぐに取り戻しそう言うと、己を爆発させるように俺を灼く。熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!
「があああああああああああああああああああああああああ!?」
痛みと熱で思考が止まり、俺は炎に包まれる。
「……賭けはどうやら貴様の負けのようだな。さて、残りの眷属も狩りつくして、リアスを迎えに行くとするか」
ふざ、けんな。あれは、俺の女だぞ。お前にやるものか……!
『イッセーッ! これ以上は……!』
ドライグが何か叫んでいるが気にしている暇はない。一歩、歩く。奴をとらえて斃すために。だがどうやって? 体はズタボロ、痛すぎて逆に感覚がなくなってきてやがる。意識も薄れてきて、正直立ってるのも辛い。ライザーとの距離も遠くなっていく。
あ、あれ? 視線が横に……ああ、俺倒れたのか。ちくしょう、こんなところで負けるのか? ……ぁ……ま、ずい。もう────
《諦めるのか?》
呼びかける声に意思をつなぎ止められる。
《お前はあの男にお前の女を奪われるのだぞ? 本当に良いのか?》
堕ちてくる声。……誰だ。
《私が誰か。そんなことはどうでも良いんだ。重要な事じゃあない。むしろ、女を奪われる方が貴様には問題ではないか?》
……ああ、問題だ。
《それでこそだ。さあ、そろそろ起きろ、目覚めの時だ》
……ああ。
☆
炎に包まれ倒れ伏した一誠。優美と小猫はそれを見て悲しみを覚える。朱乃は魔力を掻き集めて攻撃しようとし、リアスも貯まりきっていない魔力を掻き集めている。
少しため息をついたグレイフィアがリタイア判定をしようとした瞬間……突如、一誠の体が闇に覆われる。ぞくりとするようなオーラを噴出していく。その光景に皆が何事かと固まる。それと同時、一誠が起き上がり、闇が翼を象っていく。
一対、二対、三対……まだ増える。
「なんだ、このオーラは!?」
リアスを倒そうとしていたライザーも、イッセーの異様なオーラに気がつき振り返る。イッセーは既に意識を取り戻していた。
「さあな、だが……身体が軽い。何か、枷でも取れたような気分だ」
イッセーは六対の翼を広げると、ゆったりと羽ばたき宙に浮かぶ。そして、魔力で剣を一本創り出す。なんの装飾も無い、細身の剣だ。
「まるで、これが本来あるべき姿であるような……。そんな気分だ。……さあ、第二ラウンド開始だぞ、ライザー!」
「くっ!」
ライザーはイッセーの異様な威圧感に既視感を覚える。それはまるで、幼き頃大戦前に一度だけ謁見した「悪魔王」のような……。
(いや、そんな馬鹿な話があるか!)
ライザーは浮かんできた思考をすぐさま否定した。そう、あり得ないのだ。サタンの一族は断絶したはずなのだから……。
★
この光景を見たのは何もライザーだけではない。サーゼクスとグレイフィアも見ていた。グレイフィアに浮かぶ感情は恐怖だった。「赤龍帝にして悪魔王の子孫」など、冗談にしても笑えない。
古い文献に記されている闇の特性は「重力」と「吸収」。子孫はそのどちらかを受け継ぐが、両方を受け継ぐ者は次代悪魔王の資格があるとされる。
(赤龍帝の『倍加』に、悪魔王様の『闇』……冗談じゃない……! こんな、こんな馬鹿げた話が……!)
嫌な汗が止めどなく噴き出し、じっとりと汗ばんでいく。
(旧家の血筋が生き残っていた、しかも赤龍帝、こんな美味しい話を旧魔王の派閥が、黙っているわけがない!)
文字通りの
一方サーゼクスは驚愕の表情を浮かべていた。無理もない、悪魔王の一族を示す闇を赤龍帝が噴出させているのだから。
「や、闇……!」
サーゼクスは、ゲームが非公式であったことを心から感謝した。これで、データが漏れる心配もない、と。非公式故に、戦闘記録も公開されない。そして、イッセーをどうするか、それを考え始めていた。
そして、そんなイッセーを見つめるもう一対の瞳。次元の狭間で恋慕の瞳を向ける無限の幼女だ。
「……かっこいい」
ダメだこのロリ。イッセーが悪魔王の末裔とか、翼六枚とかをスルーして漏れた言葉がかっこいいである。頬を軽く朱に染めてイッセーを見つめている。若干息が荒いかもしれない。
「あの、オーフィス?」
「……何、カテレア」
イッセーを眺めて悦に浸っていたオーフィスを現実に引き戻したのはカテレア・レヴィアタン。旧魔王派の中でオーフィスと連絡が取れるのは彼女だけである。その理由は諸説あるが、真意はこの幼女しか知らない。
「いえ、あの……懐かしい闇の力を感じたので来てみたのですが」
「ん。イッセー」
ぴし、と裂け目の向こうに写る闇をまとわせた少年を指す。
「あ、あれは正しく悪魔王様の! まさか、人間の血筋に隠れているとは……」
そこまで言ってからはたと彼女は気づく。あれは以前にオーフィスが言っていた赤龍帝では? と。
「もしかして、彼は……」
「ドライグとサタンの力、受け継いでる。ご主人様」
「や、やはり……え? ご、ご主人様?」
「……忘れる。いい?」
「あ、あっはい」
二人の間には奇妙な友情がある、のかもしれない。