白球が青い空へ伸びていく──なんて詩的なことを考えてみるが、状況が変わるわけでは無い。まあ、別に嫌な状況というわけでは無いけどな。
「野球なら小猫が4番ね」
無表情でホームランを平然とたたき出している小猫。実に頼もしい。見ての通り我らオカルト研究部は球技大会へむけての練習している。とはいえ、競技は当日までわからないので、色々やってみているわけだ。今やっている競技は野球。……野球はやったこと無いんだよなあ。
「次はイッセーやってみて?」
リアスにそう言われてはやるしかないな。
「了解しました。ただ、野球は初心者なんで勘弁して下さいよ」
さて、バットを構えてみる。ピッチャーはリアスだ。
「一球目行くわよ!」
ひゅん、と比較的速い球が来る。バットの振り方もテレビでの野球選手の見よう見まねだが、すかっ、と外れてしまう。ストライクだ。
「ストライクですわ」
審判役は朱乃がやっている。キャッチャーは小猫だ。
「んー、もう一回お願いします」
「ふふ、行くわよ!」
もう一度同じスピードの球。……ボールをよく見て……! しかしボールの上の部分を擦ってファール。
「バッティングの方は、今ので大体覚えました。もう一度お願いします」
次はボールの芯をとらえてヒット。やりゃあできるもんだな、意外と。
「イッセーは三番かしら? 優美は速いから1番ね……さあ、次は防御よ!」
リアスはこういう行事は本気出すタイプか。いいねえ。俺もこういうのには割とまじめにやるタイプだし、俺もなんだか燃えてきたかも。リアスが走ってバッターボックスへ向かっている。そのせいでリアスの放漫なバストがたゆんたゆんという効果音でもありそうな勢いで揺れている。ごちそうさま。
「私がノックを打つからみんなはそれを捕るのよ。いくわよ!」
そういうと、リアスはボールを俺たちの方へランダムに飛ばしてきた。まあ、
この程度の凡フライなら取れるな。
『……ん?』
ん? どうしたドライグ。基本的に暇なら寝てるお前が出張ってくるなんて……。
『いや、今一瞬妙な気配を感じてな……はて、どこかで似たような気配の存在にあっていたような気がするが……? うむむ、思い出せん……』
そーなのかー。っと、あぶねー。キャッチし損ねるところだった。ほかのみんなはどうだろう?
朱乃は悠然とキャッチしてるし、小猫も問題なさそうだ。アーシアは……うん、あわあわして捕れてない。悪魔になって運動神経が上がっているはずなんだが……ドジなのか、はたまた才能がなさすぎるのか。まあ、そんなところもかわいいじゃないか。あ、こけた。ふむ、白か。流石は元とはいえシスター、下着も純白だ。まあ純潔は俺がいただいたがな。
そして優美はというと……ぼーっとしていてまさに上の空だ。そのせいでこつん、と頭にボールがぶつかる始末。学園ではその様子から『物思いに耽る王子』とか言われてまた女子の間でうわさになっているが……それを俺が気にかけたのが問題なんだろうな。「イッセー君が原因であんな感じになったいる」だの「禁断の恋」だの「薄い本が厚くなる」だの騒いでいた記憶がある。というか俺と優美が絡むたびにそういう妄想をしているらしく、キャーキャーと騒がれている。まあ、優美は女なわけだが。
「あ……すいません」
……本当に大丈夫か?
「木場ちゃん、本当に大丈夫かよ? 熱とか無いのか? ん?」
こつん、とでこをでこにあててみる。
「ひゃあ!? ちょっと、イッセー君、顔、近……!」
「うるせえ。こっちは心配してるんだよ。うん、熱はなさそうだな……」
その光景を少し複雑そうな表情でリアスが見つめている。心配しているのか、それとも……いや、よそう。あまり詮索してもどうしようもないし、それに一回突っ込みすぎて失敗したからなあ……リアスとの関係を先に進めたい気持ちもあるが、まだ抑えておこう。
そうそう、進展といえば夕麻ちゃんからメールで連絡があった。どうやら親の都合で転校していたらしく、そのあともいろいろごたごたして忙しかったそうだ。……いや、俺にこの言い訳じみたものが嘘だとばれているのだろうことが文面から漏れ出ている。直接確認したわけでもないし、彼女が堕天使であることを俺に明かしたわけでもないが、俺が槍に刺されたあの日以降音信不通で、誰も彼女のことを覚えていないとなると……そうなのだろう。何故俺のもとに連絡先を残したのかまでは不明だがな。別に恨んでなんかいない。いい身体してたし。
それからレムートは今お留守番である。今頃「ウンまぁぁーい」と言いながら自家製プリンでも食ってるだろう。閑話休題。
「本当に大丈夫か? お前が倒れたら(皆が)心配するだろうが」
「ぁ、う、うん……」
頬を紅く染めて照れるが、はっとするとふるふると頭を振る優美。
「うん、そうだね、気をつけるよ」
「……そうしろ」
はあ……世話のかかる。あの聖剣を見てからだよな? おかしくなったのは。まあ他人の過去を詮索するほど落ちぶれちゃいねーがな。俺だって掘り返されたくないし。
「次行くわよー!」
何かを振り払うようにリアスの大声がグラウンドに木霊した。
2016/1/23 誤字修正