「くっく、よもやこんな極東の地で貴様のような存在にであうとは……」
「あ? うるさいよオマエ」
「グギャァァァ!?」
こうなった理由は、数刻前に遡る――。
☆
「起立、礼。さようなら」
『さようなら!』
帰りのSHRも終わったので、これからバイトだ。まぁバイトといっても、単なるコンビニ店員だがな。
接客って案外、感情を押さえつける練習にもなるんだぜ? いつも笑顔で、スマイル。表情筋が鍛えられるので顔が引き締まるのだ。
まぁバイトも夜十一時には終わり、さっさと帰宅しようとした途中だ。
殺気を浴びせられた。背筋が凍るようだ。その殺気をたどってみれば、コートを着た変な男――なんだ男か、ツマンネェ。女だったら犯してペットにするのに。まぁ、俺ん家の財産では高校生二人を三年間養うので精一杯な程度の金額だが……。
「くっく、よもやこんな極東の地で貴様のような存在にであうとは……」
と、いいながら奴が黒翼を広げてきた。千切ってほしいんだな。
そして冒頭に戻る。
「あ? うるさいよオマエ」
「グギャァァァ!?」
奴の自慢気に広げていた翼をもいでやった。……なんだろうな、不快感はあるけど、その程度だ。というかよくこんなのもげたな俺。
多分だけど……
「よ、よくも私の、翼を!」
「だからうるさいよオマエ」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!?」
こいつを今、ここで殺しても何の感情も湧かないだろう。もう一個の翼ももいでやった。吐き気や罪悪感も湧かない。……異常だな、俺。まぁ人間やめてるから仕方ないのかもしれないが。
おいドライグ。こいつを殺し切るにはどうすりゃあいい?
『……そうだな、魔力はどうだ?』
魔力ぅ? ……ふむ、これだな。暖かい流れを感じる。
『相棒は才能があるみたいだな。今回は運が良い!』
俺の魔力の才能にふんす、と胸を張る幼女を幻視したが捨て置くことにした。
「こう、アニメとか漫画だと……こういう感じか?」
俺は手のひらに魔力を集めるイメージをする。
すると、手のひらに赤黒いオーラが集まり始め、それは球体を作り出す。
「なっ!? なんだその魔力は……や、闇……!?」
恐れおおのく堕天使を無視して、俺は魔力を変質させることに専念する。ただ魔力をぶつけてもむりだろうし、それに……異形殺しには炎だろ。
そう考えた途端、赤黒い塊は黒い炎へと変わっていた。へぇ、なるほど……明確なイメージさえあれば何でもできそうだな……。
とりあえずその炎を投げる。すると炎は炎弾となって奴に飛び、その躰を燃やしていく。
「がぁぁぁ……ぐぁぁぁ……や、灼ける……!? バカな、闇の魔力をもつ悪魔は既に……ぁぁぁ……」
みるみるうちにその黒炎は奴の躰を侵食し、そして――灰も残さず、骨まで燃え尽きてしまった。
……あるぇ?
『む……相棒は本来ならば宿さぬ“闇の魔力”を宿しているのだ。元来ならば純粋な闇の力はサマエル、闇の魔力は悪魔王サタンが宿すものなのだが……』
俺もサマエルとサタン位は知ってるぜ。イヴを誘惑して神の悪意を受けたっていう悪魔と、神に反逆した悪魔たちの王だろ?
『サマエルは悪魔というよりは堕天使だな』
うーん、やっぱりこういう伝承とかって表記が曖昧なんだよな……。
『ふむ、俺の記憶が正しければ悪魔王サタンの一族は滅亡した筈なんだがな。……一族揃って三大勢力との決戦前に祝い餅を喉に詰まらせて。そもそも子孫があまり残らなかったらしいしな。もしかしたら、相棒の遠い祖先がサタンなのかもしれん』
一族の滅亡理由しょぼっ! 喉に餅を詰まらせて死んだとかしょぼっ! ……ちなみにその初代? サタンって、どんなやつだっの?
『初代サタンは今で言うところのプレイボーイというか、ヤリ○ンというか。とにかく女を代わる代わる抱いていたらしい。初代アスモデウスがドン引きするレベルで』
……天文学的な数字とはいえ、あり得ないことじゃなくなってきたんですけど。
というか色欲の悪魔がドン引きするってどれだけだよ……
だが、俺の性欲の高さや闇の魔力、その他もろもろも説明がつく。
あー、やべ、ふらふらしてきた。
『いかんな、先程の戦闘で魔力を使い果たしたか……』
やべ、意識が……なくなっ――
「堕天使をやるなんて……でもあの魔力は? 兎に角住所を――」