※この作品はR-18です。

ダンジョンで犯されるのは間違っているだろうか ~アイズ・ヴァレンシュタイン編~   作:天舞蜜

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第二部 オープンキッチンで晒される【剣姫】
₋ep.4₋ ブランチの始まり


「さて今宵もやってまいりました、『怪物挑戦(モンスターアタック)』の時間ですッ‼」

 

 アイズが気絶している間に連れてこられたのは、直径50(メドル)はあろうかと思われるギルド非公認の地下闘技場。雰囲気は怪物祭(モンスターフィリア)で【ガネーシャ・ファミリア】の調教師(テイマー)が怪物を調教して観客を熱狂させる舞台、オラリオの東部に位置する円形闘技場(アンフィテアトルム)に似ていた。

 周囲は3階建ての建物に相当する高さの最硬金属(オリハルコン)の壁、その外側は階段造りの観客席で囲まれており、魔法でも使わない限り飛び越えることは不可能だった。加えてここは魔法阻害範囲(アンチ・マジックエリア)らしく、精神力(マインド)を思うように魔法発動へもっていくことができない。

 

 そんな逆境のアイズに与えられたのは、細剣が一振りのみ。

 

 真っ正面からの脱走は不可能だが、いつか隙ができれば……と考えながら注意深く周囲を見渡す。

 すると突如、闘技場の壁面の一角が鈍い音を立てて左右に開かれた。

 

 扉の奥、闇の中から現れたのは、新種の怪物(モンスター)、『巨蟲(ヴィルガ)』。

 

 それも1匹や2匹ではなく、津波のように何十という数が我先にと後続に押し出されるように姿を現した。

 

 さしものアイズもこれには動揺を隠せなかったが、それでも臆することなく立ち向かう。

 

 懸念事項があるとすれば、巨蟲(ヴィルガ)の特徴である腐食性のある体液。

 アイズの愛剣「デスペレード」と違って、不懐属性(デュランダル)が付与されていない今の細剣では、刃を通しただけで刃先が溶け落ちてしまう。

 

 つまり、何か打開策を思いつくまで、怪物(モンスター)の攻撃を回避し続けるしかない。

 

 アイズは第一級冒険者の脚力を生かして、巨蟲(ヴィルガ)が飛ばしてくる腐食液を回避する。

 

 何十匹という怪物が一斉に噴射してくるのだから、その弾幕密度は尋常ではない。

 すれすれのところを搔い潜り、怪物を誘導して闘技場の中でも比較的安全圏を作り出し続け、さらには放たれた腐食液が蒸発するまでその危険地帯には逃げ込めないという並列処理思考型戦闘が求められる。

 

 当然ながらそのような複雑な作戦をいつまでも続けられる【剣姫】ではない。

 もとより冒険中、直感に従って動くタイプのアイズは、慣れない場所、慣れない武器、慣れない怪物(あいて)に、臨機応変に対応できるほど器用ではないのだ。

 

 腐食液の直撃は免れたが、壁に当たった体液が飛び散り、数滴がアイズを襲う。

 闇派閥(イヴィルス)に襲われた後、アイズは鎧を剥がされたままここに連れてこられたようで、溶解液を防いでくれる防具は身に着けてなかった。唯一、頭部(ヘッドギア)だけは残っていたが、これが大して役立つとは思えない。

 案の定、風の鎧(エアリエル)をまとえないアイズの衣服へ、ついに腐食液が手を伸ばした。

 

 ジュウウゥゥッ! というインナーの溶解音を皮切りに、アイズはついに決心する。

 

 レベル6のステータスを活かして、脚に全ての力を集中させ、最高速で巨蟲(ヴィルガ)の群れへ特攻。

 

 まず一匹目に剣を通す……ときには既に二匹目に狙いを定め、切っ先が溶け始めるより早く三匹目にアタリをつける。

 

 金の長髪をなびかせる少女のそれは、はたからみれば超高速で蛇行する光の軌跡だった。

 残像が巨大な金色のムカデのごとく連なり、闘技場を縦横無尽に駆け回り、溶解していく刃より早く、速く、殺す。

 

【挿絵表示】

 

「おいおい、アレ本当に勝っちゃうんじゃねえか?」「ショーが成り立たなくなるぞ」「これだから第一級冒険者(ばけもの)は……」

 

 常軌を異した戦闘劇に対し、闘技場の外から覗き見ていた観客は、落胆したり嘆息したりしていた。

 しかし、

 

「ご来場の皆様、ご安心ください! 本番はここからですので」

 

 質素で不気味な仮面をつけた司会者が指を鳴らすと同時に、アイズは最後の怪物(ヴィルガ)に手をかけようとしていた。

 

 ……まさにその瞬間。

 

 天井が生き物のように大口を開け、アイズの死角(ずじょう)から再び数十匹の巨蟲(ヴィルガ)と、今度は食人花(ヴィオラス)までもが降り注いだ。

 

 まさに()()()()

 

 頭上への注意がおろそかになっていたアイズはこれを回避することができず、一匹の巨蟲(ヴィルガ)にのしかかられてしまう。

 

 その衝突、衝撃たるや生半可なものではない。

 あまりの勢いに、巨蟲(ヴィルガ)そのものが自重に耐えきれず自壊……破裂してしまう。

 

 まずい、と思ったアイズは魔法阻害(アンチ・マジック)も押しのけて、瞬間的に無理やり風の鎧(エアリエル)を発動させる。しかし完全とはいかず、弾き飛ばしきれなかった腐食液を浴びてしまった。

 

(しまった……っ!?)

 

 着ていた衣服のあちこちが溶け始めた。肌が焼けて激痛に苛まれることを覚悟したアイズは、

 

「……え?」

 

 はたと気づく。

 

 浴びた液体の色が、明らかにこれまでのものと違ったのだ。

 

 服だけが溶け、肌には何の影響もない。

 ……()()()()()()()

 

 身体中が熱く火照り、局部がジンジンとむず痒くなる感覚。

 

 そこでようやくアイズは理解した。

 

 この怪物(モンスター)は、()()を体液に含んだ合成獣(キメラ)である、と。

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