ダンジョンで犯されるのは間違っているだろうか ~アイズ・ヴァレンシュタイン編~ 作:天舞蜜
アイズが牢屋から連れ出されると、そこはだだっ広い空間だった。
闘技場ほどではないが、アイズの背後の牢屋の四倍ほどの広さはある
先の牢屋とは打って変わって、天井からはシャンデリアが吊るされており、部屋の隅々まで灯りが行き届いている。
「ここ、は……?」
アイズは警戒心を緩めないように辺りを見回す。
すると先頭を歩く、フードを深く被っていた男が唐突にローブを脱ぎ捨てた。
「あぁ、会いたかったぜ、アイズ」
顔立ちが、露わになった。
見覚えのある顔。
アイズに性的なトラウマを植え付けた、男。
「……あなた、は……ッ」
————ディックス・ペルディクス。
かつて、アイズを性処理人形に仕立て上げようとした男。
噂では、彼は死んだはずだった。
だが、こうして目の前に再び姿を現した。
一歩一歩、アイズの方へ歩みよる男は幽霊などではなく、二本足がある。
それが何を意味しているのか。
「死んだはず? そうだな、俺は一度息絶えた。あの化け物みてぇなミノタウロスにあっさりと殺された。だが——」
ディックスは、上半身の服を引き裂いて、胸部を見せつけるようにはだけた。
「なっ!?」
思わず、アイズは目を見開く。
果たしてディックスの胸部に埋まっていたのは、毒々しく輝く極彩色の『魔石』。
「——俺は死の淵から蘇った」
強烈な吐き気。
(間違い、ない。この男も、あの人と同じ……存在ッ!)
眼前の人の殻を被った何かに、アイズは畏怖と憎悪を沸かせながら、同時にとある
ディックスは予想よりも戸惑いの小さいアイズの心境を察したのか、
「ほう? アイズお前、以前にも俺のような存在を目にしているな?」
「……それが、何」
「だったら分かるだろう? 過去の残り
ディックスの言葉にアイズは、無駄だと分かっていてもより一層警戒心を強めた。
けれど、次に彼の口から出た台詞は、今度こそアイズを困惑させる。
「喜べアイズ、お前にかけられた
言いながらディックスは、どこからともなく小瓶を取り出すと、中に入っていた液体をアイズに振りかけた。するとたちまち、絶えずアイズにまとわりついていた重圧感、いわば
「……何の、つもり……?」
アイズが疑問を口にした次の瞬間、目の前に立っていたはずのディックスが消えた。
「抵抗してみろ。死ぬ気でな」
「——ッ!?」
背後から、背筋を舐めるような濁声が聞こえた。
アイズが咄嗟に振り返ると、そこにはディックスが両腕を組んで立っていた。まるで何事もなかったかのように。
(見え、なかった……!?)
男の桁外れの移動速度に、アイズの動体視力は完全に負けていた。
万全のアイズが反応すらできないスピードの極致。
無意識のうちに恐怖が勝り、アイズが何もできないで立っていると、ディックスは嗤いながら、まるで壁を這い上がる
「どうした? 俺は命令したぞ。抵抗してみろ、とな」
「くッ!」
そこでようやくアイズは我に返った。
愛剣が手元にない今、本領は発揮できない。それでも両の手を握りしめ、拳を作る。
今できる、最善を尽くすために。
アイズの金色の瞳に映る男が歪む。否、歪ませる。
この男は『人』ではなく『怪物』である、と。
『男』ではなく、『魔』であると。
変わる。代わる。換わる。
視界の内なる定義が。
「ッッ‼」
ステイタスが刻まれたアイズの背中が燃える氷のように黒く滾る。
その猛火をもって『
アイズは両拳、両脚に魔力を限界まで集中させた。
「【起動(テンペスト)】——【復讐姫(アヴェンジャー)】」
そして唱えた。
アイズの根源である『風』を呼ぶ呪文を。
最強の『
ヴォンッッ‼ と。
生じるのは魔力を帯びた螺旋の大気。黒い空気の疾走が部屋全体を暴虐なまでに軋ませ、
周囲にいた男たち三人、ディックスを除く彼らはその圧倒的な暴風を前に、慌てて一人の魔術師による防護壁を展開し、内側に隠れなければいけないほどの竜巻。
アイズの攻勢は、ここからだということ。
そして、
「————死んで」
アイズの回し蹴りが、ディックスの側頭部に炸裂した。
それでもアイズの、人外への攻撃に特化した一撃に耐えられるはずがなく。
また、風に後押しされた神速に反応できるはずもなく。
彼の頭は鼻から上が肉塊となって吹き飛んだ。
アイズは興味を失ったように、同時にそのまま
通り過ぎようとして、
「……悪くない一撃だったけどなぁ」
「——ッッ!?」
血の気が引いた。
「『彼女』に選ばれし肉体が、この程度で朽ち果てると思ったか?」
ディックスの頭部の中でも唯一残った口が、薄気味悪く笑った。
「あな、た……は……ッ!?」
チーズが裂けるように、
アイズの渾身の一撃を被った頭部が、誰が見ても致命傷の患部が。
ボコボコボコッ‼ と。
白い煙を上げながら、不気味な音を立てて再生していく。
「え——」
回復魔法が発動しているわけでも、魔道具を使っているわけでもない。にもかかわらず、ありえない自己治癒能力。
アイズの眼前で、ディックスの致命的な損傷が無かったことにされた。
アイズが声を失っていると、漂っていた白煙は完全に天井に吸い込まれ、ディックスの両目がギョロリ、とアイズを認識する。
「言っただろう、死ぬ気で抵抗してみろ、とな」
「——ッ」
流石は第一級冒険者といったところか。平常心を取り戻すとまではいかずとも、アイズは即座に次の攻勢へ出る。
拳を握り、黒い風を纏わせ、触れたもの全てを圧倒する黒嵐の一撃。
それを今度は男の急所、魔石が輝く胸元目がけて放つ————寸前、
「狙いは良い。けどもう遅っせぇ」
アイズは見た。
最初の回し蹴りで床や壁、天井に飛び散った肉片たちが、冬眠から覚めた虫のように蠢き始め、かと思うとアイズ目がけて射られた矢のように飛び掛かってくるのを。
恐ろしいことに、肉片たちは黒い風の壁を突破する。
まるで幽霊が石の壁をすり抜けるように。
「————っっ‼」
アイズの本能が囁いていた。
この肉片を近づけてはマズい、と。
「ならっ!」
アイズは対処すべき優先順位を変えると、ディックスの動きに注意しつつ、飛来する無数の肉塊に拳や蹴りを叩き込もうとして。
「……え?」
最初の肉片がアイズの拳に触れる直前にスルリと躱し、螺旋を描く軌道で腕を滑走、肩まで到達する。
「何こ——もがっ!?」
そしてアイズの口の中へ飛び込み、胃の中へと落ちていった。
「あーあ、こりゃ詰みだな」
傷を完全に癒してしまったディックスがアイズの体たらくに呆れたときだった。
アイズの風が、消えた。
胃の中に入りこんできた異物が、魔法出力のオンとオフを切り替えたのだ。
「う、そ……」
この場、この瞬間において、一瞬の困惑は命取り。
残りの肉片が、アイズ目がけて殺到する。
「しまっ——」
最早対処できる距離と数ではない。
アイズは咄嗟に両腕で顔を守るが、肉片たちの狙いは全く別の場所だった。
ずぷんっ! と。
一つ目の肉片がアイズの、女の『穴』に勢いよく挿っていく。
そこはアイズが予想だにしていなかった秘所——すなわち局部。
「…………え?」
先ほどまでの自慰行為でスパッツは脱ぎ捨ててあり、アイズの秘裂はインナーのスカートがなびけば丸見えの状態だった。
「……あっ!?」
ビクッ、ビクンッ! と、アイズの下腹部が跳ねた。慌てて下腹部に手を伸ばすが、もう遅い。
二つ目、三つ目と続けざまに残りの小さな肉片がアイズの
「あ…………あ……あ、ああ、あああっ、ああああああああああっっっ‼!?」
ズリズリズリ、と膣内を圧迫し、侵していく肉片たちは集合することで再び一つになり、奥へ奥へと侵攻を始める。
「くぅっ、ふぐっ、あああっ、あうぅうう……っ!」
苦悶の表情を浮かべるアイズは、身体の内側からの不快感と圧迫感に耐えきれず、とうとう膝をつく。肉片がアイズの子宮口をこじ開けようとしているのだ。
「無様だなぁ、アイズ・ヴァレンシュタイン!」
「はぁっ、はぁっ……あぐっ! うぎぎぎぎっ、あぎっ、ああぁぁああっ‼」
ディックスは動揺と苦痛の冷や汗を流すアイズを見下ろし、凶笑とともに口を開く。
「この間は悪かったな、避妊薬代わりに
ディックスは
代わりに得たのは、
「『
ディックスが『彼女』と呼ぶ存在に植え付けられた、新たなる目的。
「そのためにアイズ、お前はどうしても必要なんだよ。神の恩恵を受け、そして精霊の血が流れている、強い少女。それが『彼女』の求める器なんだよ」
その言葉にアイズは愕然となり、刹那とはいえ下腹部の苦しみを忘れてしまうほどに強く動揺した。何故ならほんの一端とはいえ、自分の
「アイズ、お前は強ぇよ。正直言って、予想以上だ」
ディックスの想定では、アイズの格闘術は自分に傷一つつけられないか、あるいはかすり傷が限界だと思っていた。頭を上半分持っていかれたときは、内心焦っていたのだ。
「だから俺も強くならなくちゃいけねぇ。お前を遥かに凌駕する
「それ、なら……、私に
肉片が完全にアイズの子宮へ収まったのか、アイズから苦悶の表情が薄れた。ともすれば嘔吐しそうな顔色の悪さだが、それでも先ほどとは変わって何とか立ち上がれる程度には落ち着いている。
アイズの様子を見て、ディックスは予定通りに事が運んでいると確信し、益々笑みを深めた。
「弱体化はダメなんだよなぁ。それじゃあ目的は果たせない。
「…………っ」
「さぁて、そろそろ時間じゃねぇか?」
「ッッ!?」
アイズの表情が変わる。
額に大玉の汗を浮かべて、下腹部を抑える両手に力が入る。
一度子宮を犯した肉片が、子宮内でナニかをして出ていこうとしているのだ。
「んっぎぃいいいいっ! がふっ、ふぐぐぅううっ‼ うぐんっ、んふっ、くふっ、んふぅぅ〰〰〰〰〰っ‼」
少しでも苦痛を紛らわせようと、食いしばった歯の隙間から息を吐き出そうとする。
そうしている間にもアイズの両脚は震え出し、再び立つどころか座っていることさえままならなくなってしまった。
「くひっ、ひぎっ、んひぃいっ……ッ! ひふっ、はふっ、くふぅうっ……ふっ、ひっ、ひぎぃい〰〰っ……んぐっ、ひはっ、はぎぎぃいいいんっ……ッッ‼」
気が付けばアイズは地べたでうつ伏せに転がり、その苦痛の源を身体の内側から追い出そうと夢中で息んでいた。
「ははっ、いいぞ。それでいい、アイズ。さっさとソレをひねり出せ!」
今のアイズにはディックスの嘲笑を耳に入れる余裕もない。こめかみに青筋を浮かべて力を振り絞ることで精いっぱいだった。
その時、下腹部の中でズルリっ、と何かが滑り出るような感覚が生じた。
「んひぃいっっ……ッ!? ひはっ、はっ、はひゅっ……あっ、ああっ、かふっ……! くふっ、ふうぅっ、ンクッ……あふぅぅううう〰〰〰〰っ!」
ズルンッ、と。
粘液質の水音を立てて、股間から極彩色の魔石が飛び出した。
「お前の力を吸収した魔石、確かに頂いたぜ」
アイズの膣口へ挿るときは確かに肉片だったはずのものが、今度は魔石となって産み落とされる。そんな不可思議な現象にアイズは驚きを隠せなかったが、ディックスは当然のことのように受け止めている様子だった。
ディックスは地べたに横たわるアイズを他所に魔石を拾い上げると、自らの口の中に放り込んだ。
子供が最後まで大事に残していた飴玉を舐めるように、ディックスも魔石を大事そうに口の中で転がし、やがて咀嚼しながら飲み込んでしまった。
「待たせたなぁ、アイズ。それじゃあお前を屈服させるとしよう」
ディックスはズボンのポケットから小瓶を取り出し、中身をアイズの口に無理矢理流し込む。するとたちまち胃の中に潜んでいたディックスの肉塊が吐き出され、アイズに魔力が戻った。
この男は何がしたいのか。
アイズは訊ねようとして、無駄だと悟った。目の前の男は最早人間ではないのだ。根っこから理解できない
「さぁて、アイズ。今一度、命じようじゃねえか」
ディックスは闘気を燃やし、構える。
無抵抗に頭を吹き飛ばされる時間は終わりだ、と言わんばかりに。
どすの効いた声で警告した。
「——死ぬ気で足掻け!」