※この作品はR-18です。

ダンジョンで犯されるのは間違っているだろうか ~アイズ・ヴァレンシュタイン編~   作:天舞蜜

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憔悴する【剣姫】
【剣姫】強襲劇


 空が黒い。

 東の空から太陽の頭が覗くどころか、日の出の前兆すら見えない。

 日付が変わって随分と時間が経過したとはいえ、早朝も早朝の……どちらかといえば真夜中に近い刻限。

 こんな夜明け前に起きて外を出歩くのは、オラリオの外で農業を営んでいる者くらいだろう。

 少なくともアイズ・ヴァレンシュタインのような冒険者が、外をフラフラとうろつくような時刻ではない。

 

「……いない、か」

 

 夜明けの冷えた空気に白い吐息を一つ。

 か細い声で呟くアイズの姿は、迷宮探索時に必ず装備していく軽装のプレートアーマーに愛剣《デスペレート》。

 銀の冒険用装備一式を身に纏う金髪金眼の少女の面持ちは昨晩から変わらず、血色もよくない。

 例のごとく寄生虫型怪物(モンスター)に侵されている彼女は、下腹部を襲う激痛にうなされて目を覚まし、再び浅い眠りに入ったかと思えば激痛にもだえ苦しむ……、という負の連鎖に見舞われていた。

 そして何かに縋りつくように、常日頃と比べても格段に早い時間にベッドから這い出て、【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)を抜け出して、この市壁――迷宮都市オラリオを囲う巨大壁の上を訪れていた。

 

 彼女の視線の先には巨大市壁から見下ろせる広大な円状のオラリオの街並みが、【ヘファイストス・ファミリア】のテナントが入った巨塔『バベル』を中心に広がっている。

 日没から星空のように、街全体に散りばめられていた魔石灯の光は、その多くが消え失せて、静謐な闇へ傾きつつあった。

 とはいえすべての光が失われたわけではない。都市南部にある大劇場(シアター)賭博場(カジノ)が位置する賑やかな繁華街、メインストリート。その東部に隣接する『夜の街』歓楽街。そして北東区画の工業区は日夜問わず魔石製品を生産するために稼働し続けているため、これらの場所には煌々とした夥しい数の魔石灯が密集していた。

 

 そんな自分の住み慣れた街、オラリオの全貌を眺めていると、

 

「…………ッ!? ぐっ、ううぁあっ!? ああっ、かはっ、ごふっ‼ うぐっ、ううっ、おごっ……‼」

 

 ガシャン、と。

 

 アイズの銀の腰当てが石床にぶつかる音が響いた。

 突然苦しみ出したアイズは両手でお腹を押さえて、身体を抱え込むような姿勢のまま膝をついてしまう。

 

 ――また例の発作だ。

 

 この発作が私をどうにかしてしまう。

 だから、たとえ()()が一時しのぎのモノだとしても、決行しなければならない。

 

 そう、アイズは心の内に決心を固めながら、数週間前の出来事を思い返す。

 

 アイズの知り合いには、ベル・クラネルというヒューマンの少年がいる。

 それはかつて【ロキ・ファミリア】の不手際で、ミノタウロスの騒動に巻き込んでしまった冒険者。以降、紆余曲折あったが、アイズは最後には謝罪の言葉を告げることが出来た。

 

 ところがそこで、アイズと少年との関係は終わらなかった。

 彼の人外じみた成長速度に興味を持ったアイズは、その強さの秘密を知るため、少年に近づいた。

 

 幸運だったのは、ベルもまた指導をしてくれる人がいなかったため、冒険者としての先達がいない状況下だったことだ。

 目標のために強くなりたいというベルと、彼の強さの秘密を知りたいアイズ。

 アイズはそんな彼を取り巻く現状と意思を知って、戦闘技術の伝授を自ら申し出た。

 最初、少年はポカンとした顔をして、次になぜか真っ赤にして、そして最後には何やら覚悟を決めたように、「お願いします」と頭を下げていた。

 

 ところがここで1つの問題が浮上する。

 彼は【ヘスティア・ファミリア】という零細【ファミリア】に属している。それもLv.1の冒険者であるため、オラリオ屈指の大規模【ファミリア】、【ロキ・ファミリア】と安易に関わりをもてないということだ。

 

 二人の師弟関係が公になれば、「弱小【ファミリア】の分際で何様だ」という羨望と嫉妬の眼差し、それに並行して非難の声がベル・クラネル、ひいては【ヘスティア・ファミリア】に殺到する。

 

 また、両【ファミリア】の主神は、犬猿の仲といっても違えないほど関係がすこぶる悪い。

 一種の『師弟』という関係が露見すれば、アイズもまた【ロキ・ファミリア】団長であるフィン・ディムナに間違いなく止められるだろう。

 そんなわけでアイズとベルは人知れずこっそりと、訓練という名の模擬戦(スパルタ)をしていたことがある。

 

 特訓の期間はたったの一週間だったが、その間にも彼は大きく成長した。

 実はその『一週間』という期間はもう終わっているので、彼がここにくる可能性はほとんどない。

 けれど、もしかしたら。

 ……もしかしたら、アイズが去った後もここで一人、人知れず訓練を続けているかもしれない。

 そんな淡い希望に縋って、アイズは市壁の上へやってきた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 発作が治まってきたアイズは愛剣を杖の代わりにして、どうにか立ち上がろうとする。

 すると。

 

「……アイズ、さん?」

 

「!」

 

 バッ、と顔を上げると、そこには白髪の少年が立っていた。

 深紅(ルベライト)の瞳のヒューマン。

 相貌はあどけなく、白雪のような白髪を風になびかせている中世的な顔や体つきをしている、少年。

 

「ベル……」

 

【挿絵表示】

 

 それは間違いなく、以前稽古をつけた少年であり、Lv.1にしてミノタウロスを撃破した冒険者、ベル・クラネルだった。

 

「は、はい、何でしょう、アイズさん?」

 

 アイズはベルにお腹の苦しみを悟られぬよういつもの無表情を取り繕い、ベルの前に立つ。

 そして、

 

(……どうしよう)

 

 そのままアイズは硬直してしまった。

 やることは決まっている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ただそれだけだ。

 

 問題は、それをどうやって伝えるかだった。

 どうやって話を切り出したとしても、ミノタウロスの一件から始まり、あの思い出すだけで身の毛もよだつ地獄の一週間の説明は、避けて通れないだろう。

 

 しかし見るからに純粋無垢で、汚れた世界を知らない少年にその話をするのは、アイズも気が引けた。

 

 何より自分の最悪の過去、弱い部分ともいえる話をするのは……、なぜか(はばか)られるのだ。

 

 この少年にだけは、そんな自分(アイズ)を見せてはいけない。本能が全力でそう言っている気がした。

 

 自ら思うがままにここへきて、少年との再会を望んでおきながら、アイズは途轍もない違和感を抱いていた。

 

 具体的に、何をどう頼めばいいのだろう?

 

 誰にも聞けない疑問を、アイズは視線を左右に揺らしながら持て余す。

 そんなアイズを見ていたベルは、

 

「あの、アイズさん。アイズさんはどうしてここに?」

 

 悩めるアイズの様子を見かねて、どこか気遣うような問いを投げかける。

 

「私、は……」

 

 思わず口ごもるアイズ。

 そんなアイズを見ていたベルは、何かを思いついたのか破顔して、

 

「あ、ここに来たってことは、ひょっとして秘密の特訓ですか?」

 

 見当違いの結論を出す。

 が、アイズは違うとも言えず、

 

「う、うん。……特訓を、するためにきた」

 

 目をそらしながら、嘘……もとい苦しい言い訳を口にした。

 冷や汗を流しながら、「どうしよう、嘘をついてしまった」と内心で焦るアイズ。

 すると、

 

「あ、あの、もしよければ……また僕に訓練をつけてくれませんか?」

 

 ベルの方から思いがけない申し出があった。

 

「!」

 

 途端にアイズの頭の中で、ピーン! と作戦が思い浮かぶ。

 この少年に頼むことなく、目的の()()を手に入れる方法。それが浮かんだのだ。

 

「うん、いいよ。それじゃあ……勝負をしようか」

 

「え、勝負、ですか? ああ、それっていつもの模擬戦ですね」

 

「ううん、違うよ。勝負だよ」

 

 言いながら、アイズは剣を抜くと、剣の方を壁に立てかけて、鞘を構える。

 

 アイズが見据える先にいるのは、冷や汗をダラダラと流した少年。

 この時、ベルは本能的な恐怖(トラウマ)が呼び起こされていた。

 

(なぜだろう。アイズさんの目が、どこかで見たことあるような、目に、なってる?)

 

 刹那、歓楽街でアマゾネスたちに向けられた目を思い出すが、なぜそんな過去が記憶の底から掘り起こされたのか分からないベルは、疑問に蓋をする。

 

(いや、いやいや、アイズさんに限ってそれはありえない!)

 

 飢えた狼に見つめられて硬直したように動かなくなってしまった白兎……もとい、ベル・クラネルは恐る恐る口を開いて、

 

「あのー、アイズさん? 勝負って、具体的にはどんな内容でしょうか……?」

 

「私とベルが、戦う」

 

 シンプル・イズ・ホラー。

 

 即答だった。

 

「いやいやいや! 戦ったらLv.6のアイズさんが圧勝しちゃいますよ!」

 

「大丈夫。ベルの攻撃が、私にかすりでもしたら、君の勝ち。私は君を…………き、気絶させたら勝ち」

 

「気絶!?」

 

 ナンジャソリャ!? と白目をむくベル。

 

「ちょ、ちょっと、待ってください。僕って()()気絶させられるんですか!?」

 

「そして……勝ったら、負けた方に……一つだけ何でも、言うことを聞いてもらう」

 

「……………………え」

 

 金色の瞳が、物欲しそうにベルの股間をじっと見つめる。

 

 これなら無理矢理じゃないし、あの外道な手でアイズを凌辱した【ファミリア】とは違う、はず。

 そう自分自身に言い聞かせるアイズは、すでに無茶苦茶な勝負を吹っかけていることに気づいていない。

 

「それじゃあベル、ナイフを抜いて」

 

 じり、じり。

 

 徐々に間合いを詰めてくるアイズに、どこか焦燥に駆られて余裕のない狩人のような雰囲気に、ベルは口を引きつらせる。

 とありえず腰に差した短刀を抜くが、今のベルは武器といいステータスといい絶望的なまでに心もとない。

 

「え、え、えぇ……あの、アイズさんっ、アイズさぁん!? なんかいつもの訓練と違くないですか!?」

 

「……気のせい」

 

 怯えながら短刀を構えるベルは後退しようとするが、背後はすでに市壁の縁、胸牆(きょうしょう)だ。

 

 眼前に狼、背後に壁。逃げ場はない。

 荒い息を立てて少年の疑問を切って捨てたアイズは、次の瞬間なんの遠慮もなく飛びかかる。

 第一週冒険者という領域にかすりもしないベルは、アイズの全力の薙ぎ払いを防げるはずもない。

 

 ぎぃいいああああぁぁああああ‼ という絶叫が朝日の見えぬ夜明けの空に打ちあがったのは、当然の結末だった。

 

 数分後、見事に意識を刈り取られて壁上の石床に寝かされるベルの姿があった。

 

「膝枕をしたい。モフモフしたい。癒されたい」という衝動を抑えて、アイズはベルの顔をツンツンと人差し指でつつく。

 

「眠ってる、よね?」

 

 眠っているのではない、気絶しているのだ! とツッコむ者は、残念ながらこの場にはいない。

 

 アイズはベルが起きないのを確認すると、さっそく彼の腰のベルトに手をかける。

 男物のベルトに疎いアイズは、どうやって外すのか分からず悪戦苦闘しながらも、どうにか取り外すことに成功。

 

 ズボンに手をかけて、ゴクリッと生唾を飲み込む。

 

 さすがにこの先に進むのは今のアイズでも逡巡したが、彼女には余裕がない。

 迷いはしたが、それも一分に満たない時間。

 

 やがてアイズは覚悟を決めて目をつむり、ずるりっ、とインナーもろともベルのズボンをおろした。

 

 

今作の続編を執筆するとしたら、どのキャラクターがいいでしょうか?(ただし、ジャンルはR18の凌辱モノ系統になるとおもいます)

  • 引き続きアイズ・ヴァレンシュタイン
  • リヴェリア・リヨス・アールヴ
  • リュー・リオン
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