東方淫魔伝 作:スイセン
目を開けると散らばった本が視界に入った。そしてその奥では虚ろな瞳で座り込んでいる小悪魔。
その服装は乱れ、露わになっている秘部からは大量の白濁液が溢れていて、小悪魔が何度も無理矢理に犯されたという事実を物語っていた。
これが俺の起こしたことで無ければどれほど良かったのだろうか。
俺は下半身を露出させ、その肉棒には精液やら小悪魔のものと思われる液体で濡れていた。
それに、今回は鮮明に小悪魔に行ったことを覚えている。
俺は小悪魔のことを無理矢理に犯し、何度も欲望をぶつけて中出しをした。
「……っ!」
酷い頭痛に襲われた。
何かを忘れてる気がする。けれどなにを忘れているかを思い出すことなんて出来ない。
「……それよりも、はやく処理しないと」
口に出してみてその言葉に違和感を覚えた。
処理するってなにを……?
気づいたら俺は小悪魔の首に手を伸ばしていた。
「ひっ……!」
自分の行動に慌てて手を離し、情けなく逃げるように小悪魔と距離を取る。
今、俺は小悪魔の首を絞め殺そうとしていた。それもごく自然に。
ゾッとする。自分の行動が自分の意思で制御が効かない。
まるで俺の中に別の存在がいるみたいだ。
「……酷い状況ね」
冷たい声のした方を振り向くとフランがいつの間にか立っていた。
どうして……。もうフランが起きる時間だったのか?
窓も少なく薄暗いこの館にいると時間感覚が狂ってしまうから、今が何時かなんてわからない。
困惑する俺の視線に気づいたのかフランは嫌そうな顔をした。
「人が気持ちよく寝てる時にあんな悪意を振り撒くなんてどういうつもりなのかしら」
悪意を振り撒く……? よくわらからないことを言いながらフランはこちらに近づく。
「それよりもそれあなたがやったの?」
指し示した先にいるのは俺に犯された小悪魔。
おずおずと頷くとフランはつまらなさそうに小悪魔に近づいてその首を掴んだ。
「人の従者に手を出すような使い魔は壊してもいいわよね?」
「……は?」
ギリギリと小悪魔の首が絞まっていくのが見える。
「あっ……、ん……」
苦しそうな表情になった小悪魔だが抵抗することなくフランに首を絞められ続けていた。あと数秒もしないうちにフランなら小悪魔の首をへし折れるだろう。
「ま、待ってくれ!」
慌てて止めるとフランはこちらを向いた。その瞳からはフランの思考は一切読むことができない。
「それはパチュリーの使い魔だろ? 勝手に壊したら」
「パチュリーなら新しいのなんて簡単に呼べるわ」
代わりがいるから壊してもいいなんて言うつもりなのか。
それがフランの理屈だとしても、流石に目の前で小悪魔が殺されるところを見過ごすなんてことは出来ない。
しかし、俺がフランを無理矢理止めることなんて不可能だ。
ならばと、頭を必死に回転させてフランを説得する言葉を探す。
……思いつかねぇ。俺が小悪魔を救う理由がそもそも存在しない。
目の前で妖怪とはいえ、人の姿をしたものが死ぬ。その事実にどうしようもない吐き気が込み上げてくる。
「……やめてくれ。そいつは俺のだ」
口から出た言葉は俺自身にもよくわからなかった。俺の言葉にフランは首を傾げる。
「……あなたの?」
「……ああ。それは俺の使い魔にする」
纏まらない頭で焦って言葉を紡ぐと、フランはニヤリと面白そうに笑った。
「ふうん。そう」
そう言って小悪魔の首から手を離すと小悪魔は崩れるように倒れ込んだ。
そのまま動き出さない。……死んでないだろうな。
小悪魔の様子を確認したいが、俺を見据えるフランの圧力に一歩も動き出せない。
本能が動いたら下手に殺されると訴えかけているようだ。
「人間が妖怪を使い魔にするという意味をあなたは理解しているの?」
そんな意味なんて知らない。知っているわけない。
しかしその答えをフランは教えてくれない。
「部屋に戻るわ。そいつは自分でなんとかしなさい」
それだけを言うとフランはまるで何事もなかったかのようにいつも通りに歩いて行ってしまった。
ほっとすると同時に一気に背筋に冷たいものが走った。
今回はフランの攻撃の対象が小悪魔だったからよかったものの、もし俺に向いていたら俺は当たり前のように殺されていただろう。
「小悪魔の様子を確認しないと……」
平静を装うために言い聞かせるように自分の行動を口にして、小悪魔に近づいて様子を確認すると、どうやら気絶しているだけのようだった。
首の周りには赤い跡がついてしまっている。
とりあえずパチュリーのところに……、あ、でも、小悪魔の服……。
俺が無理矢理に犯した後ということもあって小悪魔の服は乱れており、ショーツは床に落ちていた。
とりあえず少しは身なりを整えて……。あと、俺もいい加減ズボンを履こう。
落ちている本なども適当に積み上げて最後に残った、床に落ちている小悪魔のショーツを拾うと、漏らしたせいか少し重量があって湿っていた。
……つい持っちゃったけど、えっと、これどうすれば……。
じっとショーツを見つめたあと、無言で上着のポケットに入れておく。
別に深い意味はない。後で返す。要らないって言われるだろうけど。そしたら貰おう。いや、貰うなよ。
動揺して変なノリを頭の中で妄想してしまった。しかし、今の場面は見られてたら不味かった。俺の評価が鰻下りになったことは間違いない。
そう。だから、いつの間にか俺のことをドン引きしたような目で見ている咲夜が立っていたのも気のせいであって欲しい。
「…………」
無言でじっと見られている。
これは、どこから見られた……? ついさっき現れたのか、それとも俺がショーツをポケットにしまうところも見られて……!
「あ、えっと、その小悪魔が大変で」
「見ればわかるわ」
たしかに服の乱れは直したとはいえ、昏倒してるし服には精液ついてるし破れてるしで大変な様子なのは一目瞭然だ。
「それでパチュリーのところに」
「そうね。早く連れて行きましょうか」
だ、大丈夫だった……? 神妙に頷いているしさっきのは見られてなかったよね?
「それと、あなたが盗もうとしたものは小悪魔も流石に要らないって言うだろうからもう捨てておいたわ」
「え……?」
言われてポケットに手を入れたらなにも入ってなかった。
ポケットに入ってたショーツを俺に気づかれずに処分するってどういうマジックだ? これが咲夜の能力なのか?
てか、見られてたんだな。死にたい。
「……なにを落ち込んでいるの? 早く連れて行くわよ」
早くしなさいと目で訴えかけられていたので、小悪魔を背負うと、その身体は見た目通りに華奢でとても軽かった。
そうだな。とりあえず、パチュリーのところに向かうか……。
「えっと、パチュリーは……」
ここが大図書館なのはわかるが、ここまで来た記憶がないのでここが大図書館のどこなのかわからないし、パチュリーの居場所もわからない。
「パチュリー様ならこちらよ。ついて来て」
そう言って咲夜は先導するように歩き出してくれたので、それに従うように小悪魔を背負ってついていく。
背負っていることで、歩く度に押し当てられる胸の膨らみがやけに気になってしまう。先程まで俺は小悪魔を犯し、この胸を舌で遊んだりしていたということを無理矢理に意識させられてしまっていた。
それと同時に胸の奥底から気持ち悪さが込み上げてくる。
それは、もしも今、誰もいなければすぐにでも吐き出してしまいそうな気持ち悪さだった。
パチュリーの元に小悪魔を連れて行くと、特段慌てた様子も見せずにパチュリーは意識のない小悪魔の様子を確認し始める。
その間に咲夜はいつの間にか居なくなってしまっていた。パチュリーが言うには人手がいつも以上に不足していて忙しいらしい。
「……これは魔力の枯渇ね」
少ししてパチュリーはそう小さく呟いた。
「魔力の枯渇?」
「小悪魔の身体の中の魔力がほとんど残ってないわ。これ以上だったら最悪消えていたかもしれない」
「消えていた……」
……消える。それはつまり死んでいた可能性が高いということか。
「魔力ってそんなに必要なものなのか?」
「妖怪にとってはね。とりあえず小悪魔は暫く寝かせておけば魔力が回復して起きるわね。それよりも……」
言ってパチュリーは小悪魔の下腹部へと視線を向けた。
「……まさか、こんなことになるなんてね」
疲れたようにため息を吐くと、どうしたものかと考えるように俯く。
うっ……、俺もこんなことになるなんて思ってもいなかったけど……。
「ともかく仮説は正しかったみたいね」
「仮説?」
「説明したでしょ? あなたに魔力が溜まっている原因」
ああ、そういえばなんか色んな理由が挙げられてたな。
「あなたは抱いた相手の魔力を吸収しているみたいね」
「……ん? えっと、すまん。理解が追いつかないんだが」
「今あなたの身体は小悪魔の魔力を帯びているわ。きっと小悪魔から奪った魔力ね」
俺に説明するというよりも、自分の中の情報の整理するようにパチュリー考えながら呟く。
「けど、魔力を奪うだけじゃ模倣は出来ない……。他にもなにかある……? トリガーはやっぱり性行為?」
「あー、えっと、ちょっといいか?」
そのまま更に深い思考に入っていきそうなパチュリーを止めるように声を割り込ませると、不機嫌そうにこちらを見られた。
「どうかしたの?」
「その、悪魔と人間って妊娠とかってするのか?」
「妊娠……? ああ……、そうだったわね。結果から言うと、可能性としてはゼロじゃないわ」
「じゃあやっぱり避妊薬を……」
「そうね。永遠亭から貰ってきた方がいいわね」
「……永遠亭? どこかで聞いたな」
記憶を辿ってみて、アリスがそんな名前を口にしていたことを思い出した。
そういえばアリスも永遠亭でアフターピルを貰ってきていたな。幻想郷の病院みたいなところなのかもしれない。
「咲夜は忙しいみたいだし、仕方ないから私が行くしかないわね」
「ま、待ってください」
唐突に割り込まれた声にパチュリーが意外そうに顔を向ける。
「思ったよりも早いお目覚めね。よく眠れた?」
見ると、小悪魔が目を覚まして身体を起こしていた。
「……おかげさまで。休暇を貰っても?」
「有給にはしないわよ」
「元々給料ないじゃないですか……」
げんなりとした表情で小悪魔は言うと、少しダルそうに立ち上がる。
「大丈夫なのか?」
「あなたが心配しますか?」
「……いや、まぁ一応」
「少し体は重いですし、お腹の中が変な感じしますけど大丈夫ですよ。無理矢理犯されただけですし」
うっ、視線が痛い……。
「永遠亭には私が自分で行きます。パチュリー様のお手を煩わせるほどじゃありません」
「そう。それならいいんだけど」
小悪魔は体調が悪そうなのに本当にそれでいいのか?
そんなふうに思った俺に小悪魔が視線を向ける。
「もちろん、あなたも付いてきますよね?」
「……は? 俺?」
意外すぎる指名に反応が少し遅れてしまった。
小悪魔は俺を嫌っているし、そんなことを言われるとは思わなかった。
「別にいいわよ。咲夜には私から伝えておくから」
「ありがとうございます。それじゃあ行きましょうか」
言って、小悪魔は俺の手を取って歩き出す。
「あ、おい!」
「なんですか? 文句でも何かあるんですか?」
呼び止めた俺に対して辛辣な視線を向ける小悪魔に俺はコソッと耳打ちした。
「その、……パンツ履いてからの方が良いと思うぞ」
「…………。さい、ていっ!」
「ぐはぁっ!」
本気で鳩尾を殴られた。物凄く痛い。