東方淫魔伝 作:スイセン
目が覚めたら知らない天井……になってる予定だったがいつもの紅魔館の自室の天井だった。
……あれ? 永遠亭ってところに行ってる予定じゃなかったか?
身体を起こすと、刺すような痛みに襲われた。
あー、夢オチなんて素敵な展開じゃないか……。
上着は脱がされ体には肩から包帯が巻かれていた。太腿や脚にもびっしりと包帯が巻かれている。
まぁ、あれだけの火傷や打撲を負っていたらこの程度の処置は当たり前だ。
ただ、思ったよりも痛みはない。もちろん動かしたら多少は痛いが、寝る前の時に感じていた痛みに比べたらマシだ。
「……んで、俺はどれぐらい寝てたのかね」
俺の部屋には時計がない。だから時間なんてわからない……はずなのだが、壁には時計がかかっていてその短針は2の文字を指し示していた。
カーテンを閉められた窓から微かに差し込む光から今が14時であるということはわかる。
「そこそこ寝てたみたいだな。てか、なんで時計あるんだ?」
「…………一人でなに喋ってるんですか?
ちょっと冷たい聞き覚えのある声がした方を向くと、開いたドアから呆れたように小悪魔がこちらを見ていた。
「喋るセリフなかったら文が読みにくくなっちゃうだろ」
「頭に怪我は無かったと思ってましたが……、もしかして怪我でもしてました?」
そう言いながら小悪魔は近づいてバカでも見るような目を向けてくる。
「あの本好き奴の使い魔してる癖に、本のあるあるネタも通じないなんて勉強不足だな」
「……わー、そうですねー。すごーい」
頭の軽そうなノリをすごい棒読みで言って小悪魔は小さくため息を吐いた。
やっぱりバカにされてる気がする。もう少し可愛げが欲しい。
「なんで、私こんな人に負けたんだろ……」
「俺がお前よりも強かったからだろ」
「……はいはい。そうですね」
少し煽ってやったら適当にあしらわれた。ただ、拳を握りしめたあたりメンタルにはきてそうだ。
すぐに襲いに来ないあたり、まだ余裕はあるな。昨日なんてすぐに襲ってきたし。
思い返せば、俺こいつに襲われてばっかりだな。昨日も俺に犯された後だっていうのに襲ってくるとか正気とは思えない。もう少し後先考えて行動しろとパチュリーに習わなかったのか。
「声に出てますよ? 殴りますね? 歯でも食いしばってて下さい」
「疑問系で尋ねてる癖に確定事象なのはやめろ。怪我人だぞ」
「私は今、心の傷を負ったので」
「悪魔の癖にメンタル弱いって大丈夫なのっぃてぇ!」
本当にグーパンされた! 親にも殴られたことないのに! 覚えてないけど!
「あなたは身体鍛えた方がいいですよ? 貧弱で貧相で可哀想です」
「ちょっと韻踏んでる感だすなよ。俺鍛えたらお前に勝ち目なくなるぞ?」
「はいはい。言っててください。じゃあ、もう一発」
「おい、待て! なんでさらっと流したようなノリの癖にちゃんと殴ろうと、痛い!」
内臓にビリビリくる系のパンチだ。電流でも込めてあるのかもしれない。
怪我人のことここまでボコボコにできるとか悪魔かこいつ。悪魔だったな!
これ以上殴られたくないので慌てて話題を変える。
「それにしても、よく俺が起きたことに気づいたな」
そう尋ねると、小悪魔は俺の後ろを指さした。
振り向いて見ると、なんか水晶玉みたいなものが置かれていた。
「……なるほど。怪我を心配した小悪魔が忙しなく脚を運んで様子を見に来てくれていたのか」
「なんでその結論になるんですか!」
「心配してくれてなかったのか?」
「死ねって思ってましたよ?」
にっこりと笑顔で言われた。酷い。
まぁ、要はこの水晶玉越しに俺の様子でも観ていたのだろう。
「じゃあ、あの時計もわざわざ俺の部屋に持ち込んだのか」
納得したように一人で頷いてると小悪魔は不思議そうに首を傾げた。
「はい? ここは私の部屋ですけど」
……小悪魔の部屋?
そういえば部屋の作りも少し違うような……。自室で寝た記憶が一回しかないから部屋の模様だけで、自分の部屋だと思ってしまっていたが、違ったらしい。
そうか。小悪魔の部屋か。つまり、これは小悪魔のベッドということで……。
「……なんで無言で布団に顔を埋め始めたんですか」
「うるさい。黙れ。今、残り香を楽しもうと……」
言動はあれだが、見た目は完全に美少女の小悪魔だ。健全な男子的に仕方ない行動だ。間違いない。
「……私は悪魔なので魔力さえあれば休息なんてほとんど必要ないんです。なので、そのベッドで寝たことないですよ」
「……騙したな悪魔め」
「悪魔ですけど……。私、今すっごく引いてます」
ドン引きしたように顔を引き攣らせた小悪魔は俺と距離を取るように離れる。
そんな小悪魔を見ながら文句が口に出た。
「なんで寝ないのにベッドあるんだよ……」
「この館の部屋の作りほとんど同じなんですよ。私は私物もほとんどありませんし」
たしかに部屋は殺風景で私物と思えるようなものは全くない。
タンスはあるのでそこに予備の服などが入っているのかもしれない。
「……あの、その、タンスの方をそんな獣のような目で見られても困るんですけど……。あの、下着とか取りませんよね?」
「ばっか。そんな目で見てねぇよ。それに履いてない下着に意味なんてないだろ。ただの布切れだ」
安心させるようにはっきりと断言してやると小悪魔との距離が更に空いた。
「気持ち悪い……」
「……やめて。そのマジトーンで言われると流石に心にくる」
「私ずっと本音しか口にしてないんですけど……」
「それで? なんでお前の部屋で俺は寝ているんだ?」
くだらないやり取りを交わしたところでやっと本題に切り込む。
なんで俺の部屋に寝せなかったのだろうか。そもそも、永遠亭に行くという話はどうなったのだろうか。
「だって私あなたの部屋なんて知りませんから」
「いや、咲夜あたりに聞けば……」
「面倒くさかったです」
「……さいですか」
ここに寝ていたのは全然大した理由じゃなかった。
「じゃあ永遠亭の方は?」
「もちろん行きましたよ。薬もらって帰ってきただけです」
「あれ? そのついでに俺の治療とか」
「拒否されました」
「なんでっ!?」
「冗談です。包帯巻いてあるでしょ? 傷薬も塗って貰いましたし、私がわざわざ永遠亭から紅魔館まで運んだんですよ? 感謝してください」
わざわざという部分を強調して小悪魔が胸を張っていう。
「いや、そもそも怪我の原因お前なんだけど……」
「よわっちいからいけないんです」
「よわっちいやつに負けた悪魔はどこのどいつなのか顔が見たいなぁ」
「……あなたのこと嫌いです」
悔しそうに下唇を噛んでぷいっとそっぽを向かれた。
なんだこいつ。反応だけは可愛いな。
それに、はっきりと嫌いとは言われているが、最初の頃に向けられた殺気に比べたらだいぶマシだ。
「それで何のようなんだ?」
「………………その、契約を果たしに」
やけに間を開けて小さく小悪魔が呟いた。
契約? なんかあったか?
そう思っていたら小悪魔はスカートの裾を摘んでゆっくりと上に上げ始めた。
スカートに隠されていた太腿が少しずつ露になり、その更に上に隠された黒色の下着までもが晒される。
顔を逸らしたままで小悪魔はスカートをたくし上げきり、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「……こ、これで、満足ですか」
震えながら尋ねてくる小悪魔に対して俺は少し考えていた。
……どうしてこうなった!?
え、こいつ、なんでスカートたくし上げてるの? 痴女なの?
「だ、だめ、ですか……」
涙目でそんなふうに言うと、小悪魔は左手でスカートを押さえながら、器用に右手だけで上着のボタンを外し始めた。
ネクタイを緩め、上から一個ずつボタンが外れていくと小悪魔の鎖骨が見え、そして黒色のブラジャーまでもが露になる。
女性特有の胸の膨らみと綺麗な素肌が半脱ぎ状態の服の間から確認できてしまう。
「うぅ……、恥ずかしい……、なんで、こんな……」
そこまでされてやっと昨日の勝負の俺のセリフを思い出せた。
そういえばスペルカードルールについて下着見せながら説明しろとか言ったなぁ……。
あれは小悪魔に人形の存在を悟られないようにするために言っただけで、別に本当にしてもらうつもりなんてなかったんだが。
だから、今すぐやめてもらっても構わないのではあるが……。
小悪魔の表情を見ると、羞恥で顔を赤くして瞳には涙を溜めている。
……さっき殴られたしやり返しの意味も込めてこのままにしよう。
「その、それじゃあスペルカードルールについて説明しますね」
そう言って話し始めた小悪魔だが、はっきり言ってあんまり興味ない。
昨日はそのスペルカードルールのせいで酷い目にあったし、もうやりたくないからなぁ。
そういうわけで、小悪魔の下着を観察することにした。
小悪魔の下着、俗にいうパンツまたはショーツと名の付くものは、黒色のレースを編み込まれたものだ。その黒い下着から細くシミ一つない綺麗な脚が飛びている。黒色の下着を着ているせいか肌の色との対比のせいで、肌がより白く見えてしまう。そして、触らなくてもわかるすべすべ感。やっぱりこういうのは妖怪だから手入れとか必要ないのだろうか。それとも、意外と手入れをこまめにやった上でのこの肌というのならばその努力が伺い知れるし、賞賛の拍手を送りたいレベルだ。現在、そんな綺麗な肌を黒い下着によって一部隠されてしまっているわけだ。しかし、それに文句をつけるわけもない。下着は履いてなければただの布切れであるように、小悪魔がこういう形でショーツを履いているということに意味があるのだ。ショーツに隠されたからこそロマンがあるわけだし、ショーツの薄い部分から小悪魔の肌色が薄っすらと見えるのがまた、ショーツの奥の想像を掻き立てさせてくれる。
「……そ、そんなにマジマジと見ないでください」
小悪魔が恥ずかしそうに下着を少しでも隠そうともじもじと脚を動かすが、隠れるわけもなく逆にその動きのせいで更に艶かしく見えてしまう。こいつは自分が一般的にいう美少女の部類に属することを自分で理解しているのだろうか? そんな美少女が惜しげもなく下着を露にしているというのはあまりにも非日常的で現実味が薄い。叶うことならこのまま死にたい。いや、もっと見てたいから死にたくない。
……うん。少しばかり小悪魔の下着を観察してみたがキモいな俺。まぁ、あれだな。小悪魔がエロいのが悪い。
「……えっと、わかりました?」
小悪魔のショーツを十分に観察し終えたと思ったところで小悪魔からそんな風に尋ねられた。
「……え? ああ。うん。エロい」
夢中で下着見ていたので頭が働かず、思っていたことがそのまま口から出てしまった。
「え、エロいって……」
恥ずかしそうにもぞもぞ動くなって。それめっちゃエロいから。堂々と見せられるよりも恥ずかしがってるところを見るのがこんなにエロく感じるとは思ってもいなかった。
「と、とりあえず、スペルカードについてはこれで大丈夫ですね」
「えっと、なにが?」
「は? え、だから、スペルカードルールについて」
「あー…………、いや、悪い。聞いてなかった」
「……え?」
聞き流すつもりはあったが、ここまでガッツリ聞き流せるとは。下着って凄いな。無限の可能性が眠っているのかもしれない。将来学者になって下着について研究してもいいかもしれない。
「どうしてですか!?」
「つい下着に夢中に」
「なにがついなんですか! 人の下着に夢中にならないでください!」
「いや、マジで悪い。次はちゃんと聞く」
「もう一回説明しないといけないんですか!?」
泣き出しそうな声で叫ぶと、小悪魔は渋々と言ったように再びスペルカードルールについて説明し始めた。
よし。今度は真面目に聞こう。流石に小悪魔に悪い。
そう思って小悪魔の顔を見ると、どうしても視界に小悪魔のブラジャーが入ってしまう。
……目に毒だな。見ないように……するのは勿体ないな。
小悪魔のブラジャーはショーツと合わせるように黒色で(以下略)。
「聞いてますか? あの、聞いて……」
「え? あ……」
いつの間にかブラジャーに夢中になっててまた聞いてなかった。
いや、ブラジャーも凄いな。あれで胸を隠していると思うと夢がいっぱいだ。ひとつなぎの大秘宝とか眠っていても不思議じゃない。こんど探索にでも行こう。
「も、もしかして、また……」
「…………」
俺が無言で頷くと、小悪魔は怒るでもなく叫ぶでもなく、体を震わせて、
「うっ……、ひぐっ……んぐっ……」
本気で泣き出した。
おいマジか。下着を見せつけながら泣かれるとか俺が悪いみたいじゃねぇか。俺が悪いんですね。
「もう、嫌ぁ……、なんで、私が……ひくっ……」
「いや、本当に悪かった。次は本当にちゃんと聞くから。なんなら、もう別に教えてくれなくても」
「ひぐっ……、あなた嫌いです……、えぐっ……ばーかばーか」
そのままひたすら、ばーかばーかと連呼され始める。
大丈夫か? 幼児退行し始めたぞこいつ。
えー、この状況どう収集つけよう……。
東方淫魔録その6
主人公はブラジャーよりパンツ派。だからどうした