東方淫魔伝 作:スイセン
凍りついたように無言な部屋。
あー……、やっちまった……。
頭を抱えたくなる。
妖夢にチラリと視線を向けると、状況が理解出来てないのか唖然とした様子で固まっていた。
とりあえず、すぐに斬りかかってくる様子はないな。良かった……。
幽々子に視線を戻すと、彼女に不思議そうな顔を向けていた。
なんでわざわざ幽々子と俺の位置を逆転させたのか気になっているのだろう。
「……幽々子に押し倒されてるなんてみっともないからな。逆転させてもらった」
小さく幽々子に囁くと、彼女は可笑しそうに笑う。
「ふふっ、見えっ張りねぇ」
「うるせぇ。後は、なんとかしろ」
「仕方ないわねぇ……。妖夢、ご飯は落とさないように気をつけてねぇ〜!」
最初に言うことそれかよ……。
幽々子に声をかけられて、妖夢がようやく再起動する。
「は、はい……じゃなくて! 幽々子様っ!? なんで、そんなみょんなことにっ!?」
みょん?
頭がパニックになっているであろう妖夢の謎の言葉が引っかかりつつ、俺が答える。幽々子に答えさせたら、無理矢理押し倒されたとか言いそうだし。
「いや、悪い。お腹空いたらから、先にいただいていた」
「……ぷっ、貴方、それで誤魔化してるつもりなの?」
クスクスと笑う幽々子。
「誤魔化しようがないんだから、茶化すしかないだろ」
「火に油を注ぐタイプなのねぇ」
うるせえ。んなこと自分でもわかってるわ。それでどれだけフランに痛い思いさせたと思ってるんだ。物理的にも精神的にもめっちゃ痛いんだからな!
困った子供を見るような目を向けた幽々子は俺の顔に手を添える。
「……何をするつもりだ?」
「作戦通りにしようと思って」
「それこそ火に油を、んむっ……!」
幽々子が唇を合わせてきた。
俺の頭を押さえ込んで逃げられないようして、口元をなぞるような優しいキスをする。
「え、あっ、あ……」
自らの主人の行動に妖夢は更に混乱したような表情をしている。
大丈夫か、あれ……。最終的にぶっ倒れたりしないだろうな……。
「ねぇ……、ここまで来たのだから、最後までね」
「……まだ後戻りはできると思うんだが?」
「後戻りなんてするの?」
「いや、しない」
幽々子を押し倒す体勢に変えた時に既に覚悟は決めていた。
妖夢に見られながらとか気にしない。最後までやり通す。
幽々子は微笑むと、俺の頭に掴んでいた手を離し、身体を脱力させた。好きなようにしていいという意思表示だろう。
「じゃあ、好きなようにやらせてもらうぞ」
右手で幽々子の胸を揉みながら、顔を近づけて乳輪をなぞるように舌を這わせる。
「んっ……あっ、んあっ……」
少し力を入れるだけで簡単に変形する幽々子の胸。その柔らかい感触を楽しみつつ、今度は吸い付くようにして大きく乳首を周りを口に含んだ。
口内で舌を動かして、乳首を舐める。
「んんっ、ああっ、あっ……んっ……はぅぅ……、また、すぐに……身体が……気持ちよくなっちゃうぅっ……! んんっ!」
徐々に硬くなり、勃起し始めている乳首。乳輪もぷっくりと膨らみ、舐め上げる度に、幽々子は身体をビクンと震わせた。
れろれろちゅぷっ……、りゅろっ、れろえろ……。
妖夢に見られているという状況のせいか、かなり敏感になっているようだ。
俺の愛撫を受け入れる幽々子の顔がとろんと蕩けていく。
「幽々子、様……」
主人の痴態を目撃している妖夢は顔を赤く染め、今にも逃げ出しそうだった。
そりゃそうだろう。俺でもこんな状況発見したらすぐに背を向ける。
「んっ……! んっ……よ、妖夢……、立っていないで、あっ、んんっ! 座った……ら、んんっ!」
「そ、そんなこと言われても……」
幽々子に促されたものの、妖夢は困ったように視線を彷徨わせた。
「ふぁっ……あっ、んぅっ! わ、私たちの……ことは、気にしなくていいから……んんんっ! はぁっ……ああっ……、ほら……早く……ああん!」
額には汗を浮かべ、快楽を受けながらも、幽々子は妖夢に座るように言う。
その誘いに妖夢は狼狽えた様子ながらも朝食の乗ったお盆をテーブルの上に置いて、俺たちとは反対側に座った。
意外だな。なんだかんだで逃げ出すと思っていたのに……。
「い、良い子ね……はふんっ、そ、そのまま……、んっ、あんんっ! ちゃんと、見て……いて……あっ、はふっ、ああぁ……んんっ!」
妖夢は幽々子の言葉に返事をするでも頷くでもなく、恥ずかしそうにこちらを見るだけだ。
ただ、目を覆うことも逸らすこともしないあたり、ちょっと気になっているのか?
幽々子も妖夢に見られることを楽しんでいるみたいだし、俺も幽々子に集中しよう。
ちゅる、れろ、るれろ……じゅるぷっ、つちゅぱっ……。
舌と唇を使って、幽々子の乳首を嬲りまくる。同時に右手で幽々子の勃起して硬くなった乳首を摘んだ。
「ああっ! んうっ……乳首、ばっかり……あっ、んやぁ……」
執拗な乳首への責めに幽々子は呼吸を乱しながら、太腿を擦り合わせる。
「こっちも弄って欲しいのか?」
右手を胸から離し、幽々子の秘所に手を這わせる。
めちゃくちゃ濡れてるな……。
少し触れただけで糸を引くほど濡れた幽々子の秘裂。そこで大きく勃起した彼女の陰核を指でコネ潰す。
「ああぁっ、んん、んひぃっ!」
電流のように走り抜けた快感に幽々子は大きく身体を震わせた。
今度はその中に指を入れて、中を擦るようにして出し入れを繰り返す。
「んっ、あっ、あっ……あぁあんっ! あっ、ふぁっ、んやぁあぁっ!」
軽くイッてしまった幽々子。
荒い息を吐き、全身を痙攣させる。やはりいつもより感度が良い。
「妖夢に見られて、そんなに興奮するとか変態だな」
「んんっ、あっ……、ま、待って……、まだイッたばかりで……あぁああっ!」
まだイッた時の余韻が残っているうちに、クリトリスを摘んだ。
それと同時に、舌を使って胸への愛撫を再開する。
「あぁああ、んくぅ……んんっ、あぁっ……ふぁああんっ!」
繰り返される責めに感じまくる幽々子。
着物の乱れも最初と比べて広がり、布が隠す部分よりも幽々子の肌が晒されている部分の方が多いくらいだ。
「……あっ、はぁ……」
不意に幽々子とは違う声が聞こえた。チラリと横目を向けると、妖夢が顔を赤くしてもどかしそうに太腿を擦り合わせている。
その手は胸あたりでぎゅっと握られているが小さく震えており、俺たちが居なくなればすぐにでも自慰を始めてしまいそうだった。
その妖夢の状態に幽々子も気づいたようで、クスリと微笑むと、身体を起き上がらせる。
「妖夢……、貴女も混ざる?」
「……えっ、な、何を言っているんですかっ!?」
幽々子の突然な提案に妖夢は一瞬の間を置いて、驚いたように肩を震わせた。
「とっても、気持ちいいのよ……? ほら、彼のだってこんなにたくましくて……」
そう言って幽々子はガチガチになった俺の肉棒に触れる。
そして、妖夢へと甘い甘い誘いをかけた。
「こっちに来て、一緒に舐めましょう?」
「わ、私は……」
プルプルと震える妖夢。
荒い息を吐いて、視線を俺の肉棒へと固定させていた。
「妖夢……」
幽々子が呼びかけるとビクンと肩を跳ねさせた。そして、赤くなった顔で俺を見つめると、大きく深呼吸して、ゆっくりとこちらに近づく。
間近で見る肉棒に妖夢は少し怖そうな表情をしつつ、手を伸ばしてきた。
妖夢の少し体温が低めの手が触れる。
「ふふ……、妖夢、そのまま、貴女が好きなようにしていいのよ?」
「私の、好きなように……」
小さくうわ言のように呟いた妖夢は、両手で肉棒を包むようにして掴むと、口元を近づけていき、肉棒の先端を咥えた。
「んちゅ……、れろ……ちゅっ……」
口内でたどたどしく舌を使って亀頭を舐める妖夢。
そんな妖夢の様子を幽々子は微笑ましそうに見ていた。
「ちゅっ……、んちゅ……れろ……ちゅずず」
幽々子のように上手いフェラではない。ただ、その不慣れな感じが、逆にこちらの興奮を煽ってくる。
「いい感じねぇ。妖夢、ここの出っぱったヒレみたいなところを咥えて、もっと舌を絡みつかせるようにして舐めてあげて」
「こ、こうれふか……? んちゅ、ちゅる……れろ……」
こ、これは……!
幽々子の教えに従うように、より深く咥え込んだ妖夢が舌を絡みつかせてくる。
「そう上手よぉ」
妖夢にニコニコと笑顔を向ける幽々子は、俺の左腕に抱きついてきた。
柔らかな胸をこれでもかと押し付けてくる。
「一緒に舐めようって言ったのに、妖夢ちゃんに貴方のおちんぽ、独り占めされちゃった。だから、貴方のお口は私が独り占めするわね」
俺の耳元で囁くように言って、幽々子は唇を重ねてきた。
ならばと、俺も右手で幽々子の胸を揉み始める。
「んっ、ふぅっ……、あっ……んちゅ、れろ、れろれろっ、……んはぁっ」
舌を絡め合い、粘液を交換し合う。
熱いくらいに体温の高まりを感じる。
この白玉楼の主人と従者、その二人と同時に行為に及ぶのがこんなに興奮するとは……。
「んっ、ちゅ、れろ……れりゅっ、ら、ライカさん、んちゅ……気持ち、いい……れふか?」
「あ、ああ……、めちゃくちゃ気持ちいいよ」
「なら、もっろ、がんばりまふ。んんんっ!」
「うぁっ……!」
「ふふ、妖夢ったらやるわねぇ」
妖夢が苦しそうにしながら根本まで肉棒を咥え込んだ。
ぎゅっと目を瞑り、必死に肉棒を飲み込む彼女は口の中で舌を絡ませる。
「んぐっ、んじゅっ、じゅるるるっ! んぶっ……んちゅ、じゅっ、じゅるる!」
「妖夢、それやばい……!」
強力すぎるフェラに腰が浮きそうになった。
息が続かないのか、一度顔を戻して肉棒を口元から引き抜くと、妖夢は再び思いっきり肉棒を喉奥まで咥え込む。
「んあっ、じゅぷっ……れろれろっ、じゅっ……んちゅる、るれろっ……!」
たどたどしさなどどこに行ったのかと思うぐらい上手なフェラ。
垂れた唾液で湿り気の帯びた唇をすぼめ、口内で激しく舌を動かす。
き、気持ち良すぎる……!
必死にフェラを続ける妖夢を見て、幽々子も負けじと再び唇を塞いできた。
「んちゅ、れろ……るれろ……、ちゅっ、んちゅ、……ちゅぷっ、ちゅぱっ……」
「んふぅ……、れろれろ……、おひんひん……ふくらんで……」
「ん、ぷはぁっ……イキそうなのね。純粋で無垢な妖夢ちゃんの口の中で出して、貴方の精液で汚しちゃうのね」
「そ、そういうこと言うなよ……!」
「ふふ、興奮するでしょう?」
クスクスと妖艶に笑う幽々子。
妖夢を汚すことを考えたら正直、めっちゃ興奮する。
耐えきれないくらい射精感が高まっていた。俺の射精が近づいていることを理解した妖夢が更に動きを激しくする。
「んじゅっ、んぐっ、んぶっ……じゅるるっ! あぁっ……んくっ、んじゅっ……じゅるるるっ!」
「くっ、イクッ……!」
ぶびゅるっ! びゅる、びゅるるっ! どくどくっ!
妖夢の頭を押さえ、その口内に欲望を吐き出す。
「んんんむっ! んぐっ……んじゅっ! じゅるっ……じゅるるるっ! んんっ! んくっ……んんっ……」
俺の射精に驚いたように身体を震わせて目を見開いた妖夢は、精液を口内で受け止め、必死に飲み込む。
本日4度目。それでも大量の精液を撃ち出す。
何度も脈打つ肉棒。
妖夢の口内から溢れた精液がポタリと彼女の緑色の服に落ちて白い跡をつける。
「いっぱい出すわねぇ……」
「んんっ……、んぐっ、んんっ……」
射精する俺と、それを受け止める妖夢を感嘆するように眺める幽々子。
苦しそうな妖夢を見て、彼女の口から肉棒を引き抜くと、まだ残っていた精液が飛び散り、彼女の顔に降りかかった。
「ふふっ、そんなに妖夢ちゃんの顔、汚したかったの?」
「……わざとじゃない」
顔に精液をかけられてドロドロになった妖夢が口を開くと、飲み込みきれなかった精液が口内に残って、糸を引いているのが見える。
それを妖夢は瞼を瞑り、ごくんと少し辛そうに飲み込む。
「あっ、はぁ……」
精液臭のガスを吐き出しながら、朧げな表情でこちらを見つめてきた。
妖夢の中学生から高校一年の間ぐらいにしかか見えない体格の幼さも相まって、その光景はどこかいけないもののようで、こちらの興奮を煽ってくる。
その身体に触れたくて、妖夢の肩に手を置いた。
その瞬間、妖夢は理性を取り戻したかのように目を見開いて顔を真っ赤にさせた。
「す、すみません。私、何を……!」
まるで夢から覚めたかのように頭を振ると、俺が声を掛ける間もなく立ち上がって駆け出し、部屋から出て行ってしまった。
それを唖然と見送る。
「あらら……、振られちゃったわねぇ」
「そ、そうだな。思ったより傷ついた……」
動揺を隠さずに返答した。
あそこまでのフェラをしておきながら、拒絶されるように逃げられるとは思わなかった。
いや、そもそも妖夢がフェラをしてくれたということの方が驚きだった。俺に好意などありそうな様子はなかったというのに。
「……幽々子、妖夢に媚薬とか盛ってないよな?」
「失礼ねぇ。そんなこと貴方以外にはしないわ」
「そうだよな。なら、俺にもしないようにしてくれ」
俺になら媚薬盛っていいみたいノリはやめろ。アリスに嫌ってほど飲まされてるんだぞ。媚薬というよりも精力剤みたいな感じだったけど。
「んで、どうするんだ? 妖夢いなくなったけど、続きするのか?」
肌蹴させた幽々子の身体に視線を向かわせる。
「そうねぇ……、それもいいけど、せっかくだから、冷める前にご飯を食べましょうか。続きはその後でね」
やけに甘い囁きをわざわざ吐息のかかる距離の耳元でしてから、幽々子は肌蹴させた着物を着直す。
……こいつ、俺がそんなこと言われたら悶々とすることわかっててやってるな。
恨みがましい視線を向けたら、何食わぬ顔でクスクスと笑われた。
結局、朝ごはんの間に妖夢が戻ってくることはなかった。
******
朝ご飯を食べ終えた後、寝室で幽々子と身体を重ね合った。
そのまま幽々子が疲れて寝たところで、身体を起こす。
「……寝れないとこういう時不便だな」
行為を終えた後なので疲れてはいるのだが、眠気というものがあまり来ない。そもそも瞼を閉じて、気を抜けば、あの光景が見えてしまって跳ね起きるのだから、眠気なんてあまり関係ないのだが。
どうせ寝れないのだから、少しぐらい片付けとかをしてもいいかもしれない。
シミだらけになったシーツとかの交換をしたりとか、幽々子の身体を拭いたりとか。
すぅすぅと可愛らしい寝息を立てる幽々子の身体を見ると、行為をした後もあって汗ばんでいた。このままだと風邪を引くかもしれない。亡霊が風邪を引くのか知らんけど。
とりあえず、部屋に居てもどうしようもなく、どっかの幽霊を捕まえてタオルの場所とかを聞いた方が良いな。
そう思って服を着て部屋を出た瞬間、運良く簡単にタオルとかの場所を知ってそうな奴にすぐ出会えた。いや、逆だ。運悪い。だって、妖夢だったから。
「……ら、らいかさん」
「……よう」
妖夢が俺の開けた襖の奥、部屋の中を確認して、顔を真っ赤して逸らした。
タイミング悪いな……。
「そ、その、やっぱり、ライカさんと幽々子様は、そういうことを……」
「……いや、まぁ、ところで、タオルとか替えのシーツとかの置き場所ってどこだ?」
あまりにも続けたくない会話だったので、返答は濁しつつ、すぐさま本題に切り替えようとする。
「それでしたら案内しますが……」
話しているけど一切視線を合わせてこない。
朝のことがあったせいか妖夢の態度がぎこちないなんてもんじゃなかった。
「いや、やっぱ、大丈夫だ。妖夢も忙しいだろうし、他の幽霊に当たる」
俺としてもそんな態度を取られていると気まずいので、逃げ出そうと背を向けた。
「ま、待ってください!」
そんな俺の右腕を妖夢が掴む。
振り向くと、妖夢は少し緊張した面持ちでこちらを見ていた。
「……私が案内します」
「……わかった。じゃあ、頼む」
そのまま先行するように歩き出した妖夢について行く。
ギシギシという音が二人分だけ響く。
……やっぱ違う幽霊でも探した方が良かったか?
なんの会話をしても地雷になる気しかしなく、結局無言のまま歩き続ける。
「ここです。……えっと、タオルはこれで、シーツは……」
タオルとかシーツの保管場所に着くと、妖夢とその半霊がタオルとシーツを取ってくれた。
「悪いな」
「いえ……」
そしてやっぱり無言。
「……じゃあ、俺は戻るから」
「……はい。わかりました」
これは暫くはギクシャクしたままになりそうだなぁ……。
どうしたものかと思いながら部屋に戻ろうとしたところで、再び妖夢に腕を掴まれた。
「……どうかしたのか?」
「いえ、その……」
振り返って尋ねると、掴んだ妖夢も困ったように視線を彷徨わせる。
そして、意を決したように口を開いた。
「後でいつもの庭に来てくれませんか?」
いつもの庭……。
そう言われて思いつく場所があった。妖夢がいつも鍛錬を行なっている場所。
「……わかった。用事が終わったら行く」
「はい。お願いします」
そして、妖夢が腕を離す。
何をするのかわからないが、わざわざ鍛錬場所を選んだということは話し合いではなさそうな気配はある。
ちょっと重くなった脚で部屋まで戻って襖を開けると、幽々子が不満そうにこちらを見ていた。
「……寝ている恋人を置いて、部屋から居なくなる?」
「思ったより早い目覚めだったな。ほら、タオル。汗とか拭きたいだろ」
幽々子の文句を無視しつつ、タオルを投げつけた。
それを受け取った幽々子はジト目を俺に向けつつ身体を拭き始める。
「それで、妖夢とは話せた?」
「……あの時点で起きてたのかよ。性格悪いな」
最初の文句も言ってみただけかよ。まぁ、全然気にしてなかったからいいけど。
「妖夢となら全くだよ。反抗期かねぇ」
「全く話さなかったの?」
「ボケを無視するなよ……。後でいつもの庭に来てくれって言われたよ」
「……へぇ」
少しだけ怪しい笑みを幽々子は浮かべる。
「それは私も見に行きたいわねぇ」
「……妖夢は嫌がりそうだけどな」
「酷いわねぇ。妖夢ちゃんならそんなこと言わないわよぉ。……けれど、今はまだ少し眠たいし、もう一眠りするわ」
言って幽々子は俺からシーツを受け取って、布団に横になる。
本当に見に行くと思ったのに意外だな……。
そう思ったら、瞼を瞑った幽々子が、ポタリと言葉を溢した。
「妖夢のこと、よろしくね」
幽々子のその言葉から、また面倒くさい展開になるのが確定してしまった。
出来れば面倒くさい展開というのは避けたいんだけどな……。
「……わかったよ」
けれど、愛しの恋人の頼みなら仕方ないため息を混じりに答えると、幽々子は小さく口元に笑みを溢した。
俺が庭についた時、妖夢は2本の刀を引き抜き、白い雪降り積もる上で空を見上げて立っていた。
そして、半霊がもう一本、日本刀を持っている。
「……ライカさん」
足音に気づき、妖夢がこちらを向いた。
「待ったか?」
「いえ、それほどでも。これを」
半霊が近づき、俺に刀を渡す。それを受け取ったところで妖夢が少し驚いたように息を漏らす。
「そういえば、ライカさん、左腕が」
「……再生したんだよ、今更だな」
「……色々とあって動揺してしまっていて」
気にかける余裕も無かったってことか。
受け取った刀を鞘から少しだけ出すと、模造品でもなんでもなく、正真正銘の日本刀だった。
「……それで、これは?」
「丸腰の相手を斬るのは流石に忍びないですから」
なんとなく予想していた展開ではあったが、予想以上に酷い展開でもある。
俺が弾幕ごっこを出来ないのを妖夢は知っている。その上で日本刀を渡されたということは、することは一つだった。
「……痛いのは嫌なんだけどなぁ」
「すみません。私にもよくわからないんです。でも、だから、斬ります」
妖夢から溢れ出す殺気。
幽々子との手合わせの時に浴びた殺気とは違う、斬り裂くような冷たさを感じさせた。
この後は知っている。話し合いなんて無駄だということを。
「……妖怪が鍛えたこの楼観剣」
妖夢が刀を構え、瞼を瞑って、小さく息を吐く。
「斬れぬものなど、あんまり無い!」
刹那、その小さな体躯を弾丸のように跳ねさせて距離を詰めた妖夢が、刀を俺目がけて薙ぎ払った。