東方淫魔伝 作:スイセン
早苗と博麗神社でのお祭りデートを取り付けて早数日。
ついにその日がやってきてしまった。
現在の場所は博麗神社の石段の前。
既に石段を上った境内では出店は開かれ、お祭りが開催されていることだろう。
『デートなんだから、やっぱり現地で集合しないと』
なんて言う諏訪子の謎の強い押しを断りきれず、早苗とは現地での集合となった。
同じ家から出ているのだから、一緒に出ればいいものを……。
現地集合をするために、朝っぱらから家を追い出された俺の気持ちにもなって欲しい。
暇だからと妖怪の山を散策すれば、射命丸文に出くわして、最近のことについて根掘り葉掘り聞かれるわ、逃げるように里の方に行けば、若い男どもに取り囲まれ早苗との近況を聞かれそうになるわ、といった感じで酷い目にあった。
文に関しては久侘歌が助けてくれ、里の男どもに関しては赤蛮奇が助けてくれた。
持つべきものは妖怪の友だと思う今日この頃だが、これを早苗に言ったらいい顔はされないことだろう。
嫌そうな顔をする赤蛮奇の家で茶を飲んで時間を潰し、今は約束の場所に少し早くに到着して待っているという状況だ。
流石は妖怪神社と言うべきか、交友関係が妖怪ばかりの俺にとっては見知った顔が石段を上っていくのが見えた。
幽々子や妖夢なんかも来ているみたいだし、お燐やアリスなんかも見かけた。
てか、さっきから見かけたの妖怪ばっかりだったぞ。里の人間とか来ているんだろうな……。
「ご機嫌よう」
不意に声をかけられて、ビクンと肩を跳ね上げた。それは驚いたというよりも、本能的な恐怖を思い出したからかもしれない。
振り返ると、白のカッターシャツに、チェック柄の入ったロングスカートとベストを見に纏った、日傘を持つ女性。
「あ、ああ。幽香か……。久しぶりだな」
風見幽香。四季のフラワーマスター。花を愛でる妖怪。
温和な笑みの下に悪魔のような恐ろしさを持ち、邪魔するものを滅ぼさんとする。
一瞬脳裏によぎった昔の嫌な記憶に、顔を引き攣らせながら返事をした。
「そうね。貴方が来ないと少し退屈だわ」
「……虐める相手なら他にいるだろ」
幽香は太陽の畑に出没しやすい。だから、あそこには行きたくない。
「ふふ、貴方は虐めがいがあるから」
優雅な笑みを浮かべる彼女。
幽香は特殊な能力を持っているわけでもない。花を操る程度の能力はあるが、それは戦闘には使わない。というより、使えるような能力ではない。
ただ、それでも彼女はひたすらに強い。妖力といい、戦闘センスといい、並みの妖怪では太刀打ち出来ないほどの力を保持している。
普段は穏やかな彼女だが、戦闘となれば情け容赦なく叩き潰してくるせいで、めちゃくちゃトラウマになっていた。
夢に出てきたら漏らすレベル。紫よりある意味恐ろしい。
今こうして話しているだけでも膝がガクガクと情けなく震えるぐらいだ。
「……んで、虐めに来たのか?」
「まさか。偶々見かけたから声をかけただけよ」
その言葉にほっと胸を撫で下ろす。
虐めに来たとか言われたら霊夢のところに泣きつく羽目になっていた。絶対に嫌な顔される。
「それにしても、幽香って祭りとか来るんだな。意外だった」
「そう? 私としては貴方の方こそ意外だったのだけれど」
「……まぁ、今日は特別なんだよ」
俺は飲み会とかもあまり参加しないからな。
早苗と一緒に他の妖怪たちとあまり会いたくないというのが強い。咲夜とかどんな顔して会えばいいかわからないし。
だというのに、そういう面子が揃いやすい博麗神社の祭りをデートとして選択してしまったことに後悔の念が押し寄せる。しかし、今更そんなことを言ったところで遅いわけで……々。
「あ、
少し遠く、背中側から俺の呼ぶ声がした。
その人物を見て幽香は目を細める。
「へぇ……、貴方は根を張る場所を見つけたのね」
幽香に釣られて俺も振り向いて見ると、俺の待ち合わせの人物、東風谷早苗がこっちに向かって飛んできていた。
「……そんな大したことじゃないだろ」
「ふふ、そうかしら? 面白いものを見せてもらったお代よ。あげるわ」
言って幽香が小さな小袋を投げて寄越した。中を見ると、種が入っている。
「私の魔力で育てた花が作った種よ。育てなさい」
「花を育てたことなんだが」
「枯らしたらどうしてくれようかしらね」
クスクスと笑う幽香。
花が枯れたら俺の命も枯らしてきそう。
「まぁ、出来る限り頑張るよ。ありがとな」
ヒラヒラと手を振った幽香は俺に背を向けると、石段を上っていった。
相変わらず何を考えているのかよくわからない妖怪だ。
けれど、昔のトラウマでもあると同時に、色々と大きな借りがある恩人でもある。だからこそ会いたくないんだが……。
貰った花の種を落とさないように懐にしまって、早苗がこちらに来るのを待つ。
俺のそばに着地した早苗。その表情は、少し不機嫌そうで、なぜか少し頬を膨らませていた。
「……彼女を待つ間にナンパですか?」
「んなわけないだろ。俺がそんなことすると思うか?」
まさかナンパなんて……。今日の赤蛮奇の家に行ったのはノーカンだよな? やましいことしてないし。友達の家に行っただけ。セーフなはず。
「どうでしょう? それに世の中には逆ナンという言葉もありますし」
「逆ナンって……」
本気か冗談か微妙に分かりづらい表情でそんなことを言う早苗。
「悠希さん、顔はカッコいいから女性人気高いし……、里でも悠希さんがいると女性の人が脚を止める割合高いんですよね」
「……気のせいだろ」
物凄く身に覚えがあった。一緒にお茶しませんかみたいなこと言われたことが何度かある。あれって逆ナンだったのか……。
「じぃぃ」と、わざわざ声に出して見つめてくる早苗。
疑われてるな……。
俺が女性関係で問題など、起こしたことあっただろうか。めちゃくちゃある。
なんなら、現在進行形で咲夜と浮気のような関係持ってしまっていた。
それに、早苗には話してないが、過去には色んな妖怪とも肉体関係を持っている。付き合うようになってからはそういうのは基本的に自重しているが。
これは、地雷だったな……。
渇いた笑いで誤魔化すことしか出来ない。
「と、ところで、浴衣着てきたんだな」
必死に話題を逸らそうと、早苗が来てから気になっていたことを口にした。
早苗はいつもの巫女服ではなく、緑色の着物を着ていた。アクセントのようにカエルとヘビのマークがついていて可愛らしい。
俺の言葉に早苗は疑いの視線を収め、小さく口を尖らせる。
「神奈子様と諏訪子様がどうしても着ていけって……」
グッジョブ神様。今度お賽銭でも入れておこう。お賽銭より酒くれとか言わないだろうな。
「……どうですか? 似合ってますか?」
もじっと少し照れたように早苗は感想を尋ねてくる。
「ああ。凄い似合ってるよ。めちゃくちゃ可愛い」
カメラあったら30枚近くは撮影していたぐらいは可愛い。
ちっ、河童に頼んでカメラ作成してもらうんだった。
俺の言葉に早苗は頬を緩ませると、嬉しそうにはにかむ。
「良かったです。それじゃあ、その、……デート、始めましょうか」
早苗はちらりとこちらを見て、手を差し出してきた。
その頬は赤く染まっていて、少し恥ずかしそうだ。
夜は色々とやっているけど、こういうデートとかあまりしていないせいで、こういうよくある恋人同士がする行動というのに未だに慣れてない早苗。
まぁ、俺も経験豊富というわけではないが。夜の経験の方が豊富なのはなんとも不純である。外の世界だったら信じられ……いや、外の世界でもそんなんだったわ。
彼女の手を取って、並ぶようにして歩き出す。
「ところで、どうして急にデートなんて誘ったんですか?」
石段を上ってる途中、早苗が唐突に問いかけてきた。
「前に言ったろ。早苗が普段頑張ってるからって」
「それ、嘘ですよね。諏訪子様が言ってました」
あいつ……、覚えてろ。
諏訪子が今の光景を想像してニヤニヤしている姿が目に浮かぶ。
「神様と彼氏どっち信じるんだよ」
「諏訪子様です」
「即答ですか。そうですか」
もう少し一瞬でも悩む素振りが欲しかった。
日頃の行いというやつだろうか。
俺がいつ早苗の信用を失うことを……した記憶しか無い。よく今まで別れられてないなと感心しちゃうくらいだ。
「それでどうしてですか? やっぱり私へのご機嫌とりですか?」
「……失礼なこと言うなよ。そんなこと微塵も思ってない」
俺の口ってば、なんでまぁこんなにもすらすらと嘘が出てくるのでしょうか。
詐欺師向いてるかもしれない。いや、無理だわ。早苗に訝しげに見つめられてるだけで冷や汗だらだらだし。
ご機嫌とりって可能性に気づいていたんだな。いや、気づくか。
「じゃあ、どうして?」
「そんなに気になるか?」
逆に聞き返してやると、こくんと真剣に頷かれた。
うーん……。ここで、実はご機嫌取りでしたなんて答えたら機嫌が斜めになるなんて誰にでもわかってしまう。
「早苗をデートに誘った理由か……」
なんて誤魔化したものかと思って足を止める。それに釣られて早苗も足を止めて不思議そうに俺の顔を見た。
不意打ちに握られた手をこちら側に引き寄せる。
「きゃっ!?」
驚いたように少し前のめりになる早苗を抱きしめて、素早くその唇を奪った。
「んんっ!? んっ……、ふ……んはぁっ……」
唐突なキスに混乱したような表情で顔を赤くした早苗。
「早苗とデートしたかったからじゃ、ダメか?」
自分でもどうなんだと思うくらいのセリフを吐いてみる。
なんて恥ずかしいこと言ってるんだという自覚はあるが、誤魔化すためには仕方ない。
もちろんそんなことは早苗だって気づいているだろう。だから、その文句が出る前にもう一度唇をキスで塞いだ。
「ん……ちゅ……、ちゅう……んちゅ……、ん……はぁ」
早苗の柔らかい唇の感触を感じながら、ぎゅっと少し強く抱きしめる。
女性らしい細く柔らかい身体と密着するようにして、長い長いキスをした。
そして、やっとのことで唇を離すと早苗は目を少し蕩けさせながら不満そうに口を開く。
「……ずるい」
「ズルと絡め手が得意分野なんでな」
抱きしめられる早苗は、口では文句を言いつつも、逃げる素振りは見せない。それどころか自らも俺の背中に手を回した。
一応、誤魔化せたのか……?
「……これはなかなかに面白い現場ですね」
カシャリと音を鳴らして不意に響く声。
見ると、いつの間にか石段の下の方に文が立っていた。
「守矢の巫女、博麗神社で秘密の密会……いえ、逢引?」
ふむと考え込んで手帳を取り出して何やら書き込んでいく。
唖然とした様子で文を見つめる早苗が徐々に再起動し始めた。
「……悠希さん、少し待っていてください」
一言だけ告げて、どこからか大幣を取り出すと文に向けて突っ込んで行った。
「金払え、このやろー!」
「……金払えばいいのか」
俺のツッコミなど気にした様子もなく、文と早苗は空へと飛んでいく。
綺麗な弾幕模様が日が沈み始めた空を鮮やかに染め上げていった。
早苗のことだから簡単には負けないとは思うが、折角の着物なのだ。出来れば着物がボロボロにならないことを祈っておこう。
少しして早苗は悔しそうにして戻ってきた。どうやら文は取り逃したらしい。
まぁ、この幻想郷において単純な速さで言うなら、文は最速だからな。逃げに回られたら捕まえるのはこの上なく難しいだろう。
逃げたということは、今度の一面は早苗と俺で決まりか。なるべく回収して火にくべるとしよう。手遅れだろうけど。
「動いたらお腹空いちゃいました」
お腹を抑えて、恥ずかしそうに笑う早苗。
「俺も朝に追い出されてから何も食ってないからなぁ……」
「そうなんですか? 里で何か食べれば良かったのに」
「そうしたかったんだが、色々とあったんだよ」
祭りに行くと分かってい無駄金を使うわけにもいかなかったのだ。別に里の男どもに取り囲まれるのを恐れて赤蛮奇の家に引き篭もっていたわけじゃない。
赤蛮奇の奴、ご飯くらい出してくれても良いのに、「あんたに出す飯は首ひとつ分ない」なんて言いやがって。
とは言いつつ、お茶だけは出してくれたので微妙なところで優しい妖怪である。
早苗は不思議そうにコテンと首を傾げたが、気を取り直したように俺の手を握って元気よく引っ張った。
「じゃあ、早く祭りに行きましょう! 屋台で何か食べれるでしょうし」
「そうだな。酒も飲めるし」
幻想郷の祭りの屋台では酒がよく提供される。
祭りとか言いつつ、半分宴会みたいなものだ。
「お酒、ですか……」
「気のりしなさそうだな」
「まぁ、あまり得意じゃないので」
のんべえが多いこの幻想郷において早苗は珍しく酒があまり得意な部類ではない。飲めないというわけではないのだが、すぐに酔っ払うのだ。
逆に俺は酒にめちゃくちゃ強い。化け物扱いされるレベル。文と張り合って飲んだ時は、床が一升瓶で埋め尽くされるほどだった。
「別に無理して飲まなくていいだろ。ジュースとかもあるだろうし」
てか、早苗の歳でお酒飲んでる方が外の世界的にはアウトな気がする。法律なんて存在しない幻想郷でそんな細かいことは言わんけど。
「まぁ、もし、酒飲んで潰れたら背負って帰ってやるよ」
「だ、大丈夫です! そんなに飲みません!」
そんなに飲まなくても貴女、酔い潰れることあるでしょ。家で飲んでいて何度俺に寄りかかって寝たことか。
別に嫌ではないのだが、男子的には大変なんですよ。理性を抑えるの。神様2人の前じゃなかったら間違いなく手を出してた。
「あ、屋台が見えてきましたね」
石段を上るのも終わり、神社の鳥居と屋台が見えてきた。
祭りということで日が落ち始めているのにも関わらず、境内は明るく照らされている。
境内での祭りということで、屋台の数はそこまで多くはない。ただ、良い匂いは既に漂ってきていて、胃を刺激してきていた。
「どこから行きますか?」
「とりあえず、酒飲めるとこが良いな。あとつまみも欲しい」
「飲む気満々ですね……」
当たり前だろ。そこに酒があって飲まない理由がない。
ざっと屋台を見渡して鳥居の一番近く、煮物の良い匂いをする屋台にてお酒が販売されていた。
そして、そこで販売している店主は俺のよく知る人物だった。
「いらっしゃいませー! 祭りに来るなんて、珍しいですね、悠希さん」
「よっ、美宵」
奥野田美宵。里にある居酒屋、鯢呑亭の看板娘。人里に潜む妖怪であり、座敷わらし。そして、最強の酔魔だ。
里にあまり行かない俺の数少ない知り合いでもある。
「悠希さん、えっとこの人は……?」
「鯢呑亭の看板娘の奥野田美宵だよ。何度か会ったことあるだろ」
「ああ! そうでした。どうして、忘れてたんでしょう?」
美宵を見て、不思議そうな顔をしていた早苗だが俺の紹介に納得したように頷く。
能力の特性上、美宵に関わる記憶や認識が曖昧になってしまうものだから、こうやって毎回のように俺から紹介する羽目になってしまう。
俺は自らの能力の影響でか、美宵の存在自体を忘れるということはない。
早苗を見て、そして俺を見て、またまた早苗を見てと、交互に顔に視線を向けた美宵は、目をパチクリと瞬かせると、にっこりと人懐っこい笑顔を向けてきた。
「今日は彼女さんと一緒にデートですか?」
「……まぁ、そんなところだよ。それより、鯢呑亭って屋台出すことあったんだな」
少しの気恥ずさに誤魔化すように話題を逸らす。
「前に一度出店した時に好評だったので、今回も特別に用意しちゃいました」
「まぁ、鯢呑亭の料理は美味しいからな」
鯢呑亭の煮物は酒に合うので行けば必ず頼む一品だし、他の料理もかなり美味い。
そんな鯢呑亭が屋台を出せば好評であるなんて想像に容易い。
「じゃあ、お酒と煮物一杯くれ」
「はーい。ありがとうございます! 悠希さんはお酒は一合升で良かったですか?」
「ああ。早苗はどうする?」
「私はそんなに飲めないです」
ぶんぶんと頭を横に振る早苗。
「じゃあ、早苗には一番サイズ小さい器で」
「かしこまりましたー」
明るく対応してくれる美宵に金を渡すと、煮物を器によそってくれ、酒樽から小さめのコップにお酒を注ぐ。
そんな様子を見ながら、こそりと美宵に耳打ちする。
「今日は早苗に悪夢見せるのは遠慮してくれ」
「……ええー」
早苗は酒が弱く悪酔いしやすいので、簡単に悪夢見せれることだろう。念のために忠告すると凄い残念そうな顔をされた。
「おい」
「ふふ、なんて、冗談です。大切な常連さんの彼女にそんなことしませんよ」
「……本当かよ」
美宵のそこだけは信用できないからなぁ……。
そもそも、俺は大切な常連というほど通えていない。
「はい、悠希さんどうぞ」
美宵が煮物と箸を渡してくれた。
「うわぁ、美味しそうですね!」
俺に手渡された煮物を見て早苗が期待のこもった声を漏らす。
確かに煮物は美味そうだ。ただ……、
「……なぁ、煮物の量、多くないか?」
頼んだのは一杯だった。そして渡されたのは一杯だが、並々と今にも溢れそうなくらい盛られていた。
「彼女さんと一緒に食べるんですよね? サービスしておきました」
パチンとウィンクしてくる美宵。
「悪いな」
「いえいえー、早苗さんもどうぞ」
「ありがとうございます」
早苗がお酒が注がれた小さめなコップを美宵がら受け取り、その後に俺の分の一合升に注がれたお酒も渡される。
「今度は店の方にも是非来てくださいね。
「はい。今度、伺いますね」
美宵の言葉に笑顔で返事をする早苗。対して、俺は少し顔を引き攣らせて答えた。
「……考えておく」
「むぅ……」
美宵にちょっと不満げな顔をされるが仕方ない。
昼間に行く分には構わないのだが、深夜に行くとなぁ……。
思い出される鬼と狸の影にぶるりと身体を震わせる。あの2人、なにかと苦手なんだよ……。
これ以上何かを言われる前に屋台から離れ、落ち着いて食べれそうな場所まで移動した。
煮物と酒を持ったままだと見て回りづらいし、一旦食べ切った方がいいだろう。
「悠希さん、待ってくださいよ。なんで逃げるみたいに離れたんですか?」
「……お腹空いてたから早く煮物食べたかったんだよ」
「本当かなぁ」
「ほら、早苗も食べるだろ。お酒持っててやるよ」
お酒を持ったままじゃ両手が塞がって煮物を食べれないので、早苗の持っていたコップと煮物の器を交換するようにして手渡す。
「そうやってすぐ誤魔化す……。でも、やっぱり美味しそうですね」
疑う視線を俺に向けてきた早苗だが、煮物の湯気と匂いに我慢しきれないのかそれ以上追求はしてこなかった。
「それじゃあ……」
割り箸を割って早苗が湯気の立つ煮物にふぅと息を吹きかけてから、一口頬張る。
「んん〜! 美味しいです!」
煮物を食べた早苗が顔を綻ばせて、幸せそうな笑みを浮かべた。
美味そうに食うなぁ……。
俺は酒を持ってるから食べることはまだ出来ないので眺めるだけだ。
パクパクと煮物を美味しそうに食べる早苗。凄いペースで煮物が減っていく。
「さ、早苗? 俺の分、残しておいてね」
「え? あ、ご、ごめんなさい! 美味しくてつい」
並々と盛られていたはずの煮物なのに、もう半分近く減っていた。
「いや、全然食べていいんだが、流石に少しは食べたい」
一口も食べれないとか悲しすぎる。
「そうですよね。じゃあ、はい、あーん」
「……あーんって?」
箸で煮物を摘んだ早苗が、俺の口元まで持ってきた。
「あーんって、あーんですよ。知っているでしょ?」
「それはもちろん知っているが」
あーんは知っている。知っているけど、ここであーんするの?
周りに普通に他の人というか妖怪いるんだぞ。視線とか気にしないのね。
早苗の声が聞こえたのか、足を止めた妖怪たちから好奇の視線を向けられてる。バカップルを見るような視線だ。
早苗ってばいつの間にこんな大胆な子に……!
流石に恥ずかしさを感じて戸惑っていると、早苗の頬がちょっと赤く染まっていることに気づいた。
「……恥ずかしいなら、やらなければいいだろ」
「べ、別に恥ずかしがってません! ほら、あーん!」
ちょっとやけになった早苗の気迫に押されて、おずおずと口を開くと、そこに煮物が運ばれる。
うん。美味い。美味いんだけど……、周りの視線が気になって味に集中出来ないぞ。
とりあえず、右手に持った一合升に満たされた酒に口をつける。そのまま、一気に半分近くまで飲み干した。
「ぷはぁっ! ふぅ……、落ち着いた」
やっぱり鯢呑亭の煮物は酒に合うな。
「またそんなに一気飲みして、身体に悪いですよ」
「いつものことだろ。それにこれくらいの量なら大したことない」
それに、飲まないと恥ずかしさに耐えられそうにない。
「……まだ、食べますよね?」
「まあな。……続けるつもりか?」
「だって、悠希さん両手塞がってるじゃないですか」
「いや、お酒を早苗が一旦持っててくれれば」
「はい、あーん!」
「話を聞けよ……」
早苗が無理矢理にあーんをしてくるので、そのまま何度も繰り返して煮物を食べていく。
最初の頃は周りの視線も気になったが、何度も繰り返すうちにそんなの気にしなくなってきた。
嘘。めっちゃ気になる。特に知り合いが通りかかった時とか心臓がキュッとなる。
そんな気恥ずさを誤魔化すために酒が進む進む。
すぐに一合升が空になってしまった。
「もっとデカいの頼めば良かったな……」
名残惜しく、空になった枡をひっくり返す。
「本当によく飲みますよね。神奈子様たちよりも強いなんて……」
「まぁな。俺は酔いにくいから」
「そんなこと言って……、顔真っ赤ですよ?」
こんな一合升程度じゃ飲んだうちに入らない。
けど、顔を赤いのはきっとお酒のせいだ。そういうことにしておこう。てか、そう言った早苗もお酒飲んでないのに顔赤いけどな。
不意にその顔が少し歪んで見えた。
「あれ……?」
「あっ、ちょっと、危ないですよ!」
ふらっときて立っていられなくなり、倒れそうになったところを早苗に支えられる。
なんだ……、なにが起きてる……?
本当に酔って……、いや、こんな一合升程度で……。
爆発音が響いた。
驚いて振り向くと、神社の周りを囲む木々から山のように大きな怪物が出現する。
ツノが生えていて、鋭利な牙を持っているそれはまるで物語に出てくる鬼のようで、
「なんだ、あれ……」
「え、悠希さん?」
愕然とする俺とは対照的に不思議そうな顔をする早苗。
早苗にはあれが見えてないのか……? いや、これは……。
一つこの状況を説明するにたることがあった。
一合升に注がれたお酒は全て飲んでしまっている。しかし、早苗のお酒はまだ残っていた。それを早苗の断りも得ずに一気に飲み干す。
「ぷはっ……!」
「ど、どうしたんですか!?」
「やっぱり、味が違う……!」
俺の行動を見て、混乱している早苗を横目に、鬼を睨みつける。
頭がズキズキと痛み初めて、まともに脳を働かせられない。
大きな怪物は手に金棒を持っていた。それを大きく振りかぶる。
激突すれば肉片すら残さずぐちゃぐちゃに潰されること間違いない。
建物ほどの大きさを誇る金棒が目の前にものすごいスピードで迫ってきた。
ぶつんと視界が暗転した気がして、ゆっくりと目を開けると早苗の顔が上にあった。
「大丈夫ですか? 悠希さん、急に倒れたんですよ。だから、一気飲みはいけないって」
ああ、これは膝枕ってやつか。柔らかいな。
目が覚めて頭があまり回ってない俺に小言をいう早苗。
ふらつく頭を振って身体を起こした。
「っぅ……、頭痛え……」
「はい。お水です。あと、これも」
起き上がった俺に早苗が水の入ったコップと粉薬らしきもの渡してくる。
「これは?」
「悠希さんが寝ている時に鈴仙さんが通って、二日酔いの馬鹿にはこれと水を飲ませろって」
「二日酔いの馬鹿ね……」
「二日酔いってよりはアルコール中毒の馬鹿ですよね」
「馬鹿を訂正してくれ。馬鹿を」
ちょっと文句を言いつつ、ありがたく薬と水を飲んだ。
これで、少しはマシになるか……。
「どれくらい寝てた?」
「30分ぐらいです。もう少し寝ます?」
「いや、大丈夫だ。それより悪いな。折角の着物だったのに」
俺を膝枕をしていたせいで、早苗の着物の裾部分は土で汚れてしまっていた。
「これぐらい気にしませんよ。それに汚れたおかげで気兼ねなく動き回れます!」
俺に気を遣わせないようにか、優しい笑みを浮かべる早苗。
その優しさのせいで余計に申し訳なさが込み上げてくる。
まだ少しふらつくが無理矢理に立ち上がった。こんなことで無駄に時間を潰すのも勿体無い。
「まだ休憩していた方が……」
「いや、大丈夫だ。怪我があるわけじゃないしな」
そう。怪我があるわけじゃない。
怪我なんて何一つ負ってない。ただ、二日酔いに似た気持ち悪さがあるだけだ。なぜなら、さっきの鬼の化け物も、迫ってくる金棒も全て幻覚だったのだから。
久しぶりに飲んだせいで気づかなかったが、早苗の酒と飲み比べることでわかった。俺が飲んだのは普通の酒じゃない。鬼の酒だ。
いくら酒に強いとはいえ、鬼の酒を飲まされては一時的に酩酊状態になる。そうなれば、美宵によって、幻覚を見せられてしまう。
思い返せば、美宵が俺の一合升に酒樽からお酒を注ぐのを見ていない。
一体、いつ恨みを買ったんだ? 覚えがありすぎて思い出せない。
後でクレームにでも入れに行こうか。
それにしても、やっぱり鬼の酒は強いな。まだ地面が歪んで見えて、ふらふらと視界が回って……、やべっ、倒れそう。
「ああっ! もう、だから、危ないですよ!」
再び倒れそうになった俺を早苗が受け止める。
「わ、悪い。もう本当に大丈夫だから」
「ダメです。もう少し休憩してください。これじゃあ、まともに歩けすらしませんよ」
叱るように強い口調で言った早苗は、俺の身体を押しとどめるように抑え込む。
気分が悪いせいで力が入らず、なされるがままに膝枕の姿勢に戻された。
どうやら引いてくれる気はないようだ。
「……休憩するから、この姿勢やめないか?」
「え? なんでですか?」
ほら、周りの視線とかさ。
こんなところで膝枕されながら寝るとか良い見せ物だ。
とはいえ、屋台から少し離れた木の影なのであーんの時に比べたら全然そんな視線も少ないのだが。
「ふふっ、悠希さんのこと撫で放題♪」
「やめろ。恥ずかしいだろ」
楽しそうに頭を撫で始める早苗。
やっぱり起き上がろうとするが、早苗の手がそれを許してくれなかった。
何気に力強いんだよな。妖怪退治をしているだけはある。
早苗の細い手が俺の頭を撫でる感覚がくすぐったくて、恥ずかしい。
そっちがその気ならと、俺も諦めて早苗の太ももの感触を堪能することにした。
浴衣の布越しでもわかる柔らかさの上で、優しく頭を撫でられながら横になっていると、どうしても眠くなってしまう。
その心地よさに、つい、うとうとと瞼を閉じそうになった。
「ねぇ、うちはそういう場所じゃないんだけど」
そんな時に唐突に、少し不機嫌そうな声が響いた。
閉じかけた瞼を開き、視界に赤い巫女服を捉える。早苗の巫女服と似たような形をしており、大きく脇の部分が開かれている。
「……霊夢か。おやすみ」
「こら、寝るな!」
「あはは……」
再び寝ようとした俺の頭に、びしっと手刀が叩き込まれた。
「何するんだよ」
「こっちの台詞よ」
ジトっとした視線を向ける霊夢。
彼女はこの博麗神社の巫女でもあり、この祭りの主催者だ。
「気持ち悪くなって休んでるだけだよ。後で、お賽銭入れておくから許してくれ」
「……それなら、いいけど」
ちょっと不満そうな顔はしたものの、お賽銭という言葉でなんとか納得はしてくれたようだ。
本当にそれでいいのか、博麗の巫女よ。
「悠希さん、すぐに飲みすぎるんだから気をつけた方が良いわよ」
「おい、まるで俺が酒のせいで気持ち悪くなったみたいに言うじゃないか」
「違うの?」
「……違わないけどよ」
「やっぱり」
呆れたように俺を見る霊夢。早苗ももっと言ってやれと言わんばかりに頷いている。
早苗はともかく、霊夢には言われたくない。お前もめっちゃ酒飲むだろ。
「休憩する分には構わないけど、あんまりイチャつかないでね。神社の評判が悪くなるわ」
「……博麗神社って元から評判良くないだろ」
なにせ、かの有名な妖怪神社だ。里の人間からしたら今回の巫女は仕事をちゃんとしてないなんて思われてたりするレベルだぞ。
「評判なんて今更気にしたところで意味なんか……」
「……何か言った?」
すっとお札を取り出してきた。
巫女が脅迫するなよ……。うちの彼女もよくやるけど。
「冗談だ。その物騒なものしまえ。お詫びにお賽銭多く入れてやるから」
「むー……、お賽銭入れれば私が許すと思ってない?」
「違うのか?」
「違うわよ! ……お賽銭は貰っておくけどね」
霊夢はお札を懐に仕舞う。
やっぱりお賽銭で機嫌直るじゃないか。
「早苗、そろそろ行くか。折角、祭りに来たのにずっと横になっているのも勿体無い」
それにこれ以上、ここでのんびりしてたら霊夢に更に文句つけられそうだ。
身体を起こして立ち上がる。
「もう大丈夫なんですか?」
「ああ。まだちょっとふらつくけど、大したことない」
「それは大丈夫じゃないんじゃ……」
少し心配そうな目を向ける早苗。
その手を取って、立ち上がらせた。
「じゃあ、手握っておいてくれ。転ばないように」
早苗は俺の言葉に一瞬、唖然としたようにした後で、首を傾げた。
「……酔ってます?」
「なんでそんな結論になった」
「だって、悠希さんからそんなこと言うの珍しいから」
そうだったか? うん。まぁ、確かにあんまり、というか滅多に言わないような気もする。
きっと祭りの高揚した空気にでも当てられたのだろう。
「もしかして、狸が化けて!?」
「それは驚愕な展開だな……」
「姿を見せなさい!」
この子は、本気で狸が化けてるとでも思ってるのか。
微妙なところで天然っぽい早苗に呆れつつ、彼女の肩に手を置いた。
そのまま引き寄せるようにして口づけする。
「んっ……!?」
「なっ……!」
突然の口づけに目を見開く早苗。霊夢の驚いた声も聞こえた。
「ほら、これで本物かわかっただろ」
マシュマロのように柔らかい早苗の唇の残滓を感じつつ尋ねると、顔を赤くした彼女は小さく頷いた。
「このキスは、悠希さんですね……」
「キスで本物だって判定されるのもどうかと思うけどな」
苦笑していると、近くからお札が投げられた。
ギリギリでそれを避ける。
投げられた方を見ると、顔を早苗よりも赤くした霊夢が不機嫌そうな顔をしてた。
「だから、ここでイチャつくなって言ってるでしょう?」
「……キスしただけって言ったら怒るか?」
「お賽銭、倍ね」
「わかったよ……」
「ふんっ!」
機嫌悪そうに霊夢は背を向けて行ってしまった。
まずったなぁ……。今度、お詫びに茶菓子でも持って行こうか。霊夢のことだから、ずっと怒っているなんてことはないと思うが。
「悠希さんやっぱり、酔ってるんじゃないですか?」
俺が渋い顔をしてるのを見てか、クスリと笑った早苗。
「酔ってなんか……」
いない。そう言おうとしたところで、祭りの中にレミリアと咲夜がいるのが見えた。
「げっ……!」
咄嗟に早苗の手を取って、祭りの会場とは反対側、木々に覆われた森の中に駆け出す。
「きゃっ! 急に走り出さないでください! どこに行くんですか!」
木の裏に隠れるようにして移動して、一息つく。
危なかった。咲夜単体ならまだしも、レミリアもいれば何を言われるかわかったものではない……。
幸いにも、レミリアにも咲夜にも見つかっていなかったようだ。
「ゆ、悠希さん?」
少し恥ずかしがったような早苗の声。
そこでようやく冷静になって今の体勢を見てみると、早苗のことを木に押し付けて壁ドンしているような状況になっていた。
「わ、悪い」
慌てて、早苗から離れる。
「い、いえ……。それで、急にどうしたんですか?」
「あー、えっと……」
咲夜とレミリアから隠れましたなんて言えないしなぁ……。
もし本当のことを言って、どうしてなのかと追求されれば面倒だ。それに、レミリアと咲夜がいる状態では祭り会場に戻ることも避けたい。
「うん。そうだな……、きっと、酔ってるんだよ」
「それは、どうゆう……んっ」
本日4度目となる口づけ。
早苗のことを木に押さえつけながら、その胸元に手を伸ばす。
「霊夢さんに……怒られますよ……」
「だから、人目につかないここまで移動したろ」
俺のこれからすることを理解して、早苗が頬を今までで一番、紅潮させた。
♡ ♡ ♡
悠希は右手で早苗の胸を鷲掴みにして、布越しでもわかる柔らかさを堪能し始めた。
「んっ……本当に、するんですか……?」
「嫌か?」
「嫌じゃないですけど……、外でなんて、恥ずかしい……」
誰かに見られるかもしれない、という思いが早苗を躊躇わせていた。
早苗は知らないが、悠希は咲夜と何度か外で行為に及んでいるため、外ですることにはあまり抵抗がない。
けれど、早苗が抵抗があるなら……と、その抵抗感を無くさせるために悠希は濃厚な口づけを行う。
舌を出して、絡め合い、口の中の互いになぞりあう。
「んっ、んんっ、ふぅっ……、んちゅ、ちゅぅ、れろ……るれろ」
彼氏の舌が口の中を這い回る感覚に早苗の体から少しずつ力が抜け始める。
浴衣の襟元が掴まれた。そして、ゆっくりと浴衣を肌蹴させられる。
「あっ……」
早苗が小さく声を漏らす。
浴衣を肌蹴させた下から見える、明るめの水色のブラジャー。実は今日のために新しく新調したものだったりする。
どんな風に見られているのか不安になってしまう。
子供っぽいって思われてませんよね……。
少し不安げな瞳で悠希を見ると、その思いを読み取ったように優しい笑みを彼は浮かべた。
「綺麗だよ」
一気に心臓の鼓動が早くなった気がした。
この人は本当にずるい。普段はそんなことを全然言わないのに、こういう時にはまるで当然のことのように、こんなことを口にするのだから。
再び口を近づけた悠希に答えるように、早苗からも口を近づける。
「んぁっ……んちゅ、ちゅぅ……れろ、るれろ、ちゅる……、ちゅぷっ」
息の続く限り長いキスをする。
悠希の両手が早苗の胸に触れた。
今度はブラジャー越しに胸を揉みしだかれる。悠希に揉まれるたびに乳房は形を変え、小さな快楽が早苗を襲ってくる。
「んっ、あっ、はぁっ……悠希さんの手つき、いやらしい……」
「いやらしく触ってるんだからな」
そう言って、彼の手が背中に回された。慣れた手つきで留め金を外される。そして、ブラジャーを上に持ち上げられた。
「んっ……」
外気に晒されたことで早苗はピクンと肩を震わせる。
二つの膨らみが、露わになる。暗い中でも、その肌の綺麗さがわかってしまうほどの美しさだった。
外で露出した恥ずかしさで、さぁっと鳥肌が立ち、つい咄嗟に胸元を手で隠そうとしてしまう。
しかし、それを拒むように悠希の右手が早苗の両手を掴んだ。そして、早苗の頭上の木に押し付けられた。
隠すことも許されない。
荒い息を吐く早苗は股間が潤うのを自覚してしまう。
私……、この状況に興奮してるんだ……。
「悠希さん、触って……」
恥ずかしいお願いだとわかっているのに、自らの欲求に堪えきれなかった。
小さく頷いた悠希が左手で早苗の胸元を直接鷲掴みにした。
「んんっ……あっ……」
頬を赤く染めた早苗が悩ましげな声を漏らす。
左手で早苗の胸を揉みつつ、口を早苗の胸の先端へと近づけて、舌を伸ばした。
「んぁっ……あっ、ああっ……」
乳輪をなぞるようにして舌を動かしたり、胸の突起に吸いつかれる。
襲ってくる快感に早苗は声を抑えられなかった。
誰かに見られるかもしれないという恥ずかしささえも興奮する材料となって、早苗の思考を奪っていく。
悠希の右手が、早苗の両手を押さえているせいで、なんだか強姦されているみたいに見えてしまう。
そんなことを意識したら、なぜか余計に興奮してきてしまう。
悠希が早苗の胸の突起を抓り、噛んだ。
「ひあっ!」
その瞬間、少し大きめの声で叫んでしまった。
視界が白く点滅する。
腰を震わせて早苗が口をだらしなく開け、涎が垂れた。
「あまり大きな声は出すなよ」
そんなことを言いながらも、悠希は再び乳首を甘噛みする。
「んあっ♡ む、無理です。我慢なんてぇっ♡」
両手は押さえつけられてる中で、こんなことするなんて、声を抑えさせる気なんてあるとは思えなかった。
続けられる愛撫に耐えきれず、早苗はガクガクと震え出す。
「誰かに聞かれるかもしれないぞ」
「い、いやです。でも、気持ちいいのがぁ……♡」
止まらない快楽の波に呑み込まれた早苗。
こんな状況での愛撫だからか、いつもより遥かに感じてしまっている。
小さい絶頂を繰り返しながら、早苗は愛撫を受け続ける。
「あぁ♡ んあっ♡ ひああっ♡」
波は収まるどころか、次第に強くなっていく。
既に浴衣の下のショーツはびしょびしょで、太ももに愛液が伝わり始めてるのがわかった。
最初に感じていた抵抗感なんて、もう全く無くなってしまっていた。
愛撫が終わった時には、早苗は度重なる絶頂によって力が抜けて、悠希のなされるがままになっていた。
悠希の右手が抑え込んでいた早苗の両手を解放する。
「どうする? 続けるか?」
「っ……」
悠希からの問いかけに早苗は身体を震わせた。
ダメだとわかっているのに、こんな場所でこんなことをしてはいけないと理解しているのに、胸の鼓動が治らない。
下腹部が疼いて、彼のモノが欲しくなる。
「……はい。続き、しましょう?」
早苗は悠希の首に腕を回して、彼を引き寄せた。そのまま熱い口づけをする。
「んっ、ふぅ……、んんっ……ちゅぅ、れろ、れろ」
ちゅるちゅると唾液を交換し、交わる舌と舌。
悠希の身体に、胸を押し付けるまで密着して深いキスを繰り返す。
脳の奥が痺れる感覚がして、どんどんと身体が奥から熱くなっていく。
悠希の首に回された腕を解き、自然と彼の下腹部へと伸びた。
「あっ……大きくなってる……えっちなんだから」
「えっちな早苗を見てたらな」
「私はえっちじゃないですよー」
そんなことを言いながら、早苗の手は悠希のズボンを下ろそうとしていた。
ズボンを下ろして、下着だけにさせると、早苗はかがみ込む。
期待するような視線を盛大に張られたテントを向けて、下着にも手をかけた。
「あはっ……、すごい……♡」
漏れ出る熱気と、硬く勃起した肉棒に早苗はうっとりとした様子で声を漏らす。
「……これでえっちじゃないって無理あるだろ」
悠希のぼやきすらも聞こえないほど、肉棒に集中した早苗は、口を大きく開いて肉棒の先端を咥え込んだ。
鼻につく雄臭い匂い。嗅いでいるだけで頭がクラクラとしてきそうだった。
「んっ……ふっ……れろれろ、んじゅ、れろ」
「ぐぅっ……」
漏れていた先走り汁を舐めとるかのように、丁寧に舌を這わせていく。
舐めれば舐めるほど溢れてくる先走り汁。
何度も身体を重ねた仲だ。
悠希がどこが弱くて、どれくらいで射精してしまうかなど早苗は熟知していた。
彼について自分以上に詳しい人はいないと自負している。
上目遣い気味に、肉棒を舐められて感じている悠希の顔を見つめながら、弱点を突くようして舌で刺激していく。
「んふぅ……んんっ、んちゅぅ……るれろ……きもひいいれふか?」
「あ、ああ……。気持ちいい、よ……うっ……!」
分かりきっている質問を投げかけると、律儀に答えてくれる。
頬を緩ませた早苗は更に深く、竿奥まで一気に咥え込んだ。
「あぁっ……!」
「んぐっ、んじゅ、じゅぷっ、れろ……んんんっ!」
喉奥に当たる肉棒の感覚。
今度は舌を絡みつかせるようにしながら肉棒を引き抜く。そして、また奥まで咥え込む。
顔を前後させるようにして何度も繰り返すと、彼の肉棒が震え出して、精液が少しだけ漏れる。
喉奥まで肉棒を咥え込むと苦しいのに、それが逆に気持ちいい。
「ぐっ……」
悠希から声が漏れた。
ゾクリとしか感覚と一緒に、口の中に粘り気のある液体が吐き出される。悠希の手が早苗の頭に置かれて、引き寄せられた。
「んぐっ……、んんっ、ぐっ、むぐっ……♡」
喉にへばりつく精液の感触に咳き込みそうになりがらも、早苗は懸命に飲み込み続ける。
身体の奥から熱くなって、子宮が疼く感覚があった。
射精が収まると早苗は精液を溢さないように肉棒から口を離す。
濃厚な匂いと味。
口の中に溜まった精液を咀嚼し、転がすようしてから、ゆっくりと嚥下した。
「んはぁ……♡ 口でも妊娠しそう……♡」
目を蕩けさせた早苗が、再び肉棒を咥えて、尿道に残った精液を吸い出した。
「はは……、えっろ……」
「悠希さんに言われたくないです」
誰のせいでこんな風になってしまったと思ってるんだ、という思いも込めて早苗が頬を膨らませると、悠希は誤魔化すような笑みを浮かべた。
悠希の手が伸びて、早苗の腕を取って立ち上がらせる。
「じゃあ責任取らなきゃな」
悠希の手が早苗の下腹部に伸びて、裾を大きく開かせて、浴衣の内部に侵入した。
大きく開かせた裾の間からブラジャーとお揃いの水色のショーツが見える。ただ、ショーツの綺麗な水色は愛液で濡れて変色してしまっていた。
「もうびしょびしょだな」
「んっ……、だってぇ……」
くちゅりと濡れた下着を触れられて、早苗はピクリと震える。
すっと下着越しに悠希の手が早苗の勃起したクリトリスを撫でた。
「んんっ!」
「早苗、さっき舐めてる間もこっそりイッてただろ」
「私、そんなにえっちじゃ、んあっ♡」
彼の手がショーツを掴み、太腿の中あたりまで下ろした。そして、今度直接クリトリスを掴み、優しくくにくにと揉まれる。
身体に電流が回るような刺激に、早苗は身体を仰け反らせて、また小さくイッてしまった。
「何回早苗とやってると思うんだ。早苗がイッてたかどうかなんてすぐにわかる。舐めながら、イッてたろ?」
「い、イッてなんか……ひぁっ♡ 刺激、つよ、いぃっ♡」
まるで早苗の嘘を糾弾するかのように、悠希からの責めは激しさが増していく。
「嘘つくなよ」
「う、嘘なんて、んああっ♡ ま、待ってくださいっ♡」
「早苗が本当のこと言うまで待たない」
「わ、わかりました、い、イッてました。イッてましたから、責めるのやめてぇ♡ んあぁっ♡」
恥ずかしい自分を認めたせいで、羞恥で身体が熱くなるのを感じた。
悠希からのクリ責めに容易く何度も達してしまう。
認めたというのに、悠希からの責めは弱くなるどころか激しさを増し、今度は膣内に2本の指を挿れられた。
「あっ、あっ、おぉっ♡ なんで、止めて……んおぉっ♡」
2本の指が膣内をかき混ぜながら、手のひらでクリトリスが押し潰される。
中と外での同時責めに早苗の口から下品な声が出てしまっていた。
「嘘ついたからお仕置き」
「そ、そんな、んああっ♡ おっ、おっ、んはあぁぁっ♡」
お仕置きなんて方便だ。
ただ早苗のことを責めたいだけというのが、悠希の加虐的な笑みに出ていた。
小さい絶頂の波が次第に大きくなり、早苗の身体中に耐えきれない快楽が流れ込む。
「あっ、あっ、んあああっ♡ んおっ♡ お、おほっ♡」
身体を何度も震わせて、潮を噴く早苗。
腰がガクガクと震えて、悠希に寄りかからないと立っていられないほどだった。
半開きの口からだらしなく舌と涎を垂らして、絶頂を繰り返す。
「だ、だめっ♡ これ以上はっ♡ んはぁっ♡ す、すごいのきちゃう♡」
もう限界が近いのに止まらない悠希の手。
「いいぞ。遠慮しないで」
「おっ、おっ、おっ♡」
視界が点滅し始めて、何も考えられなくなる。
耐えようとしていたストッパーさえ外れて、一気にダムが崩壊した。
「んはあああぁぁああっ♡」
大量の潮が噴き出される。
悠希の手を濡らすだけに飽き足らず、彼の脚にまでかかってしまう。
彼の手が膣内から引き抜かれると、力が抜けて緩んだ股間から小水が漏れてしまう。
「ああっ……んぁっ……、ふぁ……あはぁ……♡」
外で盛大にイッてしまったことに加えて、おしっこまで漏らしてしまったことで早苗は羞恥でどうにかなってしまいそうだった。
溢れる小水で地面に水溜りが出来る。
「あっ、はぁ……、はぁ……♡」
荒い息を吐く早苗が崩れ落ちないようにと、悠希がしっかりと抱きしめてくれた。
身体に力が入らず、悠希に体重を預けるようにして息を整える。
「ひ、酷いです……」
まだ身体が痺れる感覚は抜けていないが、少し落ち着いたところで早苗は文句を口にした。
「悪かったな。早苗が可愛い反応するから、つい」
そんな言葉で誤魔化されるほど甘くはないと早苗は思っている。
けれど、そんな思いとは裏腹に、好きな人から可愛いと言われて、どうしてもにやけてしまう頬が止められなかった。
「休憩するか」
早苗が疲れていることを慮った悠希の言葉。
「いえ、大丈夫です。それよりも……最後までしてください。責任取ってくれるんですよね?」
あれだけ盛大に達したにも関わらず、身体の疼きは治まっていなかった。
それどころか、より悠希のモノが欲しくなって、秘肉がヒクついてしまう。
「ああ。ちゃんと責任は取るよ」
悠希の手が早苗の太ももに伸びて、片足を上げさせられた。それと同時に開かれた花園から蜜が垂れ落ちる。
早苗が視線を下げれば、悠希の剛直が自らの秘所へと近づいてきているのが見えた。
入ってくる。
そう感じた次の瞬間、早苗の中を子宮の奥まで貫かれた。
「んああああっ♡ きたぁああ♡」
「ぐっ、早苗、声、大きい……!」
「らってぇ、む、むりれすぅ♡ んはあああっ♡」
悠希の愛撫によって完全に出来上がっていた膣内は肉棒を易々と咥え込み、大きな快楽を走らせる。
まだ挿れられただけだというのに、もう達してしまった。
「ああっ……、ひぐっ♡ ああっ♡」
「中が凄い蠢いて……」
射精を促すように締め付ける早苗の膣内に、悠希が堪えるように顔を歪める。
そんな悠希に早苗はキスをした。まるで、我慢なんてさせないように。彼の理性を溶かすかのように甘いキスをして、蕩けきった顔で囁く。
「悠希さん、好きです。大好きです。愛してます。だから、もっとください」
早苗からの告白に悠希は面食らったように、顔を赤らめた。それから、心を落ち着けるように小さく息を吐く。
「……悪い。手加減出来ないかもしれない」
「いいですよ。いっぱい来てください」
早苗の言葉が皮切りとなって、悠希が腰を振り始める。
「おっ、おっ、ああっ♡ 悠希さんのが奥に当たってる! い、いく、また、いっちゃう!」
膣内を往復する大きく太い塊。
子宮に叩きつけれる感触に、次から次へと愛液が溢れ出してしまう。ぐしゅぐじゅと卑猥な水音を立てながら、掻き混ぜられる。
「今日の早苗、エロすぎだろ……」
「だ、だってぇ……、こんなところで、こんなえっちなこと……♡ んんっ、あっ、だ、ダメってわかってるのに、気持ちいいのぉ♡」
外でしかも博麗神社の境内の近くの森という環境のせいで、普段以上に興奮して、感じてしまっている。
涙や涎で、顔がぐしょぐしょになっている自覚があった。
けれど、今更、体裁なんてどうでも良かった。
悠希が求めるように奥を突いてくるだけで幸せで、更に快感が増していく。
「あっ、あっ、はああぁっ♡ んああっ♡」
イキすぎて立っていられない。
悠希の首に手を回して、身体を預けるようにして安定させる。
悠希の胸板に自らの乳首が擦れる感覚があって気持ちいい。
膣内で先走り汁と愛液がドロドロに絡み合う感覚があった。
ヌルヌルになった膣内に抽送の速度が上がる。
悠希の肉棒が膨らむのがわかった。射精が近いのだ。
「早苗の締め付けが凄すぎてすぐにイキそうだ……!」
「んはぁっ♡ 今、出されたら絶対、孕んじゃいます♡」
子宮が降りきっているのがわかる。彼の子種汁を受け入れる準備を身体がしていた。
早苗はぎゅっと悠希にしがみつくようにして、腰を押し付ける。
「出してください♡ 欲しいです、貴方との子供!」
「なら、出すぞ。孕ませるつもりで!」
「はい♡ 奥にいっぱい注いでください!」
「ぐっ! 出るッ!」
「んああああああああっ!」
強く抱きついたまま、早苗は顔を仰け反らせた。
あまりの衝撃に何も考えられない。頭が真っ白に染められる。
子宮の奥に大量の子種汁が注ぎ込まれる感覚だけがわかった。
「おおっ♡ おおおっ♡ んおおおっ♡」
大量に潮を噴きながら、最後まで精液を搾り取ろうと膣内が伸縮する。
膣内で脈打つ肉棒を感じながら、早苗は限界を超えて意識を手放した。
♡ ♡ ♡
「んんっ……、悠希、さん……?」
早苗が目を覚ましたのは、守矢神社まであと少しのところだった。
「起きたか。大丈夫か?」
「はい。力が入らないですけど……」
身体の怠さを感じているようで、早苗の声にも覇気がない。
「もう少し寝てろ。あとちょっとで神社に着く」
行為が終わった直後に、早苗から突然力が抜けたから驚いた。
外で寝かせているのもあれなので、身なりを整えて、俺が背負う形で守矢神社まで飛んで帰っていた。
「結局、祭りはあんまり楽しめなかったですね……」
ポツリと早苗が呟く。
たしかに、祭りで行ったのは鯢呑亭の屋台だけだ。
他にも八目鰻の屋台とか、 清蘭屋とかもあったので見れなかったのは少し残念だったりする。
けれど、まぁ、
「……別にいいだろ。これが最後でもないんだ。これから、何度でも行けば」
夜空を飛びながらそんなことを口にすると、後ろからの返答がない。
また寝たのかななんて思ったら、ぎゅっと強く抱きつかれた。
「……早苗、飛びづらいんだが」
「ごめんなさい」
「と言いつつ、抱きつくのはやめないんだな」
「だって、えへ、えへへ……」
顔は見えないが、きっと凄い緩んだ顔をしているんだと思う声だった。
「悠希さん、約束ですよ。また、行きましょうね」
「……はいはい。約束、な」
今後こそ本当に返答がなかった。
少しして、スースーと寝息が聞こえてきた。
言うだけ言って寝るのかよ。
ちょっと苦笑しつつ、彼女を起こさないように飛ぶ速度を落とすのだった。
次回から本編に戻ります。