東方淫魔伝 作:スイセン
大きな爆発音が響きわたる。
莫大な熱が放出されて、全てのものを溶かそうと、熱の塊が膨張していった。
「アハハっ! フュージョンしちゃえっ!」
灼熱地獄に住まう地獄鴉、霊烏路空。お空は無邪気な子供のような笑みで、次々と莫大な熱を生み出していく。
核融合炉が壊れない程度に加減はされているが、常人どころか並みの妖怪では耐えきれない温度。
その中心に1人の人影が退屈そうに立っていた。
白い素肌に髪の毛、真っ白な着物。まるで、そこだけ色が抜け落ちたかのような出立ち。
自らに降りかかる莫大な熱の塊を気にした様子もなく、つまらなそうに欠伸を漏らす。
「ふぁぁっ……、相変わらず芸がねぇな。もう少し火力上げれねぇのか。こんなんじゃ、サウナにもならねぇ」
「むー……!」
男の態度にお空は頬を膨らませて不満そうにすると、右腕に装備された制御棒を頭上に掲げて力を込めた。
「それなら、こうダァァッ!」
先程とは比べものにはならない大きな熱の塊が生まれ、膨らみ始める。
あまりの火力に核融合炉内に警報が響きだした。
「……馬鹿、さとりに怒られるだろうが」
地霊殿の主、古明地さとりにやり過ぎと言われる未来を想像して、男は苦虫を噛み潰したような表情をすると、右手に魔力を込める。
「吹っ飛べぇぇッ!!」
お空が腕を振り下ろすと同時に熱の塊が男に向かって落ちてくる。
逃げ場のない超広範囲攻撃。加えて、着弾すれば、この施設に大規模なダメージを与えることは間違いなかった。
その熱塊に向かって男は飛び出して、右手のひらを突き出した。
男の手のひらに熱の塊が触れる。
その瞬間、弾けるように熱が消し飛んだ。
「そこそこの熱だったな」
強力な熱の塊を受け止めた男の右手は火傷一つ負った形跡もない。それどころか、汗一つかいていなかった。
そんな様子を見て、お空は落胆する。
「ダメかぁ……、あれ……?」
視界がぼやけたのをお空が認識したところで、飛ぶ力を失って落ち始めた。
それを見た男は飛び上がって、落下するお空をお姫様抱っこの形で受け止める。
「チッ、力を使い過ぎだ」
「ん〜……、ごめんなさい……」
男は面倒臭そうにしながら、お空を抱えたまま地面に着地した。
「ほら、降りろ」
「いや。もう少しこのまま」
「あぁ?」
ぎゅっとお空の方から男に抱きつき、心地良さそうな表情を浮かべる。
「重いんだよ。降りろ」
「あー! 女の子に重いって言ったー! さとり様に言いつけてやる!」
腕の中で暴れ始めるお空。
「うるせぇよ。勝手に言ってろ」
「んひゃっ!?」
腕を離すと、尻餅をつくようにお空が地面に落下して、小さく悲鳴を漏らす。
「いたた……むー!」
膨れ面になるお空を無視した男は疲れたように地面に座り込んだ。
(結構、保つようにはなったな)
右手に溜まる熱量を感じつつ、身体に纏う魔力を弱める。
その瞬間、男の意識の外、背後から少女が抱きついた。
「随分と派手にやってたねー。綺麗だったよー」
小学校高学年ほどの見た目。帽子を被った少女のもっとも特徴的な部分は身体から伸びるコードのような線とそこに括り付けられた閉じられた瞳だ。心を読むことを辞めたさとり妖怪、古明地こいし。
人懐っこい笑顔をしつつ、当たり前のように男の肩に顎を乗せる。
「あ、こいし様!」
主人の妹の姿にお空は顔を綻ばせた。それとは対照的に男は顔を顰める。
「……暑い。離れろ」
「力使いすぎたでしょ? 良いことしよ?」
男の言葉なんて気にした様子もなく、身体を押し付けてきた。
柔らかい感触が背中に当たって、花のような香りが鼻腔をくすぐる。
「良いことってのは……、その背中に隠し持った包丁が関係してんのか?」
「……あれ? なんだー。バレてたんだー。よっと!」
こいしは自然な動作で包丁を横薙ぎした。
首を狙った一撃。避けようがなく男に直撃する。
「……余計な魔力使わせんじゃねぇよ」
「やっぱり、硬いねー! おもしろーい!」
当たった筈の一撃に対して、傷ひとつ負わない男の身体にこいしが楽しそうにはしゃぐ。
その少女の腕を掴み、引き込むようにして床に組み伏せると、男は無理矢理に唇を奪った。
「んっ……ちゅ……、ふっ……、はぁ……」
「使った分の魔力は回収させてもらうからな」
「うん。良いよ。気持ちいいことしよっか」
誘うように妖艶に笑って頷いたこいし。
その服に手を伸ばして、無理矢理に肌蹴させる。
幼い身体つきにしては少し膨らんだ胸。融合炉の熱気によってか少しだけその皮膚が汗ばんでいた。
「あー、私もー!」
行為を始めようとしたところでお空が飛び込んできて、男に背後から抱きつく。
「暑い。鬱陶しい」
「温度下げるー?」
「そういう意味じゃねぇよ」
「お空も一緒にやろー。皆んなでやった方が楽しいよ」
こいしの誘いにお空は嬉しそうに頷くと、自ら服のボタンを外して、胸元を肌蹴させた。
大きく柔らかい膨らみを直接男の背中に押し付ける。
「魔力不足だったろ。気絶しても知らねぇからな」
「心配してくれるの? ありがとー!」
小さく舌打ちした男は抱きついてくるお空の腕を払い除けると、お空と向き直った。
「ほら、舌出せよ」
「んっ……、ちゅっ、んちゃっ……ちゅぷっ、ちゅぅ、れぇ……」
舌を合わせて、貪るようにキスを開始し合う2人。
男の右手がお空の胸に伸びて、鷲掴みにすると、ゆっくりと揉みしだき始めた。
「んぷ、れぇれろ……んん、んふっ、お兄さんとのキス、気持ちいい……んちゅぅ……ちゅぅ……」
胸への刺激に小さく身体を震わせながら、キスに熱中するお空。
互いに舌を絡めあって、粘液を交換し合う。
不意に下腹部に触れられた感覚に、男が視線だけを下に向けると、こいしが男の股間を弄っていた。
「おい、手癖悪いぞ」
「んー? お兄さんのこっちがいじって欲しそうだったから」
そう言うなり、こいしはズボンを下ろして男の肉棒を露出させると、躊躇なく口に咥えた。
「んちゅっ、れろ……るれろ、れろ……、んれろれろ……ちゅぅっ、んっ、んっ……んはあっ、大きくなってきたね」
小さな唇を肉茎に這わせつつ、こいしは自らの秘部に手を伸ばして自慰を始める。
舌を使って舐め上げつつ、吸引や吸着を繰り返した。
その刺激に肉棒が大きく、硬く、勃起していく。
「ちゅぽっ……んちゅ、それじゃあ、いただきまーす」
怪しく笑ったこいしは一気に喉奥まで肉棒にむしゃぶりついた。
小さい口内にいっぱいに詰め込んで、ぐぷっぐぷっと卑猥な音を立てながら何度も肉棒を喉奥まで滑らせる。
「容赦なしだな……」
「んぐっ、んくっ……、気持ちいーい?」
「ねーえ、もっとキスしてー」
こいしの問いには答えず、男はお空との口づけを再開した。
甘えるように男に抱きつきつつ深いキスをするお空。
「んぅ……ちゅぅ、んちゅる、れぇ、れろ、んちゅ、んひゃぁっ!?」
不意にお空が驚いた声を上げた。
胸を揉んでいた男の右手がいつの間にか、お空のスカートの中へと侵入していて、秘部をなぞり始めていた。
「あぁっ、ひあっ、んんっ! そこっ、だめぇ……!」
「ダメって言いながら、身体押し付けてきてんじゃねぇよ」
男の人差し指と中指が秘裂の内部に侵入する。
膣の内側の掻き混ぜるようにして、指を動かし始めた。
「ああっ、うっ……あはあっ……身体が熱くなっちゃう……」
身体を跳ねさせながらお空は、強く男の身体を抱きしめる。
その秘部から止めどなく愛液が垂れ落ちていた。
「んじゅっ、んぶっ、んぐっ……暑くなってきたねー」
肉棒を舐めていたこいしがそんな感想を漏らす。
その言葉通り、お空の興奮に比例するように融合炉内の温度も上がっていた。無意識に能力を使ってしまっているようで、お空は気づいた様子もない。
「ちっ、ゆっくりしてたら焼け死にそうだな」
「んあっ、ああっ! もう!」
男はこいしの頭を掴み、無理矢理に肉棒から引き剥がす。それで少し不満そうなこいしの声が聞こえるが気にした様子はない。
お空の体勢を変えて、彼女を後ろから抱き寄せるようにすると、スカートの中の秘裂に肉棒を当てがった。
そのまま一気に腰を打ち付けて、お空の膣内の奥に肉棒を叩きつける。
「ああっ……あああっ! 奥、来てるぅ……!」
肉棒をお空の腹側、彼女のGスポットに擦り付けるようにしながら突き込む。
「んあっ、ああっ! ひあっ、ああっ! んあああっ! これ、馬鹿になっちゃう……!」
ここぞとばかりに後ろからお空の胸も両手で揉みしだきつつ、一気にピストンを加速させる。
「くっ、暑すぎる……!」
のんびりなんてしている暇はなかった。
お空の膣内が熱く蕩けるほど、融合炉の熱も上がっていく。
「んはあああっ♡ もっと熱くさせてッ♡ もっと気持ちよくッ♡」
「これ以上はこっちが死にそうなんだよッ!」
ついには警報すら鳴り出した。
あれだけ大きな灼熱の塊を生成して魔力切れになっていたというのに、どこにこれだけの力が残っていたのか。
融合炉内に交合のクラップ音を響かせつつ、男は手に魔力を込める。
「ああっ♡ あああっ♡ んあっ!?」
嬌声を漏らすお空の口の中に右指を突っ込んだ。そして、舌を引っ張り出す。
「んあっ、ああっ、くひ、らめぇ♡」
「うるせぇ。少しは冷めてろ」
舌を引っ張り出されて、唾液を垂らすお空の身体から力が抜け、立っていられないのか、膝がガクガクと震え始める。
それを無理矢理、左腕で強く抱くようにして支えつつ、降りてきていた子宮に向けて、渾身の一撃を叩き込んだ。
どぷっ! びゅるっ! びゅるるるっ!
「ああああああああっ! イグッ! イグッ! イグイグイグッ! 熱いが……いっぱい流れてきて……! いぐううぅぅぅ!」
お空の股間から、ぷしゃぁっと小水が噴き出され、その身体の力が完全に抜ける。
お空の身体を抱き止めていた腕を退け、身体を解放すると地面に倒れ込んだ。大量の熱濁を注ぎ込まれたお空の秘裂からは、中出しの余韻が溢れ出してきた。
「だから、気絶するって言っただろ」
完全に意識を失ったお空を見て、男がそんなことをぼやくと、その首元に手が伸ばされる。
「ねーえ、次は私の番?」
背後から抱きついたこいしが、耳打ちしながら身体を預けてくる。
「要らねぇ。十分、魔力補給は出来た」
「えー、けど、私は準備万端なんだけどなー」
男とお空の交わりを見ていたこいしは、ひっそりと自慰を行っており、その股間は既にトロトロになっていて、男のモノを受け入れたがっていた。
「良いことしてくれるって約束でしょー?」
「そんな約束した覚えねぇよ」
「えー、そうだっけー?」
可笑しそうに笑うこいし。
その無邪気な笑顔を見た瞬間、男が顔を歪ませた。
『悠希さん、約束ですよ。また、行きましょうね』
脳内で反芻する約束の声。
遥、彼方に追いやったと思い出。
酷い激痛と、襲ってくる吐き気に耐えきれず、咄嗟にこいしから離れると、地面に胃酸を吐き出した。
「大丈夫?」
「はぁはぁ……、なんで今更……」
心配そうに見てくるこいしのことなど気にかける余裕なんてなく、焦点の合わない目で融合炉から見える空を見上げた。
全てが朧げな記憶の中で笑っていた少女の顔を思い出せない。彼女の名前は知ってるのに、一緒に居たという実感がまるでない。
あまりにも長い年月の中で風化してしまった大切だった筈の思い出。
「クソがッ……」
悪態をついた男はこいしのことを押し倒す。
「どうし、んむっ! んちゅ、ちゅぷ……! んんっ!」
こいしと口づけをし、その蜜壺に手を伸ばす。男は嫌なことを忘れるためだけにこいしとの行為を開始した。
その折、
「早苗……」
小さく呟かれた、乾いた言葉は誰の耳にも届かず、灼熱の融合炉の中で、すぐに溶けて消えていった。
* * *
「んん……、ん……」
息苦しさを覚えて目を覚ます。
柔らかいものが顔に押し付けられてた息がしづらい。てか、この柔らかさは……。
薄く目を開けて状況を確認すると、想像通り、幽々子の幸せの塊が顔面に当たっていた。
幽々子の腕が俺の頭を回されて、抱きしめられているようだ。
……息苦しいけど、なんだこの安心感。
押し付けられてるせいか、幽々子の胸がいつも以上に大きく見える。
自らの欲求に従うように両手で幽々子の胸を掴んだ。
「んっ……」
小さく幽々子が声を漏らす。
うわっ、すっげぇ……。手から溢れ出るほどのボリューム。
むにゅむにゅとその大きさと柔らかさを堪能する。
「ん……ふっ……」
色っぽい声。ぎゅっと更に強く抱きしめられた。
やべっ、く、苦し……。
なんとか離れようともがくと、その拍子に、幽々子の寝巻きの襟がずれて、胸元が大きく露出される。
透き通った綺麗な肌に、ピンク色の突起。
胸が一際大きく脈打った。
普段、行為をする時に見ているとはいえ、寝ている幽々子のこんな無防備な姿はいつもとは違う風に感じてしまう。
おずおずとその胸の突起を口に咥えた。
「んんっ……」
胸への刺激に幽々子は小さく声を漏らすと、薄く瞳を開けた。
そして、ばっちりと俺と目が合う。
おい、睡姦って起きないものじゃないのかよ。めっちゃすぐに起きちゃったぞ。
俺を見た幽々子は何故か少し驚いたように目を見開いて、クスリと笑う。
「随分と可愛らしくなったわね」
「んぁっ? 何を言って……」
「気づいてないの? 貴方、子供になってるわよ?」
「は?」
そういえば、やけに幽々子が大きく見えたような……。
慌てて、自らの身体を見てみるとたしかに、子供、それも小学校低学年ほどとしか思えない身体つきになっていた。
「はあぁぁあああっ!?」
遅れて、俺の絶叫が響き渡る。
「な、なんですか、今の声は!? お嬢様、無事ですか!?」
俺の絶叫を聞いて、妖夢が刀片手に部屋に駆け込んできた。
「あら、妖夢、おはよう」
「おはようございます。って、え? 幽々子様、その子供は……」
それから、俺の状況を見て固まる。
「ふふ、どうやら、随分と面白いことになったみたいなの」
クスクスと笑いながら、俺の頭を撫でて胸に押し付けてくる幽々子。
く、くそ……、子供化して、体格だけでなく、精神も幼くなっているのか、この母性の塊から逃げられない……! そう。子供化したせいだ。普段からこんなことしたいなんて、ちょこっとしか思ってない。
混乱する妖夢に、楽しげな幽々子。そして、頬を赤らめつつ、幽々子の胸に埋もれる幼くなった俺となんとも慌ただしい朝だった。
場所を移動して居間。
妖夢が熱いお茶を淹れてくれ、状況整理を行おうとしていた。
うぅっ……、子供化したついでに猫舌にもなってやがる。熱くて飲めねぇ。
ふーっ、ふーっと冷ましながらゆっくりと飲んでいると、幽々子の手が俺の頭に伸びた。
「ふふふ、可愛いわねぇ〜」
「……笑いながら俺の頭を撫でるのやめてくれ」
今の俺は幽々子の膝の間に座らさせられている。
なんでこんなところに座っているんだと言いたいが、幽々子に「まあまあ」と繰り返されているうちにこんなところに座ってた。
まあまあって怖い。
幽々子の対応が、まるっきり子供扱いなのが不服ではあるが、逃げ出そうという気持ちが湧かないので困る。自分の欲求に素直になりすぎてる。これも幼くなった影響か……。
「本当に可愛いですね〜。肌ももちもちで……」
むにむにと妖夢が俺の頬を揉みしだき、頬を緩ませる。
「……なぁ、いつまでやってるつもりだ?」
状況整理が一向に始まらないので、俺から声をかけると、はっとしたように目を見開いた妖夢がこほんと咳払いする。
「そうでした。幽々子様、それで、これはどうして起きたんですか?」
「さぁ?」
「さぁって……」
「だって、わからないもの〜」
幽々子にも分からない……。
これ実は結構、深刻な事態なんじゃないだろうか。
あ、こら、だから頭撫でるのやめろって。落ち着いてきちゃうだろ。
「う〜ん。でもそうねぇ、これは想像だけど、能力の代償じゃないかしら?」
「能力の代償?」
「貴方、無茶な能力の使い方をしなかった? その反動で生きてきた年数を自ら喰らってしまったって、ところだと思うのだけれど」
「無茶な能力の使い方なんて……」
なんて言って、思い出した。
あれ、そういえば俺って妖夢と庭で闘って……。
「あれかぁ……」
「どうやら、思い当たる節があったみたいね」
なんで忘れていたんだという感じではあるが、間違いなくあの時間を喰った一撃が原因だろう。
てか、あんなことがあった後だというのに、妖夢の様子が普通すぎるものだからおかしいのだ。
「ライカさん、それで原因はなんなんですか?」
首を捻る妖夢。
やはりおかしい。妖夢ならあの時間を喰った俺の能力を見たはずだ。
だから、同じ解答に辿り着いてもおかしくはないというのに。
「……なぁ、俺が妖夢と闘ったのっていつだ?」
「え? 急にどうしたんですか? 2週間も前のことを」
「2週間っ……!?」
つまり俺は2週間も寝込んでいた? いや、この2人の反応を見る限りそれは無い。俺が2週間ぶりに目覚めたとは思えない反応だ。
けれど、俺の記憶は妖夢と闘ったところで途切れている。ということは導き出される答えは一つだった。
「また、記憶喪失かよ……」
今回は随分と長い期間の記憶が一気に消えてしまっている。
その間になにがあったのか全く思い出せない。
「原因は多分、2週間前の時間喰ったやつのせいだな」
「そんな前の出来事がなんで今更……」
「んなこと俺に言われてもなぁ……」
そんなこと俺が知るわけがない。自分の身体のことではあるが、きっと紫とか幽々子の方が詳しいぞ。
「これって元に戻るんでしょうか?」
「大丈夫じゃない? 知らないけど〜」
「随分と適当な解答だな……」
「ふふっ、私はこのままでも構わないからね」
柔らかい笑みで撫で撫でをしてくる幽々子。
くっ、この状況楽しんでやがるな……。
「それに戻らなくても精々、10年程度また生き直すだけよ〜」
「10年って物凄く長いんだが……」
「桜餅を楽しんで、スイカを楽しんで、キノコを楽しんで、鍋を楽しむ。それを10回繰り返すだけよ」
これだから、寿命があるのかないのか分からん妖怪は……。時間感覚がズレている。てか、食べ物ばっかだな。
ただ、時間が経てば元に戻るという確信はあった。前にアリスがロリ化した時のことが思い出せる。
あの時もきっと俺の能力が暴走した結果、アリスの生きてきた年数を喰らってしまったのだろう。あれが元に戻ったのだから、今回も元に戻るに違いない。最悪、10年また生き直すだけだ。
「……ライカさん」
不意に俺の名前を呼んだ妖夢は、やけに真剣な表情でじっと見つめてきた。
「……なんだ?」
ちょっと嫌な予感がしつつ尋ね直す。
「ちょっと、お姉ちゃんって呼んでみて貰っていいですか?」
「なんでだよっ!?」
何を真面目な顔でアホなこと言ってるんだ、この子は!
「いいじゃない。呼んであげれば。私のこともお姉さんでいいわよ〜」
「さらっと自分も呼んでもらおうとするな」
「ほらほら、むくれないの〜」
撫で撫でからのぎゅーっと抱きついてくる。
こいつ、子供扱い方わかってやがる……! なんか幸せな気持ちが溢れてきて止まらない!
「……妖夢、お姉ちゃん」
小っ恥ずかしい呼び方ではあったが、思ったより抵抗はなかった。これも精神が幼くなってる影響か。
そして、呼ばれた妖夢といえば、一瞬固まり、それから目を輝かせた。
「幽々子様、この子、うちの子にしましょう!」
「何言ってるんだお前は!」
「怒らないでください。ほら、飴ちゃんあげますから」
「だから子供扱いを……、んっ、美味しい……」
妖夢がポケットから出してきた飴を食べさせられて無理矢理に黙らされる。ついでに、幽々子に代わるように妖夢も抱きついてきた。
すらりとした凹凸のない体型をしている妖夢だが、抱きつかれると、女の子らしい柔らかさを感じる。
うわっ、めっちゃ良い匂い……。
鍛錬とかで汗をかくから、匂いとかには気を使ってるのかもしれない。
ふわりと漂う匂いと妖夢の温かさに包まれて、頬が緩んでしまう。
「ふふっ、随分と幸せそうな顔ね」
「はっ……! は、離れろっ!」
危ない……。プライドとか男の尊厳とかその他諸々を全部捨ててこの家の子になろうと思ってしまうところだった。
「えー……、もうちょっといいじゃないですかー。ほら、良い子良い子」
「いや、だから……」
あー、頭撫でられると何も考えられなくなる。
本能が抑えられなくて、妖夢にぎゅっと抱きついてしまった。
そんな俺を見てクスクスと笑う幽々子に、顔を緩ませている妖夢。2人とも完全に面白がっている態度だ。
幸せではあるが、ちょっとむっとしたので、仕返しをしてやろうと思う。
子供の頃からこんなに性格歪んでいて俺の将来が不安である。
仕返しといっても、武力行使は出来ない。流石にこんなんで暴力を振るうなんてことはしたくないし、子供化しているせいで体格差があるのだ。まぁ、体格差が有利な元の状態でも勝てないけれども。
なので、武力行使とは別の方向で、仕返しをしてもやり返してこないと思われる妖夢を狙う。
幽々子は絶対に仕返ししてくる。妖夢なら最悪土下座すれば許してくれる。既にプライドを捨てかけてる気がするが気にしないことにした。
そうと決まれば行動は早かった。抱きついているのを良いことに、思いっきり体重を乗せて、妖夢と倒れ込む。
「きゃあっ!」
驚いた声を上げた妖夢は目論み通り、床に押し倒されてくれた。
さて、ここから……、ここから……、何をすればいいんだ?
押し倒したはいいが、計画性0だった。見切り発車にも程がある。
「きゅ、急にどうしたんですか?」
目の前に妖夢の混乱したような顔があった。
相変わらず可愛い顔立ちしてるなーと現実逃避気味に考えてみる。
「押し倒すなんてやるわね〜。それから、どうするのかしらぁ?」
煽るような幽々子の言葉。
押し倒す相手を完全に間違えた。仕返しさせる可能性はあっても幽々子にするべきだった。
幽々子なら多少変な悪戯しても心は痛まないが、純粋といった妖夢相手だと罪悪感が湧いてしまう。
とりあえず、口の中にある飴を飲み込み、糖分補給を行なって高速で頭脳を回転させる。喉も細くなってるせいで一瞬詰まりかけた。
「あの……、ライカさん……」
「……ええい! やけだ!」
押し倒してしまった以上、やることやらないと損だという結論に至った。
後々思うが、完全に間違った判断だ。なんならすぐに退けば大事にならないというのに、その判断が出来ていない時点でこの時の俺は相当テンパってたんだろう。
両手で妖夢の胸を鷲掴みにする。……あれ?
「つ、掴む、胸がない……」
たしかに感じる柔らかさはあるものの、これは掴んでいるのか。どちらかというと妖夢の胸の上に、手を乗っけてるだけな気がする。
愕然としている俺に対して、妖夢の目が一瞬で冷ややかになった。
「ライカさん……?」
底冷えするような声。気づいたら、半霊に頭を思いっきり引っ叩かれた。
「痛い……」
「急になにするんですかっ!」
涙目になって床の上で悶絶する俺に、妖夢は顔を赤くして怒鳴りつける。
「あらあら、可哀想に。ダメじゃない。小さい子をいじめちゃ」
面白いものを見せてもらったことで上機嫌な幽々子が、俺のことを抱き寄せて、叩かれた頭を撫でてくる。
「幽々子様! その子は良くありません! 今すぐに教育し直さないと!」
「全く、小さい子にちょっと悪戯されただけで、取り乱すなんて妖夢もまだまだねぇ」
「小さい子って……、いえ、たしかに、小さいですが……」
まだ頭ヒリヒリするぞ……。どんだけ思いっきりぶっ叩いたんだ。
酷い目にあった。早く家に帰ろう。
あれ? 家に帰る……? 記憶が混濁して……。
「急に静かになっちゃったわね。妖夢が思いっきり叩くから」
「私のせいですか!? ライカさん、すいません。つい。大丈夫ですか?」
2人の顔が見つめてきた。
その視線を感じながら、辺りを見渡す。それから、小さく言葉を漏らした。
「……お姉ちゃん達、だれ?」
「え?」
知らないお姉ちゃん2人は、困惑した顔を浮かべていた。
第4話のアリスのロリス化は主人公、ショタ化の伏線だった!?
ということで、ショタ化プラス、記憶喪失ということで、次回、おねショタ筆下ろし。
1人の主人公で色んなプレイが可能なんて、なんて便利な能力。