※この作品はR-18です。

東方淫魔伝   作:スイセン

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[第53話]主人と従者

 扉を抜け、上へと続く長い長い階段を超えて着いたのは、見覚えのあるカビ臭い大図書だった。

 パチュリーのところに行けと小悪魔に言われたので、薄紫色の魔法使いを探すように図書館内を歩き回る。

 左右には俺よりも圧倒的に高い本棚。倒れてきたら潰れることは間違いない。

 それに、この図書館の書物には一度襲われている。

 不用意に刺激しないように慎重になっていると、不意に開けた場所に出た。

 

 そこでは、探していた魔法使いに加えて、この館の主と、そのメイドまで居て、テーブルの上で茶会を楽しんでいるようだった。

 

 その3人の視線が現れた俺へと一斉に向いたので、少しビクリとしつつおずおずと前に出る。

 

「あー、えっと……」

 

 なんて言うべきか迷う。

 子供のふりをするべきか、それとも普段の俺で接するべきか。小悪魔は俺がライカであると気づいていたが、この3人は……

 

「逃げ出した使用人がやってきたわよ」

 

 楽しそうに笑ったレミリアがそんなことを言うと、パチュリーは大きくため息を吐いた。

 逃げ出した使用人ってことは……、この3人も俺がライカだと分かってるのか。

 

「レミィ、貴女がそうやってフランを煽るから、大変なことになったじゃない」

「ふふん。使用人に逃げられるなんてあの子もまだまだね」

 

 偉そうにふんぞり返ってお茶を飲むレミリア。

 今の会話を聞いただけでも、フランには絶対に会いたくないと思った。間違いなく殺される。

 気持ちを切り替えるように小さく息を吐いた。

 3人は俺がライカだと知っている。だからいつも通りでいい。

 

「ティータイムの邪魔をしたか?」

「いいえ。だって今日の話題の華はお前だもの、ライカ」

「それは都合が良かった。聞きたいことがこの本棚ぐらいある」

「ええ。そうでしょうね。とりあえず、答えてあげるわ」

 

 ここまでは順調。

 さて、ではなにから質問したものか。少し考える間にパチュリーが口を開いた。

 

「まずは、貴方が寝ていた期間は約4日ほど。怪我は胸の真ん中に刀が刺さっていたわ。その治療を私が行って、経過観察のためにあそこで寝かせた。起きた瞬間に貴方が暴れる可能性があったから。あとは」

「待て待て!」

 

 一気に順調じゃなくなった。

 質問をするまでもなく答えを並べるパチュリーを慌てて止めると、不快そうに眉を顰められた。

 

「まだ答えてる途中だったんだけど」

「まだ質問をしてねぇよ!」

 

 聞きたい内容ばかりだったとはいえ、質問をする前に答えられると心が読まれたみたいで気色悪い。

 

「どうぞ。紅茶でいい?」

「あ、ああ。ありがとう」

 

 咲夜が子供用の低めの椅子と、紅茶を準備してくれた。

 椅子に座って、机に向かうと、左にはパチュリー、右にはやけに上機嫌で楽しそうなレミリアと、なかなかに気が重い。

 

「続きを答えてもいい?」

「……質問をさせてくれ」

「時間の無駄だと思うけど……、まぁ、いいわ」

 

 面倒くさそうではあるが、俺から質問をすることを了承してくれた。

 とはいえ、先程のやつでほとんど答えられていたので、質問は少ない。

 

「まず、なんで俺だって分かった?」

「小悪魔にもしてた質問ね。簡単よ。ライカと同じ魔力を持っていたから」

 

 魔力。そんな部分でも俺だって判定出来たのか。それとも、それは経験が豊富なパチュリーだから出来る所業なのか。

 

「じゃあ、レミリアは」

「匂いね。貴方からは独特の血の匂いがするもの。それにパチェに聞いてたしね」

 

 小悪魔は魂の匂いと言っていたが、レミリアは血の匂いか。吸血鬼らしい。

 待て、ということは、

 

「もしかして、フランって俺がいること気づいてるのか?」

 

 深刻な顔で尋ねた俺に、咲夜がクスリと笑う。

 

「妹様でしたら、貴方が起きたら絶対に地下に連れてくるようにと」

「それ逃げていいか?」

「逃げれるならね」

 

 この後の運命が真っ暗に染まった瞬間だった。

 

「……じゃあ、次だ。もし俺がこの後も生きてたらなんだが……」

「一気に声が暗くなったわね」

「精神を幼くさせる薬って作れるか?」

 

 レミリアのツッコミを無視して質問をしたら、パチュリーから冷たい視線を向けられる。

 それは間違いなく俺を非難するものだった。

 

「質問に答えるなら、作れるになるわね。ただ、それを使用とするなら、貴方は随分と傲慢ね」

「……どういう意味だ?」

「言葉通りよ。なんでも自分の思い通りにしようとするなんて、レミィにも勝る傲慢さよ」

「ちょっと、パチェ、どういう意味よ」

「言葉通り」

 

 不満そうに声を上げるレミリアの声をいなしつつ、俺に厳しい目つきを向けるパチュリーは、心を落ち着かせるように紅茶を口に含んだ。

 

「先に言っておくけど、薬の効果は永遠じゃない。いつかは終わる。それを理解してる?」

「……見てたのかよ。覗き見は悪趣味だぞ」

 

 彼女は間違いなく、この地下で起きたことを見ていた。

 流石に色々と恥ずかしいとので、拗ねた子供のように文句を返す。

 

「覗き見じゃないわ。使い魔と感覚の共有をして見てたもの」

「ああ、なるほど。じゃあ、覗き見じゃなくて、しっかり見てたのか。余計にタチ悪い」

 

 俺はきっと苦虫を噛み潰したような表情をしているであろう。そんな俺を見て、レミリアがケラケラと笑った。

 イラッとしたので吸血鬼をちょっと睨んでから、彼女の問いに答えを返す。

 

「終わるならそのタイミングぐらい選ばせてくれ」

「その結果が取り返しのつかないぐらいに壊れることになっても?」

「壊すのは得意なんだ。そこの吸血鬼の妹とおんなじで」

 

 はぁと呆れたようにため息を吐いたパチュリーは考えるように瞳を閉じた。

 

「……薬のことは考えておいてあげる。他に聞きたいことは? ないなら、今度はこちらから質問をさせて貰うけど」

「質問? 聞きたいことなんてあったのか」

「それはもちろん。こんなに面白い状況なんだ」

 

 クククッと愉快そうに笑うレミリア。

 確かに逃げ出した俺が子供化して、しかも大怪我を負って戻ってきたとなれば随分と面白いだろう。こっちとしてはなにも面白くないが。

 

「まず、貴方が襲われた相手。妖夢の話だと、白い男ってことだったけど、面識は?」

「ない。……いや、紅魔館で咲夜と一度だけあるか」

「え? そうだったかしら?」

 

 咲夜が意外そうに目をパチクリと瞬かせる。

 それから思い出すようにして、ポンと手を打ちつけた。

 

「そういえばそんなこともあったわね。あの廊下で会った無礼な客人のことよね?」

「……初耳なんだけど」

 

 まさか忘れてたのか。

 げんなりとした様子のパチュリーの反応を見るに、咲夜からは何も聞いてなかったようだ。

 

「へぇ、咲夜も会ってるのね。もちろん勝ったのよね?」

「はい。丁重にお引き取り願いましたわ」

「ふふん。それならいいわ」

 

 満足そうに頷くレミリア。

 妖夢が負けたのを知ってるから、自分の従者が勝ててご満悦なのだろうか。

 しかし、あの時のあの男と、妖夢が戦っていたあの男は別人のような力を持っていたことは俺にだってわかる。

 急成長をしたのか。こんな短期間に? 

 または、咲夜の時には手加減をしてたのか。だとすれば、その理由は? 

 あの男は謎が多すぎる。疑問が尽きない。

 けれど、その疑問に答えられる者はここにはいない。

 

「あの男については何もわからないぞ。俺が教えて欲しいくらいだ」

 

 質問されても答えれる気がしない。

 俺の言葉にパチュリーは落胆した様子もなく頷く。

 

「……そうみたいね。けど、誰よりも貴方が知っていると思うんだけど」

「なんでだ?」

 

 確かに2度も襲われてるが、誰よりも知っているなんて思えない。

 

「だって」

「ねぇ、パチェ、その男の場所ってわからないの? 私も一度挨拶をしたいんだけど」

 

 割り込むようにレミリアがパチュリーに話しかける。

 

「……分かったら苦労しないわ。なにか痕跡でもあれば楽なんだけど」

「ほら、こいつに刺さってた刀あるじゃない。あれとかは?」

「あれはフランが壊しちゃったじゃない。レミィがフランを煽って暴れさせるから」

「そうだっけ?」

 

 つまらないと言わんばかりの表情をするレミリア。

 そのレミリアにジト目を送ったパチュリーは、少し咳き込むとこちらに向き直る。

 

「それじゃあ次の質問だけど……」

 

 

 

 

 

 あれから当たり障りのない質問、白玉楼でなにをしてたのか、どうやって逃げ出したのかなどと、まるで職質のようなものを長々と受けて、やっと解放された。

 途中からレミリアは飽きたのか、図書館から適当に持ってきた本を面白くなさそうに読んでいた。

 

 疲れたから帰りたいのだが、妖夢はまだ寝ており、今は図書館に戻ってきた小悪魔に連れられて、フランのいる地下室に向かっている。

 出来るなら、今すぐに逃げ出したいところだが、妖夢を置いていくわけにもいかないし、逃げる場所もない。

 

「大変でしたね。パチュリー様に質問攻めにあっていたようで」

「……ああ。途中からお前も混ざって騒ぎ出したせいでな」

「ええ〜、可愛い使い魔とのスキンシップは嫌でした?」

 

 きゅるん♡なんて擬音が付きそうなほどわざとらしいあざとさを見せつけてくる小悪魔。

 

「……スキンシップが過剰な気がするんだが」

「ご主人様が私になさったことを鑑みれば普通では?」

「ノーコメントで。……てか、なんで地下室まで付いて来るんだ?」

「だって、ご主人様が地下室まで場所がわからなくて床を壊したら困りますから」

「そんなことはしない。……多分」

 

 前にフランに壊してでも来いとは言われてるものの、そんなことは流石にしないはずだ。暴走してる時は知らない。

 

「まぁ、あとは……、パチュリー様に貴方の様子を秘密裏に見ておくようにと言われているので」

「……それ言ったらダメだろ」

 

 秘密が秘密じゃなくなってる。

 要は小悪魔は監査役か。今も感覚共有でこちらの様子を伺っているのだろうか。

 簡単にバラした小悪魔に、パチュリーが大図書館で大きくため息を吐いている姿が目に浮かぶ。

 

「後で叱られるぞ」

「その時は守ってください♡」

「俺の命がこの後もあったらな」

 

 そこで小悪魔が脚を止めた。目の前には一枚の扉。

 

「着きましたよ」

「見ればわかるよ」

 

 この先にフランがいる。

 緊張しながらドアノブに手をかけた。

 

 キィィと甲高い音を鳴らしながら扉が開いていく。

 開けた瞬間に襲われる可能性も考慮して身構えていたが、そんなことはなかったようだ。

 

 部屋の中は暗くて、様子はあまり伺えない。

 小悪魔は入ってくる気はないのか、付いてくる気配は感じなかった。

 

 恐る恐る一歩踏み出すと、ぴちゃりと水音がした。

 雨漏れなんて地下室だからあり得ない。飲み物でも溢したのか? 

 そういえば、なにか良い匂いも……。

 

 更に数歩、足を進めると今度はなにかがつま先にぶつかった。

 やけに重く、鈍い音がしたそれは筒状のなにかだった。

 

 やけに散らかってるな。フランはどこだ……? 

 

 暗闇に少しずつ目が慣れてきて、辺りの様子がわかるようになると、ベッドの上で動く人影がいる。

 その人物はなにか丸いボールのようなもので遊んでいた。

 

「フラン?」

 

 呼びかけると、その人影が立ち上がる。

 その拍子に、手に持っていたボールが落ちてこちらに転がってきた。

 

 足元まで転がってきたボール。

 ただ、それはただのボールじゃなかった。ボールにしては歪な形をしている。そして、なにやら毛のようなものが生えていた。

 まるで人の頭。いや、これは本当に──。

 

「っっ!」

 

 それが人の頭だと俺が完全に認識するのと、影が迫ってきて俺に覆い被さるまではほぼ同時だった。

 

「ふふっ、ライカぁ」

 

 床に押し倒して俺に馬乗りになる影、フランドール・スカーレットはその身体を真っ赤な血で汚していた。

 頬を蒸気させて、光悦した表情を見せるフラン。

 

「お前、なにやって……」

「退屈だったから人形遊び。もう壊れちゃったみたいだけど」

 

 周りを見れば、頭だけじゃない、人間の残骸と思えるものが散らばっていた。

 脚や手、胃から出た腸。

 そこで理解する。

 水溜まりだと思ったのは血溜まりで、俺が躓いたものは切断された腕だったのだと。

 

「壊れたって……」

「うーん。少しモノが多くて邪魔ね」

 

 フランが右手をきゅっと握る。

 瞬間、バラバラだった遺体が破裂して飛び散った。

 真っ赤な血溜まりと、小さな肉片だけを残して、人が存在したという証が消え去る。

 

「だいぶ汚しちゃったわね。後で掃除を頼まなきゃ」

 

 なんの感慨も無さそうに呟くフラン。

 あまりにも異常だった。

 常人であれば狂ってしまってもおかしくはない状況。

 

「……さっきの人は?」

 

 だというのに、俺はなにも感じられなかった。

 驚きはしたし、恐怖もした。なのに、心の奥底は冷静だった。

 知らない人だからだろうか。いや、それだけじゃない。

 幻想郷に来てから肉体がおかしくなったとは思っていたが、何度も殺されかけ、精神もおかしくなっていたようだ。

 

「侵入者。この前に咲夜が倒したあまり。貴方が居なくて退屈だから遊び道具に貰ったの。……ま、そんなに面白くなかったわね」

「命は大事にしろよ」

「本当ね。紅魔館に侵入するなんて」

 

 クスリと微笑を浮かべた少女は、俺の首元に手を添える。

 

「ライカも、命は大事にした方がいいわよ?」

 

 細い腕に力が加わり、俺の首ごと命を奪いにきた。

 数秒もせずに死ぬであろう状況に、完全降伏を伝えるように彼女の腕を叩いてやると、力が緩められる。

 

「なんだ抵抗も、暴走もしないのね」

「この状態じゃまともに抵抗も出来ないだろ」

「そう。それは残念」

 

 普段ですら勝ち目なんて無いようなものなのに、子供の状態じゃ希望すらない。抵抗も暴走もしたところでフランなら間違いなく俺を破壊できる以上、どちらもするだけ無駄だ。

 フランは幽々子と同じく俺を確実に殺せる存在。恐怖はある。けれど、俺を簡単に殺せるという理由だけで、少しだけ気楽だった。

 

「んで、いつまで馬乗りになってるんだ」

「ねぇ、その姿はなに? 随分と可愛らしくなったみたいだけど」

「……そりゃどうも。気づいたらこんな姿になったんだよ。力を使いすぎた」

「貴方程度が使う力の量で? ……ああ、そういうこと」

 

 首を傾げたフランだったが、直後、何かを理解したように頷いた。

 

「なにか知ってるのか?」

「さぁ、なにか知ってるのかしら?」

 

 クスクスと笑う彼女は立ち上がると、ベッドへと歩いて腰掛ける。

 それでやっと起き上がれた俺はその場で胡座をかく。

 血だらけのカーペットの上というのが不快だが仕方ない。

 

「んで呼び出した理由ってなんなんだ? お仕置きか?」

「なにを?」

「逃げ出しただろ」

「逃げ出したの?」

「あん……?」

 

 会話が噛み合わない。

 パチュリーとレミリアの話を聞いた時には、俺が逃げ出したことで大層ご立腹だと思っていたのだが、別に怒っている様子もない。

 

「……怒ってないのか?」

 

 この姿も相まって、親の機嫌を伺う子供のようにしか見えない。

 それに対してフランは理解できないようにキョトンとしている。

 

「怒るってなにに?」

「えっと……、ほら、文との勝負から逃げ出し、あ、いや……」

 

 口にしてから余計なことを言ったと思った。

 フランが覚えていないならその方が間違いなく良かった。

 

「あの天狗と勝負なんてする予定あったの?」

「は? いや、おま……フランが1週間以内に勝てって」

 

 お前と言いかけてフランに睨まれたので、慌てて取り繕いながら言うと、フランは可笑しそうに笑った。

 

「あの天狗に貴方がたった1週間で、真正面から勝負して勝てると思ってたの?」

「……そういう約束をしたのはフランだったろ」

「私はあの天狗に勝てと言ったのよ」

 

 つまり正面勝負じゃなくてもいいから勝てば良かったということか。

 けど、正面だろうが正面じゃなかろうが、どっちにしても文に勝った記憶はないんだが。記憶喪失で忘れているのだろうか……? 

 

「あの天狗の悔しそうな顔、最高だったわ」

 

 頬を紅潮させて、興奮した様子で吐息を漏らすフラン。

 

「そ、そうか。それは良かった。じゃあ、もう行っていいか?」

 

 そんなフランにちょっと引きつつ、お仕置きなどが無いうちに退散しようとする。

 勝った記憶なんて無いが、フランが満足してるならそれでいい。レミリアとパチュリーの話だと、つい最近に怒って暴れたということだったが、そんな気配も無いようで何よりだ。

 

「あら、もう行くの? それは残念ね。折角、ご褒美をあげようかと思ってたのに」

「ご褒美……!?」

 

 立ち上がりかけた俺は、フランから出たとは思えない発言に固まり、自分の耳を疑ってしまう。

 

「だ、大丈夫か? 熱でもあるんじゃ」

「……褒美よりお仕置きの方が良かったのかしら?」

 

 あんまりな反応だったのか、フランがむすっとした顔になって、俺に手のひらを向けた。

 魔弾を撃ち出す構えだ。

 すぐさま、土下座へとフォームチェンジする。

 

「ごめんなさい」

「ふん。ま、いいわ。ほら、こっちに来なさい」

 

 どうやら許してくれたようだ。機嫌が悪くなくて良かった。

 ベッドの上、自らの横をポンポンと叩くフラン。

 

「床の上に座ってたからお尻のあたりが血だらけなんだが……」

「別に気にしないわよ。後で掃除して貰うだけだもの」

「……掃除するメイドが可哀想だな」

 

 これだけ血だらけの部屋だ。一筋縄じゃいかないだろう。ベッドも既に血で汚れていたり、破れてたりしているし。

 少し警戒しつつフランの隣に座る。

 

「それで、褒美とは……」

「う〜ん。なにがいいかしら……」

「決めてなかったのかよ」

 

 今すぐ俺を解放してくれるっていうので十分なご褒美になるけどいかがでしょう? 

 思った言葉は流石に口にせず、見た目だけは愛らしい顔で悩むフランを待った。

 

「お金……なんてライカには不要よね」

「そりゃな。買い物先知らんし、価値もわからん」

 

 この幻想郷が外の世界と同じ通貨単位とは思えない。それに買い物が可能な場所に行った記憶もない。だから貰ったところで使うことなく終わるだろう。

 

「ねぇ、褒美ってなにあげればいいの?」

「……なんで褒美あげようと思ったんだよ」

「だって良い主人は、働きに見合った対価を従者に渡すものなんでしょう?」

「間違ってないが……、誰からの入れ知恵だよ」

 

 誰だ! うちの可愛くて狂気的で、相手のことなんて一切考えてないような凶暴なフランちゃんにこんな変な入れ知恵した奴は! 

 その対価で酷い目に遭う可能性があるのは俺なんだぞ! 

 

「小悪魔だけど?」

「……あいつ」

 

 なにを余計なことをしてくれてるんだ。

 扉のところで見ているであろう小悪魔に向けて、ガンを飛ばしておく。

 

「てか、小悪魔と仲良い……わけないか」

 

 前に一度、小悪魔のこと破壊しようとしてたもんな。

 そもそも、フランに仲の良い人なんているのだろうか。基本的に地下室に引き篭もってるし、知り合い俺より少ないんじゃないかとすら思えてくる。

 

「それで、なにをあげればいいの? そういうのは、貴方の方が詳しいでしょ?」

「ご褒美ねぇ……」

 

 ご褒美といえば一般的なのはお金やモノだろう。けれど、そういうものを求めていない以上、他の何かということになる。

 

 ご褒美……ご褒美……。

 

 ご褒美エッチとかそんなジャンルあったな……。

 行き着いた答えがそれだったことがあまりにも悲しい。

 思考が下半身に忠実すぎる。さっき小悪魔とか妖夢に色々されたせいだと思いたい。こんなの言えるわけがなかった。

 

 それにご褒美エッチなんてイチャイチャイベントみたいなものをフランとするなんて想像が出来なかった。

 じっと彼女の顔を見てしまい、フランが首を傾げる。

 

「なにが思いついた顔ね」

「い、いや、悪いけどいい案は……」

「……前も言ったでしょ? 話さないなら躾をするって」

 

 目を細めて、手に魔力を溜めるフラン。

 なんですぐに手を出そうとするんだこの主人は!、

 

「本当に大したことじゃ」

「私が判断するわ」

 

 前と同じく詰み筋だった。逃げ道はない。

 

「ほら、なにを思いついたの?」

「……まぁ、外の世界だとご褒美でイチャイチャするのとかもあるなぁと」

 

 言い訳がましく、ぼそぼそと早口で告げる。

 流石にご褒美エッチなんて言い方はできなかった。

 

「ふーん。……ライカのその反応的にえっちなことするってことよね」

「いや、まぁ、はい……」

 

 普通に見透かされてました。視線が少し怖い。

 イチャイチャねぇ……と、呟いたフランは、つまらなそうな表情で頷いた。

 

「ま、それでいいわ」

「は? ……え?」

 

 それでいい……? 

 フランの言葉を理解できずに、アホっぽい反応を返した俺の口元が柔らかい感触が押し付けられた。

 

「んんっ!?」

「んっ、ちゅ……、貴方が小さいからキスしやすいわね。ふふっ、それじゃあ、早速ご褒美あげるわね」

 

 妖艶に笑うフランの瞳に見つめられながら、俺が返答する間もなく再び口を塞がられるのだった。




次回、フランちゃんとのイチャイチャえっち。
フランのHシーン何回か書いてるのに、イチャイチャしたのをそういえば書いてなかったなぁと。
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