※この作品はR-18です。

戦姫絶唱シンフォギア~~歌姫たちの甘い宴~~   作:ユウキ003

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今回で原作死亡キャラが生存します。オリ主は奏や翼たちと幼馴染みの関係です。今の所は。


第1話

 

春日井 真人。彼はどこにでもいる普通の子供だった。ただ、容姿が同世代の同性と比べて少女のようである事以外、成績や運動などで特質すべき点は無い。ごく普通のありふれた少年だった。

 

 

しかし彼は、あるとき素質を見いだされた。

 

『ノイズ』。

 

人を自ら諸共炭化させ殺す謎の存在。

 

『シンフォギア』。

 

そんなノイズと唯一戦う事の出来る鎧。しかしその鎧を纏う事の出来る素質ある人間は、星ほどの数を誇る人類の総数の中で、僅か数人。更にギアの中核となる存在、『聖遺物』も数は少なく、一騎当千に等しい力を持つ事と引き換えに、その生産性と汎用性は

劣悪と呼んで差し支えない物であった。

 

そして、更に言えばシンフォギアに適合するのは、女性だけであった。

 

そんな中、真人はとある人物が開発した『人工聖遺物第0号』への適性を見いだされ、彼は幼くしてこの世界の命運を託された1人となってしまったのだった。

 

 

真人は、適性を見いだされてからと言う物、時に仲間である『少女2人』と絆を深めたり。時に『米国のとある機関に誘拐』されたりしながらも、第0号の適性者として、戦い続けていた。

 

 

真人が第0号、識別名『バーンスリー』の適性者として発見されてから、色々な事がありつつも、7年の歳月が経過していた。

 

今現在、この国、日本をノイズの脅威から護っているシンフォギア装者は真人を含めて3人いる。

 

『天羽々斬』の装者、『風鳴翼』。

 

『ガングニール』の装者、『天羽奏』。

 

そしてバーンスリーの装者である春日井真人。

 

この3人が、世間に知られる事なく、シンフォギア装者として日々、ノイズから人々の生活を守っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「も~~~!翼ちゃんはいっつも部屋を散らかしてばっかりで~~!一週間前に掃除したばっかりなのに~!」

うなじ辺りまで伸びる艶やかな黒髪を揺らしながら怒っているのは、この数年でより女性的になってしまった少年、春日井真人だ。

 

「ご、ごめんなさい」

そんな彼のすぐ傍で、座布団の上に正座しているのは、真人の仲間で幼馴染み。更に世間では知らぬ者など居ないと言われているツインボーカルユニットである『ツヴァイウィング』の1人、風鳴翼だ。

 

そして、そんな彼女の周囲に散らばっているペットボトルに衣服に雑誌に女性物の下着。

 

そう、ここは翼の私室なのだ。

 

しかし、その現状は『汚部屋』と表するほど酷いものだった。

 

そして、今は真人がテキパキとその汚部屋を綺麗に片付けていた。彼は手慣れた様子でゴミを分別してゴミ袋に詰めると、それを外のゴミ捨て場へと持っていき、戻ってくると今度は散乱していた衣服や下着を回収し始めたのだが……。

 

「あっ……!」

翼も女子だ。異性である真人が自分の下着を手に取るのは、やはりどうしても恥ずかしい。

「ま、待って真人っ、そ、それは……」

真人が手にしているのは、白いショーツ。あれは翼が昨日履いていた物なのだ。更にその周囲にはブラも色々転がっている。

 

「ん?何?」

真人は気にせず下着なども掴んで洗濯籠に放り込んでいく。

「あぅ、あぅ」

自分の下着を異性の幼馴染みに洗濯されるのは、年頃の女性としては羞恥プレイ以外の何者でもないのだが……。

 

「まだ恥ずかしがってるの翼ちゃん?でも、僕が翼ちゃんの服とかショーツとかブラジャーとか洗濯するの、もう何十回目かな?」

「ちょっ!い、言わないで真人っ!考えただけで顔から火が出そうなくらい恥ずかしいんだからぁッ!」

顔を真っ赤にして叫ぶ歌姫。対して真人はクツクツと笑みを浮かべていた。

「じゃあもっと自分で家事を出来るように頑張らないとね」

「う、うぅ。真人は意地悪だ」

涙目で頬を膨らませる翼。

「ふふっ。ごめんごめん。今これを洗濯機に入れたら朝ご飯の準備するから。もう少し待っててね」

「う、うん」

 

その後、下着やら衣服を洗濯機に掛けた真人は、キッチンへ行くと手早くエプロンを身につけ、朝食の準備を始めた。この家の主は翼のはずだが、今ではすっかり真人の方がこのキッチンを使い慣れていた。お米を炊く間にメインの塩鮭。副菜の小松菜のお浸し。更に豆腐とワカメの味噌汁を作っていく。

 

その手際は馴れたもので、プロの料理人、とまでは行かなくても手慣れた主婦のそれと大差ない動きだった。

 

と、そうこうしている内にあと少しで朝食の用意が出来ると言う所で。

 

『ピンポ~ン』

「ん?は~い」

来客を知らせるチャイムの音に気づいて翼がリビングを出て玄関に向かう。玄関の扉を開けると……。

「よっ、おはよう翼」

そこにいたのは真人、翼の幼馴染みであり翼と共にツヴァイウィングとして活動している『天羽 奏』だった。

「あ、おはよう奏。けど、どうしてこんな朝早くに?」

「いや~。実は真人が翼の部屋の抜き打ちテストして、その後朝ご飯作るから良かったらどうって誘われてさ」

「あ、あぁ、それで……」

奏の言葉に、翼は苦笑を浮かべる事しか出来無かった。

 

そして、翼が奏をリビングに連れて行く頃には、既に人数分の料理がお茶碗や皿に盛り付けられテーブルの上に並べられていた。

 

「あ、ナイスタイミングだね。もう準備出来てるから」

「お~。さっすが真人。今日のも美味そうだ」

「さ。どうぞ冷めない内に」

そう言って、真人に促されるまま席に着く奏と翼。そして真人も席に着くと……。

「「「いただきます」」」

 

3人で手を合わせ、一緒に朝食を取った。

 

そして、3人は食事をしながら談笑をしていた。

 

「しっかし、真人はホント主夫が板に付いてきたって感じだよな~。料理に炊事洗濯、翼はホント真人に世話になりっぱなしだよな~」

「うっ、そ、それは……」

奏の言葉に言い淀む翼。

「翼ももうちょっと家事の勉強しないと、大人になっても嫁の貰い手が無いぞ~?」

「そ、そんな事無いっ!……はず。で、でもっ!いざとなったら真人に、婿養子に来て貰うから大丈夫だもんっ!」

「え?」

2人の会話を聞きながら食事していた真人は驚いて箸を止めた。

 

「あぁ翼ズリぃっ!あたしだって真人狙ってんだからなっ!」

「え?」

 

更に聞こえた奏の声に、再び首をかしげる真人。

 

「か、奏は別に良いじゃない。自分で家事とか出来るんだから……」

「そう言う問題じゃねぇって!だって真人は炊事洗濯家事、何でも出来るんだぞ!?おまけに優しいし!こんな優良物件の男、そう簡単に逃してたまるかってんだっ!」

「そ、それだったら私だってっ!」

 

と、2人は真人の事を色々言っていたが……。

 

「はいはい。2人とも。食事中なんだからケンカは無しだよ。後、今日は2人ともコンサートに向けて練習とか早くからあるんでしょ?早く食べて行かないと、そろそろ緒川さんが迎えに来るよ?」

そう言って近くにある時計を指さす真人。

 

「あぁっ!やべっ!そうだったっ!」

「い、急がないと……!」

2人はケンカを中断すると、食事に戻った。そして食事を終えると、2人は慌ただしく準備をしていたのだが……。

「あっ。2人ともちょっと」

玄関口で真人が出て行こうとする2人に声を掛けて止めた。

「ん?何だよ真人」

「はいこれ」

 

首をかしげる奏と翼に真人が差し出したのは……。

「お弁当。良かったらお昼に食べて」

布にくるまれたお弁当箱だった。そしてそれを渡しながら優しい笑みを浮かべる真人。

 

それは正しく、学校へ急ぐ子供にお弁当を渡す母親のようであった。

 

「え、えぇ。ありがとう真人。ありがたくいただくわ」

「サンキューな真人」

2人は、どこか戸惑いながらもお弁当箱を受け取ると、それぞれの鞄の中へと仕舞う。

 

「それじゃあ2人とも、気をつけてね。いってらっしゃい」

「「いってきます」」

 

そう言って、2人は真人に見送られながら家を出たのだが……。

 

「なぁ翼。……やっぱり真人って主夫だよな」

「えぇ、全くもって同感ね」

2人は並んで歩きながら、迎えの車がある場所に向かっていた。

 

「……と言うか、あそこは私の部屋だったはずなんだけど、何故家主の私が客のはずの真人に見送られてるのかしら?」

「……そりゃ、翼より立派に家主してるからじゃねぇの?って言うかあたしらって真人の世話になりっぱなしだよなぁ」

「確かに」

 

翼は奏の言葉に頷きながらも、最近の事を思いだしていた。

「私は家事全般。真人にお世話されてるし」

「あたしの方もなぁ。訓練でクタクタになってた時、真人に飯作って貰ったり洗濯して貰ったり。あいつだって訓練で疲れてるはずなのにさ」

 

そう、3人は装者として日々、訓練や戦闘を行う事もあった。加えて3人は表向き学生として学校に通っている。また、翼と奏はそれに加えてツヴァイウィングとしての活動もある。

 

3人の日常は、同世代の者達と比べものにならないくらい、ハードな物であった。

 

そんな中で、真人は奏と翼の事を、積極的にお世話していたのだ。

 

「なぁ翼、覚えてるか?前にあたし達があいつに聞いた質問の答え」

「えぇ、しっかりとね」

 

以前2人は、いつだか彼に問いかけ、『どうしてそこまでしてくれるのか?』と言う質問の答えを思い出していた。

 

『僕には、翼ちゃんみたいに剣の技も。奏ちゃんみたいに槍を振るう力も、何もない。ただ後ろでバーンスリーを吹いてサポートする事しか出来ない。僕は、2人に頼ってばかりだから。だからその分、僕は僕に出来る事で2人を支えたいんだ』

 

それが、真人の答えだった。

 

「頼ってばっかりはこっちの方な気がするけどな」

「確かに」

翼は奏の言葉に笑みを浮かべる。

 

やがて……。

「うっしっ!真人に弁当も貰ったし、今日も頑張るぞ翼!」

「えぇっ!」

 

二人はそれぞれの仕事を果たす為に足を速めた。

 

 

そうやって、真人は2人を支えながらも強くなろうと努力をしていた。そんなある日の事だった。

 

その日は、ツヴァイウィングのライブが行われていた。もちろん観客入りでだ。満員御礼のステージで歌う翼と奏の2人。観客達はそれを見に来ていた訳だが、その裏である実験が行われていた。

 

『完全聖遺物』の起動実験だった。完全聖遺物とは、奏や翼が持つ、シンフォギアの元となった聖遺物の欠片とは異なり、文字通り聖遺物として完全な状態を保っている存在だ。欠片であるガングニールや天羽々斬とは異なり一度起動すれば、その力を100%行使出来ると言われる完全聖遺物。その1つである『ネフシュタンの鎧』。それを起動するにはシンフォギアのエネルギー原であるフォニックゲインが必要だ。だが、それは普通のシンフォギアとは桁が違う。だからこそ、弦十郎たちはライブを利用して、翼と奏だけでは足りない部分を補う事にしたのだ。

 

もちろん観客はそんなことを知らずに、2人の歌に熱狂していた。

 

だが、一曲目が終わった刹那。

 

『ドォォォォォンッ!』

 

ステージ前方、観客たちのちょうど中央近くで突如として爆発が発生した。人々の悲鳴と戸惑いの声があちこちから響き渡る。

 

だが、煙が晴れたその時、『絶望』が現れた。

 

「ノイズだぁぁぁぁぁっ!」

 

観客の1人が叫んだ視線の先、巨大な『強襲型』と言われる芋虫に四つ足が生えたような巨大なノイズが現れた。更にライブ会場の上空にも現れる飛行型ノイズ。そして強襲型がその口から吐き出すのは、小型のノイズ達。

 

ノイズを前に一般的な人間など何の意味も無い。人々が我先にと逃げ惑う中で……。

 

『♪♪~~~』

 

人々の悲鳴と怒号が響き渡る中を、不意に鳴り響くフルートの音。

 

と、次の瞬間、まるで人々とノイズの間を区切るように淡い緑色の、半透明な結界が作られた。ノイズは壁に激突し、それを壊そうと体や手をバンバンと結界に叩き付ける。しかし生半可な攻撃では結界には罅1つ入らない。

 

更に、空中から襲いかかるノイズ。だがそれを防ぐように、再びフルートの音が響く。すると2枚目の、今度はドームを覆う程の結界が作られた。だが、それに比例して、1番目に作られた結界の色が僅かに薄くなる。同時に、強襲型の一撃によって結界の一部がひび割れる。

 

だが、その隙に大勢の人々は逃げ出す。

 

「あの結界は、まさかっ!」

ステージ上にいた翼は、慌てて周囲を見回した。そして見つけた。舞台袖から僅かに出た所に立っている人影、真人の姿を。

 

 

~~~~時間は、ノイズ出現直後まで、ほんの数秒だけ遡る~~~~

 

ノイズ出現直前まで、真人は舞台袖から翼と奏を見守っていた。だが、ノイズが出現した事で、彼は咄嗟に持っていたバッグの中からフルート、『バーンスリー』を取り出し構えた。そして……。

 

『起きて、バーンスリー』

 

自らの相棒を起こす、そのための旋律を奏でた。優しい音が響き渡った刹那。バーンスリーは一見すれば普通のフルートだったいつもの姿より変化した。バーンスリー全体を幾何学模様が走り、そこから淡い青色の光が漏れ出す。

 

と、次の瞬間バーンスリーが青く光輝き、その中から何かが飛び出した。それは、人の各部を覆い隠す鎧だった。直後、真人自身も青い光に包まれながら、彼の着ていた服が消滅。そして裸になった彼の体を、まず黒いアンダースーツが覆い、次いで機械の鎧が覆っていった。

 

口元以外を覆うヘルメット、胸当て、肩当て、手甲、足全体を覆う脚甲。

それら全てを纏った真人の姿は、どこか近未来のパワードスーツを思わせた。

 

だが、その近未来の戦場を闊歩しているような見た目とは真逆に、その性能は翼や奏の、天然物のシンフォギアに比べて、数段劣っている。

 

しかし、それでも真人は『変身』直後から手にしたバーンスリーを構え、音を奏でる。

 

『響け!人々を守る守護者の旋律よ!≪守護者達の聖域(ガーディアンズ・ドーム)≫!』

 

バーンスリーのラインを走っていた光の色が、青から緑へと変化する。直後に結界が発生し人々とノイズを隔てた。そしてもう一度、飛行型から人々を守るために結界を、≪守護者達の聖域≫を発動した。

 

しかし、同じ技を常時発動することは力を分散させる事を意味した。だから、結界一つ一つの強度はどうしても弱くなってしまう。だが、それでも真人は必死に結界を維持させた。

 

そして、それに気づいた奏は……。

 

「行くぞ翼っ!今ここで、この場で皆を守れる力を持ってるのは私達だけだっ!」

「で、でも司令からは何もっ!」

「命令なんか待ってたら、目の前にある命を守れねぇだろっ!真人だって、皆を守る為に必死になってるんだっ!アイツにだけやらせるわけに行かねぇだろっ!」

 

そう叫んだ直後、奏は飛び出した。

 

≪Croitzal ronzell Gungnir zizzl≫

 

そして彼女は詠う。自らの力たる槍を目覚めさせる詠、『聖詠』を。

 

次の瞬間、奏はオレンジや黒色を基調としたシンフォギアを纏った。だがその見た目は、兵器然とした真人のバーンスリーとは違い、ぴっちりとしたボディースーツのようだった。だが所々をメカニカルなパーツが覆っている。

 

そして、奏は変身すると同時に両腕のパーツを組み合わせて合体、変形させ1本の槍とした。それこそが『アームドギア』。シンフォギアの持つ武器だ。

 

奏は、歌を歌いながら槍を振るう。戦いの中にありながら歌うと言うのは、端から見れば理解出来ないだろう。だがそれこそが、シンフォギアをシンフォギアたらしめる所以。歌を力に変えるシンフォギアの性質だった。

 

更に翼も天羽々斬を纏い、奏のギアと似た青や白を基調とするスーツを纏い、手にした刃を振るいながらノイズを次々と切り捨てていく。

 

奏がギアの持つ技の1つである『STAR DUST∞FOTON』を放ち、分裂した無数の槍がノイズに襲いかかるが、それでも倒れたのは群れのほんの一部だ。

 

が、その時。

 

『響け!怒れる戦士の旋律よ!≪狂戦士の咆哮(バーサーカー・ロア)≫!』

 

後方でバーンスリーを奏でていた真人。しかし、奏達が参戦した事とある程度観客とノイズの間が出来た事。ノイズが2人に注意を向けたことで、一番最初に生み出した結界を消滅させ、攻撃系のバフである≪狂戦士の咆哮≫を奏でた。これは単純に攻撃力をアップさせる旋律だ。

 

旋律が響き渡ると同時に、奏と翼の体を赤いオーラが包み込む。と同時に、2人の中で力が漲る。

「っしゃぁっ!行くぞぉっ!」

 

飛び出した奏は『STAR DUST∞FOTON』をもう一度放った。すると先ほどよりも破壊力が増し、数多のノイズを屠った。

 

そのまま戦い続ける2人。それを必死に支援しながらも周辺に気を配っていた真人。その時、彼は観客席で呆然としている少女を見つけた。彼女はこんな状況だというのに逃げる事もせず、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 

『あの子、なんでっ!?』

 

真人はバーンスリーの演奏を続けながら走り出した。真人も既に何度も実戦を経験している。だからこそ走りながら演奏する事は出来る。それに、バーンスリーの演奏を止めたからと言ってすぐにバフや結界の効果が途切れる訳ではない。走り、声を掛けて逃がす。真人はそのつもりだった。

 

だがその時、奏は自分のギアのパワーダウンを肌で直感した。

「くっ!?時限式はここまでかよっ!?」

悪態を付く奏。

 

彼女は、本来シンフォギアに適性があった訳ではない。彼女は特殊な薬物である『LiNKER』によって本来不足しているシンフォギアを纏うための適性を補っているのだ。加えて彼女は今回の実験のためにLiNKERの投与を控えていたのだ。そのため、戦闘開始から間もなくこうしてパワーダウンに陥ってしまった。

 

と、その時、少女が立っていた足場が崩壊し、少女は殺戮の場となっていた広場に落下してしまった。幸い、膝をすりむいた程度の軽傷だったが、獲物がキルゾーンに来た事を気づいたのか人型ノイズ数体が彼女に向かっていく。

 

「はぁっ!」

だが、それも何とか間に合った奏が倒した。

 

「駆け出せっ!」

奏の叱責を受けて少女は痛む膝を引きずって何とか走り出す。だが、直後奏目がけて殺到するノイズ。人型やカエルのようなノイズが体を棒状に変化させ突進してくる。奏は咄嗟にアームドギアを高速回転させシールドのようにしてそれを防いだ。

 

だが、それだけで奏のギアの各部がひび割れる。限界が近い事は誰の目にも明らかだ。

「奏っ!」

それに気づいて翼が叫ぶ。しかし今の彼女の位置からでは奏を助けに行くのに時間が掛かる。

 

更にそこに、追い打ちを掛けるように強襲型が口から緑色の液体を発射し攻撃してくる。奏は何とかそれを防ぐ。が、二体目の強襲型までもが、同じ攻撃をしてくる。

「くっ!?うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

奏はそれを必死に耐えた。だが、ギアの方が保たなかった。各部に罅が入り、欠片が飛び散る。それも、銃弾もかくやの速度で。

 

そしてそれが……。

『ドッ!』

 

逃げる途中だった少女の胸を穿った。

 

少女は胸から大量の鮮血をまき散らしながら吹き飛び、瓦礫に体を打ち付けてその場に倒れてしまった。

 

「おい死ぬなっ!」

 

奏はアームドギアを投げ捨て駆け寄る。

 

「目を開けてくれ!生きるのを諦めるなっ!」

少女を抱き起こし声を掛ける奏。そこへ……。

「奏っ!」

 

迂回して少女の元に向かっていた真人が到着した。

「真人っ!こいつに治療の技を掛けてくれっ!」

「分かってるっ!」

 

真人は大きく息を吸い込み、次なる技を発動させた。

 

『響け!人々を癒やす旋律!≪癒やしの鐘(ヒーリング・ベル)≫!』

 

彼が旋律を奏でると、バーンスリーから溢れた白い光が少女の体を包み込み、その胸に出来ていた傷を塞いだ。これで、少なくとも出血多量で死ぬ事は無い。そして少女が、うっすらと目を開ける。

それに安堵した奏は……。

 

「真人、こいつを頼む」

「え?」

どこか、満足したような笑みを浮かべながら奏は少女を真人に託すと、投げ捨てていた槍を拾ってノイズの方へと歩みを進める。

 

「いつか、心と体、全部空っぽにして、思いっきり歌いたかったんだよな」

「ッ!?」

 

その言葉の今の表情から、真人は察する。奏が『命がけで何かをしようとしている事』を。

 

「待ってよ奏ちゃんっ!今、今さっきこの子に生きるのを諦めるなって言っといて、それで自分は命を投げ出すのっ!?」

「へっ。こんなに観客がいるんだ。とっておきのをくれてやらないと、失礼だろ?」

 

「じゃあ翼ちゃんは!?僕はどうなるんだよっ!そんなことしたら、絶対翼ちゃんは自分のせいだって気にするっ!僕もそうだよっ!奏ちゃんっ!!」

 

止めさせようと真人は必死に言葉を尽くす。だが、奏は止まらない。

 

「……真人、ホントにごめんな。どうせなら、もう一回くらい、真人の弁当が食いたかったなぁ」

 

そう言って肩越しに振り返った彼女は、笑みを浮かべる。しかし真人は逆に、大粒の涙を浮かべる。だが、視線を戻した奏もまた、その瞳から静かに涙を流す。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl……」

 

彼女は歌う。しかしそれは、ただの歌ではない。その歌は、今の奏にとって、命と引き換えの大技。

 

「いけない奏っ!歌ってはだめぇっ!」

翼が必死に叫ぶが、奏の歌声は止まらない。だが……。

 

 

『ここで、奏ちゃんを死なせるなんて、絶対に嫌だっ!僕は、これからも、ずっとっ!ずっと皆と一緒に笑っていたいんだっ!』

 

1人の少年の決意が、意思が、思いが、1つの軌跡を起こす。

 

『鳴り響け!空より響くその音は天からの祝福の旋律!≪天使達の角笛(エンジェルス・ホーン)≫!』

 

真人がその音を響かせた時、バーンスリーから溢れ出した虹色の光が、『絶唱』を詠っていた奏の体を包み込んだ。

 

「Emustol……ん、あぁっ!」

 

そして、あと少しで絶唱が完成するかと思われたその時。奏の口が、絶唱を詠うことを止めた。奏の震える手はギアを落とし、彼女は自分自身の体を抱きしめる。

 

「あ、んっ!な、何だよ、こ、れっ!ンッ!」

 

こんな時だと言うのに、奏は頬を赤く染めていた。彼女は静かに振り返る。そこにはバーンスリーから旋律を響かせる真人の姿があった。

 

「真人、お前、何、を。くぅっ!」

 

問いかけようとするが、虹色の光が彼女の中に注がれる事で生まれた『快感』によって上手く喋れない。

 

『何だよ、これ。体の中が、熱い。力が漲ってくる。でも、『いつものあれ(バーサーカー・ロア)』とは違う。比べものに、ならない。それに、何だかこれ、すっげぇ、『気持ち良い』っ!』

 

「んっ!は、あぁ、んっ!」

 

全身が熱く、こんな時だというのに頬は赤く染まる。奏自身も理解する。自分らしくない、乙女の喘ぐような声が出る事に内心戸惑っていた。

 

だが、ノイズにはそんな事関係無い。数体のカエル型ノイズが向かってくる。

「くっ!?このぉっ!」

 

奏は咄嗟に落ちていたギアを拾い上げ、それを横薙ぎに振り抜いた。カエルノイズはそれだけで切り裂かれた。が、何と振り抜いた瞬間にアームドギアからオレンジ色の斬撃波が放たれ、後方にいたノイズ達まで切り裂いたではないか。更に斬撃波は小型ノイズ達を切り裂いて進み、そのまま強襲型の1匹を横一文字にぶった切ってしまった。

 

「え!?はっ!?」

 

これには戸惑う奏。

「な、何だよこれ!?効果の切れた時限式の私に、こんな芸当は……」

無理なはず、そう言いかけて彼女は振り返った。

 

そこには今も一心不乱にバーンスリーを奏でる真人の姿があった。彼女は、次いで視線を自分の左手に向ける。今の彼女は全身から虹色のオーラを放っていた。そのまま2~3回ほど拳を、握っては開いてを繰り返す。

 

ギアはボロボロだが、彼女は不思議と『いける』と思って居た。

 

『感謝するぜ真人。どうやら私の命は、繋がったみたいだなぁっ!』

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

彼女の構えたボロボロのアームドギアの穂先が回転し出す。ノイズ達が向かってくる。残った強襲型も口から粘液を発射してくる。だが……。

 

「食らえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

奏の放った、≪天使達の角笛≫の効果で強化された必殺技、『SUPER LAST∞METEOR』。通常のLAST∞METEORが強化されたそれは、虹色の竜巻となってノイズ達を、攻撃諸共飲み込み、消滅させてしまった。

 

 

そうして、ツヴァイウィングのライブを襲撃したノイズ達は殲滅されるのだった。

 

 

その後、真人は負傷し気を失っていた少女を、ライブ会場の観客の1人と偽って外に待機していた自衛隊に引き渡し、自分も一度は保護されるが早々に離脱。奏たちの所に戻ると、ちょうどギアを纏ったまま救助活動を行っていた。

 

生き延びた弦十郎の話によれば、実験は成功しネフシュタンの鎧は起動したものの、その後エネルギーを制御出来ずに実験室は崩壊。弦十郎と了子は何とか生き延びていた。

 

そして今はギアを纏ったままの翼と奏から話を聞いていた所だった。

 

「そうか。ともあれ、民間人の被害が真人の初動対応で最小限に抑えられたのは僥倖という他無いな。まぁ、色々問題は山積みだ」

 

実は、あの爆発事故によってネフシュタンの鎧は紛失してしまったのだ。今回のノイズ襲撃と言い鎧の紛失と言い。文字通り問題は山積みだった。

 

「まぁ、とにかく2人もそろそろギアを解け。もう十分だろう」

「あぁ」

「分かりました」

 

2人はギアの装着を解除し、先ほどまでのライブステージの衣装に戻った。

 

「ん?」

 

のだが……。奏はふと、下腹部に違和感を覚えた。まるで、『これまで無かった物が突然現れたような』、そんな違和感を。

 

「奏?どうかしたの?」

「えっ!?あぁイヤッ!何でも無いっ!何でも無いぞっ!?」

翼が奏に気づいて声を掛ける。奏は咄嗟に後ずさりしてしまうが、後ろを見ておらず、瓦礫に躓いて後ろに倒れてしまった。

「うわっ!?」

 

「奏っ!?」

「奏ちゃんっ!」

倒れた彼女に駆け寄る翼と真人。幸い手を付けたので頭を打ち付ける事は無かったのだが……。

 

「いっててっ。……ん?どうした、2人とも」

ふと視線を上げた奏は、何故か翼と真人が自分の下腹部の方を見つめながら、顔を真っ赤にして固まっている事に気づいた。

 

「か、かかか、奏っ!そそ、それは……!?」

「え?」

翼が、何やら奏の下腹部を指さす。奏は立ち上がり、翼が指さす部分、下腹部を見るためにスカートをまくり上げたのだが……。

 

 

そこにあったのは、ショーツを押し上げテントのような形を作るまでに勃起していた、本来奏には絶対に無いはずの、男の象徴、『男性器』、つまり『ペニス』だった。

 

それを前にした奏、翼、真人、弦十郎までもが、誰もが固まってしまった。

 

そして、数秒後。

 

 

「何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?!?!?!」

 

奏の心からの絶叫が響き渡るのだった。

 

     第1話 END

 




次回はH回になると思います。お楽しみに。

感想や評価、お待ちしてます。
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