店の外に出れば夜風が頬をくすぐる。
家々の窓には明かりが灯り、すっかり暗くなった夜道を月明かりと星の瞬きが照らしている。
「じゃあ、帰ろっか。 パイモンも酔っぱらって
用意していたデートプランはこれで終わりだ。しなだれかかるようにぴったりと身を寄せるエウルアを帰路に促す。
が。
「……
ぎゅっと腕を抱いた彼女は立ち止ったまま、ふるふると首を横に振った。
「その……帰る前に、寄りたい場所があるの。 だから、まだ……」
「それはいいけど」
とはいえ時間も時間だ。寄る場所といってもほとんどの店は営業を終えている。
キャッツテールあたりにでもハシゴしに行くのだろうか。
「……それじゃあ、行きましょう」
酔いのせいかどこかぼーっとして口数も少ないエウルアに導かれるまま、夜道を二人寄り添って歩いていく。
途中で曲がった道はキャッツテールとは逆方向で、やがて着いたのは
西風騎士団の隊舎は、主に当直勤務用の居住施設だ。
騎士団員はそのほとんどがモンド城の住民。当然自分たちの家は別にあるのだが、夜間の緊急出動に備えるため、団員には月に数日の隊舎暮らしが定められている。
だがそんな中、エウルアは隊舎を自宅とする数少ない例外だった。
聞けばそれも仕方のない理由。入団当初の『罪人』が、モンドで住宅物件を借りられるはずもなかったのだ。
「……ここよ」
隊舎の女子棟一階の、一番奥の角部屋。そこがエウルアの住処だった。
男の俺が女子棟に入るなんて、なんだかいけないことをしているみたいでちょっとドキドキしながら、エウルアに導かれて部屋へと入る。
と。
「お、お邪魔しま、んんッ!?」
「んむぅッ♡♡ ぢぅぅ……ん♡ フーッ♡ はぁむ♡ ちゅる……ちゅむ、んッ、ちゅ♡」
部屋へと入った直後、エウルアに力いっぱい抱きしめられ、唇を奪われた。
加減を忘れた騎士の腕力が痛いほどに体を締め付け、まるで噛みつくように激しくキスを求められる。背後で扉が閉まる音。
「んぅっ、はぷ♡ んぅ……ん、ふぅっ♡ むぅっ……ちゅ♡ ちゅぱっ……はぁっ、んっ♡ むぅぅっ……♡♡」
アルコールの香りを纏った甘い舌が、ぬるりと口内を舐めまわす。
月明かりだけが差し込む暗い部屋の入り口。閉まった扉に俺を押し付けるようにして、滾った慕情を叩き付けるように唇を貪り、熱を持った体を渾身の力で擦りつけながら、エウルアが貪欲に愛を求める。
苦しいながらに俺からも背中に手を回すと、熱い吐息が嬉しげに唇の隙間から漏れた。
「れちゅ……ン、ふ♡ っは、はーッ♡ はーッ♡ 」
やがて息が続かなくなったのか、腕が緩み、名残を惜しむように唇が離される。
荒く乱れる呼吸音。湯気立つほどに熱のこもった吐息。闇の中で情欲に茹だった目が月光にきらめき、だらりとだらしなく垂れた舌からぽたりと唾液がこぼれおちた。
「……っ、ん♡」
エウルアが俺の手を取って、自分の胸へと導く。服越しにも分かる温かさと柔らかさのその奥から、興奮に激しく脈打つ鼓動が手のひらへと伝わってくる。
じっと俺を見つめる潤んだ瞳が、一秒ごとにどろりと熱を増していく。
「……わかる? 君のせいで体、こんなに熱いの」
言われてみれば確かにそうだ。普段はひやりとするほどのエウルアの体が、今はすっかり欲情に熱をあげ、指の先に至るまで体を火照らせている。
「さっきからおなかの奥が、君を思い出して熱くって……っ♡ じんじん疼いて切ないのよ!」
「エウルア……」
「フーッ♡ フーッ♡ この恨み、今すぐに清算させてもらうわ! モナには悪いけど、今夜は、か、帰さないんだからっ♡」
高まった愛欲と独占欲をむきだしに、闇の中で瞳が揺れる。
酔った時にしか見せない、照れ屋な恋人の熱烈なアプローチに思わず胸が高鳴る。暗くてわからないが、きっと気恥ずかしさに頬は真っ赤に染まっていることだろう。
「……いいよ」
エウルアらしい可愛さに誘われるまま、彼女を抱き寄せる。
今度は俺から唇を重ねると、さっきまで力加減すら忘れて必死に俺を求めていた腕から、安心したように力が抜けていった。
「んッ♡ ちゅ……はぁ、んっ♡ ちゅっ♡ ちゅる、むぅっ、ん♡」
今度は優しく、じっくりと感触を味わうように舌を絡める。
おそらく無意識にだろう、すりっ♡すりっ♡と擦りつけられる腰はまるで甘える猫のよう。こちらもガチガチに勃起したペニスをぐりっ♡と下腹に押し付けると腰が逃げるように動いて、逃がすまいと腕を回して腰を抱き寄せれば今度は捕まった猫よろしく大人しくなって喜びに体を震わせる。
唇を合わせ、時に息継ぎに離しながら、互いの体をまさぐるようにして服を脱がせあっていく。
見ただけでは構造がよくわからなかったエウルアの騎士服も、今ではすっかり脱がし慣れた。胸元のベルトを外しシャツを脱がし、夕暮れの実の皮をむくように彼女を生まれたままの姿へと戻していく。
欲情に火照り、しっとりと汗ばんだ肌に手を滑らせる。
眼下に揺れる豊満な果実の先端が胸板を擦り、吐息とともにびくつく体が再び果肉を揺らす。
むっちりと肉感的な太腿とお尻に手を這わせ、握るようにぎゅっと尻肉を揉みこむと奥でぐちっ♡と微かに水音がして、エウルアが甘い声を上げた。
「……そういえばここ、声出して大丈夫なの?」
ふと気になって唇を離し、聞いてみる。
普段は声に気を遣うことなんてないが、今いるここは騎士団隊舎。
「 ……君の部屋ほど壁は厚くないわね」
「声、我慢できる?」
「っ……ん♡ それは……君が加減してくれればいいのよ」
それは暗に、我慢できないってことだよね?
甘い吐息を一瞬詰まらせ、恥ずかしそうにエウルアが目を逸らす。
「加減は……無理かも」
「す、少しは努力する姿勢くらい見せなさいよ……っ♡」
「だって俺、エウルアの可愛い声聞くの好きだし」
「〜~っ、ばかっ♡」
小さく呟かれた罵倒に、ぞくりと嗜虐心が刺激される。
俺の腕の中で身を捩り、羞恥と快楽に震えるエウルアが愛おしくて仕方がない。
もっと困らせたい。甘い鳴き声しか出せなくなるくらい、めちゃくちゃにしてやりたい。
心の内から湧き出でる欲望の声に導かれるまま、俺はもう一度唇を重ねた。
「ちゅっ……んぅっ♡ ふぁ……あむ♡ むっ、ふっ、はーッ♡ はーッ♡ っあッ♡ ん、ん゛~~っ♡」
口内を舐めまわし、すっかり濡れそぼった秘所を指先でかき混ぜながら、エウルアと位置を入れ替える。
今度はエウルアの背を扉に押し付ける格好だ。
「ぁ、っや♡ ちょっと……っ♡ これ……だめぇ……っ! ひゃ、んっ、んっ♡ ンぅ、ん、っ♡ ぁぅ、くっ、んん……ッ♡」
エウルアの足の間に膝を入れ、閉じられないようにする。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる膣穴からあふれ出た蜜液が、腿の上にぽたりぽたりと滴り落ちる。
「ふっ……ふぅ……我慢できないから、入れるね?」
エウルアの片足を持ち上げ、対面立位の体勢で亀頭を膣口に押し当てる。ぐちゅりと熱いぬかるみにめり込む快感が、腰を早く前に突き出せと急かしてくる。
「っ、やっ♡ 君からされたら、こえっ、ん゛ん~~~~っ♡」
最近気付いたことなのだが、普段は騎乗位や対面座位で自分でペースを握ることが多いエウルアは、逆にペースを握られると途端によわよわになってしまうらしい。
ぬるぬるに濡れた肉厚の秘肉をかきわけながらゆっくりと肉棒を押し入れていく。腰をほんの少し進めるだけで、待望の挿入刺激に敏感にびくつく膣壁が、きゅん♡きゅうっ♡と絡みついて肉棒の侵入を歓迎する。ずぷずぷと沈むカリ首がやがてエウルアの弱点へと差し掛かれば、引き結んだ唇の端から抑えきれない甘い声が漏れた。
「っ、ぅ……っ♡ ぅ、んッ♡」
「エウルア、かわいい……」
「うぅ……っ、うるさ、いッ! ああっ♡♡」
さらにはエウルアは耳も弱い。
いじらしく声を堪えるエウルアの耳元でからかうように囁けば口からは恥じらいの悪態がこぼれ、その隙に根元まで挿入し扉に押し付けるようにして腰を密着させてやると、堪えきれなくなった甘い嬌声が部屋中に響いた。
「っ、この……っ♡ 今のわざとでしょう!」
「ふふ、声我慢してるエウルアがかわいくてつい」
「っ、ほんと、意地が悪いわねっ……♡ この恨み、っん、むっ♡ んん……♡♡ っ、またそうやってキスで誤魔化して……んっ♡」
「ん……っは。 じゃあこうやって、口塞いでおいてあげなきゃね」
「っ、んむっ!? っ、ん♡ ちゅっ♡……っ、ぷはっ♡ ん、ん んぅっ♡」
口を塞ぐ名目で熱く舌を絡め合いながら、ゆっくりと腰を動かし始める。
対面立位ゆえに、動きに激しさはない。そのかわり、ゆっくりと丁寧に、エウルアの弱いところをぞりぞりとカリ首で引っ掻き、こそいでいく。
動きに合わせて、ぎっ、ぎっ、と扉の蝶番が音をたてる。長くゆったりとしたストロークを繰り返すたび、押さえつけた彼女の腰が法悦にがくがくと震え、合わせた唇の隙間からはくぐもった喘ぎ声が漏れた。
弱点を優しくいじめるたびに軽イキに合わせて腹筋がびくびくっ♡と痙攣し、膣肉が締まりを変化させる。懇願するような、あるいは許しを請うような、蕩けきった媚肉の絡みつきがたまらなく気持ちいい。
「ふっ♡ んゔっ♡ ん゛っ♡ ふーッ♡」
「れちゅ……っはぁ。ほら、 廊下に声、聞こえちゃうよ? 頑張って我慢しないと」
「ふぅぅっ♡ ぅっ、んぅぅ……っ! っ、はっ、はっ♡ あぁぁぁぁ……っ♡♡」
キスの合間に少し唇を離すだけで、甘い喘ぎが暗がりに響く。
必死で抑えようとしているのに、それでも声を我慢できない程に悦んでくれているエウルアが愛おしくてたまらない。羞恥心を置きざりにして溢れ続ける嬌声に興奮を煽られて、ゆっくり丁寧だったストロークは自然と速く乱暴になっていく。
ばちゅっ、どちゅっと、結合部から粘ついた水音が響き、その度に腕の中で身体が跳ねる。もはや我慢を諦めた艶声は、ただ快楽の波に飲まれるままに甘く蕩けていった。
「ぅ、はんっ♡ あ゛ッ♡ は、ぁ、ああッ♡ ひ、ぁ゛ッ♡」
「うっ、く……っ! エウルア、エウルア……っ!」
「あっ、んんっ♡ ぅ、ん゛ぅぅぅっ……!! ぅ、イっ……ッ♡♡♡ ゔぅぅぅぅ~~~~~っ♡♡♡♡」
首に回されたエウルアの腕がぎゅっと力強く俺をかき抱き、びくびくぅっ♡♡と大きな痙攣とともに全身が密着する。
「っっ……!! でッ、る……っ!!」
絶頂に収縮した膣穴に陰茎を強く締めつけられて、その蕩ける快楽に堪らずそのまま射精する。ぴったりと腰を密着させ、どくんっ♡♡どぷぅっ♡♡とエウルアの一番奥に熱い奔流を叩きつける。
視界に光が瞬く射精快楽にぶるりと身を震わせながら、最後の一滴まで絞り出すように腰を押し付け続けた。
「っ、はあッ♡ はぁッ♡ はぁーっ♡ はぁ……んっ♡ む、ちゅ……♡♡」
長い絶頂と吐精の余韻の中で、互いに惹かれあうように唇が触れ合う。
汗ばんだ肌を密着させ、幸せな疲労感に揺蕩いながら、ゆったりとクールダウンのキスで息を整える。
「ちゅ、ちゅ……っ♡ ふぅ……もうっ! 君のせいで、結局声我慢できなかったじゃない! 団内で気まずい顔されたら恨んでやるんだから!」
「……ちなみに隣は誰の部屋なの?」
「んっ……隣は西風教会からの、救護要員の仮眠室よ。 持ち回りだから誰かはわからないけど……ひょっとしたら君の知り合いかもしれないわね」
「わぁ……」
西風教会の知り合いはそこまで多くはないが、確かにその可能性はある。バーバラとかだったら非常に気まずい。
「ちゅ……まったく、この恨みはすぐに清算が必要ね」
「えっ」
「覚悟しなさい、君にも情けない声出させてやるんだから!」
恨み言の裏に二回戦のおねだりを隠して、エウルアが俺の手を引いてベッドへと誘う。
最終的に、デートの延長戦は夜深く、耳元で「愛してる」と囁かれ続けたエウルアが降参するまで続いた。
◇ ◇ ◇
「……今日のこと、忘れないから。」
乱れたベッドの上。ふたり絡み合うようにして微睡むさなか、ぽつりとエウルアが囁いた。
「『罪人』の私が、まさかモンド城内でデートだなんて。 そんな現実離れしたこと、想像したことすらなかったわ。 ……今だって信じられないくらい」
眠気で重いまぶたを持ち上げてみれば、エウルアの満足そうな微笑みが目に映る。
……ああ、この顔が見れたなら、今回のデートは成功だったかな。
──なんて、ちょっと思ったけれど。
「なに『これで満足』みたいに言ってるの」
「え……」
「まだたった一回、デートしただけでしょ」
生憎と、俺の理想はまだまだ先だ。これくらいで満足してなんていられない。
「これから、何度だってデートするんだよ? モンドでも、それ以外の国でだって。 それに今回は『恋人関係の周知』っていう目的もあったし、『デートするためだけのデート』はむしろ次からが本番なんだから」
「……」
「だからこれくらいで満足しないでよ、エウルア」
いつか、「俺とのデートを当たり前にする」。今日はまだ、そのための最初の一歩にすぎないのだ。
寂しさばかりだったエウルアの過去を、幸福な思い出で塗りつぶすにはまだ全然届かない。まだまだ俺は愛し足りないんだ。
エウルアを優しく抱き寄せて、まぶたを閉じる。
「次のデートは、どこに行こうか」
次は璃月とかもいいかなぁ、なんて思いを馳せて。
エウルアの温もりを感じながら、次への期待はやがて夢の中へと溶けていった。