「おっ、旅人にパイモンじゃないか。 久しぶりだな」
「あ、ガイアだ!」
後日。
冒険者協会からの依頼を報告した帰り道でガイアに声をかけられた。
「聞いてるぜ? ははっ、いやぁお前さんも中々やるもんだ」
「……何の話?」
笑いながら肩を組んでくるガイアに思わず怪訝な声が漏れる。
「酒場でひと悶着あったんだろう? 我らが遊撃隊長サマ絡みで」
「あぁ、その事ね……」
「なんでも口さがない連中への『復讐』に、全員酔い潰して帰ったそうじゃあないか。 はは、お前がそんなに酒に強かったとはなぁ」
「……うん?」
ちょっと待って?その話、身に覚えがないぞ?
「手の早い詩人が歌にしてな、今じゃその話題で持ち切り……」
「待って待って待って事実とだいぶ違う!」
「そうだぞ! オイラ達酔い潰してなんかない! 誰だそんなテキトーな歌作ったやつ!」
「お前達の知り合いだろう? あの緑色の……」
「「
どうやらウェンティがあることないこと歌にしたらしい。脳裏に悪戯っぽい笑みを浮かべた顔が浮かんだ。「えへっ」じゃないよおのれウェンティ……!
「まぁ詩人の歌に多少の脚色はつきものだ。 俺も全部は信じちゃあいないが……話じゃ随分派手にやったそうじゃないか」
「あぁ、一応事実の方も知ってるのね……」
酒場での情報収集が得意なガイアのことだ。チャールズさんあたりに裏取りはしたのだろう。
「 実際よくやったと思うぜ? 一晩で二百万近くも飲むなんて奴、酒好きのモンド人でも滅多にいない。 それもヴィンテージの
「酔っ払いと喧嘩にならなかったのは、いつぞやのガイアの助言のおかげだよ。 ありがとう」
「はは、気にするな」
酒場で喧嘩を避けつつ目標を達成するやり方は、ガイアに教わったものだ。今回は本当に役立ってくれた。モナがいなければ師匠と呼んでいたかもしれない。
肩を組むガイアは笑いながら、「だが」と耳元で声を潜める。
「それでも、完全に波風立たずとはいかなかったらしい。 お前が『ローレンスの肩を持つモンドの敵』なのか『千年前の悪夢の名残をモンドから連れ去ってくれる風神の使い』なのか、どっちなんだって質問状が何通か騎士団に届いたそうだ」
「えぇ……」
「注意しておけよ。 ここから先、風向きがどう変わるかはお前の行い次第だ。 なるべく隙は見せるなよ」
「……うん。 わかってる」
エウルアの『風除け』になるということは同時に、俺の評判とエウルアの評判が相関するようになったということでもある。俺の行動はこの先、エウルアが『罪人の末裔』の風評から抜け出すことができるかどうかに大きく関わっていくことだろう。モナの言葉を借りるなら、『運命が深く交わった』というやつだ。
『風除け作戦』を実行に移しはしたが、俺だって全てが上手くいくとは思っていない。今回のデートこそ無事に終えられたが、多くの人の心が関わる以上、どうしたって今後「想定外」は出てくるだろう。今後下手な行動はとれないし、プレッシャーだってある。
だけど、後悔はない。
エウルアと運命を共に。望むところだ。
これからも、俺のスタンスは変わらない。『恋人達に誇れることをする』。そうしていればきっと二人とも、俺が踏み外さないように導いてくれるはずだから。
「まぁ、騎士団としての質問状への回答は『罪人だろうと見境ない女たらし』で通すことになるだろうが」
「ゔっ……」
「ぶふっ」
ここにきて早速の「想定外」。騎士団側の、あまりにも容赦ない一撃が胸に突き刺さる。
『栄誉騎士』と『天才占星術師』の恋仲はモンドではもはや周知の事実。だがその噂からたった二ヶ月でそこに『罪人の末裔』が加わったのだ……女たらしと言われても言い訳の余地はないだろう。
……エウルアを「俺の毒牙にかかった被害者」という立場に置ける点においても中々に妙案なぶん猶更、否定の言葉が出てこない。困った……。
「……言っとくけど、別に火遊びとかのつもりじゃないからね? ちゃんと真剣に……」
「っはははは! 冗談だ、本気になるなよ」
「ガイア~~!!」
「やーい、女たらし!」
「パイモンもうるさい!」
横で腹を抱えて笑うパイモンが恨めしい。この恨み、覚えたからな……!
二人の笑い声の中、恋人たちにもちょっと胸を張れそうにない