前話(洞天酒場女子会)のおよそ二週間前。
「──ここにいたのね」
洞天屋敷の一階。書庫として用意された部屋。
冒険先で手に入れた本や、モナが買った占星術の専門書籍や雑誌の数々。そしてそれらをおさめる本棚の、木と本の香りがほのかに漂う部屋の扉がおもむろに開き、午後の陽気を引き連れて、涼やかな声が耳に届く。
「帰ったわ、よ……?」
「し〜っ」
ソファーの背中越しに振り返って『静かに』と手振りで伝えると、遊撃小隊の任務から戻って怪訝そうにこちらを伺うエウルアの姿があった。
無言の手招きに応じたエウルアが、足音静かに近寄ってソファーを覗き込む。
「……寝てるのね」
そこには俺の腿を枕にしてすやすやと寝息をたてるモナの姿があるのだった。
「うん。 寄ってきたのを撫でてたら、寝た」
「犬猫かなにかなの?」
声を潜めたエウルアが、呆れたようにくすりと笑う。
あいも変わらず時間を忘れて書庫でなにやら読みふけっていたモナにお昼を食べさせて、そのまま流れで膝枕して撫でていたら寝入ってしまったのだ。
壁掛け時計を見るに、かれこれ二時間ほどになるだろうか。あまりにぐっすりなものだから、モナのお腹の上で一緒になって昼寝していたパイモンはちょっと前に起き出して、最近お気に入りらしい果樹園の手入れに行ってしまった。
「おかえり、エウルア」
「……ん」
覗き込む際に肩に乗せられたエウルアの手にそっと触れる。手の甲を指先で撫でると、彼女のひんやりとした指が絡んで捕まえられてしまう。小声でおかえりを囁くと胸元にするりと腕が伸びてきて、背もたれ越しに覆いかぶさるようにして唇同士が触れあった。
最初の頃はたどたどしかったエウルアも、最近はもうすっかり恋人らしい甘えかたを身につけた。ささやかで幸せな変化に温かいものがこみ上げ、互いに愛し愛されている実感が沸いて胸が踊る。
エウルアが率いる遊撃小隊の任務地は、その多くがモンド城から離れた場所だ。
璃月との国境付近やドーンマンポートの交易路警備、あるいはダダウパの谷や望風海角など僻地の脅威排除等となると、部隊単位での行軍速度の関係で野営をはさんで往復数日がかりの仕事となることは避けられない。今日だって四日ぶりのエウルアだ。
部隊の士気維持のため、野営で過ごした日数の半分以上の休日が約束されているとはいえ、同棲を始めたばかりの恋人に一日一度すら会うことができないというのはやはり寂しいものだ。エウルアもそう思ってくれているのか、任務帰り直後に二人きりになった時の彼女は毎回少しだけ甘えモードになる。今日もこうして帰ってきて早々、ソファーを挟んで抱きついて密着体勢だ。
「今回の任務は石門のあたりで何かしてたんだっけ?」
「ん……大した仕事じゃなかったわ。 出来かけてたヒルチャールの拠点を潰したり、スライムを退治して看板立てたり……平和なものよ」
「怪我とかしなかった?」
「そうそう怪我なんてしないわよ。 見くびらないで頂戴」
「恋人なんだから心配くらいさせてよ」
「ふん、そんなにヤワじゃないわ。 ……まあ、野営で鍋に触って火傷したうっかり者の隊員はいたけれど」
後ろからぎゅっと抱きすくめられながら、ひそひそ声で報告会が進む。水浴びはもう済ませてきたのか、ほのかに冷気を纏った体温と、肩のあたりに感じる柔らかなふくらみの感触が心地よくて、自然と目を閉じて寄りかかり、感じ入ってしまう。他愛のない報告の合間に、ときおり息継ぎのように交える軽いキスは、任務で会えなかった時間の補填だろうか。
体勢のせいで抱きしめ返せないのがなんだかもどかしくて、妥協案として回された腕に頬擦りすると、背後に照れたような息遣いが感じられていっそう愛おしくなる。
「……もう。 君って本当……」
「?」
「……恨まれたがりよね」
「えぇー……?」
なにかの琴線にでも触れたのか、抱きしめる腕を強くして、エウルアがふてくされたように恨み言をこぼす。腕の中から仰ぎ見ると、さもそれが自然であるかのように唇が合わさって、そしてぬるりと熱い舌が入ってきた。
「ん……♡ ちゅ……っ、ぺちゅ……♡」
撫でるように柔らかに、戯れのようにゆったりと、緩慢な動きで二人の舌が絡み合う。互いの吐息を交換しながら、ぬるり、ねろりと触れ合う舌の感触に、頭の奥の方からじんわりと快楽の熱が染み出してくる。
「れちゅ……♡ んふ、ふー……ちゅくっ♡」
部屋の静けさの中に、しばらくキスの吐息と水音だけが続く。静かに、ただ二人で愛情を確かめ合うだけの交感の時間が流れていく。
……と。
「ん゙っ」
不意に下腹に痛みを感じて、びくりと体が跳ねた。
思わずキスを切りあげて下を向く。と、
「……あら」
「起きた」
「起きた、じゃないです。 人の頭の上でなにしてるんですか、もう……」
俺の腹にがぶりと噛みついた口を離して、半眼でジト〜っとこちらを見上げるモナと目があった。
「ぐっすりだったね」
「そんなに寝てました? ……あ〜、もうすっかり午後ですねぇ。 おかえりなさい、エウルア」
「もう少し寝ててもよかったのに……これは恨みにカウントするべきかしら」
「せっかく気持ちよく寝てたのに、頭の下で急に枕が硬くなるのがいけないんです。 この枕が」
「ぅお、っ」
ジト目のモナに後頭部でぐりぐりと股間を刺激されて思わず声が漏れる。
……だって仕方ないだろう。好きな女とキスしてるんだし、そりゃ勃つものも勃つって。
「まったくもう……。 エウルアは続けてていいですよ」
「そ、そう……?」
「そのあいだ、私は枕にお仕置きしてます」
モナはそう言って、ソファーの上でごろんとうつ伏せに体勢を変えた。すっかり硬くなってしまった俺の股間に、モナが顔をうずめる。
「すん、すん……っ♡ す〜〜……♡ ふ〜〜〜……♡♡ まったく、キスだけですっかりその気じゃないですか。 こんなやらしいニオイまでさせて……仕方のない枕です」
枕に文句をつけながら、ふんすふんすと息巻くモナの姿を見て、エウルアと顔を見合わせる。
「…………まあ、いいわ」
「いいんだ?」
「だってまだ、し足りないもの。 だからほら、続き。 ん……♡」
例の『魔女の秘薬』事件を皮切りに、これまで何度も三人でシてきたせいだろう。モナもエウルアも、互いの痴態は見慣れたもの。人前ではちょっと恥ずかしいだろう甘えモードも、今やモナが起きたくらいでは終わらないらしかった。
もう起きたんだから気にかけないとばかりに、ソファーの横に回って右手側の肘掛けに腰を落ち着けたエウルアが、今度は前から体重ごと体を預けてくる。先程よりも密着感が増した体勢。上体でのしかかられ、俺の胸板に押し付けられたエウルアの豊かなおっぱいがむにゅりと潰れてかたちを変える。「私だけ見てなさい」とでも主張するかのように、視界の全てがエウルアで覆われた。
「ん、ちゅっ♡ ちゅる……っ♡ ぷちゅ、くちゅ……♡」
言われるままに、エウルアとの甘いくちづけが再開される。ねっとりと静かに、しかし先程までよりは少しだけ激しさを増して、エウルアの舌が口腔を這う。
そして、視界の外ではモナもまた、好き勝手にスキンシップをはじめるのだった。
「まったく。 毎日のようにあれだけシてるのに……元気すぎるんですよ、もうっ」
かちゃかちゃとベルトが緩められる音。モナの手でズボンの前が開けられ、下半身が外気に触れたのを感じる。ズボンに抑え込まれていたペニスが、外へと引っ張り出されて窮屈さから解放された。
「ちゅむ……っは♡ はぁ……はぷ、っ♡」
……ちゅっ♡ ……ぬる、るぅっ♡ くぷ、ぷぷっ♡
エウルアのキスに溺れるさなか、ペニスの先端にぬるりと快楽が走る。エウルアで覆われた視界の外ではじまる、モナによるフェラチオ。陰茎にモナの唇が触れ、舌で舐めあげられ、やがて亀頭がゆっくりと、唇の奥の温かな場所へと咥えこまれていく。
「っ! 〜〜〜……っ!!」
エウルアと舌を絡めるたびに、モナの口で亀頭がにゅぷにゅぷと弄ばれる。エウルアの唇に舌を吸い上げられながら、モナに手でゆるゆると竿を扱かれ、浅いストロークで亀頭をしゃぶられる。
温かな口腔の粘膜に包まれながら、たっぷりと唾液を纏った舌で円を描くように亀頭を舐られると、すぐにでも射精してしまいそうな気持ちよさに腰が震えて、エウルアと合わせた唇の間から情けない声が漏れてしまう
二人の恋人による、愛情のたっぷりこもった口淫奉仕。普通の、一対一の恋愛では、絶対に味わうことのできない極上の愛撫体験。
エウルアから与えられる穏やかな快楽と、モナから与えられる鮮烈な快楽。ない交ぜになったふたつの刺激に頭の中身がとろけるようで、縋りつくようにエウルアに抱きついた腕にぎゅっと力が入ってしまう。
ちゅ♡ ちゅ♡ ちゅく♡ くぽっ……ぢゅっ♡ ぬりゅっ……ちゅる……♡ ぐぽっ♡ ぐぷっ、ぐぷぅ♡♡
もはやどちらのものとも区別がつかない淫らな水音に聴覚までも支配され、急速に射精感が高まっていく。
俺の興奮の高まりに呼応するように、エウルアのディープキスが激しさを増していく。モナのストロークのテンポが徐々に速くなり、水音の間隔が狭まっていく。
エウルアの手が、俺の右手を自身の胸へと導いて、騎士服越しの柔らかさに手のひらを埋もれさせてくる。
モナの手が、俺の左手を自身の頭へと導いて、一番気持ちいいスパートの、その準備を整える。
「ん、ん゙〜〜〜〜〜〜っ!!!」
どくっ♡♡ どくんっ♡♡♡ びゅくっ♡ どびゅるるるっ♡♡
促されるままにエウルアの胸を掴み、モナの頭を押さえつけるようにして、突き込んだ喉奥に精を解き放つ。
「グぷっっ! ~〜〜〜っ♡♡♡ ぐ……ごく、っ♡ ごきゅ……♡」
張りつめた亀頭から食道へと直接流し込まれる精液を、モナは慣れた様子でえずくこともなく受け止める。
喉を鳴らして精子を嚥下するモナに搾り取られるようにして、肉棒が脈動し何度も精液を打つ。長い長い吐精を終えて、ようやくモナの頭を押さえつけていた手からも力が抜ける。そのまま頭を撫でると、尿道に残った最後の一滴までを吸い上げるようにして、モナがちゅぽんと陰茎から口を離した。
「ん、こく、っ♡ ……っ、はっ♡ はぁ、っ♡ はぁ~~~……♡♡」
「……毎回思うんだけど、苦しくないの? それ」
「はふ……♡ それがいいんじゃないですか。 っ、けぷっ♡」
「う~ん、なんていうか……普段は優しい人に乱暴にされて、でも仕草とかにはやっぱりちょっと優しさがあって……みたいな。 そういうの、よくないです?」
「えぇ……?」
「それに、ちゃんと元素力で体は守ってますから。 見た目ほどキツくはないと思いますよ。 たぶん」
「『神の目』の使い方、それでいいの……?」
「戦いが本業じゃないんですから、用途が炊事洗濯とかえっちとかになるのはむしろ自然な流れだと思いますけど……」
基本的には気持ちいいばかりの甘々えっちが好みのエウルアには、「ちょっとくらい激しめに求められるのがいい」というモナのマゾっ気は、まだちょっと理解から遠い場所にあるらしかった。
「エウルアもやってみます?」
「……遠慮しておくぅんっ?!」
会話のさなか、騎士服の上からエウルアの乳首のあたりを爪でカリカリっ♡とイタズラすると、可愛らしい奇声をあげたエウルアに睨まれた。
「ちょっと! なにす、んむっ♡」
「ちゅ、はぁ……ごめんねエウルア。 モナのせいでスイッチ入っちゃった……」
エウルアを再び抱き寄せて唇を奪う。
モナとエウルア二人がかりの準備運動のおかげで、さっきまで甘々だった俺の気分は、今やムラムラのほうにスイッチが入ってしまった。四日ぶりに帰ってきた恋人と、もっと深くで繋がりたいと、茹だった頭と跳ねる心臓が叫んでいる。
「ぅ、ん゙っ♡ 」
モナがどいた膝の上に、今度は背面座位にエウルアを抱いて。うなじにキスを落としながら、すっかり熱くなった身体をまさぐる。
エウルアの、研鑽によって磨かれたしなやかな身体。揉めば押し返されるような筋肉の弾力と、それと相反する女性的な柔らかさが同居した、芸術品のような肉体。
「ふっ……♡ くぅ、ンっ♡」
腕を回したお腹に指を這わせ、むっちりとした太腿からお尻にかけてのラインを撫であげる。手つきにあわせて堪えるように吐息が漏れ、ぴくん♡と跳ねる身体がエウルアの興奮を伝えてくる。
たっぷりとしたバストを両手で持ち上げるように揉むと「はぁぁ、っ♡ 」と甘く吐息がこぼれ、服の上から両方の乳首を爪で引っ掻くと、快楽を逃がそうと膝の上でくねくねと腰が踊った。
「っ、やっ♡ それっ♡ 乳首カリカリ、やめなさ、っ♡♡」
「エウルア、それ弱いですよねぇ。 ふふ、なんだかんだエウルアも、そうやって責められるの好きなんじゃないですか」
「っ♡ モナっ、うるさ、っ♡ あっ♡ あっ♡ やっ♡♡ ぅゔっ♡♡♡」
水差しからコップに水を注いで、こちらを眺めてくすりと笑うモナに、エウルアは言葉を返す余裕もない。うなじにキスマークをつけながらひとしきり乳首をくすぐってから、トドメとばかりに乳首を潰すように指先で押し込むと、びくびくっ♡と背中が跳ねて、そしてくたりと力が抜けた。
俺に背中を預けて荒い吐息で余韻に浸るエウルアの唇を軽く食むように吸って、そのままソファーの隣に下ろし横たえる。快楽にすっかり蕩け、興奮しきったエウルアの目は、無言のままに続きを求めて仰向けに俺を待っているようだった。
「ん……ぁ♡」
なんだか今日は責めたい気分だ。ソファーから立ち上がって、俺はそのままエウルアに覆いかぶさった。
◇ ◇ ◇
「っあ゙ぅ♡ ゔっ♡ お゙っ♡ お゙ぉ♡」
ぱちゅっ♡ばちゅっ♡と肉のぶつかる音にあわせて、眼下で柔らかな尻肉が波打つ。深めのストロークで奥を小突くように責めると、法悦にざわめく膣壁がペニスを甘くきゅんきゅんと締めつけ、すっかり余裕をなくしたモナが呻き声にも似た嬌声をあげた。
「おぐっ♡ おくばっかりっ♡♡ だっ、めぇぇ♡♡」
「っ、モナっ! そろそろ、出すよっ!」
「ん、ぐっ♡ ふゔっ♡♡ きでっ……きてくださ、イっ♡ ぐっ、ゔぅ~~~~~っっ♡♡♡」
どぷどぷうっ♡♡ びゅっ♡♡ びゅくぅっ♡♡♡
ソファーの背に手をつかせ、絶頂に跳ねる腰を立ちバックでがっしりとつかんで。モナのむっちり桃尻にぴたりと腰を密着させて、雌芯の最奥に滾った白濁を吐き出す。下腹の内側でびゅくびゅくと跳ねるペニスに弱点を刺激されたのか、ソファーに縋りつくようにしてモナががくがくと脚を痙攣させて身悶えた。
「あっ……♡♡ はあ゙……っ♡ は……っ♡」
一度の射精までに、モナは何回イったのか。長い射精を終えて、絶頂の余韻にびくびくと震える秘肉からペニスを引き抜くと、膣穴からぽたぽたと白濁を床に散らしながらモナがその場にへたり込んだ。
「激しめのほうが好きって言う割に、体力はないわよね、モナ」
「はぁ、っ♡ はぁぁ……♡ き、騎士と比べないでくださいよ……」
恋人になってからこっち、半年以上かけて性感開発が進んだモナはすっかりイきぐせがつき、体力消費が増えたことでよわよわ加減に拍車がかかっている。ソファーの背に頬杖をついてくつろいだエウルアの言葉にも、余韻に荒く息をつくモナは朦朧と言葉を返すばかりだ。
モナほど激しくしなかったせいか、はたまた現役騎士の体力ゆえか。モナの前に正常位で二回、ジャムを煮詰めるように甘くドロドロに蕩けさせたはずのエウルアは、休憩を挟んだらもう回復したらしい。
「ふー……」
「君は君で底なしよね」
「底なしって、今日はまだ三……いや四回だよ?」
「まだ、って……アンバーが言ってたわよ? 男の人って、普通は一日にそう何度もできるものじゃないらしいじゃない」
「……たぶん?」
「なんで君が疑問形なのよ」
アンバーといったい何話してるんだと思わないでもないが……まぁ、今まで色恋に縁のなかったエウルアがそういう話をできていること自体は喜ばしいことではあるのだろう。深掘りはするまい。……女性同士の猥談は結構生々しいとも聞くし。
モナは休憩が必要そうだから、次はまたエウルアかなぁ、なんて思いながらソファでくつろぐエウルアのほうへと向きなおる。
と。
「──それで、いつまでそこにいるつもり?」
「えっ」
エウルアが不意に、部屋の扉に向かって声をかけた。
振り向いてドアを見る。開いてはいないものの……確かに向こう側で、なんだか慌てたような気配がした。
「……気付いてなかったの? モナとシてる時からいたみたいだけど」
「全然……」
「冒険者やってるのに、気配に鈍感でどうするのよ」
エウルアの呆れ声が耳に痛い。仕方ないじゃんモナ鳴かせるのに夢中だったんだから。
洞天に来客があった時は、マルの仙力を通じて俺にもわかるようになっているから、お客さんとかではないはずだ。パイモンだったらドアの前で待たずに、そのまま入ってくるかほかのところで暇を潰してるだろう。
ということは……残る選択肢はひとつ。ドアを開けて、おずおずと中に入ってきたのは──
「うぅ……」
「バーバラ」
ついこのあいだ、洞天に住人として登録したばかりのバーバラだった。
バーバラとはまだ、一対一でしかセックスしたことがない。初めて見たであろう自分以外の痴態を前に、恥じらいで赤く染まった頬が純白のシスター服に映える。俯きがちな視線と一緒に、眩い金色のツーテールが、心なし気まずそうに揺れた。
「えっと……の、覗いてたわけじゃないよ? これは、その……入りそびれちゃって……」
「気しないで入ってくればいいのに」
「き、気にするよぉ……」
中から喘ぎ声が聞こえてくる部屋に、気にせず入れというのも無体な気はしないでもないが、エウルアはあっさりとそう言ってのける。
……だがまぁ、俺達が一対多の恋人関係である以上、こういうことにも慣れてもらわないといけないのもまた事実だ。こうやって、その場の流れでセックスまでなだれ込むことなんて、うちではわりと日常だし。それに俺としても、遠慮や気遣いの結果距離ができてしまうよりも、気にせず望むままに振る舞ってくれるほうがありがたいし。
「そうやって遠慮ばかりしてても、いいことないわよ?」
「で、でも、その……邪魔しちゃうんじゃないかなって……」
「もし邪魔だったらその時に
「うぅ……」
それでも未だに二の足を踏むバーバラを見かねたのか、エウルアが無言で、サッサッと手振りで俺に合図を送ってくる。
『前進』『攻撃開始』
遊撃小隊で使うハンドサインと、「君がなんとかしなさい」と言わんばかりの無言の視線。
……さっきは「気にしないで」なんて言ってた割に、慣れないバーバラのことは気にかけてあげるあたり、実に彼女らしい。
「……っ!」
エウルアなりの優しさに背を押されて、バーバラに歩み寄る。モナを抱いた直後の、下半身丸出しのまま、一歩、また一歩と歩を進めるたび、バーバラは怯えるようにぴくりぴくりと肩を震えさせて後ずさる。
壁際に追い詰めたバーバラへと手を伸ばして頬を撫で、顎を持ち上げて顔を上げさせる。脅えるようだった仕草とは裏腹に、彼女の口元にはうっすらと期待の笑みが浮かんでいた。
「ひゃ、っ♡」
「バーバラ」
「 ぁぅ……っん♡」
壁に押し付けるようにして、その柔らかな唇を奪う。バードキスでちゅっと小さくリップ音を鳴らすと、こわばっていた彼女の肩からはたちまち力が抜けていった。
「するよ?」
「……ぅ、うん……♡」
バーバラはこう見えて結構、エッチなことが好きらしい。「二人きりになるたびに、押し倒されるのを期待してた」なんて言っていただけあって、こうやって襲われるようなシチュエーションに、彼女は全く抵抗しない。至近距離で額を合わせ、有無を言わさない形だけの確認をすると、欲情に目元を蕩けさせたバーバラが小さくこくりと首肯した。
「はぷ……♡ んむ……れる♡ 」
細い腰を抱き寄せると、目を閉じたバーバラが捧げるように唇を差し出す。舌で唇に割り入って、バーバラの舌を絡めとって咥内を侵略する。ぷるぷるの舌の感触を味わいながら、互いの唾液を混ぜ合っては彼女に飲ませていく。
背後でなにやら、「随分タラシらしくなってきましたねぇ」とか「弟子の教育がなってないんじゃないの?」「あの底なしを今更どう躾けろって言うんですか」なんて声が聞こえるが、黙殺。復活したんだねモナ。あとで覚えとけ。
「んむ……ちゅ♡ んっ、んん♡」
あまり身長差もないのに、抱くと腕にすっぽりと収まってしまう少女の体。触れるとスフレみたいに儚い柔らかさの乳房と、その頂点でぴんとかたくなった可愛らしい乳首。バーバラの腰と尻をいやらしく撫で回しながら味わう唾液の味。清純なアイドルで清楚なシスターの、俺だけが知る女の味はたまらない甘露だ。
スカートの布越しに、手のひらに伝わる柔らかな感触。だが、揉むと少しだけいつもと違う凹凸を感じる。これは──。
「んぁっ♡」
スカートの後ろをたくし上げて、中へと手を滑りこませる。
手のひらに直接触れる太腿の素肌。そこにいつものタイツの感触はない。尻を覆っている小さな布地の稜線をなぞりあげていくと、腰の横には結び目があった。これは……紐結びのショーツだ!
風の翼が広く普及しているテイワットでは、「見えてしまうこと」を前提として、タイツやドロワーズ、スパッツのように布面積が広い下着が普段使いとされていることが多い。バーバラも例に漏れず、いつもは白地のタイツを着用している。
だが、今は違う。今バーバラが履いているようのは、布面積の少ない、いわゆる『大人の下着』。異性を誘惑する時にだけ身に着ける、特別な下着。つまり……
「……抱かれに来たんだ? バーバラは」
「ぁ、うぅ……♡」
「いい子だね」
「ふあ、っっ♡♡」
バーバラは、俺に脱がされ抱かれるのを期待して、この下着を選んで履いてきたのだ。耳元で褒めてやると、腕の中のバーバラが悩ましげに体をくねらせる。
いじらしい誘惑に貫かれた心臓がばくばくと暴れだす。俺自身もまだバーバラとの行為に慣れきっていないのもあって、興奮しすぎじゃないかってくらい呼吸が一気に荒くなる。密着した体のあいだではち切れそうなほどに勃起した肉棒が、服越しにバーバラの下腹にぐりぐりとめりこんで、入れさせろ、犯させろと主張している。
バーバラの誘惑は大成功だ。このまま服を破いて、むき出しにしたその下の肢体を貪りたい。突き上げるような、暴力的な嗜虐衝動を抑えるのが大変だ。……今度やってみようかな。ダメにしていい服用意して。
「あっ♡ ぅう、っ♡ ひぅ、んんっ♡」
尻たぶのあいだから手を滑らせて、後ろから秘部を撫でる。湿気と熱気のこもったスカートの中心。既にしとどに濡れ、たっぷりの愛液を吸った下着は湯気立つようで、指先で捏ねると媚肉にぐちゅりと沈みこんだ。バーバラの感じやすい陰核を指の腹で軽く押し込むように撫でてやると、俺にしがみついたバーバラが甘い鳴き声をあげる。
スカートの中でショーツの紐を解き、露わになった雌穴にぬちゅりと指を挿し入れる。部屋に入ってくるまで、中から聞こえる嬌声にあてられて独りでシていたのだろう。キスだけにしては蕩けすぎなほどにふやけた膣肉が指二本をたやすく飲み込んだ。
ぷちゅ♡ぐちゅっ♡と卑猥な水音をたてながら、反射的に閉じようとする太腿をこじ開けるようにして雌穴をほじる。ぬめる膣内で指を曲げて腹側のざらざらを引っ掻いてやると、胸元に縋りついたバーバラがあられもない声をあげた。
あー……もう我慢できない。
「バーバラ。抱っこするよ」
「ふぇ……わ、わっ!?」
膝の裏から腕を通し、柔らかな尻肉を下から手のひらで支えるようにして、華奢な体をその場で抱き上げる。見た目よりも軽い体重に体がひょいと浮き上がって、不安定な姿勢に慌てたバーバラが俺の首に腕を回してしがみつく。密着することで強まった甘ったるい汗の匂いで、さらに興奮が過熱する。
抱き上げた体を壁に押しつけて固定し、捲れ上がったスカートの中で濡れた花弁にいきり勃つ肉棒を擦りつける。先端から溢れ出た我慢汁と秘処から溢れたバーバラ自身の愛液を纏った肉棒が、スカートの中で彼女の素肌をいやらしく汚す。
「ぁ、ぁぁ……あ゙っ♡」
熟れて吸い付く秘裂の中心を亀頭で探って狙いを定め、ゆっくりと腰を突き出す。体ごと壁に縫い付けるように、バーバラの秘めた女の芯をじっくりと串刺しにしていく。
「あぁ……バーバラのナカ、どろっどろで気持ちいぃ……っ!」
「ゃうぅ、っ♡ い、いわないでぇ……♡」
処女だった頃の硬さがほぐれ、俺のモノを受け入れることに慣れつつある柔らかくきつい肉の隘路。はしたなく床に涎を零しながら、ねっとりとペニスに絡みつく膣肉の蠕動。たまらなく気持ちのいい媚肉の歓迎を押し分けて、欲情に濡れる蜜壺を犯し貫く。
やがて亀頭が最奥に届き、下半身が密着する。
「ぅあ゙、っ……♡ こ、れっ♡ ぉ、おちんちん、すごいぃ……♡♡」
「っ、気に入った?」
「これ、だめっ♡ だめだよぉ……っ♡」
上気した頬と潤んだ瞳で、バーバラが小さくかぶりを振る。マゾっ気の強いバーバラの「だめ」は、本当にダメなのかちょっと判断に困るところだ。蕩けきった声からは苦痛の一つも伝わってこないし、膣内の締め付けははやくはやくと続きをねだるようでもある。
う~ん……続行で。
抱えた体を軽く揺らすようにして腰を小さく突き上げる。ストロークは小さいが、俺の押し付ける力と子宮にかかる自身の体重がそのまま快楽刺激に変換されて、しがみついたバーバラが俺の背に爪をたてて悶えた。
「はゔっ♡ ゔ♡ うぅっ♡♡ まってっ♡ だめっ♡ こぇっ、だめぇっ♡♡」
必死に堪えるような、甘い懇願がチンポに響く。熱烈にしゃぶりついてくる貪欲な媚肉。俺を迎え入れるバーバラの胎はとろけそうな極楽で、キツくも熱い締め付けが獣性をかきたてる。
「気持ちよさそうだけど、ほんとにダメ?」
「これっ♡ やっ♡ やだやだっ♡♡ こえっ♡ かわいくないこえ、でちゃうぅ♡♡」
「そう?」
どうやら、奥を刺激されて出ちゃう声が恥ずかしいらしい。
いつもの可愛い感じの声が、快楽でほんの少しだけ濁った舌っ足らずな嬌声。それを恥じらって、我慢しようとしている感じが実にイイ。個人的には、普段は楚々としたシスターの知られざる一面って感じがしてすごく興奮する。
「大丈夫。俺はもっとバーバラのかわいい声聞きたいよ」
「んんぅっ♡♡ で、でもっ……やぁ゙っ♡♡」
「だからほら、もっと聞かせて」
「んやぁっ♡ いっ、いじわるぅ♡♡」
抱きあげられたバーバラに、もとより逃げ場などない。恥じらいの悲鳴をもっと聞きたい欲求に誘われるまま、バーバラの脚の付け根に腰をぴったりと密着させ、彼女の体をゆさゆさと揺り動かす。
嗜虐心と征服欲を煽る愛らしい鳴き声。腰の動きに合わせて膣奥に与えられる刺激が、彼女の被虐願望を満たしていく。
「っゔ♡ ふ、ぅ゙♡ あ゙っ♡ だめっ♡ ん゙っ♡ んぅ゙♡♡ こえっ、はずかしぃのっ♡」
「でも、気持ちいいんでしょ? 我慢しないで」
「うぅ゙♡ ぅん゙♡ やぁ♡ も、むりっ♡ おなかっ♡ おくっ♡♡ あぅ、うぅゔ♡♡」
甘イキを繰り返しながらしがみついてくるバーバラの蕩けた媚声を聞きながら、俺自身も気持ちよくなるためにバーバラの膣穴で乱暴に肉棒を扱く。バーバラの肉体を支配している優越感、思うさま快楽を与えている充足感。絡みつく膣襞の断続的なイキ締めに、ぞくぞくとした快感が射精中枢を駆け巡る。
「ゔ♡ あ゙っ♡ あ゙、いぐっ♡♡ あ゙っ♡ いっ、ひゃぅっ♡♡」
「っ、そろそろ……っ! バーバラ、出すよ、っ!」
「っひ、ぐっ♡♡♡」
耳元で囁くと、がりっ、と背中に爪をたててバーバラがしがみつく。
びゅるるるっ! びゅううううっ! どくんっ、どくん、どぴゅるっ!!
「ぁぅ゙♡♡ あ゙っ♡♡♡ あ゙ぁ゙~~……っ♡♡♡」
ぎゅっとバーバラの膣が引き絞られて、彼女の絶頂が俺に伝播する。きつく締めつける膣肉の蠢きを感じながら、最奥まで突き上げた肉棒から容赦なく欲望を解き放った。どくっ、どくっと脈打ちながら吐き出される精液を、バーバラの子宮が飲み干していく。
腰の奥にじんわりと広がる絶頂の余韻。全身を甘く痺れさせる恍惚に息を荒げながら、抱えたバーバラの体を支え直す。未だに痙攣を繰り返している彼女の最奥へ、出したばかりの精液を塗りつけるようにぐりぐりと亀頭を押し付ける。
「はぁ、っ♡ はぁ……♡ ……ねぇ、ちゅ~……んっ♡」
余韻に浸りながら荒い息を戻していくさなか、抱かれた腕の中でバーバラが蕩けきった顔をあげた。子供のように甘えた声で、キスをねだって唇をとがらせる。
優しく触れたバードキスに、恥ずかしそうに「えへへ」と笑う彼女の笑顔は眩しいくらいに妖艶で、ちょっとこれはファンには見せられないな、なんて浮かんだ感想が可笑しかった。
◇ ◇ ◇
「うぅぅ……すごい声聞かれちゃった……」
襲われえっちに夢中だったバーバラが、この部屋にモナもエウルアもいたことを思い出したのは、抱き上げていた彼女をソファーに降ろしてからだった。
真っ赤になった顔を両手で覆って恥ずかしがるバーバラを、三人で覗きこんでは顔を見合わせる。
本来、喘ぎ声や痴態なんて人前でさらけ出すようなものでもない。こういうのは、秘するからこそ『秘め事』なんて呼ばれるのだ。そもそも多人数でのセックス自体がアブノーマルなもの。バーバラが恥ずかしがるのも道理だ。
だが。
「
「もう聞かれちゃったんだから、って割り切った方が楽ですよ? たぶん」
俺の恋人としての先輩二人は、このアブノーマルな環境にすっかり適応しているらしかった。
「今後いくらでもこういう機会はあるんですから、じきに慣れます」
「そうね、恥ずかしがることないわ。 それに、すごい声って言うなら、モナのほうがすごかったでしょう? 聞こえてたんでしょ? ドアの向こうで」
「……ちょっと、こっちにまで飛び火させないでくださいよ」
「事実じゃない」
「事実ですけど!」
エウルアなりの慰めのつもりなのか、バーバラをだしにモナをからかいながら彼女が言う。
あっけらかんとした先輩二人の、身も蓋もない助言。だが現状、俺達の場合に限ってはそちらの方が正しいのだった。一人の男に、三人の女。歪な恋人関係を構築するに至った俺達にとって、アブノーマルこそがノーマルなのだ。
顔を覆った手をずらし、目だけを出してバーバラがちらりとこちらを伺う。
「うぅ……幻滅しない……?」
「幻滅?」
「ぅ、その……」
心配そうな、恥ずかしそうな視線。躊躇うようにうろうろと宙を彷徨うそれを見て……ふと、ピンとくることがあった。
「……い、いやらしい子だ、って……思わない……?」
今日を含めてこれまでに四度、バーバラと肌を重ねて感じたことがある。
バーバラはどうも、性的なことへの好奇心が強めらしい。恥じらいこそあれど、行為がはじまれば積極的に、理性が蕩けてしまえばより激しい快楽を求めて、夢中になって没頭する。
淫らな肉欲に耽溺する、女としてのバーバラ。清楚なシスターにも、溌剌なアイドルにも、似つかわしくないような一面が、彼女にはある。それを知られてしまうのが……知られて、軽蔑されてしまうことが、きっと恐ろしいのだろう。
「バーバラ」
顔を隠した手の上から、そっと頬を撫でる。
「それでいいんだよ、バーバラ」
「……ふぇ?」
「いやらしい子で、いけないことって何かある?」
思わない、とは言わない。ただ、バーバラの、淫蕩な性を肯定する。
一般的に、女性は貞淑であることが美徳であるとされがちだ。ましてバーバラは聖職者でありアイドル。求められる美徳の度合いは、一般人よりも高いとすら言える。求められる社会的な外面と自身の内面の差異に、きっと葛藤だってあっただろう。
だが、ここには俺の恋人しかいないのだ。体裁を気にして内面を誤魔化す必要なんてどこにもない。えっちに興味津々なのも、この場においてはバーバラの魅力のひとつだ。
それに何より──
「そもそも、考えてもみてください。 この場で一番いやらしいのは、どう考えてもこの女たらしです」
「そうね。 恋人三人まとめて抱くような人に、いやらしさを説かれる筋合いないわよね」
「……」
モナとエウルアも、隣でうんうんと頷いている。ごもっともすぎて言葉もないが……まぁ概ねそういうことだ。
ここは洞天。俺達の愛の巣だ。
日常にあってはどこか後ろめたく、誰にとは言わずとも自らを卑下しひた隠しにせざるを得ない、淫らではしたない雌の本性は、ここにあっては肯定される。「幾人もの女に手を出す不埒で不実な恋人」の前でなら、いくらでも曝け出すことが許される。
「だからここでは、どんなにえっちになっても、いいんです……♡」
艶たっぷりにモナがそう言って、バーバラの左に腰を下ろす。
淫猥な性を肯定してくれる空間。ありのままをさらけ出せる場所ができたことに、バーバラの喉がごくりと鳴った。
「うん。 モンドじゃ罪人やアイドルでも、ここでの身分は等しく俺の女なんだから」
「……よく素面でそんなこと言えるわね」
「エウルアはお酒飲まないと言えないですもんね」
「恨むわよ?」
「エウルアの恨みって、ちょっとカジュアルすぎませんか?」
モナと軽口を叩きあいながら、エウルアがバーバラの右に腰を下ろす。
「ふふ、さぁ。 夕食まではまだ時間ありますよ……♡」
「これで終わりじゃないんでしょ? ……ほら、次は誰にする?」
淫らな笑みを浮かべるモナ。表情よりも視線で熱情を伝えてくるエウルア。いまだ恥ずかしそうに、頬の赤さが抜けきらないバーバラ。三人の恋人が三様に、ソファーに並んで座って俺を誘う。
書庫での爛れたひと時は、お腹をすかせたパイモンが部屋に突入してくるまで続いた。