※この作品はR-18です。

七国漫遊紀行   作:うさみの

20 / 20
一年目 九月中旬


ホントは甘雨回書きたかったんだけど、頭の中で寝起き身繕いバーバラが居座ってるせいで全く進まなかったからこっち先に書いた。非力な私を許してくれ……。


閑話 Wake up, make up (バーバラ)

 あけ放った窓から流れ込む爽やかな朝の空気が、夜のあいだに部屋に籠もった熱気を連れ去っていく。

 

 ゆるくウェーブがかかったバーバラの金糸の髪を、朝風が優しく撫でる。差し込む柔らかな朝日に彼女の金色は輝くようで、肩まである髪がふわりとそよぐ様はまるで黄金の潮騒だ。

 陽光がバーバラの、淡い少女のボディラインをベビードールの薄布越しに透かす。横たわったベッドの上から眺める端正な顔立ち。薄桃色の生地からうっすらと透けて見えるなだらかな胸のふくらみ。腰のくびれとお尻にかけての美しい曲線。もう三ヶ月ほどにもなる恋人生活で見慣れこそしたが、いつだって男心をときめかせる少女の肢体が、朝日の中に陰影となって窓際の景色を彩る。まさに絶景だ。

 

 髪を下ろしたバーバラは、普段のあどけない印象から一変してぐっと大人っぽくなる。いつものツーテールを解いただけでガラリと印象が変わってしまうのだから、髪型とは不思議なものだ。

 

「────♪」

 

 ベッド脇に置かれた鏡台(ドレッサー)の前。丁寧にブラッシングを終えたバーバラが、慣れた手つきで髪をまとめあげていく。下ろすと背中まである髪をふたつ結びに白い花弁のシュシュで留め、フォンテーヌ製だというヘアアイロンでくるくるとそれを巻いていけば、見慣れた『モンドのアイドル』のできあがりだ。

 夜を共にする関係でもないと目にすることのできないバーバラの姿。ファンの知らない、『アイドルじゃない』彼女の朝の身繕いを見るのは……なんというか、独特の幸福感がある。

 

 横になったまま、ベッドの上からそっと指を伸ばす。巻きたてのツーテールはアイロンの熱を残して温かく、指先が触れるとふわふわと弾むように揺れた。

 

「ん、なぁに?」

「ん~……なんとなく」

「ふふ、なんだか猫ちゃんみたいだよ?」

 

 そう言ってくすくすと笑うバーバラが、わざとらしく髪を揺らしてみせる。踊る髪先を追いかけて、伸ばした指がつられて踊る。キャッツテールあたりでよく見る動きは、言われてみればたしかに猫だ。

 

 朝のヘアセットを終えたバーバラが、鏡台を片付けてベッドへと戻ってくる。夜中のうちに星見から帰ってきて、そのままベッドの反対側に潜り込んで寝息を立てているモナを起こさないよう、静かに腰を下ろしてそのまま寝転がる。俺の体をクッションにでもするように、ころんと仰向けに体を預ける体勢。

 ふわりと香るバーバラの甘い香り。のしかかってくる彼女の心地よい重み。触れた素肌から伝わる心の温度。肩口をくすぐる彼女の髪にむず痒さを覚えながら、手のひらでそっと頬を撫でると、嬉しげな頬擦りが返ってくる。

 バーバラに無防備に体を委ねられ、その体温を感じながら、すべすべふにふにのほっぺを堪能できる幸福。恋人の特権として享受できるこれはきっと、モンドで最も高級な抱き枕だろう。

 

「ふ〜〜……」

 

 あぁ……このまま二度寝したら、きっと最高に気持ちいい。胡乱な頭にのしかかるような安眠の欲求に自然とまぶたは落ち、肺から深い吐息が漏れる。と。

 

「……ちぅ……♡」

 

 頬を撫でる手を取って、バーバラが小さく手のひらを吸った。小鳥のさえずりにも似た、微かなリップ音。重いまぶたを持ち上げると、上目遣いでこちらを見上げるスカイブルーの瞳と目が合った。

 

「……♡」

 

 じっと目を合わせたまま、音もなく手のひらがついばまれる。二度、三度、四度。繰り返されていくたびに、唇が少しずつ、手のひらから手首のほうへと近づいていく。

 

 キスには、その場所によって異なる意味があるのだそうだ。おでこへのキスは『祝福』だとか、騎士物語にあるような手の甲へのキスは『敬愛』だとか。幼い頃からの付き合いだというリサさんの薫陶か、はたまた姉(ジン)が好むという恋物語の影響か、バーバラはこの手のことに造詣が深いらしかった。

 

 曰く、手のひらへのキスに込められた意味は『懇願』だという。どうかお願いをきいてくださいという、おねだりのキス。

 そして──

 

「……ちゅ、っ♡」

 

 上目遣いの瞳がにまりと笑んで、手首に落とされた唇が、ひときわ強く音をたてた。

 手首へのキス。意味するのは──『欲望』。

 

「ん……♡ ちる……ちゅ、ちゅ♡」

 

 眠気の残る頭に、恋人の声なき誘惑が朝を告げる。呼び起こされた、二度寝とは別の欲求が、滲むようにじわりと体の奥から湧き出でてくる。

 

 指先でそっと唇をなぞると、そのままかぷりと咥えられた。甘える唇に柔く食まれながら、指を舌でねっとりとしゃぶられる官能。蠱惑的でありながらキスよりも静かに行われる口腔愛撫が、少しずつ互いの熱を高めていく。言葉のひとつも交わさないままに、触れ合いの中だけで合意が形成されていく。

 

 もう一方の手で、上気しはじめた素肌をゆっくりと撫でていく。肩から鎖骨のラインをなぞり、デコルテのあたりに指を滑らせ、とく、とく、と幾分速さを増した鼓動を手のひらに感じながら、下へ。つるりと光沢のある霓裳絹のベビードールの肌触りを手の甲に感じながら、その中へと潜り込んでいく。

 

「ん、っ♡ ……ふふ、えっち〜♡」

 

 自分から誘ったうえ、胸元へ這い込む手を咎めもしないくせに、揶揄うようにくすくすと、裏腹の言葉を囁いてバーバラが笑う。

 

 手のひらにちょうどよく収まり、指を動かせばまるで綿菓子のようにふわふわと形を変える少女の柔らかな果実。楚々として慎ましやかでありながら、優しく愛でるように揉んでも、日常の中ふとした時の手すさびに、揉み潰すように手荒に扱っても悦ぶばかりの淫らな雌の柔肉。すっかり手に馴染んだその感触を楽しみながらそっと頂点を撫でれば、ふっくらとした乳輪が指の腹に吸い付く。

 

「ふ……っ♡ ふぅ、ん……♡」

 

 

 素肌に触れる俺の手の感触を楽しむように、ゆったりとした手つきの愛撫にバーバラの体がぴくん♡と震える。指の腹で優しく押し込むと、ぷりぷりと押し返す乳首の感触。くるくると円を描くように捏ねていけば、指先の粒がみるみる固さを増していく。乳房を指の腹で掬いあげるように揉み、指の段差で乳首を摺り上げてやるたびに、眼下で熱のこもった吐息がこぼれた。

 

「っ、う♡ んぅ〜〜……♡♡」

 

 じっくりとした愛撫の甘い快楽に、腕にしがみつくようにしてバーバラが悶える。こらえる声の端から溢れる、甘えきった吐息が心地よく耳をくすぐる。

 

「はぁ、っ♡ ……ねぇ」

「ん?」

「また、跡……つけて♡」

 

 更なる快楽を期待する雌蕊の疼きにもじもじと太腿を擦り合わせながら、バーバラが上目遣いに囁く。

 

 服の下にキスマークを残したり、その日の髪型を俺に作らせたり。日によって形は様々だが、バーバラはよく、こうしてマーキングをねだる。

 モンドのアイドルとして日常を注目の中で過ごす彼女にとって、自身だけが知り得る『秘密』を身に纏っていることは、それ自体が大きな安心材料になるのだとか。

 

「……いいの? 今日、午後からライブでしょ?」

「うん、いいの。 そのほうがたぶん、緊張もしないと思うし」

 

 ファンのリテラシーが育ちきっていないモンドの現状、アイドル活動に支障が出てもおかしくないという理由から恋人関係すらまだ関係者だけの秘密としている中で、こういうのもどうかと思わないでもないのだが……なにかと苦労を抱え込みがちな彼女に、「これを思い出すたびにね、『モンドの』から『あなたの』に戻ってこれるの」なんて言われてしまっては仕方ない。ファンの間では清楚可憐で通っている彼女の肢体に支配の痕跡を残す仄暗い愉悦もあいまって、俺もついつい乗せられてしまうのだった。

 

「だから、ね?」

 

 腕の中で、バーバラがころんと体勢を変える。甘えた表情はそのままに、どこか悪戯っぽい光を目の中に湛えて。俺にのしかかったままうつ伏せに、柔らかな体を密着させながらよじよじと上へ登って、耳元に顔を近づけて。

 

「──アイドルのカラダに、い〜っぱい……あなたのモノってしるし、つけて♡」

 

 『アイドル』という肩書きすらも、興奮を煽るスパイスに利用して。耳に小さく「誘惑」のキスを落として。恋人の甘く蠱惑的な囁きが、俺に朝一番の仕事を告げた。

 

 

「……どこで覚えてきたの、そんな誘い文句」

「えへへ、リサさん!」

「そっかぁ……」

 

 

       ◇ ◇ ◇

 

 

「今日はねぇ……ん、ここ。 このあたりがいいな」

 

 再び鏡台の前に座ったバーバラが、鏡越しに巻きたてふわふわの髪を持ち上げ、首の右側あたりを反らして示す。

 

「寝る前のえっちでつけてくれたとこ、消えちゃってるから」

 

 昨晩の情交の名残を惜しむように、バーバラの指が首筋を撫ぜた。

 

 キスマークとは、つまるところ内出血。打撲でできる痣と同じようなもので、皮膚の下にできた小さな怪我なのだとか。

 魔法や歌声での治癒を得意とするバーバラは、当然のように自身の回復力も高い。夜の間につけた痕跡は、一晩寝て起きるころにはほとんど消えてなくなってしまう。

 

「その位置だと……ちゃんと付け襟で隠れるように気をつけないとだ」

「……ん♡」

 

 ベッドから出た全裸のまま、椅子に座ったバーバラの背後に立って肩に触れると、期待に火照ったカラダがぴくりと震える。肩のラインをなぞるように撫で、そのまま覆い被さるようにバーバラを抱きすくめる。右腕を胸の下にまわして抱き、左手で首の反対側を支えるように固定する。

 腕力で劣るバーバラは、こうなってしまってはもう抜け出すことは叶わない。今からバーバラがどんなにもがいても、俺がただ抱きしめる腕を強めるだけで彼女はされるがままだ。つがいのオスに貪られるのを待つばかりの、抵抗無意味な被食体勢。蝶よ花よと大事にされるのもいいけれど、激しく欲望をぶつけられるのも隔意のない愛情を実感できていいのだという、難儀でいじらしいマゾ心。腕の内、柔らかな肉の奥で跳ねる彼女の心臓が、被支配の欲求に、寵愛への期待に打ち震えている。

 

「……いくよ。 よく見てて」

「ぁ……♡」

 

 鏡越しにバーバラに視線をやって、彼女が無防備に差し出した首筋に顔を近づける。首の右側、肩との境目あたりの滑らかな乳白の素肌に唇が触れる。はーっと熱く吐息を吐きかけてやると、焦れたバーバラが小さく喘いだ。

 

 ぢゔゔゔぅぅ、っ♡♡

 

「ひぅ、っ♡♡♡」

 

 抱く腕をぎゅっと締め付けて思いきり首筋に吸い付くと、すぐそばで可愛らしい悲鳴があがった。反射的にこわばり跳ねる体を腕力で押さえつけて、数秒。抱く手を緩めてゆっくりと唇を離すと、新雪のようだった素肌に赤黒い痕がくっきりと残った。

 

「っ、はぁ♡ ……ぇへへ♡」

 

 自分の体に刻印が施される瞬間の、その一部始終を鏡越しに見たバーバラの口元がだらしなく喜悦に緩む。強く抱いたせいでベビードールの肩紐が落ち脱げかけている胸元を隠そうともしないで、首筋についた「化粧」に彼女はただ恍惚の表情を浮かべた。

 

「ほら、反対側もつけようね」

「ぁう……はぁ、ぁ゙♡」

 

 同じようにして、左側にもキスマークを付ける。白い肌に浮かぶふたつの「しるし」。一見すると痛々しくすら見えるそれに、すっかり目元を蕩けさせた鏡の中のバーバラが興奮に熱く息をついた。

 

「バーバラ」

「ぁ……んっ♡ ちゅる……ちゅ、ちゅぅ♡」

 

 陶然としたバーバラを振り向かせて唇を奪う。ぬるりと舌を挿し入れると、健気な唇が甘えるようにちゅうちゅうと舌を吸った。腕の中からぱさりと薄絹が脱げ落ちて、露わになった乳房を柔く手で弄びながら堪能する可愛らしい舌フェラ。モンド中を沸かせるアイドルの唇を、今日も視線を集めるだろうアイドルの胸を、俺だけが好きに貪ることを許されている愉悦が脳を痺れさせる。

 

「っ、はぁ……次は、どこがいい?」

「へぁ……つぎぃ……♡」

 

 バーバラの衣装は、胸元や背中の素肌がところどころ見える作りになっている。付け襟で隠れる首筋にはもう付けたから、次は少し下がって胸元か、あるいはお腹や太腿あたりになるだろうか。

 抱き上げるようにして椅子から立ち上がらせると、バーバラはとろんとした表情のまま目の前の鏡台に手をついた。

 

「おなかの、ナカ……♡ 消えないの、欲しい……♡」

 

 鏡が曇りそうなほどに熱のこもった声で、バーバラが椅子に片膝をつき、尻を掲げて交尾を誘う。

 

 キスマークが怪我の一種であるなら、それはバーバラの回復の範囲。ライブで歌うなら当然、一曲歌い終えるまでもなく「治って」しまう。服の下に隠すのも実のところ、ファンを刺激しないためだけじゃない。見えなくすることで「まだ残ってるかも」という淡い期待を残して長持ちさせるためでもあるのだ。

 だが、精液は違う。癒しの歌を歌っても残り続けるこの消えない「しるし」は、バーバラの大のお気に入りなのだった。

 

「……ぁ、んっ♡」

 

 ふりふりと揺れるバーバラのまるいお尻を撫で、後ろからぐにぐにと揉みしだく。柔らかさの奥に弾力のある、瑞々しくも淫らな尻たぶ。エウルアによるダンスレッスンで鍛えられたのか、ちょっと前よりも増した気がするハリを手のひらに感じながら、ベビードールに合わせた薄桃色の下着をずらして雌裂に指を這わせる。

 

「ふふ、もうぐしょぐしょなんだ?」

「っ♡ ふっ♡ ん、ん、んぅ~っ♡」

 

 入り口をつぷつぷと指の腹で軽く叩くだけで、期待に潤んだ愛蜜が糸を引く。とろりとこぼれる蜜を指に絡めながら浅いところをくちゅくちゅと搔き混ぜてやれば、入り口のぬめる肉襞が甘えるようにきゅんきゅん締まってバーバラが悦びに背筋を震わせた。

 

「ぅ♡ んっ……あ♡ んんっ♡」

「挿れるよ」

「っふ、ぁう♡ あぅ、あ゙っ♡ あ゙~っ♡」

 

 熱いぬかるみに亀頭を沈めて、細い腰を両手でつかんでゆっくりと押し入る。にゅるにゅると締めつける媚肉を亀頭でかき分け押し広げていく快楽に腰が震える。バーバラの、モンドで最も愛されていると言っても過言ではない少女の一番大事な場所を、犯し征服していくたまらない優越感。ペニスを奥へと進めれば、すっかり俺の形を覚えた雌媚び穴がきゅんきゅんと蠕動し、腰をつかんだ手の奥でバーバラの腹筋が挿入の快楽にぴくん♡と跳ねる。とろける膣の最奥まで突き入れ、もち尻に腰をぴったり密着させると、バーバラの鼻にかかった甘い声が法悦に濁った。

 

「声、大きいよ。 モナが起きちゃうでしょ」

「ふむっ♡ んぅーっ……♡ ん♡ んふぅう……っ♡」

 

 だらしなく緩んだ口からこぼれる喘ぎ声を咎めながら、バーバラを後ろから抱きすくめて手で口を塞ぐ。柔らかな頬を、可憐な唇を、手のひらで覆い隠して煽るマゾ性感。鏡に映る姿はまるで無理やり乱暴されているかのようで、被虐の昏い悦びにバーバラの雌穴が締め付けを強くした。もう既に起こしちゃってる気がしないでもないモナは、もはやプレイの口実だ。

 密着した腰をぐりぐりと動かしてペニスに膣肉を馴染ませ、それからゆっくりと抽挿を開始する。

 

 たぽっ♡ たぽん♡ ぽちゅ♡ ぷちゅ♡

 

「ん゙っ♡ んふ♡ ん゙、ん゙ぅ~~っ♡♡」

 

 撓(たわ)む尻肉を押し上げるように、抱きすくめた体を突き上げる。ストロークは短く激しさもない、じっくり快楽に浸らせる腰振り。往復のたびに粘っこい愛液が掻き出され、とろとろとした本気汁が空気と混じっていやらしく泡立ち音をたてる。押し込むたびに締まる膣肉ともっちりと形を変える尻肉の感触を楽しみながら、彼女の好きなところ、腹側のざらざらを亀頭でほじってやると、バーバラの腰が快楽刺激から逃げるように踊る。子宮のあたりをお腹の上から撫でながら、腰を密着させてぐりぐりとこね回すようにグラインドさせると、逃げ場をなくした快楽に嬌声が溢れて押さえた手のひらを震わせた。

 

「んっ♡ ん゙ぅ、ッ♡ ふーっ♡ ふぅうゥ♡♡ ぅん゙っっ♡♡」

 

 口を塞がれ鼻で荒く息をしながら、快楽に翻弄されるバーバラが目に涙をためて喘ぐ。腕の中で自由を奪われ、声を奪われ、突き入れられる性感をただ受け入れることしかできない哀れで愛しい恋人の姿に、締め付けで必死に媚びる膣肉の慈悲乞い(おいのり)に、ぞくぞくとした快楽が背をかけあがる。

 

 揺れるツーテールの巻き髪をくぐるように、肩越しに鏡を覗きこんでバーバラの潤んだ瞳と目を合わせる。興奮と快楽で火照った頬。手のひらに絶えず感じる、熱く湿った吐息とくぐもった喘ぎ。びくびくと不規則に甘イキ締めを繰り返す媚肉に、腹の奥から煮えたぎるような射精感がこみ上げてくる。

 

「っふ、ふぅっ……そろそろ、イくよ、っ!」

「っ、ぅ♡ んん゙ん~……ッ♡♡♡」

 

 首筋に顔を埋めながら囁くように告げると、鏡の中でバーバラの潤んだ瞳が俺を見つめ返し、こくこくと頷く。快楽を与える動きから、快楽を貪る動きへ。腰の動きを激しくしながら、バーバラの首筋に唇を這わせる。

 

 ぱぢゅん、っ♡

 

 がぶぅっ♡♡

 

 どぷっっ♡♡♡どくっっ♡♡♡

 

「ん゙ッ♡♡ む゙ぐッ♡♡♡ ン、ん゙ん゙~~~~~っっ♡♡♡♡」

 

 キスマークの上から刻み込むように、首筋に歯をたてて噛みつきながらバーバラの最奥を精液で塗りつぶす。ライブで歌っても消えることのない、淫靡な白濁の化粧。首筋を、生物として致命的な部位をつがいのオスに捧げ渡した、哀れで儚いメスの断末魔を手のひらに感じながら、マゾ絶頂に跳ね暴れる体を腕力でねじ伏せて、迸る精液のその最後の一滴までを子宮に注ぎ込む。

 

「フーッ、フーッ、ふうぅ……っ」

「んん……ぷぁっ♡♡ はっ♡ はあぁっ♡ ……んっ♡♡」

 

 尾を引く絶頂で痙攣するように締まる膣壁に包まれて、突き込んだペニスが吐精の脈動を終える。噛みついていた顎の力を緩め唇を離すと、柔肌に残る円形の跡。力の抜けた体を緩く抱き支え、彼女の口を押さえていた手をそっと離すと、荒い吐息を繰り返す唇がどちらからともなく合わさった。

 

「ちゅ、ちゅ……♡ ん、はぁ♡ ふぇへへ……すっごかったぁ……♡」

「体、痛くない?」

「うんっ♡」

 

 甘くくちづけを繰り返して、余韻に蕩けたバーバラの指がうっとりと噛み痕をなぞる。滑らかな肌に赤く凸凹と残った歯形は、皮膚を破らず血も出ないギリギリの加減だ。

 

「……ふふ、噛むの上手♡」

「おかげさまでね……」

 

 バーバラの言葉に思わず苦笑する。

 彼女と恋人になって以来、キスマークと同様に噛み痕を求められることもままあったせいで、今やこんな感じで『肌を傷つけずに、いい感じに痕が残る噛みかた』を習得しつつある。恋人を喜ばせられる変化は俺としても望むところではあるのだが……これに関してはなんというか、すごく微妙な心境だ。こんな技術、上手くなっていいものなのか?人として……。

 

「ふふ、じゃあ、お返し♡ ん、ちぅ……っ♡」

 

 人の悩みをよそに、悦に浸り終えたバーバラが腕の中で振り向いて、そっと俺の肩のあたりにくちづける。小さく、鋭く、優しく、甘く。窓から差し込む陽光のもと、今日何度目かのリップ音が響く。

 きっちり服で隠れる肩口。僅かな痛みを残して離れた唇の下に、小さく愛しい跡を刻んで。

 

「えへへ……♡ おそろい、ねっ♡」

 

 甘えた声でそう囁いて、バーバラは満足そうに微笑んだ。

 

 

       ◇ ◇ ◇

 

 

「ん……ふふ♡」

 

 くいと上向きに顎を反らした少女の喉元で、ぱちりと留め具がはまる。

 首から肩にかけてをすっぽりと覆う、大きな純白の付け襟。祈祷牧師の修道服を構成する最後のパーツを着せてやると、見慣れた格好への着替えを終えたバーバラがくすぐったそうに笑う。

 

「……大丈夫かなこれ。 ちょっと見えてない?」

「ん~?」

 

 いかにも清楚な付け襟はその実、情事の痕跡を隠すのに日頃から大いに役立っている。首筋に喉元にとバーバラがキスマークをねだるのは、これがあってこそだ。……だけど今日はちょっとミスったかもしれない。首筋につけた歯型がほんの少しだけ、付け襟の端っこからはみ出てしまっている。

 ファンを変に刺激しないだろうか、アルバートみたいなのがまた予想の斜め下方向に暴走しやしないだろうかと心配する俺をよそに、鏡越しに確認したバーバラは「大丈夫だよ」と楽観的だ。

 

「あんまり目立たないし平気だよ。 このくらいなら、ライブ前の慣らしで歌ってるあいだに治っちゃうし」

 

 聴く者の傷を癒やすバーバラの歌声は、キスマークも噛み跡も、一曲歌い終わる頃には綺麗さっぱり治してしまう。この証拠隠滅の容易さもまた、マーキングのおねだりに拍車をかける一因なのだった。

 

「それに、見つかっちゃったらその時はその時だよ。 ファンのみんなに、いつまでも内緒ってわけにもいかないし」

「……そう?」

「そうだよ。 だって……」

 

 心配がぬぐえないでいる俺に、椅子から立ち上がったバーバラが艶っぽく微笑んで耳元に顔を寄せた。

 

「──だってそのうち、あなたの赤ちゃんだって産むんだから♡」

「……っ!!」

 

 スパイシードリンクより刺激的な囁きに息を呑む俺を見て、バーバラがくすくす笑う。

 

「お腹が大きくなったら、アイドルはおやすみしなきゃだもん。 ね♡」

「……あんまり煽るとさっきの続きしたくなっちゃうんだけど」

「ふふ、嬉しいけどダ~メっ。 パイモンにお腹すいたって怒られちゃう」

 

 ついムラっときた俺を、アイドルらしくつんと指先でたしなめて。「今日は私が作るんだから」とバーバラはふわりと身を離した。

 

「そういえば昨日パイモンにリクエストされてたね」

「うん。 ポトフはもう仕込んであるから、あとはブルスケッタと……お魚でムニエルも作ろうかな。 三十分くらいでできると思うから」

 

 最後に小さく背伸びして、ちょんと鼻先に小さくキスを残して。足取り軽くバーバラが部屋のドアを開けた。

 

「だからそれまで──『デザート(・・・・)』食べて待っててね♪」

 

 意味深にそう言い残して上機嫌にキッチンへと向かうバーバラを見送る。パタンと閉まるドア。部屋に残ったのは俺と……あともう一人。

 

「……デザートだってさ」

 

 残ったベッドのふくらみに声をかけると、ぴくりと微かに体が動いた。

 人は普通、眠っている時は呼吸が深く遅くなるし体温も下がる。だというのにこの浅い呼吸、血色のいい頬……これが寝たふりなのは、きっとパイモンだってわかるだろう。ベッドの上に乗り上げてモナの黒髪をそっと撫でると、反応して小さくまつげが震えた。

 

「…………」

 

 びっくりするほど下手な寝たふりを続けて無言を貫くモナの頬に触れる。すべすべの肌を伝って、首へ、肩へ、そして布団の中へと手を滑らせる。ほのかに汗ばんだ肌。布団の中をまさぐっても、そこに服の感触はない。

 

「……ふ~ん?」

 

 指先に触れる、既につんとかたくなった乳首。睡眠時よりも明らかに高い体温は、つまり期待の表れで。

 

「…………♡」

 

 この期に及んで続ける寝たふりは、寝込みを襲われたい意思表示にほかならない。ゆっくりと布団を剥ぎ取ると、露わになるモナの裸体。手のひらに感じる心臓の鼓動ははやく、秘処はもう既に期待に濡れていた。

 三十分で終わらせなきゃなぁ、なんて思いながらモナの体に覆いかぶさる。

 

「じゃあ、いただきま〜す」

「…………ぅ♡ っん……ぉ♡♡ 」

 

 柔らかでありながら歯ごたえ(締まり)もある舌触りと吐息の甘さに鼓動が高鳴る。舌に馴染んだ愛しさを体いっぱいに抱きしめて、俺は食べられ待ちの『デザート』にずぷずぷと肉の食器を突き立てた。

 

 

 懸命に寝たふりを続けたまま貪られた『デザート』は結局、そのまま二度寝して昼まで起きてこなかった。




Tips

 遊撃小隊隊長のエウルアは隊員のモチベーション管理が上手なので、帰還日に限って効率と行軍速度を爆上げする魔法の言葉「急げばライブ間に合うかもね」を使うようになってからスケジュールにも一枚嚙むようになった。
 なお本人はライブには行かず、騎士団本部の物見塔(ワープポイントがあるあの場所)で遠くから歓声を聞いてる。


「あのねぇ……観客はあなたを見に、あなたに癒されに来るのよ? そこに悪名轟く罪人の私が顔を出して見なさい。 龍災なんか目じゃない大荒れよ、間違いなく。 ……そんな子犬みたいな目しても行かないったら」


「──なんて言ってたのに。 やっぱり気になる?」
「別に、直接見に行くまでもないわよ。 努力はさんざ見てきたんだもの、ここまで聞こえる歓声が答えよ。 ……ニヤニヤしてるんじゃないわよ! まったく、この恨みは今晩きっちり返してもらうんだから!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。