※この作品はR-18です。

七国漫遊紀行   作:うさみの

3 / 20
一年目 四月初頭


星空の設計図 (モナ)

 転移で歪んだ視界が元に戻る。

 降り立った足元の草原を、風がざぁっと撫でる。

 雲の上に突き出した山のてっぺんを切り落として平らにしたようなこの台地は、まるで雲海に浮かぶ島のよう。

 雲の波の果てにはうっすらと山影が見えるような気もするが、雲に覆われて輪郭すらおぼろげだ。

 見渡せば近くにも同じような島がいくつかあり、島同士を隔てる雲海には吊り橋が架けられている。

 橋の向こう、はるか遠くにはひときわ高い山と、そこから流れ落ちる滝。遠目であの大きさなのだ、近くで見たらさぞかし壮大な景観だろう。

 

「……こ、これが…壺の中、ですか…?」

 

 そよ風にツインテールを揺らして、モナが隣で驚愕に震える声を漏らす。

 

「壺の中、らしいよ」

 

 無理もない。俺だって正直よくわかっていない。

 ここは洞天。仙人の手により作られた、塵歌壺(じんかつぼ)の中に広がる世界だ。

 

「仙人パワーでなんやかんやすると、世界ができるんだってさ」

「…その説明じゃ、仙人ってこと以外なにもわかってないことしかわかりません。 それでも私の弟子ですか」

「えー…」

 

 事実なにもわかっていないんだから仕方がない。

 希少な泥だの、持っているだけで性格が歪む石だの、よくわからない素材で作られたよくわからない壺。

 その中には仙人の力で創り出された別の世界が広がっており、住処として利用できるらしい。

 

「仙人パワーじゃありません、『外景』の力です。 ピンの友人ならちゃんと覚えてください」

「うわああぁ!!! なんですかあなたは!! ……と、鳥? え、お屋敷…?」

「鳥じゃありません! 壺の精霊です!」

 

 突然背後からかけられた声にビビって俺を盾にするモナ。レアな光景だ…かわいい。

 振り返った先には、璃月風建築の大きな屋敷と、その玄関に鎮座するデカくて丸いヤマガラ…もとい壺の精霊・マルの姿がある。

 

「つ、壺の…精霊? それになんですかこのお屋敷は…」

「マルとお呼びください、お客人」

 

 モナが壺の精霊(マル)と屋敷を交互に見て、戸惑いを隠せずにいる。

 

「つい三日前から、ここが俺の家になったんだ」

「へ、へぇ~…」

 

 都市に滞在している時ならともかく、旅の最中は野宿が当たり前だ。

 宝箱を探して歩き回っていたら日なんてすぐ暮れるし、そんな時にそう都合よく宿泊施設なんてあろうはずもない。

 雨が降ったり薪が見つからなかったりパイモンが鷹にごはんを奪われたりとトラブルは尽きないが、野宿の不便さもまた旅の味わい。俺はさほど気にしていなかった。

 だが、ピンばあやはそんな俺達を心配してくれたらしい。

 「まだまだ旅は長いのに、野宿ばかりしているのは見過ごせない」と、三日前にこの塵歌壺を贈ってくれたのだった。

 ばあやは少しでも旅の助けになれば、なんて言って「ほぉっほぉっ」と笑っていたのだが、野宿とお屋敷では境遇が天と地である。少しなんてものじゃない。

 岩王帝君も、ピンばあやも、絶雲の間の仙人達も、仙人ってやっぱりちょっと過保護なんじゃないだろうか。

 

「マル、頼んでたやつできた?」

「なんとか間に合いました。 仮発行なので、効果は二ヶ月ほどでしょうか」

 

 マルがどこからか取り出した板を受け取る。

 琉璃百合と壺のマークが刻印された、手のひらサイズの赤金色の金属板。

 それをそのまま、困惑しつつもどこか少ししゅんとした感じのモナに差し出す。

 

「はい、モナ。 受け取って」

「…なんですか? これ」

「この洞天への、通行証。 これを持っていれば、念じるだけでいつでもここに来れるんだってさ」

 

 要するに家の合鍵みたいなものである。

 

「だからさ、モナもここに住んでよ」

 

 にっこり笑顔で通行証をモナに押し付ける。

 

「え…こ、こんなお屋敷に住むって、その…家賃が払えません…」

「気にするとこなの?」

 

 うろたえるモナを笑い飛ばして、顎を持ち上げてキスする。

 しっとり柔らかな唇は何度味わっても飽きることはない。

 

「はい、今月の家賃ね。 一ヶ月につきキス一回。 特別価格ってことで」

「…なんですかそれ」

 

 言いくるめるためだけの詭弁な価格設定に、モナが呆れるようにくすりと笑う。

 

「それに、『弟子の一人暮らしが心配なので一緒に住んであげます』くらい言ってもいいんだよ? 師匠なんだから」

「…いつも心配されてるの私じゃないですか」

「それはそう。 師匠の一人暮らしの方が心配だから一緒に住んでもらえます? 水やり忘れるとすぐ枯れるんだから」

「植物みたいに言わないでください! もう…仕方がないので、一緒に住んであげます。 ん…♡」

「…っふ。 家賃はもうもらったよ?」

「ええ、家賃じゃないからただのキスですね♡」

 

 他愛のない会話に自然と笑顔が漏れる。

 ここは壺の中の楽土。三日前から、俺の庭。そして今日から、俺とモナの帰る場所。

 四年経ったら娘もここにいるのかな、なんて夢想しながら俺達は屋敷の扉を開けた。

 

 

 目の前でいちゃついている俺達を見て、マルは「お熱いですねぇ、いいことです」と終始微笑んでいた。

 …目元が笑ってるしあれ微笑んでるんだよね?鳥っぽいから表情がわからん。

 

 

       ◇ ◇ ◇

 

 

 栄誉騎士ということで、西風騎士団の隊舎には俺の部屋がある。

 モンドにいる時はここに泊まれば宿泊費無料、とのことでジン団長が部屋を用意してくれたのだが、最近はずっとモナの家で同棲生活をしていたので帰っていなかった。

 そして今回、塵歌壺という拠点が手に入ったので隊舎の部屋はめでたくお役御免。

 利用しなくなるのにいつまでも部屋を占拠しているわけにもいかないので、私物の撤去と退去の連絡をして、ついでに偵察騎士と遊撃騎士に捕まっていたら洞天に帰る頃にはすっかり夜になっていた。

 

「ん?」

「やっと帰ってきた! あれ、なんとかしてくれぇ!」

 

 洞天に戻ると、モナの引っ越しを手伝わされていたパイモンが泣きついてきた。

 パイモンが指さすほうを見ると…なんか壺の精霊にモナがまくしたててる?

 

「こんなことが許されていいはずがありません!」

「そう言われましても…」

 

 表情のわかりにくい壺の精霊(マル)でもわかる。すごい困った顔してるな。

 

「どうしたのモナ」

「おかえりなさい。 遅かったですね」

「騎士団隊舎でエウルア達に捕まって…はいこれ」

「…なんですかこの瓶」

「エウルアからモナ宛に、この前のお礼。 コンフェイト?とかいう砂糖菓子だって」

「ああ、あの時の…星型でかわいいお菓子ですね」

 

 取り出したガラス瓶に怪訝そうな表情を浮かべたモナが、理由を聞いて納得する。

 

 

 あれは風花祭期間のちょうど真ん中のこと。

 俺とモナとパイモンは、この時期にのみ現れるという特殊な秘境・メルヒェンランドで行われるイベントに参加して、そのまま流れで完全制覇。

 貰った賞品は金一封(モラ)とか鹿狩りのお食事券とかだったのだが、その中に『風花祭限定 アップルフラワー酒 三本』というのがあった。

 賞金はそのままモナにあげ、お食事券はパイモンにあげ、この酒三本はどうしたものかと考えた時に、ふと思い出したのは一人の遊撃騎士。

 

 この時期、西風騎士団は忙しいらしい。なにせジン団長自ら街の見回りをするほどだ。

 祭りを滞りなく進めるため、セレモニー期間中はモンド場内のそこかしこで警備の西風騎士がトラブルの対処に追われていた。

 そして、街の治安維持に戦力を割かざるを得ない今、モンド城外の脅威排除を主とする遊撃騎士もまた平時に倍する忙しさであろうことは想像に難くなかった。

 モンドにあまり居場所がないエウルアのことだ、祭りの空気など微塵も味わうことなく今もモンド城外のどこかで日夜走り回っているに違いない。

 そう思うと放っておけない気がして、この酒は彼女に差し入れることにしたのだった。

 

 で、モナにその話をすると、水占の盤をちょいちょいといじったあと地図を広げて「今はこのあたりにいるようですね」なんて居場所を調べた挙句、「風花祭期間中はなんでも自分でするのがならわしなんですから」とグイグイ背中を押されてあれよあれよと言う間に二人して誓いの岬へ到着。

 モナの案内でエウルアのキャンプを探し出した頃にはすっかり夜も更け、既に眠っているのか静かなテントの前に酒と書置きを残し、ついでに誓いの岬で一緒に星を見て帰路についた、というわけだった。

 パイモンはアップルフラワー酒を味見できなかったのを口惜しんでいたが、モナは「有意義なデートでしたね」とやり遂げた風に笑っていた。

 自らの身を顧みず大衆に奉仕する職責を持つ者同士、モナとしても放っておけなかったんだそうな。

 

 

「しかし、よくこんな占星術師にぴったりのお菓子を…。 自作でしょうか」

「いや、アンバーに買ってきてもらったって言ってたよ。 それ自作するのはちょっと難しいかな…」

「そんなに難しいものなんです?」

「たしか作るのに十日とかかかるんじゃなかったっけ」

「へぇ~……」

 

 受け取った瓶の中に詰まった色とりどりの小さな星を覗きこんで、モナの表情からいくらか険が取れた。

 望外の贈り物に少し落ち着いた様子のモナが、瓶を脇に抱える。

 

「まぁ、それはそれとして…私に洞天の編集許可をください」

「編集許可…?」

「洞天内を変化させるには、所有者のあなたの許可が必要だってマルが」

 

 モナが突然妙なことを言いだした。

 家具の配置ってそんな権限とか必要だったっけ?

 

「許可するのはいいけど何するの?」

「星空が! おかしすぎます!!」

 

 モナの指が勢いよく天を衝いて夜空を指差す。

 

「星の位置や配置がありえないんです! そこにあるはずの星がなかったり、別の星座の星同士が入れ替わっていたり! なんなんですかこの星空は!!」

「あー…」

「そんなに変か? オイラにはわからないけど…」

「それはパイモンの見る目がないんです!」

「なんだとぉ!?」

「こんな適当な星空、星見を生業(なりわい)とする者として許せるものではありません! 断じて!!」

 

 モナがかつてないほどに憤っている。

 俺が見ても素人目にはあまりわからないのだが、どうやら占星術師(プロ)の目は誤魔化せないようだった。

 

「本来洞天は外とは異なる世界なので星空が違うと言われても困るのですが、『こんな星空は彼にふさわしくありません!』なんて言われては断るわけにもいかず…」

「…コホン。 そういうわけで、この星辰は私が正しく書き換えます。 弟子として異論ありませんね?」

 

 マルの説明に、モナがちょっと頬を赤くして咳払いをする。

 

「まぁ異論はないけど…どうやって書き換えるの?」

「この場合材料などは必要ありませんが、家具などを作るのと同様に『設計図』が必要となります。 正しい星空を記した詳細な設計図をもとに編集者が念じれば、理論上は星空を書き換えることが可能…なはずです」

「理論上は?」

「実際にやったというのは、見たことも聞いたこともないもので…」

 

 困ったようにマルが溜息をつく。

 

「設計図…モナって星図持ってたよな? あれじゃダメなのか?」

「そのままではダメですね。 あれは六等星以下の等級が書かれていません。 最低でも八等級、欲を言えばもっと暗いものまで、足りない星を書き足していく必要があります」

 

 質問を即答で一蹴されたパイモンが「うわぁ」と言わんばかりの顔になる。

 モナ先生の審査は厳しいらしかった。

 

「とにかく! 星空のことは私に任せてもらいます! いいですね?」

「お、おう。 任せるよ…」

「ふふふ…この子のお披露目にふさわしい大仕事です。 占星術師の血が騒ぎますね!」

 

 情熱滾るモナが引っ越しの荷物の中から大きな木箱を引っ張り出す。

 中に入っていたのは様々な器具がついた大きな筒。

 

「買って正解でした、アンティキティラ社の天体写真儀(アストログラフ)!」

「あすとろ…どこかで聞いたような…?」

「例の『星座相談 拡大号』の報酬で注文したのが先日届いたんです。 まったく、パイモンは忘れっぽいですね…」

「それオイラのせいなのか…!?」

 

 確か拡大した星空を写真に撮る道具…だったっけ?

 筒を大事そうに撫でて箱を閉じ、地図を広げるモナ。

 

「あなたはこことここ、それとここの簡易(ポケット)ワープポイントの設置と、必要なら使用許可申請をお願いします」

「…風龍廃墟と寒天の釘はまだいいとして、ここ絶雲の間なんだけど…」

「許可取ってきてください」

「あっさり言うなぁ…」

「では、私は星落ちの谷に資料の撮影に行ってきます」

「え、あ、うん。 気をつけてね…」

 

 モナは言うが早いか、箱を両手に抱えてワープで移動してしまった。

 呆然とした空気の中残される俺達。

 

「…行っちゃった」

「嵐のような方でしたね…」

「オイラヘトヘトだぞ…」

 

 パイモンがすごく疲れた顔をしている。

 引っ越しの手伝いを手伝った後に暴走する占星術師をなだめるのはさぞ骨が折れたろう…お疲れ様。

 

「とりあえず何か食べようか。 パイモンなに食べたい?」

「なんでもいいぞぉ…」

「重症だ! 待ってろパイモンすぐ作るからな!」

 

 食事メニューにリクエストをしないほど疲労困憊しているパイモンの姿に、俺は慌てて献立を考えながらまだ物の少ない厨房へと走った。

 …モナにはあとでなにか届けてあげよう。

 

 

       ◇ ◇ ◇

 

 

 モナが洞天に引っ越して、今日で六日目。

 四日かけて方々で星空の資料を集めたモナは、そのままの勢いで屋敷の一室に籠っている。

 

「入るよー?」

 

 ノックをしても、返事は帰ってこない。聞こえていないのだ。

 ドアを開けると目に入るのは床に散らばる書籍の山。

 人が住む体裁すら全く整っていない部屋の中央で、長テーブルを六つも繋げ、その上に紙と資料を散らかしながらモナが一心不乱に星図を書いている。

 

「…………」

 

 床に転がる本を踏まないように、慎重に歩を進める。

 申し訳程度に置かれたベッドの脇、ナイトテーブルの上にはペン先の潰れた羽ペンと空になったインク壺がいくつも置かれている。

 昨晩差し入れたキノコピザの皿は空になっているのでどうやら食べはしたようだが、この分だと寝てはいないのだろう。

 

「朝食、持ってきたよ」

「…………」

 

 モナからの反応はない。部屋に俺が入ったことに気付いていない可能性すらある。

 寝食を忘れたモナの姿を生で見るのはこれが初めてだが、この有様を見れば家を訪ねるたび干乾びていたのも頷ける。

 今回は食だけは忘れさせていない分マシと考えると、俺がいない時のモナは一体どれほどの無茶を重ねていたのだろうか。

 

 これは、非常に、マズい。

 

「モナ~?」

 

 朝食に持ってきたモラミートをナイトテーブルに置き、背後へと近付く。

 ツインテールのリボンを解き、先端の髪飾りを外しても、相変わらず気付いているのかいないのか、反応はない。

 

「……っ! …なんですか?」

 

 あまりに無反応なので抱きついてみると、モナはびくっと肩を跳ねさせ反応を示したが、それだけ。

 羽ペンが走る音は、止まらない。

 

「モナ、ちゃんと休めって。 締め切りがあるってわけじゃないんだから」

「あと少しなんです。 もう少ししたら完成なので…」

「それ昨日も聞いたけど」

 

 もう言葉で止まる段階ではないらしい。

 抱きしめたまま片手を伸ばしてインク壺の蓋を閉める。

 こうなったら最終手段だ。

 

 抱きついたままじっと機会を待つ。

 なにやら難しそうな数式を書き終えたペン先が、インク壺に浸けようとして蓋にかちんと弾かれ、予想外のことにモナの動きが一瞬止まる。

 今だ!

 俺は抱きついたモナのうなじに顔をうずめた。

 

 ────すううううぅぅぅぅ……。

 

「ひやあぁ…っ♡」

 

 モナの後ろ髪に鼻を埋め、思い切り深呼吸する。

 普段よりも濃厚な、熟れた桃のような甘い香りが肺いっぱいに流れ込み、どくんどくんと血流にのって全身に流れていくような感覚。

 一呼吸ごとに頭がぼーっとして、神経が芯からじわりと溶けだすような熱さを感じる。

 

「やっ、やだっ! 嗅いじゃダメっ! お風呂入ってないですっ!」

 

 突然の羞恥に、モナの意識が星図から引きはがされる。

 抱きすくめた腕の中でもがくモナをそのまま部屋の隅のベッドへと引きずっていく。

 

「モナ、最後に寝たのは?」

「…仙人に会う前ですね」

 

 今は六日目の朝。

 慶雲頂へ行って削月築陽真君に挨拶したのは四日目の夕刻だから、だいたい丸一日半以上は寝ていないことになる。

 このぶんだとその前だって十分な時間寝ていたかは怪しいものだ。

 

「あなたのおかげでちゃんと食べれてますし、私はまだ大丈夫ですから」

 

 必要でもないのに無理を通そうとするモナに、ぼーっとした頭にわずかに苛立ちの火が灯る。

 

「俺は無理させるために食事作って差し入れてたんじゃないんだけど?」

「このくらい、研究者なら普通です。 今までだって何度も…」

「今までがそうだったからって、それは無茶を繰り返していい理由にはならないんだよ?」

 

 なんとか腕から逃れようともがくモナだが、抵抗は弱々しいものだ。全然力が入っていない。

 

「……言っても聞かないモナが悪いんだからね?」

 

 抱きしめたまま、モナをベッドに押し倒す。

 後ろからうつぶせに体重をかけてしまえば、度重なる徹夜作業で弱ったモナの力では抜け出せない。

 シーツに押さえ付けるように後ろからうなじにそっと歯を当てて甘噛みすると、モナはぞくぞくっ♡と背を震わせて抵抗の力をなくした。

 

「あ…♡ や、ダメ…♡」

「ちゃんとモナが寝ないなら…」

 

 低い声で耳元に囁きかけながら、四つん這いで下敷きになったモナの尻に、モナのにおいを嗅いでガチガチになったペニスをぐりっと押し付ける。

 これからどうされるのかを察したのか、脅えるように尻がびくっ♡と跳ねた。

 

「ひっ…♡♡」

「無理やりにでも寝てもらう。 モナがたっぷり気持ちよくなって、イキ疲れて寝るまでやめないから覚悟して」

「あぅ♡ そんな…の…♡ せ、せめてお風呂に…」

「風呂は起きてからね」

「や、やぁ…っ♡」

 

 汗で少ししょっぱい耳を食むとぴくんっ♡と体が震え、抱きしめる俺の腕をモナの手がぎゅっと握った。

 服のカップ部分を捲り数日分の汗でじっとりとした胸をまさぐれば、すでに硬くなった乳首が摘まんでくれと言わんばかりに自己主張している。

 

「汗でぺたぺたするね」

「い、言わないでくだっ…♡ っん…♡ はぅっ…♡」

 

 普段に増して指に張り付く柔肉を優しく揉みあげ、乳輪のあたりを指先で焦らすようにくすぐる。

 指先で乳首を摘まんで紅潮したうなじをぺろっと舐めると、反射的に反り返る背中に乳首が引っ張られてモナが甘い声で鳴く。

 三本の指でしゅこしゅこと乳首を扱くように擦りあげると、快感にくねるモナのむっちりとした尻肉がぐにぐにと勃起ちんぽに押し当てられる。

 はやく挿入し(いれ)て欲しいとねだるような腰振りを、今日はあえて無視して乳首を嬲り続ける。

 

「あっ♡ はんっ♡ やっ♡ やだっ♡ 乳首だけでっ♡」

「まずは一回、乳首でイっとこうか」

「やぁっ♡ だめだめだめっ♡ イっ♡♡ ん~~~~っ♡♡♡」

 

 うずくまるように背中を丸めて絶頂するモナを余韻に浸らせるように、乳首に触れないよう注意しながらマッサージするように優しく乳房を揉む。

 まだまだ音はあげさせない。もっともっとぐずぐずに蕩かして快感の余韻の中で寝かしつけてやらねば、と謎の使命感が燃える。

 

 左手で胸をやわやわと揉みながら、右手をゆっくりと下腹部へと這わせていく。

 へその窄まりを指先で撫ぜ、子宮の上あたりをとんとんと軽く叩くとモナの呼吸が目に見えて荒くなった。

 

「ふっ…♡ ふぅっ…♡ …っあっ♡」

「もうどろっどろだね」

「だ、誰のせいですかっ…♡ っうぅ♡」

 

 しとどに濡れそぼった恥丘に手がたどり着く。

 服の上から陰核のあたりを指の腹で押し込むように揉むと、ぐじゅっ♡と水音がしてモナが恥ずかしそうに声をあげた。

 

「…あっ」

 

 股布の隙間に手を入れて秘所に直接触れると、指先にちょりっと慣れない感触。

 

「生えてきてるね」

「やぁ…っ♡」

 

 普段の服装が際どいからと剃っていた下の毛が、ここ数日の不摂生で生えてきていた。

 溢れる愛液をたっぷりと指に絡め、生えかけの陰毛の感触を楽しみながらクリトリスを捏ねる。

 枕に顔を埋めたモナが、「やだぁ…」とくぐもった声で羞恥に身を縮こまらせた。

 

「んっ♡ っう♡ ……っあ♡ あっ♡ だめっ♡ またイっ♡ う゛ぅ~~~~♡♡♡」

 

 大きく開いた背中にじわりと浮かんだ汗を舐め、指先で陰唇をなぞるようにかき混ぜ、クリトリスを皮の上から押し潰すように刺激する。

 跳ねる腰にあわせて乳首をきゅっと摘まむと、二度目の絶頂にモナの背がびくぅっ♡と跳ねて、力尽きるようにベッドにぐったりと倒れ込んだ。

 

「……まだ大丈夫なんだったよね?」

「っっ!♡♡」

 

 モナにのしかかっていた体を起こし、快楽の余韻にぴくっ♡ぴくっ♡と震える尻をぐにっと掴む。

 スボンと下着を下ろしガチガチの陰茎を尻肉にぐりっぐりっと押し付ける。

 

「ひっ♡♡ わ、わかりましたっ! ちゃんと寝ます! 寝ますからぁ!」

「まだ喋れる余裕があるなら大丈夫だね」

「や、やだっ♡ いまされたら…っ♡」

 

 末路を悟り、力の入らない体でなんとか逃げようとするモナの腰をがっしりと捕らえる。

 股布を横にずらし、肉槍の切っ先を膣口にぴたりと押し当てる。

 

「安心して。 わかってるから」

「な、なにを…っ♡」

「そうやって形だけ抵抗して、それを弟子にねじ伏せられるのがいいんだよね? 師匠」

「っ♡♡ ちがっ♡ こっ、これはちからがはいら…あ゛う゛う゛ぅ゛っ♡♡♡♡」

 

 声のトーンに期待の色が隠せていないモナの否定の言葉(いいわけ)を無視して、ずぶずぶとペニスを埋めていく。

 前戯で既にぐずぐずに蕩けきった膣肉が、ねっとりしゃぶるような抱擁でいかに待ちわびていたかを伝えてくる。

 肉襞のあいだからじゅわぁっと染み出すとろとろの蜜はまるで消化液のようで、まるでペニスが表面から溶かされていくような熱い快楽がちりちりと頭のてっぺんを焼く。

 

「ぅあ…モナの中、凄い絡みついてくる…っ。 これで『違う』なんてよく言えたね」

「ううぅっ♡ い、言わないで…♡ あう゛っ♡♡ おくだめっ♡♡ い゛っ♡♡♡」

「っく…! ほんと奥弱いねモナ。 ふ…っ、いいよ、好きなだけイきな」

「ん゛っ♡♡ ぐぅっ~~~~~~~♡♡♡♡」

 

 チンポを奥まで挿入(い)れて子宮口をちょっと突かれただけでシーツを握りしめて盛大にイき散らかすモナ。

 

「っは♡ はぁっ♡ はふ…う゛っ♡♡ うぐ♡♡ だっ、め゛っ♡♡ まだイっで、っ♡♡♡」

 

 日頃からモンドの男たちの視線を集めてやまない尻肉を見下ろし、その感触を存分に味わいながら腰を動かす。

 きゅうぅっ♡と締め付ける媚肉にたんったんっと短いストロークでペニスをしゃぶらせ、奉仕の返礼に子宮口に亀頭でぶちゅうっとキスをしてやる。

 動きに合わせてクリトリスを捏ねればモナは面白いように気をやり、嬌声をあげて呼吸を乱した。

 相性がいいのか、単に敏感体質なのか。快楽に弱すぎるモナの体がいっそ心配になってくる。

 やっぱり天賦のえっちボディだったのかもしれない。天才ってすごい。

 

「ぐっ…! そろそろ俺も一回出すよっ、モナ…っ! う゛っ…ぐ…!!」

「っあ゛っ♡ ひぐ♡♡ う゛うぅぅぅぅ♡♡♡♡」

 

 びゅぐううぅっ♡♡♡ びゅぐっっっ♡♡ びゅるるうっ♡♡

 

 もっちりとした尻肉に体重ごと腰を押し付け、ここ数日モナを抱けずに溜まっていた欲望を子宮に流し込む。

 精液を一滴残らず絞り出そうと、どくっどくっと脈打つペニスを蕩けた膣肉が締め付けてくる。

 吐精で一時的に硬さが衰えたペニスをぬぽぉっと引き抜くと、痙攣する腹筋に押されるようにぱっくりと開いた膣口からどろりと精液が溢れ出し、シーツに沁みを作った。

 

 這うように尻を突き出したまま力なく体を投げだしたモナの呼吸が鎮まるのを待つ。

 しばらくすると荒かった呼吸が落ち着いて、そしてそのまま寝息に変わった。

 

「これでよし…」

 

 尻を掲げたままの脚を伸ばさせ、仰向けに転がしてちゃんと寝かせてやる。

 髪は解いたし服も外せるパーツは…靴くらいか。

 全部脱がせてしまいたいが、あまり動かすとせっかく寝たモナが起きてしまいそうだ。

 それに、服を脱がせている最中にまたムラムラッとしてそのまま睡眠姦…という流れも避けたい。

 今日はまだ一発出しただけ。正直まだ出したりないのを理性でぐっと我慢する。

 いまのモナにこれ以上の負荷はいけない。ちゃんと休ませてやるのが弟子の務めだろう。

 

「…にしてもこの部屋、たった六日で散らかしすぎでしょ…」

 

 床に散らばり山積みにされた本を見る。

 部屋にまだ本棚がないとはいえ、さすがにこれは酷いんじゃなかろうか。

 

 湯を沸かしてモナの体を拭いて、本棚作って床を片付けて、インク壺の補充と潰れた羽ペンの先をナイフで直して、パイモンの昼飯と冒険者協会の今日の依頼と起きたモナに風呂の支度と……。

 すっかり冷めたモラミートを齧り、山積した今日の用事を頭の中で整理しながら、俺は部屋を後にした。

 

 

       ◇ ◇ ◇

 

 

 俺とパイモンとマルとそして、モナ。

 四人揃って草原に立ち、夜空を見上げる。

 

「では、いきます」

 

 星図を貼った大きな木の看板を前に、モナが静かに天に手を翳す。

 

「──星空よ、ここに出でよ!」

 

 瞬間、月明かり以外の全ての光が、夜空から消え失せた。

 暗雲が立ち込めたような暗い夜空。

 不安になるようなそれを見上げ続けているとやがて、中天にぽつんとひとつ、青白い星が生まれた。

 

 ぽつ、ぽつぽつ、ぽつぽつぽつぽつ。

 

 降りはじめた雨粒が大地を濡らしていくように、次々と生まれていく星の光が瞬きする間に暗闇を塗りつぶしていく。

 まるで神話の如き幻想的な光景にマルとパイモンが歓声をあげる。俺は圧倒されて言葉すら出ない。

 時間にしてものの数分。たったそれだけの時間で、夜空は星に満たされていった。

 

「まだです。 これもまた偽りの空なら…!」

 

 モナの指が宙を踊る。

 指先の動きに従って夜空に星同士を繋ぐ光の線が映し出され、生まれたばかりの星々に星座(かたち)を与えていく。

 星たちに存在を与え、命を吹き込む。

 洞天(このせかい)においてモナは今、創星神とすら言える所業を成し遂げたのだった。

 

「──どうですか? 世界最高のプラネタリウムの誕生を目にした感想は」

 

 星座を描き終え、手を下ろしたモナが満足げに微笑んで星空を見上げる。

 

「す、すごかったぞ…一流の占星術師ってこんなこともできるのか…」

「これほど鮮やかに世界を塗り替えるとは…本当は仙人だったりします?」

 

 パイモンとマルが口々にモナを称える。

 

「……凄すぎて言葉が出ないよ」

「そうですか。 あなたにやっと師匠らしいことをしてあげることができて、よかったです」

 

 呆然とした俺の言葉に、安心したようにそう言って胸を張ってみせるモナ。

 星座を描いた指が、そっと俺の指に絡む。

 

「星座の線は一昼夜おきに見えるようにしました…これで大まかなところは終わりですね。 われながら、いい仕事ができました」

「大まかって…。 また無茶な徹夜したら、気持ちよく意識飛ばしてあげるからそのつもりでね」

「う゛っ…わ、わかりましたって…。 あとの細かいところは、少しずつ地道にやっていこうと思います」

「えぇ!? まだ未完成なのかぁ!?」

「当たり前です。 これはあくまで私の許容できる最低限。 ゆくゆくは肉眼で見ることができない星も、全て映しとってみせます」

「せ、占星術師のプロ意識…高すぎるぞ…」

 

 戦慄するパイモンに、モナが当然だと笑う。

 

 モナがいればきっと、今日より明日の、明日より明後日の星空はもっと綺麗なんだろうな。

 そう思えることがなにより幸せに感じて、俺はモナの手をぎゅっと握り返したのだった。

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