すっかり陽は落ちていた。
深い闇に邪魔されて廊下の先がよく見えない。
少子化の影響なのかここ輝日東高校には、かなり多くの空き教室があった。
主に資材置き場などに使用されている。
普段であれば誰も寄り付かない。
2年A組のクラス委員であり創設際実行委員でもある絢辻詞も、いつもなら放課後に通りかかるような場所ではなかった。
学校生活を彩るクリスマス・イブの一大イベントは、準備に不参加であればそれなりに楽しめる。
ひたすら飲んで食べて、騒いで帰るだけのBBQと一緒だ。
まだまだ分別のない未熟な高校生たちにとって、責任の分担などという言葉は所詮綺麗事でしかない。
誰かが率先して貧乏クジを引かねばならなかった。
クラス委員にしても実行委員にしても、自分から推んで立候補したのだから仕方がないが、面倒で厄介なことは詞ひとりに押し付けられている。
周囲が認知している絢辻詞のイメージは、生真面目で堅物な優等生というものだ。
昨日までは。
口だけでロクに仕事しないひとたちに、黙って文句言われるスジ合いなんてないのよっ!!
2年A組の催し物はお化け屋敷とのデッドヒートを制して、これも定番の喫茶店に決まったのだがコレがけっこう面倒くさい。
いちばん面倒くさいスケジュール管理だったり、諸々の資材の手配だったり外部への発注だったりは、詞とそれをサポートしてくれる橘純一のほぼふたりだけで担っていた。
そうなればふたりで時間を共有する機会は多くもなるし長くもなる。
嫌いよりも好きな方がしんどくない。
それだけなのに。
グチとゴシップが大好きという人種はどこにでもいるものだ。
純一はイケメンというほどではないものの、まずまず整った優し気で柔和な線の細い顔立ちをしている。
高校二年生の男子として背は高からず低からず、体格も太りすぎず痩せすぎず、学力も上位に手が届きそうにないが下位に落ちそうにもない。
スポーツも苦手というわけではなさそうだが、だからといって得意というわけではないだろう。
この世界がゲームならモブキャラ確定だ。
あるいはプレイヤーが自己投影し易いよう、個性を殺された主人公といったところで、髪型から何から何まで見事にアベレージなクラスメイト。
「さすがに絢辻さんだけってわけにもいかないでしょ。だれかもうひとり、絢辻さんを手伝ってくれるひとはいないかしら?」
立候補したのは詞の他に誰も居らず、クラス委員と創設祭実行委員の兼任になるのに、担任教師の高橋麻耶は当初から難色を示していた。
純一はあんまりこういうアピールというか、自己主張をするタイプではない。
なので、
「あの、ぼくで、よかったら」
意外だった。
控えめではあるがはっきり手を挙げてくれたのは。
思うところがあったらしい。
「橘くんのサポート、期待してるからね」
「う、うん。その、綾辻さんの足を引っ張らないように頑張るよ」
実際には言葉でいうほどの期待はしておらず、まあ、邪魔さえしなければいいか……、くらいの認識でさほどアテにはしてなかった。
雑用でもさせておこう。
その程度。
純一に対してはその程度の認識だったのだが言葉通り、不器用ながら日々頑張る純一に少しずつ認識は書き換えられつつある。
男女のソレかどうかはべつにしても、好感めいたモノを抱いているのは間違いなかった。
打ち合わせしながら昼休みに、お弁当を一緒に食べるくらいには仲は深まっている。
詞自身はそれ以上先の関係があるとは考えてなかったし、あるいは先があったとしてもそれは先の関係で今の関係ではない。
「やってらんない」
「なんであたしたちがこんなことしなきゃいけないのよ?」
「あのふたりが自分から委員やるって立候補したのに」
スケジュールの進捗具合には余裕があったが、それでもより確実にするためにクラスメイトにも手伝ってもらった。
主導しているのは詞だが2年A組の催し物なのだから、そうしてもらってもおかしなことではない。
いくらかの申し訳なさはあるが、根も葉もないことで責められる謂れはない。
なんにもできないくせに他人を見下して優越感に浸る不平分子三人。
腐ったミカン。
「恥って言葉を知ってるんなら、自分の人生を振り返ってからにしてよね」
これまで素顔を隠してきた優等生の仮面は剥がれ落ちた。
……もしかしたらソコには、本人も気づかない真実が含まれていたのかもしれない。
ひとが怒りを制御できなくなるのはそんなときだ。
しかし詞がソレを認めることはない。
自覚することも。
とにかく、
「詰まらないこと言ってないで手だけ動かしてればいいのよ。どうせあなたたちにはそれしかできないんだから」
火のないところに煙を立ててクラスの和と自分の計画を乱す輩に、ついぶち切れて本性をクラスメイトの前で露わにしてしまった。
素顔をさらした優等生に、どう接すればいいのか戸惑っている。
アンタッチャブル。
すでに知っていた純一こそ変わらないが、詞は2年A組でここ何日かというもの、腫れ物を触るみたいに距離を置かれ浮いた存在になっていた。
三人の言葉を鵜呑みにしているわけではないが、かといって急激なイメチェンもあり、詞を信じていいものかクラスメイトの目は探っている。
鬱陶しいことこのうえないが配慮して、純一とは余程のことがない限り離れての作業にしていた。
共同作業になったときもわざわざ、帰りは別々にするくらいに気を遣っている。
そしてそのことがまた一段と、詞のフラストレーションを溜めさせていた。
ああもうイライラするっ!!
そうやって苛立ちながら下校しようとする詞の耳が、
ガタンッ。
通り過ぎた空き教室からの物音を捉えた。
肩甲骨まである長い黒髪を揺らして振り返る。
身体をびくっとさせ足を止めた詞の背筋を、得体の知れない冷たいナニかが這い登った。
ソコに誰かいる。
制服のブレザーをささやかに持ち上げている詞の、慎ましいふくらみの奥にある心臓の鼓動が速まった。
息を殺す。
「――ッ……」
微かであるがひとの声が聴こえた。
いや、これは声というよりも、苦しみ呻いているかのような?
ゴクッ。
詞の喉が静かに鳴った。
ある仮説が潔癖気味な思春期の少女の脳裏をかすめる。
これって……。
白い肌の頬にサッと朱が差した。
年頃の高校生が人それぞれに程度の差こそあれ、この分野にまったく興味がないわけがない。
「ン……ゥ……ぁ……、ハァアア……」
どうやら普段この辺りにひとが寄り付かないのをいいことに、空き教室で不純異性交遊に耽っている者がいるみたいだ。
ど、どうしよう。
そんなの考えるまでもない。
気づかれないよう気づかれないうちに、ここは即座に立ち去るべきだった。
わかってる。
考えるまでもない。
ない。
が。
怪我や病気という可能性だってなくはない。
「んぁッ、うンンンッ、あッ、ううッ、むぅううッ!!」
あるわけないが、まったくなくはない。
言いわけにもなってない言いわけを胸の内で呟きながら、詞は使用中の教室へそ~っとこっそり忍び寄った。
音を立てないようにそろりそろり、細心の注意を払って引き戸を開ける。
膝を曲げて詞はやや中腰の姿勢になると、後ろにお尻を突き出すみたいな恰好で教室内を覗き込んだ。
ソレが視界に飛び込んでくる。
えっ?
片目をつぶり顔を押し付けるようにしながら、詞は思わず声を上げそうになった。
予想していた以上のショッキングな光景がソコにはあった。
セックスしてる。
それはいい。
恋なり愛なりに盲目になっているふたりが、場所を変える時間すら惜しいと、制御不能のリビドーをセルフで暴発させて盛っている。
ちっともよくないのかもしれないが、ソレは想像の枠内で思春期の少女の期待通りだ。
けれど人数が完全に想定の範囲外。
男。
女。
男。
毎日がお花畑な春狂いのふたりだと思い込んでいた詞の、思考を停止させるにはそれだけでも充分すぎる衝撃だった。
これは下世話な表現をすれば、所謂3Pというやつであろう。
多様性が問われる世の中だ。
1対1という構図にこだわるのは、時代にそぐわないナンセンスかもしれない。
合意なら。
埃っぽい教室の床に男子生徒ふたりがかりで、力ずくで押さえつけられ口をふさがれている女子生徒。
羽交い絞めにされた上半身は制服どころかブラジャーまで捲くられて、汗の浮いている剥きだしになった乳房を鷲掴みにされていた。
瑞々しい若い肉はグニグニと落ち着きなく、青い欲望のまま歪にカタチを変えられている。
そのピンク色の先端は唾液に濡れていた。
噛まれたのか白いふくらみはところどころ赤くなって、醜くおぞましい歯型が劣情の証になって刻まれている。
いつもがいつもなだけに、涙でグチャグチャになったその泣き顔は痛々しい。
ややウェーブしたクセのある髪がトレードマーク。
2年A組のムードメーカー。
どこかの三人組と違ってクラスに、アクティブでポジティブな空気を入れてくれる。
生徒でありながら管理側でもある詞からすると、悪ノリするのが玉に瑕で難点であるものの、嫌いにはなれそうにないクラスメイトだった。
「う、ううッ、んンッ」
首を左右に振って睨みつけているが、瞳に勝気さを宿らせた眼光で普段なら、男子でも怯ませる迫力はもちろんあるわけもない。
むしろ逆効果でしかなく、圧倒的な優越感に浸らせるだけだ。
両脚の間に身体を割り込ませ、叩きつけられる腰の動きは、よりリズミカルなモノになっていく。
結合部まではさすがに距離もあり、覗いている詞の位置からは見えない。
だがふたりが結合しているのは確信できた。
くちゅッ・ぐちゅッ・ちゅくッ・ぐちゅちゅッ……。
粘つく音がする。
詞は自分の耳がこんなに良いのを知らなかった。
そして目もそんなに悪くはない。
窓から差し込む月明かりが憑かれたみたいに卑猥なピストン運動をくり返す、見下ろしゲスな笑いを張りつかせた憶えのある顔を映していた。
当然といえば当然だろう。
憐憫を誘う女子生徒に圧し掛かっている男子生徒も、詞と同じ教室で時間を共有するクラスメイトなのだから。
とはいえすぐに答えが出たかというと、瞬時にその正体がわかったわけではない。
字こそ違うものの下の名前が同じ。
佐川司に対しての詞の認識は、ほんのつい最近までその程度だった。
現在はアップデートされて、しょうもない男になってる。
貰ったラブレターを仲間内で回し読みして笑い者にするという、幼稚で性根の腐ったヤツというのが新たな認識だ。
できれば名前をすぐにでも改名してもらいたい。
そんなクズ。
なので悪い意味で顔を覚えていたのだが、人間の顔というのは表情でこんなにも変わるものなのかと驚く。
人間だってアニマルで、欲望を制御しないとサルと変わらない。
パッとしないB級アイドルくらいのルックスを佐川はしているが、理性のないケダモノとなった牡にそうした面影はなかった。
じゅぶッ・じゅちゅッ・ぐちゅちゅッ……。
本能のまま腰を振っている。
卑劣な罪の片棒を担ぐ共犯者の西谷誉も似たようなモノで、呼吸を荒くしながら乳房を揉みしだき結合部を凝視していた。
恥辱と屈辱に震える女子生徒の泣き顔に、口の端からポタポタと汚らしいヨダレを滴らせている。
「手、外してやれよ」
「いいのか? ちゃんと口ふさいどかねぇと、大声出されるかもしんねぇぞ?」
「……平気だって。出したりなんかしねぇから。誰か来ても恥掻くのはコイツだし、もし出したら俺もコイツのなかにたっぷり出すし」
ダス……。
ひねりのないシンプルなそのワードに、女子生徒と詞の身体が理性ではなく本能で震えた。
もうTPOがどうだとか、そういった問題じゃない。
どのような時と場所であっても笑えない寒すぎるギャグを、なぜだか上手いこと言ってやったみたいなドヤ顔をする佐川に、
「そ、そうだな」
やはり類友はセンスもリンクしているみたいで、追従するような卑しい笑いで応じながら、少女の口元を覆っていた手を西谷はゆっくり離した。
身体のサイズこそ共犯の佐川よりも大きいが、どうやら気持ちの方となるとひと回り小さいらしい。
流されるままで同意に主体性はない。
声にも手にもあきらかな緊張、そして後ろめたさが滲んでいた。
もっともクラスメイトの胸を揉みしだくもう片方の手は、飽きもしなければ悔いもなさそうに開閉をくり返している。
男の自分にない柔らかさに、牡のボルテージを際限なく煽られていた。
アルコールを摂取するよりも、気が大きくなっているかもしれない。
ケダモノの欲望が日頃のびびりな部分を、あるか怪しい常識とともにすっかり呑み込んでいる。
「どうよ? 初めてオトコのモノを咥え込んだ感想は?」
佐川は自分が絶対的に上位であるのを、信じて疑わない者特有の傲慢さで、涙目で睨みつけてくる少女の瞳を余裕たっぷりで覗きこんだ。
とはいえそういう他者を見下し切った態度も、腰がヘコヘコするのをとめられなければ滑稽でしかない。
不規則なリズムで荒くなっていく吐息が、大物ぶっている小物を際立たせ間抜けだった。
そして薄っぺらい化けの皮は、
「そんなの最悪にキマッてんでしょ……。こ、このヘタクソ、は、早く、早く、早くコレ、コレ、ぬ、抜きなさ――ああああッ!!」
あっさり剥がれ被っていた本性を露わにする。
いきなりトップギア。
少女がセリフを言い終わるのを待つことすらできずに、リビドーの命ずるままピストンをリスタートさせた。
情けないが足が竦んで動けない。
蹂躙。
そうとしか説明できない光景が繰り広げられている。
引き戸を開けて突入するというのは、女ひとりではいくらなんでもハードルが高い。
ヘタをすればただ犠牲者を増やすだけの、無謀で馬鹿な行為でしかないだろう。
ならば援軍として誰かしら、ひとを呼んで来るというのはどうか?
グラウンドや体育館、職員室に行けば、まだ帰ってない生徒や教師がおそらくいるはずだ。
で、でも……、でも、そ、それじゃ。
しかしそれでは佐川の言った通りで少女に恥を掻かせ、プライドを傷つける人数を増やすだけでもある。
どうすれば?
打てば響くように明瞭で的確な答えが、常に返ってくる頼りになる優等生。
そうした普段見せている凛々しい姿しか知らないひとからすれば、うろたえることしかできない絢辻詞を目にして驚きを禁じえないだろう。
ピーキング・トムに夢中になっている無力で役立たずな小娘。
せめていざというときのためこの卑劣な犯行を、しっかり証言できるようにしておかないと……。
自責の念に囚われながら、言い訳というには苦しい言い訳を胸中で呟きつつ、背後に突き出したお尻を揺らめかせ、詞はスカートの内側ですらりとした左右の脚をギュっと擦り合わせていた。
「痛ッ!? んンッ、くぅンッ、い、痛いだけなのよ、この馬鹿、ぬ、抜きなさい……、あッ、ハッ、んッ、抜きなさいってばぁ!!」
「すぐに気持ちよくしてやっから任せとけって。これでもけっこうな数の女とヤッてきたし、そんなかにはお堅いヴァージンだっていたからよ」
「口はいいから、腰を動かせよ腰を。次、俺の番なんだから早くイッて代われっての」
真偽の是非を確かめようがない佐川の武勇伝や、西谷の冗談めかしているが切羽詰った本心が透けた戯言はどうでもいい。
「はぁああンッ!?」
最悪のカタチで純潔を奪われ散らされて、ヴァージンではなくなってしまったクラスメイトの少女。
訴える声に痛みだけでないモノが混ざっている気がするのは、微かであるが甘いモノが含まれていると考えるのは邪推だろうか?
悔し涙に濡れている泣き顔にも、苦悶だけでないモノが映って見えるのは妄想の産物?
……ならコレも。
クチュッ。
擦り合わせた内腿の間から小さいが、聴かなかったことにできない罪の音。
まだ誰にも赦したことのない穢れなきスリットから、ヴァージンのシロップが滲みショーツに染み込んで溢れた。
視線は覗き穴の向こうにある陵辱シーンをフォーカスしたまま、認めたくない切ない感覚に詞は頬を真っ赤にさせて恥知らずな自分を恥じる。
なんとかしてはしたない粘液の分泌を止めようと、下腹に力を入れるがそれでどうにかなるものではない。
「クソッ!! もう待てっかよっ!!」
捕らえた獲物の抵抗はすでに微々たるものだと判断したのか、西谷は羽交い絞めを解いて制服のズボンのチャックを勢いよく降ろした。
もともと我慢の限界値が低いのだろう。
自尊心は有り余っていても、自制心となると皆無というやつだ。
ハァハァハァハァハァハァ……。
過呼吸にでもなったみたいに息も絶え絶えの必死な形相で、ナニかに急かされ追い立てられるように腰を振る佐川の終わりは傍目にも近い。
焦ることはなかった。
順番は、くる。
詞はハッと息を呑んだ。
佐川のモノは位置と距離から確認できない。
こうなのだろうという想像はできるが、それは拙い知識から生み出された妄想でしかない。
や、やだッ……。
リアルの衝撃は凄まじかった。
初めて目にする勃起状態のペニスは異様そのものであり、どこまでもグロテスクな造形をしていてひたすらおぞましかった。
針金みたいな陰毛に埋もれるようにして屹立している硬直は、弛緩したみたいな皮から浅黒い先端を露わにしている。
気味の悪い縦割れの唇から、汚らしい水滴を滲ませていた。
サンプルが少ない。
反抗期を迎え自我が芽生えるよりも前に、父親とお風呂に入ったときのだらんと垂れていたモノとは別物だ。
欲情を滾らせ勃起したペニスを詞は、コレしか見たことがないので、比較することはできないが、とりあえず性の知識に疎いヴァージンを引かせるだけのサイズとボリューム、そして隠せない凶暴性を間違いなく備えている。
「汚い、汚いじゃないッ、やめ、ンッ、ぁ、あッ、あぁああッ、は、激し、あッ、やめなさ、ふぅッ、んンッ、やめてよぉおおッ!!」
少女の髪を掴んで無理やり上体を起こし引き寄せると、顔面にこちらにまで臭気の漂ってきそうな生殖器を擦りつけた。
ねとつく淫液が頬を汚し額に跳ねる。
経験はあるのだろうか?
なければ残酷なこれがファーストキスということになる。
グロスでも塗ったように、艶々した唇に醜い肉塊が押しつけられた。
「うぶぅ!?」
亀頭が口内に押し込まれる。
深く深く。
根元までぐっぷり挿し込まれていた。
イマラチオという言葉こそ詞は知らなかったが、
「おむッ、んぶッ、むぅううッ、うぼぉ!?」
またひとつ少女のプライドが傷つけられ、無情にも踏みにじられたのは理解してしまった。
同じ年頃であり同じ学校の同じ教室で、青春という時間を共有する同性として同情せずにいられない。
心が痛む。
モテそうだがカレシが居るのかどうかはわからない。
でも恋に恋する思春期の少女が、まるで夢想してないことはないだろう。
もしかしたらデートスポットになっているポートタワー辺りで、ファーストキスはとかロマンチックなシチュエーションを描いていたのかも。
……それは断言できないが、しかしこれだけは断言できる。
「うぅううッ、ぐもぉ!? うふぅうううッ!!」
上下の口をこうやって理不尽に穢されて、犯される未来なんて望んでなかったと……。
そしてもちろんクラスメイトの少女に、自分がレイプされる悲惨でしかない様子を、こうして視姦されるのも望んでいるはずがなかった。
詞の腰の奥でナニかが疼いている。
正体のわからない熱いナニかが漏れていくかのような、トイレを我慢しているみたいに落ち着かなくて居心地の悪いむず痒さ。
そうしたところで鎮められるモノではない。
う、嘘よ、こんなの、こんなの、嘘じゃなかったらわたし……。
絶対に認めたくないのに認めざるを得ないほどの、膨らんでいく事実と真実に追い詰められ詞は手を股間に持っていった。
スカートの上から熱くなっているソコを、恐る恐るというよりもおっかなびっくりで覆う。
ショーツと合わせて二枚の布地越しではあるが、デリケートでナイーブなソコにはそれでも刺激が強すぎた。
「あンッ!?」
甘美な電流が全身を走り抜ける。
それほど大きな声ではなかったが、かといってそんなに小さな声でもない。
教室内に居る三人がそれぞれそれどころでなければ、捉えられたとしてもおかしくないくらいの声が漏れていた。
本人からすればラッキーという表現は複雑であろうが、幸い驚いたのは声の発生源となった詞のみである。
咄嗟のことに意図せず股間を覆っていた手を、ほどよく肉のついた太腿でギュッと挟み込んでいた。
鉤状に折れ曲がった中指がこれまた意図せず偶然、スリットの隙間を押し広げるように撫でて硬くしこっているナニかに触れる。
「んふぁああああッ!?」
腰の奥深くで疼いていたモノが声と一緒になって溢れた。
お漏らしでもしたみたいにスカートに淫らな染みが侵食していき、きらめく航跡を描きながら瑞々しい太腿を滴り妖しく流れ落ちていく。
紺色のソックスにゆっくり染みこんでいった。
矢継ぎ早に次々襲ってくる望みもしない未知の感覚に、不安定な恰好もあって詞は前のめりになりよろめいてしまう。
ガタンッ。
異音を奏でた。
全員がハッとなる。
考えるよりも先に詞の身体は動いていた。
そしてまたひとつ知った。
自分で思っていた以上にけっこう足が速かったのを。
深い闇に支配された廊下を、後ろを振り返ることなく疾走する。
心臓の鼓動がうるさい。
しかし獰猛な捕食者に追われ命がけで走る小動物みたいに、もつれそうになる足を叱咤して詞は走り続けた。
逃げ続けた。
刹那だけ視線と視線が交わった棚町薫の、オンナだからわかる哀しい憂いを宿した瞳から。