薫のイベント好きを2年A組で知らないという者はいない。
準備の段階からお祭りを楽しもうというその積極性は、クラスに前向きないい雰囲気をもたらしてくれるはずだった。
いよいよ創設祭も本番が迫ってきている。
2年A組の催し物はまさしくお茶を濁す喫茶店で、現在の進捗率はおおよそ七十パーセントといったところだ。
そうした状況で薫の準備参加の割合はどのくらいなのかと云えば、二十パーセントにも満たずほとんどクラスに貢献できてない。
バイトがあるから。
棚町家は大黒柱の父を早くに亡くした母子家庭である。
もちろん本人が吹聴したわけでないものの薫がバイトで稼いだお金を、微々たるものだが家計の足しにしているのを知っている者は知っていた。
だがそれがいつまでもいつだって自分が主体な、思春期の高校生に対し免罪符になるわけではない。
残念ながら幼いモラルに期待するだけ無駄だ。
サボりと取られるてしまうのは当然だし、佐川と西谷も必ずセットになるので、ホントにバイトなのかとほぼ全員に疑われている。
そしてその疑問が疑問でなくなるのに、確信に変わるのに時間はかからなかった。
薫は以前から2年A組の男子人気を、詞と二分するツートップではあったが、あまりセンシティブなモノを感じている者はいなかったろう。
どちらにもソレは当て嵌まることであるが、可愛いだとかキレイだとか、そこを疑う者はいないがダイレクトにイマイチ結びつかない。
思春期の高校生男子には容易いことであるものの、妄想力を発揮しないとふたりとも夜のオカズに使用するのは難しかった。
が。
最近はその辺りのズリネタ事情も変わってきている。
ステップを踏まなくていい。
憧れというファクターが程よく削ぎ落されて、日に日に卑猥にしか映らなくなってきていた。
「どうか……あ、謝らせて……ください……」
作業を開始する前に注目を集めるためわざわざ挙手して、これまで手伝えなくってみんなゴメンねと、悔しそうな顔をした薫が深々と頭を下げたそれだけで、教室の雰囲気がざわっとしたモノに一瞬で切り替わる。
イベントのスイッチが入ったのをクラス全員が共有していた。
いやいやゴメンてさぁ棚町さんよぉ、そんなんで許されっるてんなら、芸能界追放されるヤツなんていねぇんだよ。
YOUTUBEだって甘い世界じゃねぇんだぞ? オマエがマジで反省してるんなら誠意を見せろ誠意っ!!
バイトすらちょっとでもキビしかったら無断で休み、そのまま辞めてしまうコンボの常習犯のくせして、どの面下げて社会の厳しさを語るんだというサル二匹がここぞとばかりイキり煽る。
打合せ通りだった。
まさか親父にも殴られたことないのにだとか、昔のロボットアニメみたいなこと言わねぇよなぁ?
悪いことしたらお尻ペンペンだろ。
どうせこの本人は上手いつもりなのかもしれないが、まったくセンスの感じられないセリフ回しまで考えてきたんだろう。
佐川も西谷もここまでイベント進行に淀みがない。
馬鹿なコールもスムーズだ。
セーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッ――。
誠意の意味を知りもしないのに連呼する低能なサルどもに、男子をメインにしてひとりまたひとりと追随するのに時間はかからなかった。
四面楚歌かというとそうではないが……恵子は目を見開いて青い顔をしている。
純一はやたらとキョロキョロしており、挙動不審で落ち着きがない。
孤立無援ではないが、頼りになる味方はいなかった。
また薫がその視線に気づくことはなかったが、身体を舐めまわす視線に吐き気を覚えながら、詞がクラスメイトを憐れみを篭めて見つめている。
気づこうが気づくまいがなんの解決にも、どころかソレはなんの慰めにもなりはしない。
黒板に手を突いてクイッと尻を、望まぬ謝罪をするためクラスメイトに差し出す。
オマエが玩具になるんなら田中には……。
命じられるまま守られる保証など、欠片の可能性もない約束を信じて。
ただボルテージこそ爆上がりしているものの、誰もかれもが互いに互いを窺うだけで、据え膳を前にしてなかなか動こうとはしない。
こういうときこういう場面で遣うのは相応しくない言葉だが、反比例して勇気も度胸も湧いてこないみたいだった。
無力な牝への劣情だけが、激しさと大きさを増していく。
解放してやるには切欠が必要みたいだった。
せっかくのオモシロ企画なのに、無駄な間を作りたくない。
チッ。
佐川が舌打ちする。
ああでもないこうでもないと、薫のバイトしているファミレスで、盛り上がっているときの想像妄想では、オレがオレがとクラスメイトは争って、薫の小生意気な尻を叩きに列ができているはずだった。
こんなところでツマずくような企画じゃない。
けっして認めたりしないがふたりとも、アドリブが上手くないのは、惰弱な心のどこかで無意識に自覚していた。
スケジュールにない臨機応変などという芸当はとてもできない。
MCが率先してやるわけにいかないという、基本というかセオリーだけがどうにかある。
相棒に同調するように西谷が少し苛立った顔で、尻叩きの最初の栄誉を受けられるクラスメイトを、誰に指名してやろうかと周囲を見回した。
「あの、じゃ、わたし……から……」
なので捕らえた美しい獲物を嬲るのに夢中になっており、彼女のポジションが変化したのに気づかなかったふたりは驚く。
挙手したのは生真面目で堅物な、このイベントの障害になると踏んでいた優等生。
まったく予想してなかった意外な立候補者であったが、ふたりは胸を撫で下ろしつつ邪な笑みを浮かべて歓迎する。
「ほら」
「……え?」
「こういうときはクラス委員が先頭にならないと」
「あと準備委員なんだし」
「みんなもう忘れてるかもだけど、初期設定では優等生なんだし」
と。
このようなやり取りが交わされていたのを、裏回しのナイスアシストがあったのを、MCぶった低能なサルどもは知る由もなかった。
ゆっくり詞が近づいてくる。
見るからに足が重い。
しかしたとえどれだけの負荷がかかっていようと、教室の端から端でも黒板までの距離など高が知れている。
罪なき罪を償うために罰を請う憐れな受刑者の後ろに、躊躇いながらも罪深き執行者として立った。
元ツートップの共艶に教室は静寂に包まれ、
ゴクッ。
生唾を呑む音がしたが2年A組の全員が、それが自分の喉が鳴ったモノなのか、あるいは他人の喉が鳴ったモノなのかわかる者はいない。
そしてそんなことにこの瞬間、意識を割いている者もいなかった。
うつむき長く美しい黒髪で、顔を隠した詞の手が無言で振りあげられる。
ヘタに時間をかけることが結果として、ギャラリーを焦らしてしまい煽ってしまうのを、経験として熟知しているかのようだった。
掲げられた薫の尻に振り下ろす。
――パンッ。
軽快でどこか気の抜けたような音が空き教室に響いた。
ちょっと肩透かしを食らったような、シラケた空気が流れる中でチラっと佐川と西谷……ではなく詞はサキュバスたちを窺う。
その瞳にはこれで許してあげてほしいという、無言の哀願が秘められていたが、それに対する三人の無言の返答は無慈悲なモノでしかない。
打ち合わせなしで息ぴったりのユニゾンを披露し、視線はそのまま首を左右にノンノンと振っただけである。
無駄に高いシンクロ率で、見せかけバレバレのビンタでなく、強烈なスマッシュを要求してきた。
「棚町は今のでオッケーでもいいのか? もしかしてアレがオマエの誠意ってヤツ?」
「っんなわけないよなぁ」
そんなことは絶対に許さないという圧力が、わかり易く乗せられているふたりの言葉に、黒板に手を突いた薫の身体が小さくぴくんっと揺れる。
微かなノイズのような震えさえも、もうクラスメイトの少女を獲物であり玩具としてしか、認識してないいくつもの瞳は見逃さなかった。
セーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッセーイッ――。
再度起こった誠意コールの、口火を切ったのは誰だかわからない。
けれどそれは佐川でも西谷でもなかった。
自然発生。
佐川がしたのは、
「オマエの誠意ってのを見せたいなら、委員長にちゃんとお願いしろよ。……それとも田中に見せてもらうか?」
期せず始まった大合唱に気を良くしながら薫の耳朶に、死の宣告よりもツラいことを意地悪くそう囁いただけである。
どんな脅し文句より単純明快で有効なのを、馬鹿のひとつ覚えになってしまっているが、この数日でサルはサルなりに学習したらしかった。
シンプルにできることを、わざわざ複雑にするのは馬鹿でしかない。
「田中だったらどんだけ尻が真っ赤になっても、もうとびっきりの誠意ってやつを見せてくれんだろうなぁ」
「椅子に座れなくなるくらい引っ叩いても、オレたちに誠意を見せてくれるんだろうなぁ」
とはいえコイツらを頭がいい分類にしてしまえば、自分の馬鹿っぷりを証明してしまうだけであろう。
どこまでイッても馬鹿は馬鹿だ。
「あ、絢辻……さん」
そしてその馬鹿どもに従うしかない自分は、きっともっと救いようのない馬鹿なんだと、薫は諦めにも似た気持ちで受け入れて詞にお願いする。
振り向いた貌はゾクリとするほどの色気があった。
「……もっと……もっと強く……た、叩い……て……」
絞り出すような声でする哀願だったが、
「どこを?」
それだけじゃ言葉が足りないとカブせてくる。
「お、お尻を……」
「ペンペン」
「ペン……ペン……」
「オシオキしてください」
「お、オシ、オキ……し、して……してくださ……い……」
馬鹿みたいにさせられるオウム返しが、薫の抵抗の意志をさらに蝕み、さらに憐れで従順な肉人形に変えていく。
「ってことだからさ委員長」
「遠慮しないでぶっ叩いてやれよ」
詞には脅し文句のすべてが聞こえてわけではなかったが、それでも同じカテゴリーに属している少女の現状は理解していた。
誰よりも。
卑劣な脅迫犯の虜囚になって弄ばれるクラスメイトに、中途半端な情けをかけるのは、その苦しみを深く長く激しいモノにするだけでしかない。
しかしそうすることがささやかな薫への救いなのだとすれば、自分も同属だと認めた詞にもブーメランであるがその事実からは目を背けた。
大きく手を振りかぶる。
ナニか自分は間違っているのではないかと、心の声が聞こえてくるが聞こえないふりで振り下ろした。
――パァンッ。
「うぐッ」
さっきとあきらかに音の響き方が違う。
痛みを堪えようとしたみたいだが、薫の喉からは堪え切れない呻き声が漏れていた。
そのつもりだっただけに尻肉を襲う痛みに堪え切れなかったことが、せめて動じないと決めていた少女の恥ずかしさと悔しさを募らせる。
「とりあえずクラスの人数分、40発ってところをノルマにするか」
「いや、40発って、マジで尻真っ赤かになるんじゃね?」
「そこんとこは絢辻さんの匙加減に任せようや。頼むから泣き言いわないよう完走させてやってくれよな」
罪悪感に震える肩を馴れ馴れしくポンと叩くと、字は異なるものの同じ名前の佐川は、技術のいるパートを詞に丸投げしてようやく引っ込んだ。
これでいいの?
自問自答する詞の瞳と、
お願い……もう……もうこうするしか……ないの……。
自縄自縛に陥ている薫の瞳が刹那交錯する。
ほんの一瞬であったがそのテレパシーに近い意思疎通は完璧で、同属だからこその理屈のないシンパシーがふたりを結んでいた。
悲壮な決意で手を振りかぶる。
両脚を肩幅に開いて、黒板に手を突いた身体に、グッと緊張が走った。
ヒップを叩く打擲の音が連続して響く。
軽いパンパンと炭酸の気の抜けたような音に時折り、
――パァンッ。
爆竹を鳴らしたような音が混ざる。
人間は順応の生き物でどれだけの痛みであっても、いずれはどのような刺激にも慣れてしまうモノだが、
「んゥッ!!」
あれだけラインが結ばれたと感じたのは、やはりふたりの錯覚だったみたいで、身構えているときには来ないのに、構えを解いた瞬間を狙うみたいに、
――パァンッ。
勢いのある平手打ちは振り下ろされていた。
意図せずランダムで襲ってくる強烈なスマッシュの刺激に、
「ひぐッ!!」
呻き声は必ず漏れる。
クルぞクルぞクルぞクルぞクルぞクルぞクルぞクルぞクルぞクルぞ――。
見えない背後からのビンタに、ビクつく薫にわかりようはずもないが、このショーを愉しむクラスメイトにはわかっていた。
詞の強打するタイミングが。
くせなのか少し手首を捻ったりするが、そういう喧嘩だったり武道だったりをしてなければ、見落としてしまうような些細な挙動で察しているわけではない。
いつしか憐憫を帯びていた瞳の奥に、それだけではないべつのナニかが宿っており、それがインパクトの直前ギラッと妖しく危険に光る。
――パァンッ。
「ハァンッ!!」
そして薫に悲痛な悲鳴を上げさせるそのたびに、詞の息遣いは飢えたケダモノのように荒くなっていった。
ここ最近は隠しパラメーターのMを急激に成長させられた詞であるが、Sの初期パラメーター値も秘めていただけでかなり高かったりする。
異常なシチュエーションでひさしぶりに揺り起こされた加虐性は、薫の嗜虐性の覚醒もあってかコントロールが利かなくなっていた。
ハンドスピードが上がっていく。
初めは5、6発に1発くらいの割合であったものが、4、5発に1発になり、3、4発に1発になり、2、3発に1発がついには……、
パァンッパァンッパァンッパァンッ――。
憑かれたみたいに憐れな少女の尻肉を、本能のままヒステリックに打ち据えていた。
男子生徒は誰も彼もが、鼻の穴と股間を膨らませている。
女子生徒は詞と薫をこれまでの憧れと嫉妬の裏返しもあり蔑みながらも、内股になって太腿を擦り合わせている者がチラホラ見受けられた。
美少女ふたりのこのソフトなSMレズショーは、どうやら好評なコンテンツのようである。
子供騙しの喫茶店なんぞより余程、催し物として客の入りが良さそうだった。
スゲぇだろと幼稚な自己顕示欲を満足させたかった佐川や西谷すら、
パァンッパァンッパァンッパァンッ――。
奴隷の契約を交わした少女の牝肉が打たれる音に、バックから穿つことを連想し興奮を抑え切れなくなってきていた。
学校から帰ったら今日は即オールで、クラスメイトの身体を嬲り貪るのは確定している。
しかしそうする前に自分たちの所有する玩具が、どれだけのモノかもっとアピールしないと満足できない。
「絢辻さんナマ尻叩こうナマ尻」
「棚町がホントに謝罪したいって気持ちがあるんならできるはず」
熱した鉄板で土下座させられる、中間管理職みたいなことを薫は言われていた。
わけのわからない理屈にもなってない理屈で、スパンキングの過激化のリクエストを要求してくる。
「え?」
キュッと締まったカタチのいいヒップを打ち据える詞の手も、そのリクエストにはさすがに振り上げたまま宙で止まってしまった。
それは当然でソレはレベチというやつだ。
ここまでは淫靡な雰囲気だけだったが、そこからはもう雰囲気だけで済まされない領域である。
恥をさらすステージが段違いだ。
よりストレートでよりダイレクトなクラスメイトの劣情を、生み出される羞恥を薫はその身に浴びて味わうことになる。
「代わりに謝ってくれるってヤツがいんならいいけど?」
「誰か棚町は心当たりとか、あったりすんのか? まあオレたちにはやってくれそうな女子に、心当たりがないこともないぜ」
陳腐な脅し文句ではあったが、それだけに効果は覿面だった。
場違いな感想なのかもしれないが、背中のラインが妙に艶めかしい。
身体が一瞬だけびくんっと跳ねてから、か細く震える声が哀しいお願いを詞にしてくる。
「な、ナマ尻、ペンペン……して……」
胸が張り裂けそうになる羞恥と屈辱にさらされて、脅迫者に隷属するふたりの少女はぞくぞくしていた。
薫が二匹のサルを肩越しにチラっと見ると底意地悪く嗤っており、詞が三匹のサキュバスを見ると腕を組みうんうんと頷いている。
わかり切っているが従うしか選択肢はない。
トロ火のようにジリジリと時間をかけてしまうと返って、犠牲者を苦しめるだけだということを、詞は自分の身体を犠牲にして経験している。
制服のスカートを一気に捲り上げ、グレーのショーツを素早くずり下ろした。
熱を帯びているぷりっとしたお尻が剥きだしになる。
乙女の肌はきめ細かく繊細。
それを証明するように白かったお尻にはくっきり、冗談みたいな手形ができていた。
臀部と太腿の中間にショーツを絡め必要以上に辱めないよう、肝心の部分はちょっとでも露わにならないようにする。
それが如何ほどの慰めになるものなのか、もちろん詞はわかっていたが、意味のない無駄なこととと知りつつそうせずにいられなかった。
「絢辻さん」
「棚町さんのお尻真っ赤になってて可哀そうだよ」
「撫でてあげて」
このまま馬鹿ザルに任せておくと、趣向が変わらずイマイチ面白くない。
女子に特有の無責任で無感動な同情をしているふりの、優しくも残酷な愛撫をしろという命令が飛んでくる。
痛みは媚刺激をより倍増させるエッセンス。
それも詞は知っていた。
……よく。
フェザータッチ。
経験からたっぷり熟知しているくせに、さっきまで狂ったみたいに叩いていた手で、柔肉に指が沈み込まないようゆっくりスライドさせる。
「あッ……んッ」
ゾクゾクとしたこそばゆくも甘い感覚に、これまでの痛みを訴えるモノと、まるで異なった媚びるみたいな声が薫の喉から漏れた。
被虐体質とはいえ散々サルどもの、独りよがりなセックスに慣らされた薫には、詞の愛撫の呼び名に相応しい手つきは、新鮮であり抗し難く加速度的に快楽を生み出していく。
すっかり発情させられてしまった瑞々しい思春期の身体は、この甘い感覚を現実逃避の手段としてすんなり受け入れていた。
いくらもしないで尻を中心にした震えは大きくなり、詞の手を追いかけるみたいにクネクネさせている。
「べつに慰めるのもいいけどよぉ、コレ罰なのを忘れてもらっちゃ困るぜ」
「やっぱケジメってやつはビシッとつけないと」
ならまずテメェからどうぞという、サルどもに従ったわけではない。
無意識にサキュバスをチラ見すると、三人が三人とも深く大仰に頷いていたからだ。
振りかぶる。
手首のスナップを利かせて優しさに油断していたヒップに、
――ピシャンッ。
力いっぱい叩きつけた。
「ひぃいいッ!?」
顎を跳ね上げ背筋を弓なりに反らすと、まさしく不意を打たれた薫は裏返った嬌声を放つ。
たった二枚だけであっても布地の恩恵はどうやら絶大だったみたいで、響いた音を耳にすればその痛みの大きさを聴く者は体感できた。
ずっとガクガクしていた膝が、一発でカクンッと折れる。
震える尻だけを高く掲げて土下座するみたいに、ゆっくり崩れ落ちながら四つん這いの格好になった。
しばらくはぶるぶるしてホバーリングしていたが、それも限界が来たみたいでゆっくり崩れ堕ちようとしている。
が。
――ピシャンッ。
狙い澄ましたスパンキング。
「あひッ!?」
甲高い悲鳴とともにお尻が跳ね上がる。
淫猥なマッチポンプ。
赤く染まった痛々しくも瑞々しいヒップは、浮き沈みのサイクルをくり返した。
ステージ最前列でかぶりつく、幾人かは気づいたかもしれない。
「やめッ、んンッ、イッ、痛いっ……あ、あひッ、ああッ……ひッ……、あッ……あふぁッ!!」
尻を叩かれて嬌声を響かせるクラスメイトの少女の、擦り合わせている太腿に妖しくぬめるモノが光っているのも。
視力と集中力のスペック次第ではわかるかもしれない。
チラチラと見え隠れるする可憐な排泄器官が、ひくひくと収縮し誘うように開閉しているのも。
最前列よりもやや後ろにスペースを作って、大物ぶっているが小物ぶりを際立たせて、ドカリと椅子に腰かけていた佐川が鼻息荒くち上がった。
その隣りに座っていた西谷も、やはり同じように鼻息荒く立ち上がる。
尻尾を振り媚びを売る牝犬のように、真っ赤になった尻を揺らめかせる薫の背後に、血走った眼をしながら薄ら笑いを浮かべてにじり寄った。
「あ……」
夢中になって熱心にスパンキングに従事していた少女を、もういいからどけとばかりグイッと脇に押し退ける。
身体だけ大きくなった子供に、自尊心はあっても自制心はなく、もともとコントロールが利く方ではない。
人間としての羞恥心も足りてないサル二匹は、股間を湾曲させているズボンのジッパーを下ろした。
急角度でそそり立つ肉茎を引っ張り出す。
馴染んでいるが慣れない。
津波のようにざわっとした空気が、2年A組の生徒が生唾を呑んだ教室に流れた。
あきらかに異様で異常な熱気に包まれている。
誰もが欲情していた。
手形のついた真っ赤な尻をゆらゆらさせている少女が、オンナとして陥落する瞬間を待ちわび網膜に灼きつけようとしている。
ふたりの視線が刹那交錯した。
チッ。
舌打ちして佐川が半歩だけ下がる。
桃色に熟れて食べ頃になった剥きだしのヒップの真後ろに立つと、西谷は腹筋に張りつくくらい反り返ったシャフトに手を添え角度を調節した。
「やンッ」
瑞々しい尻肉を左手で掴み、谷間にかけた親指を外側に引く。
すると申し訳程度にショーツに覆われていた淫裂が周辺の柔らかな部分と一緒に、粘度の高いシロップをぬちょりと滴らせて歪なカタチに割り開かれた。
亀頭を宛がう。
ハッ!?
馴染まされたが慣れない感触に薫は身体を堅くした。
あとは腰をいつものように突き出されるだけで、物欲しげにひくつくホールに勃起は呑み込まれ凌辱は完成する。
が。
――ガラッ。
黒板の設置された教室前方の出入り口。
引き戸が唐突に開いた。
「え?」
「は?」
しばし見つめ合う。
予想外のハプニングに頭が真っ白になって、脳がフリーズしたのは両者ともにだった。
とはいえそこは彼女も教師である。
「貴方たち、なに、なにしてるのッ!!」
四つん這いになって尻を掲げている女子生徒。
局部をさらし迫るふたりの男子生徒……そのうちのひとりは今まさに性交に及ぼうとしている。
他の生徒はそれを止めもせず、信頼していたクラス委員にいたっては、すぐそばにいるのに傍観者になっているようだった。
処理できたわけではない。
だがこれまで教師として培ったスキルが考えるも先に、エネルギーの有り余っている思春期の子どもたちの機先を制する。
牝としての危機感をショートさせてしまった麻耶は考えもなしに、
「離れなさいッ!!」
鋭い声をあげて檻となった教室に自分から踏み込んでいた。