しかし、今度はまったく部屋の奥から誰も出てくる様子はなく、そうしている間に男はさらに理香子を脅してきたのだった。
「さぁ早く大きな声で言うんだ!」
男が苛立った様子で怒鳴ると、理香子はもう菅原達に助けを求めるのを諦め、覚悟を決めるしかなかった。
「私は・・・人に、は、裸を見られるのが大好きな、ろ、露出狂です」
理香子はさっきよりも少し大きな声でそう言い放ったが、男はまったく納得しようとしなかった。
「もっと大きな声で叫ぶんだ。ほら、ご近所さん達にも良く聞こえるようにな!」
出前の男はそう言うと、理香子の前で玄関の扉をおもいきり開けて見せた。
その瞬間、マンションの廊下から緩やかな風が部屋の中に流れ込み、素っ裸の理香子は肌を撫でる外気に羞恥心を煽られた。
「さぁ、早く言わないなら、もうこのまま帰って、アンタの事を言いふらすぞ」
男は不敵な笑みを浮かべながら、素っ裸の美人妻に最後通告をしたのだった。
出前の男に玄関の扉を開けられた上に脅迫までされた理香子は、素っ裸の体を小刻みに震わせながら怯えていた。もしも今、住人の誰かが部屋の前の廊下を通れば、玄関に素っ裸で立ち尽くす姿を目撃されてしまうことになるのだ。そう思えば、男を満足させて、早く扉を閉めてもらうしかなかった。
もう、言う通りにするしかないのね、じゃなきゃ、大変なことになってしまうわ・・・。
理香子は悲しい覚悟を決めると、男の前で大きな声で叫んだ。
「私は・・・人に裸を見られるのが大好きな・・・露出狂です!」
理香子の叫び声は、開いた扉の向こうのマンションの廊下へと響いていった。
いやぁぁん、どうしよう・・・。
おもいきって大きな声を出し過ぎてしまった理香子は、ご近所中に聞こえてしまったのではないかと焦った。
「やればできるじゃないか。それにしてもこれでご近所中に、露出狂だってことがバレてしまったな」
男は不敵な笑みを浮かべながら、恥ずかしさに体を震わせている素っ裸の美人妻の羞恥心をさらに煽った。
「それじゃあ、また桶を取りに来るから、その時にも楽しませてくれよ」
出前の男はそう言うと、開いた扉の向こうへと去っていった。
一人、玄関に取り残された理香子は、暫し呆然と立ち尽くしたまま、またしても淫らなマネをしてしまった自分に対して自己嫌悪に陥っていた。
「理香子さん、いつまでそんな所に立ってるのよ。早くお寿司をこっちに持ってきてちょうだい!」
部屋の奥から菅原の声が聞こえると、理香子は我に返り、素っ裸のまま桶を抱えてリビングへと戻った。