しかし、そんな理香子の願いは虚しく打ち砕かれることになったのだった。窓の向こうで帰り支度を済ませたご近所さん達が、ベランダの外で踊り続ける素っ裸の美人妻を意味深な表情で眺める中、菅原がまた新たなメモを窓越しに理香子に示してきたのだ。
『今日のランチ会はとっても楽しかったわ。私たちはこれで帰らせてもらうわね』
メモにはそう記されており、菅原達は窓越しに理香子に手を振って部屋を出て行こうとした。
「お願い、待って!」
その様子を見た理香子は思わず踊るのを止め、窓の方に近づき、菅原達に向かって叫んだ。
「窓の鍵を開けてください!」
理香子は必死の形相で窓を叩いて、部屋を出て行こうとする菅原たちに呼び掛けたが、彼女たちはベランダの方を振り返り、素っ裸の美人妻に不敵な笑みを見せた後、そのまま部屋から出て行ってしまったのだった。
「待ってください!」
自分の家のベランダに素っ裸のまま締め出されてしまった理香子の叫び声は、辺りに虚しく響き渡り、菅原達が再び部屋に戻ってくることはなかった。
どうしよう・・・。
思いもよらない事態に直面した理香子は酷く動揺し、これからどうすれば良いのかまるで分からなくなった。もしかしたら、菅原達は自分を脅かそうとしているだけで、ベランダから見えない部屋の向こう側から私の様子を窺っているのかも知れない。それで、もうすぐしたらまた私の前に現れて、窓を開けてくれるかも知れない。理香子はそんな淡い期待を抱いてみたが、どれほど待っても菅原達が再び部屋に姿を見せる気配はなかった。
私、本当にベランダに締め出されてしまったんだわ・・・。
窓の向こうで菅原達がいなくなってから三十分近くが過ぎようとした頃、理香子は自分が素っ裸のままベランダに完全に放置されてしまった事実をようやく受け入れたのだった。まさか、菅原達がここまで酷い事をするとは思ってもいなかった理香子は、ショックを隠しきれなかったのと同時に、自分がこれからどうなってしまうのか全く分からず、途方に暮れた。後ろを振り返るとマンションの前の道路が見え、理香子は思わずその場に屈んで裸の体を隠した。
窓の鍵を閉められてしまった以上、部屋の中から誰かに開けてもらうしか理香子が部屋の中に戻る術はなかったが、夫が長期出張中であることを考えると、やはり菅原達が戻ってきてくれるのを願うしかなかった。
もういい加減に許して・・・。
ベランダにしゃがみ込んだ理香子は、いつ終わるとも知れぬ羞恥地獄に剥き出しの体を震わせた。