すると、何処にも菅原達の姿は見えず、彼女達は本当に自分を置いて何処か他の場所へ行ってしまったことが分かったのだった。
こんなの幾ら何でも酷すぎるわ・・・。
試着室の中に全裸で取り残されてしまった理香子は、菅原達のあまりに惨い仕打ちに憤りを越えて絶句した。そしてすぐにカーテンを閉めると、このまま菅原達が戻って来てくれるまでの間、誰にも見つからないことを祈るしかなかった。
「理香子さん、今頃試着室の中できっと焦っているわよ(笑)」
「確かに脚が少し震えているように見えるわね(笑)」
「裸の美人妻が一体どうなるか、じっくり観察させてもらいましょ(笑)」
試着室から少し離れた場所で、菅原達が笑い合う姿があった。彼女達は何処か遠くへ行くフリをして、実は理香子のいる試着室の様子をしっかりと観察していたのだった。
試着室の中に全裸で放置されてしまったと思い込んでいる理香子は、買い物客の足音や話し声が聞こえてくる度にドキッとして、全身をブルブルと震わせた。もしも、誰かが試着室を使うためにやって来たら、いつまでも試着室に籠もっている自分を不審に思い、声を掛けてくるに違いなかった。そして、ついにはカーテンを開け放たれ、全裸で佇む姿を見られてしまうかも知れないのだ。
あぁん、お願い早く戻ってきて・・・。
不安に押し潰されそうになった理香子は心の中で泣き叫んでいた。
それから十分近くが過ぎ、その間菅原達はずっと離れた場所から試着室の様子を観察していた。カーテンの下の隙間から覗く美人妻の脚元は相変わらずガクガク震えており、中で理香子が不安と羞恥に怯えていることが菅原達の目にはっきりと分かった。
「そろそろ行ってあげようかしら」
菅原がそう言うと他のご近所さん達も頷き、菅原はゆっくりと試着室の方へ近づいて行った。
するとその時、菅原達にとって思いがけない展開が訪れた。なんと、三十代くらいの女性二人組が手に服を持って理香子の入っている試着室の前にやって来たのだ。カーテンの閉まった試着室の前に靴が置かれているのに気づいた彼女達は、仕方なく試着室のカーテンが開くのをその前で待った。
「これはなんだか面白いことになりそうね」
思わぬ事態に足を止めた菅原は、不敵な笑みを浮かべながら他のご近所さん達にそう呟くと、暫し様子を見守ることにしたのだった。
それから数分が過ぎ、試着室の中から一向に人が出てくる気配がないと、その前で待っている二人組の女性達は次第に怪訝な表情を浮かべ、苛立ち始めていた。
「あのー、まだですか?さっきからずっと待っているんですけど、早く出てもらえません」
ついに我慢できなくなった女性は試着室の中に向かってそう呼び掛けた。