おかしなところがあるかもしれませんが、大目に見てください。
麻弥の身体となって10日ほどが経った。
その間特に進展もなく、日々を過ごしていた。
何もしなかったわけではなく、ほとんどできなかった、それほど人気アイドルとは忙しいものだった。
「少し甘く考えてた…」
学校の放課後は、ほぼ毎日バンド練習か収録。
休日はバンド練習か撮影か収録。
移動の時くらいしか空き時間がない。
なんなら学校の方が余裕があるくらいだ。
今も放課後のスタジオでの練習が終わったところだ。
「まぁ、新曲の発表が近いのとPV撮影があるというのも原因ですけど…」
完全なオフ日が取れるのはまだ先になりそうだった。
最近では麻弥としての生活が充実しすぎて違和感がなくなってしまった。
なんなら自分は最初から大和麻弥だったと錯覚してしまいそうだ。
それにしても《元の自分》の方から何の接触もないというのも少し気になるところだった。
こちらはSNSやメディアでの活動だって同じように続けている。
アイドル大和麻弥のことは確認出来るだろうし、SNSはアカウントやパスを知っている本人ならいくらでも接触出来るはず。
そう考えたあと、ぞくりと悪寒が走る。
「まさか… まさかだけど… この身体に移ったことで向こうの存在自体が消えてしまった…なんてことないよね?」
突然恐ろしい事態を思いついてしまった。
考えたくはないが、ないとも言い切れないその状況を想像すると、途端に背筋が寒くなってくる。
何かの原因で肉体が消滅して精神が大和麻弥に乗り移ったとか…
実は死んでいて、自分の死を認識したら消えちゃうとか…
一旦マイナス思考に振れると、連鎖的にネガティブなことしか浮かんでこない。
《存在》の確認なんてもっと早く気付くべきだった。
勝手に入れ替わったと思っていただけかもしれない…
そう考えるともう居ても立ってもいられなかった。
「電話!」
急いでスマホを取り出し、元の自分の携帯番号を打ち込んでスマホを耳にあてる…
『おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため…… 』
「え?… どういうこと?」
放課後のこの時間、マナーモードならわかるが電源が入っていないなんてことあるはずない!
真っ青な顔で震える手に握られたスマホを見つめ数舜、ふと思い出す。
「NFOだ!」
最近再開したオンラインゲームにログインしてチャット履歴を確認すれば…
あこや燐子とほぼ毎日ゲーム内で会っていたのだ。
元の自分もこちらと同じように身体の記憶を使って日常生活を送っているならゲームをしているはず…
チャット履歴はスマホでも確認できる。
祈るような思いでアプリからアカウントとパスワードを入力する…
無事ログインすることはできた、程無く見慣れたハンドルネームとマイページが表示される。
そこから昨夜のゲーム内での燐子たちとのチャット履歴を確認する。
「あ… あったぁ…」
安心のあまり目元に涙がにじむ。
「ね、ねぇ… 麻弥ちゃん、大丈夫?」
様子を見ていた彩が心配そうに声をかけてきた。
スタジオの控室に入ってからぶつぶつと独り言をつぶやいていたかと思えば、突然スマホを取り出して一喜一憂の麻弥の様子にどうしたものかと困惑していたのだ。
「す、すみません、ありがとうございます彩さん、もう大丈夫です」
「本当? 私じゃ頼りないかもしれないけど、何か心配事があったら相談して?」
「ホントに大丈夫です… フヘヘ、彩さんは優しいですね」
存在が確認できたことと、彩の気遣いで安心できたのか一気に力が抜けた。
落ち着いたことで思考が回り始める。
そういえば彩も花咲川だったと気づくと、思わず尋ねてしまった。
「話は違うんですが、彩さんの学校の2年A組に○○さんという方がいるのをご存じですか?」
「ん~? 2年A組というとポピパの市ヶ谷有咲ちゃんのクラスかなぁ…? 2年ならクラスは違うけどイヴちゃんに聞けばわかると思うけど…」
彩は首を傾げながら考えている… どうやら知らないようだ。
イヴはモデルとしての別現場があるので既に出ている。
(まぁ学年も違うし、知らなくても仕方がないか… さすがに千聖さんに聞くのはちょっとなぁ)
「麻弥ちゃん?」
部屋の反対側にいたはずの千聖が突然背後から声をかけてきた。
「ひゃぁっ?… ち…千聖さん?」
驚き振り向くと、笑っていない笑顔の千聖が立っていた。
「今の名前…どこで聞いたの?」
背後に『ゴゴゴゴ!』という文字が見えるような圧力を感じる…
ヤバイモードの千聖さんだった。
「あ、ひゃい… その… 以前ポピパの市ヶ谷さん…から聞いた名前だったんですが、先日ロゼリアのあこちゃんからも聞いたので… その… どんな方かな~? と思いまして…」
必死に考えながらしどろもどろに答えると、千聖は突然真顔になって…
「その男、絶ッ対に関わってはダメよ! いい?絶ッ対よ?」
いつぞやの酔っ払いの件がトラウマになっているのだろうか…
ガッシリと両肩を掴まれ、とにかくすごい剣幕だ。
「は、はあ… 」
千聖が彼(俺)を覚えている… これでハッキリと存在が確認できた。
ネカフェでの一件を思い出し、『もう… あんなことしちゃった仲なんだし~、そんなに嫌わないでくださいよ〜』などと考え少し嬉しくなる。
そこでふと彩が尋ねた。
「千聖ちゃんはその人と何かあったの?」
「ないわ!(キッ!)」
その問いに千聖はやや喰い気味に答える。
「そ、そうなんだ〜」
あまりの眼力に気圧されながら、彩も何か察したようでそれ以上は何も言わなかった。
「とにかく、その男には女性関係で良くない噂がたくさんあるの! 私たちアイドルにとってそんな相手とのスキャンダルなんて許されないわ」
(良くない噂と言いましても… 全部相手からのお誘いなんですが…)
反論したい気持ちをぐっと抑える。
「私の調べたところではガールズバンドのメンバーばかりを狙っているらしいの、今までに複数のバンドで10人くらいは被害者がいるそうよ」
(調べたの?てか被害者て… 互いの合意の上での行為ですよ? あなたもそうだったでしょう?)
なんだか納得いかない。
「それに、ここ最近は特にひどいらしいわ」
(ん?、最近?)
最近といったら入れ替わった後のことだろうか?
元の俺(麻弥)はいったい何をしているのだろう?
改めて少し不安になる。
「だから彼に関わってはダメ!」
しっかりと念を押される。
「彩ちゃんも、同じ学校なんだから特に気をつけるのよ? けして近づいたらダメ、できれば姿も見ないように! アレと関わるとアイドル人生終わるから」
「う、うん…わかった」
正面から真顔で迫られ、彩はふるふると震えながら半泣きで答えた。
可哀想に… もはや脅しだ。
しかし先ほどの千聖の言葉が引っかかる。
やはり一度確認しておくべきだろうか…
そんなことがあってからさらに5日程が過ぎていた。
はっきり言って毎日が楽しかった。
元の身体の存在が確認できて少し気が楽になった事も大きいが、学校での生活もアイドルとしての活動も、全てが目新しい驚きと発見にあふれていた。
当然、記憶として体験しているものがほとんどなのだが、所詮は他人の記憶を共有したにすぎない。
今現在の自身の体験として受ける感動は大きかった。
何より… 《大和麻弥》という少女になったということが嬉しかった。
何と言っても自分自身が可愛いのだ、それはもう鏡を見るたび笑みがこぼれて、さらにその微笑んだ可愛さに悶えるほどに…
ナルシストとはこんな心情なのかと納得してしまう。
そしてバンドメンバーやまわりの友人も美少女ばかり…
みんなかわいいわたしもかわいいとてもハッピー…
そんな状況で楽しくない訳がないのだ。
さらに…
最近は一人遊びにも拍車がかかっていた。
自身の身体を隅々まで探求するのだ。
大きめの鏡を部屋に持ち込み、全裸になって自らのあられもない姿を写す。
鏡の向こうの自分にあちらこちらをさらけ出させ、恥じらう姿を自ら眺めては、昂ぶる身体を慰める。
徐々にエキサイトして、時には例のカスタムマシンも活躍していた。
こんな変態みたいな性癖に目覚めたのは、きっと入れ替わりの影響に違いない。
きっとそうだ…
まぁ…とにかく、それはアイドルでなくとも、他人には絶対に知られるわけにはいかない秘密だった。
そんないろいろと充実した生活が続き、さらに数日後… パスパレのオフィシャルサイトで無事新曲PVの公開も済んだ翌朝の事だった。
「ううぅ…… お腹が…気持ち悪い…」
起きた時から体調が最悪だった。
理由はわかっている… 月に一度の《女の子の日》いわゆる『生理』だった。
これも記憶では解っていた… しかし実際に体験するのは当然初めてである。
「フヘ… 初潮ってやつかな?」
青白い顔で少し強がってみるがあまり余裕はない。
経血が出てくる前にナプキンをあてなければ…
重苦しい身体でベッドから起き上がると、ローチェストの引き出しから生理用のショーツとナプキンを取りだす。
今はいているショーツを覗き、まだ経血のないことを確かめると、その場で脱いでナプキンをあてた生理用のショーツにはき替える。
「あ~、気分最悪…」
今日はまだ週前半の火曜日、学校に行かなければならない。
数日前のハッピーな気分はどこへやら、一転して思い切りブルーな気分だった。
登校した頃には下腹が少し重苦しく、痛みも出てきたし頭ももやもやする。
「こんなの聞いてない…」
そういえば有咲も生理の時はしんどそうにしていたことを思いだした。
こんなに大変な思いをしていたなら、もっといたわってあげるんだったと今更ながらに思う。
1限の前に保健室で薬をもらおう…
その後、薬のおかげで生理痛はだいぶ良くなったのだが、椅子に座った時などに『どぅるり』と何かが流れ出る感覚や、デリケートゾーンの蒸れる感覚はどうにもならなかった。
憂鬱なまま1日を終え、夜はシャワーだけで済ませてベッドに入る。
記憶では終わるまでだいたい3日、たまに4日くらいかかる。
もう何でもいいから早く終わってくれとおもいつつ、世の女性たちは毎月こんな思いをしているのかと考えると、もはや尊敬の念すらおぼえた。
年間にしたら約1か月以上である。
あまりありがたくないが、女性の身体になったからこその貴重な経験だと思う。
美少女の身体は最高だが生理はちょっと…
そんなことを考えながら眠りについた。
翌日も当然生理は続いているのだが、身体の方はもとより精神的に少し慣れてきたのと、薬のおかげで大分楽になっていた。
「肌や唇がカサカサするし、コンディション最悪… PV撮影終わっててホント良かった…」
アイドルとしての体調管理など、すっかり麻弥の思考になっている自分がいた。
そして3日目にはほとんど経血も無くなり、次の日には体調も回復していた。
その日の放課後、ラジオ番組の収録を終えた後に、マネージャーから日曜がオフ日になりましたと聞き、一気にテンション爆上げとなった。
「ヒャッホゥ!最高だぜぇ!」
突然の叫びに、横にいた日菜が驚く
「随分うれしそうだね麻弥ちゃん」
毎回パーソナリティの変わるラジオ番組で今回は彼女がペアだった。
「あ…す、すみません… このところ生理で体調悪かったもので… なんか浮かれてしまって」
フヘヘと誤魔化すように笑うと、日菜は『あぁ、それはうれしいよね』と笑い返してくれた。
そのあまりの可愛さに眩暈すら覚えた、これは最高の快気祝いだと感動に打ち震えるのだった。
その日の夜
風呂上がりに部屋で髪を乾かしている時に机の上のスマホが鳴った。
「誰だろう?」
ドライヤーをあてながら、横目でちらりと見たディスプレイに表示された番号に、思わずドキリと心臓が跳ねる。
「…っ!」
よく知っているその番号… 元の自分からだった。
ついに来た… 不安と緊張に少し震える手で、呼吸を整えながらスマホの画面をフリックする。
「はい」
こちらの返事に少し遅れて懐かしい声がした。
「〇〇さんですか?」
麻弥の姿をした俺の、本当の名前を問うてきた。
「…そうです」
俺が肯定すると、あちらも名乗った。
「はじめまして、大和麻弥です」
少し安心したような声に、こちらの緊張もとけてゆく。
そうだ、あちらだって同じように緊張しているに決まっているじゃないか。
しかも、女の子が見知らぬ男に身体を乗っ取られているんだぞ? 俺よりよっぽど不安なはずだ。
そう思うと少し申し訳なくなった。
「はじめまして、〇〇です… あの、連絡ありがとうございました。こちらから会いに行くわけにもいかなくて、連絡もなかなかできなくて…」
そう言うと麻弥が答える
「いえ、ジブンもどうしようかと思っているうちに、今になってしまったので、遅くなってすみません。 でも、上手くやっていただいていたようなので、ここまでお任せしてしまったというのもあるんです」
どういうことだろう?
「この身体になって最初はすごく戸惑いましたけど、過去の身体の記憶があるおかげで普通に生活できましたし、一日でその生活に馴染んでしまったので、おそらく元のジブン、つまりあなたも同じように大和麻弥をやってくれているのではないかと考えたんです」
なるほど、割と冷静だったわけだ。
「それにネットラジオの『パスパレすていしょん』とヨーツーベの『ドリーム*チャンネル』の生配信であなたの様子を見て問題なさそうだったので、戻る方法もわからないまま連絡して混乱させてしまうより、新曲の練習やPVの撮影が終わってからの方が良いかと思って… メンバーやスタッフさんにも迷惑をかけられませんから」
すまなそうに言われたが、実際こちらもこれといった行動を起こしたわけでもなく、謝るのはむしろ自分のほうだ。
「いえ、こちらも色々と貴重な体験をさせてもらいましたから、アイドル体験なんてそうそうできませんし!」
その他にも色々やってしまったが、そちらは伏せておこう…
「それで… ようやくお互いを確認できたので、今後の事などを話し合えたらと思いまして…」
たしかに、元に戻れる戻れないはいずれにせよ、一度会って情報交換をしておいた方が良いかもしれない。
「そうですね、ではちょうど日曜日がオフなので、どこかでお会いしましょう」
そう答えると、少し考えたような間のあと
「今の状況や話の内容的に、二人で会える場所が良いかと思います、以前千聖さんと入ったネットカフェはどうでしょう?」
以前の千聖との出来事がフラッシュバックする。
同じ記憶を持っているはずの麻弥は、一体どんな気持ちなのだろうか?
ただ、今はそんなことを言っている状況ではないのだ。
「そうですね、良いと思います」
では日曜10時にネットカフェで…と約束をして通話を終えた。
翌日はバラエティ番組の収録などて一日が過ぎ、いよいよ元の自分と会う時が来た。
朝から緊張しながら身支度を整える… といっても特に気合いを入れておしゃれをするわけでもなく、ライトカーキのカーゴパンツにショート丈の白Tシャツ、いつものメガネにキャスケットをやや目深に被って、足元はハイカットのキャンバススニーカーと、結構ラフな格好だ。
出がけに鏡を見て、その可愛さに見とれているうちに約束の時刻が近づく。
これから会うのは初めて会うけど良く知った仲で、他人だけど他人じゃないという相手、特に気負う必要もないが、待たせるわけにもいかない。
約束の5分前にネットカフェに着くと、すでに到着していた彼がエントランスにいた。
お互いをみとめると、無言のまま彼が端末を操作してチェックを済ませる。
時間的に客はほとんどいないため、誰にも会わないまま以前千聖と入ったVIPルームまで来た。
自分が入り、あとから麻弥が入ってくる。
『カチャリ』と鍵のかかる音で振り返って、あらためて元の自分の姿をした麻弥に向き合う。
よく見ると目の下にうっすらと隈が浮かんで、少しやつれているように見える。
きっとここまで大変な思いをしたのだろう…
「お互い大変でしたね…」
思わず麻弥に声をかけると、『にっ』と笑いながら
「全くです」
と両手を広げるようなオーバーな仕草をみせてきた。
「朝起きてこの身体になっていた時はパニックでしたよ、知らない場所にいた事もそうですが、身体が別物になってましたからね…
でもね、色々と考えると次々にあなたの記憶が入ってくるんですよ、自分が何者になったのかはじきに理解できました」
麻弥はそのままドアに寄りかかって話し続けた。
「で、少し落ち着いた所で今度は身体に違和感を感じまして… 何と言うか…股間に何か突き刺さっているような感じがしたんですよ、 まぁお分かりでしょうけれどね…」
麻弥がニヤリと笑う。
(もしかして朝勃ち?)
さすがに 察した。
「おそるおそる確かめたら、刺さってるんじゃなくて突き出してるじゃないですか、 まさか初めて見る実物が自分から生えたモノになるなんて思いませんでしたよ」
クックッ と笑う麻弥に少し違和感を感じながらも、何と返したものかと考えていると
「いろいろと試しているうちにコレで何をしてきたかもわかりました」
「へ?」
思わず間抜けな声が出た。
「スゴイですねぇ、ハーレム体質ってやつですよね? 女の子の方から迫ってきて、こちらはやりたい放題じゃないですか… まさかマスキングにまで手を出していたとは驚きです」
何だか様子がおかしかった… なぜこんな話になっているのか困惑する俺をおいて麻弥は続ける。
「いぃですねぇ〜、男の身体って… もしかしたらジブンにはこっちのほうが合っていたのかもしれません。 まぁ、節操なく起き上がって持て余すこともありますが、コレで可愛い女の子たちの別の一面が見られるのはサイコーです。 あなただってそう思っていたでしょう? 市ヶ谷有咲という充分魅力的な彼女がありながら、次々に他の女の子と濃密なセックスを繰り返してきたんですから」
違う… とは言えなかった。
麻弥の言っているとおり… それは実際自分のしてきたことだ。
「いえ、別に責めているわけではありません。むしろあなたは正しい」
「?」
麻弥の言葉に戸惑う。
「こんなに美少女たちに求められているんですから、その雌穴にペニスを突き立てるのは当然の礼儀です。そもそも可愛い娘のおまんこに惹かれるのは男の子のサガというものでしょう? 実際初日に白金さんに誘われた時には、それ以外の事は頭から吹っ飛びました。 あぁ、あなたの…というかこのカラダのためにバレないようにはしてますからご心配なく。 いつものように生徒会室でね。 当然市ヶ谷さんもたっぷり愛してますからご安心ください」
あまり考えていなかったが、自分の日常からすればそれは当然の事だった。
有咲が自分以外とセックス?でも身体は俺… これはどういうこと? よくわからない現状と複雑な感情で頭が混乱する。
「それと、折角ジブンがこの身体になったんですから、もっと積極的に行こうと思いまして、手始めにポピパのメンバーをコンプリートしてみました」
「コンプ…?」
麻弥はとんでもないことを言ってくれた。
「山吹さんはなかなかに情熱的でしたよ、一旦火が入ると燃え上がるタイプですねぇ、牛込さんは拙いながらも尽くすタイプです。これから仕込んで好みの女に仕上げていくのもいいかもしれません。 あとはハロハピの松原さんと北沢さんも頂きましたから、花咲川では残すところ彩さんとイヴさん、それと氷川さんくらいですね」
「……」
何言ってるんだこいつ…
そんな思いとともに、千聖の言葉が思い出される。
『女性関係で良くないうわさ… 最近は特にひどい…』
(コレのことか!…)
思わず頭を抱えたくなった。
言葉を失っている俺に麻弥は語り続ける
「羽丘はあまり接点がないので後回しになってたんですよ。 あこちゃん繋がりで巴さんあたりからAfterglowを頂こうかと思っていたんですが、良く考えたら手っ取り早い相手がいるじゃないですか…」
『ぞくり』 悪寒が走る。
気付けば俺の身体をした麻弥はいつの間にかドアを離れ、こちらに近づいていた。
「ど、どういうことですか? ま、まずは話をしませんか?」
相手の意図はなんとなくわかった。
どうやら初めからそういうつもりだったようだ。
しかしこちらにはそんな気は無い。
ニヤニヤと笑いながら迫る麻弥から、逃げるようじりじりと後退る。
「話ですか? そういえばそんな約束でしたね。 でもジブンは特に話すことなんてないですよ。だってそうでしょう? どうしてこんなことになったのか、原因やらきっかけすらさっぱりわからないのに、戻り方なんてわかるはずありません。 この身体の生活も気に入ってますし、もうずっとこのままでも良いと思ってるんですよ」
「元に戻れなくてもいい…?」
「その通りです。 あなたもその身体での生活はまんざらじゃないでしょう? それに、その身体にまさか今まで何もしていないなんて事はないですよね? 」
何もしてないどころか、夜な夜なとても言葉にできないような変態ソロプレイにいそしんでいる身としては、返す言葉も無かった。
「思ったんですが、私たちはお互いがお互いの身体を知り尽くしています。 どちらもの両方の身体を実際に体感しているんですから… そんな二人がセックスしたら… スゴイことになると思いませんか?」
「い、いきなりなにを…」
興味がないと言ったら噓になる。
でも、今はそんな気持ちにはなれなかった。
「心配しなくても大丈夫ですよ」
いつの間にか壁際まで追い詰められた俺に、麻弥の手が伸びる。
もう少し続きます。