何故か自分を犯す相手の性別を女性(ふたなり)にするスキルを手に入れてしまった 作:霧夢龍人
転生や転移──それは何らかの要因で死に至り、その本人が再び新たな生を受ける、もしくは異世界へと転がり移ることだ。
一部の人達は、転生という言葉だけで多種多様なアニメや漫画の展開が思い浮かぶだろうし、そういう人達に限って、一度でいいから異世界へと転生、もしくは転移をしてみたいと思った事があるはずだ。
だが・・・だが、考えてみて欲しい。
戦闘という事柄に対して全く関わることの無い日本人が、異世界という厳しい(かどうかは作品によるが)世界で生き抜いていけるだろうか?
否、たった2日3日で死んでしまうだろう。
そこで数々の人間が考え出したのが、“チートスキル”だ。
主人公の活躍を広げていく道具であり、最強へと導く目印であったり、その利便性は多種多様。
狡い、と思うかもしれない。
しかし、チートスキル、もしくはそれに準じたモノがなければ、物語は面白くならないだろうし、なによりそのまま死んでしまう可能性もある。
いわばチートスキルというのは、物語を広げていく上での重要な“キー”だと言えるだろう。
───そして、だ。
何故こうも長ったらしくうだうだと語っているかというと、
「なんで・・・なんでボクのチートスキルがこんなのなんだよぉっ!!!」
光を遮る雑木林にこだまするボクの悲鳴。普段なら、野生動物が現れる可能性を危惧して慎重に行動するだろうが、今回は仕方がないと思う。
なぜなら・・・ステータスというオプションに表示されているボクのスキルが、R-18系列の──自分を犯している対象を標的に、その対象の性別が雄であれば、雌に改変するという───全く使えないと言っても過言ではないスキルだからだ。
だいたい、なんだその説明は。
自分を犯している対象?雄であれば雌に改変?数学の授業と同等レベルで意味がわからない。
異世界(仮定)はボクを舐めてるんだろうか?いや、きっとそうだ。
普段通りに帰ったはずなのにいつの間にか森の中にいるし、服も何故か着ていないし、チートスキルもないし。
なにより───なんでボクが女になってるんだ!?
許せない。これだけは許せない。
転移する前は男だったから、下の方の寂しさが虚しい。胸部はEかFくらいで、それなりに大きいから、肩が痛くて余計疲れてしまう。
髪の毛も長く、白っぽい灰色だから、歩く旅に風に煽られて鬱陶しいし、暑い。
それに、服を着ていなかったのも、ボクが怒っている理由の一つだ。たまたま水溜まりで、慣れない道を歩いたせいで汚れた服や靴を洗おうと思ってたからいいが、もしこの格好(裸)のままもっと雑木林を突き進んでいたら、何らかの虫や感染症に掛かるリスクが高くなっていたかもしれない。
警戒は最大に。
何せ、ここは異世界(仮定)だ。埒外の存在がいても可笑しくはないしね。
因みに今は、大きな葉っぱを服がわりに身に付けている。表面に細かいトゲや毒がある可能性も考えて、テレビで見たパッチテストという奴をやってみたが、毒の反応が出なかったので着けているのだ。
これで多少の怪我は防げるだろう。
「しかしまぁ・・・可愛い顔してたなぁ・・・」
雑木林を突き進みながら思い出すのは、水溜まりに写っていた自分の顔。
発言だけ聞けばどこかナルシスト的だが、実際、ボクは異世界に転移してくるまで男だったから、それが余計以前の自分との可愛さのギャップで更に可愛く感じてしまう。
あ、お前の顔女子っぽくて可愛いよな、とか抜かした男友達はいまだに許してないからな・・・ってまぁそれは兎も角として、現時点大ピンチなのに、顔に気を取られてしまう程度にはめちゃくちゃ可愛かった。
見た目の年の頃は、高校生の自分と変わらないくらいで、本当にこの子が存在していればモテること間違いなしだっただろう。
だが、惜しむらくはこの娘が“ボク”であることだ。
この娘の容姿は大変優れている。だから、かなりモテるだろう・・・男から。
しかし、ボクはまあ当然ノーマルなので、男の趣味に入るつもりはない。入るくらいなら、死んだ方がマシだろう。
だけど、女性と恋愛をするというのも難しいかもしれな・・・。
パキッ。
という枝を軽く踏みしめる音が、辺り一帯に響く。何が出てくるかわからないため、一旦考える事を中断し、息を殺して木々に隠れる。
幸い、葉っぱの服のお陰で多少は見えにくくなっているはずだ。
「グギャ!」
・・・あれは、ゴブリン・・・でいいのだろうか?
緑色の小さな体に、下卑た眼差しと重そうな混紡を携えながら、ニヤニヤと徘徊している。
うわぁ、絶対にあんなのと対面したくないんだけどボク・・・。
しかもこの世界は、ボクのふざけたチートスキル(白目)があるような所だ。
他種族のメスを苗床にするとか、オスを喰らうとか、そんなエログロありのゴブリンの可能性が非常に高い。
正直、自分がそんなエログロラノベの被害者になるとか勘弁してほしいので、ゴブリンの様子をひっそりと窺う。
すると、
「グギャァ?」
と、まるで誰かに話しかけるように鳴き声を発するゴブリン。鼻をフゴフゴと鳴らして、何かの匂いを嗅いでいるようだ───もしかして、ボクの匂いか?いやいや、まさかそんなわけ・・・と、現実逃避をするも、ゴブリンは鼻を三度鳴らしてこちらに近付いてくる。
・・・もしかして、血か?
ふと注意深く自分の体を観察してみれば、葉っぱで覆った足から少し流血している事に気付いた。
しまった、全く気付かなかった・・・。
そして察する。なるほどどうやら、ゴブリンは俺の匂い──正確には血の匂いを嗅いでこちらに近付いてきているようだ。
「・・・バレないように離れるか」
幸い、ゴブリンのボクへの特定手段が血の匂いと分かったので、葉っぱで血を拭き取り、血を染み込ませた
「よし、完成したからそろそろ───ッ!?」
設置を完了し、デコイを置いた方角とは反対向きに逃げようとしたのだが───失敗だった。
そうだ、失念していた。
ゴブリンが一匹狼ではなく、群れで行動する可能性のある生物だった場合を全く考えていなかった。
が、後悔しても遅いだろう。
逃げようとしたボクの頭上に走る鈍痛───暗転。その時に見えたのは、ニタニタと笑みを浮かべる、先程とは