熱い、熱い、熱い。
痛い、痛い、痛い。
躰のあちこちが、首から下の至るところが熱を持って赤く腫れ上がっている。そしてその箇所は、体の内側から破壊されていっているのが分かる。
これが毒。あのカモミールという女の、恐ろしい能力だった。
初めて課せられた屋外での労務の際に、マァムは情欲を抑えきれなくなり、また、媚薬のせいもあって、同じ囚人仲間を無理やり慰み者にした。
胸が大きいティナは特に魅力的に思えて、徹底的に彼女の躰をその手で、口で、舌で蹂躙し尽くした。
汗でテラテラと輝く豊満で均衡の取れた肉体は本当に蠱惑的で、そして汗のしょっぱさ以上に甘さを感じる肌の匂いに、マァムは烈情して彼女の胸の先端の突起部分を口に含んで味わった。
幼い躰のクイナは、逃げようとしたので足を払って転倒させ、身動きが取れなくしてから、ティナの躰を堪能することで固くなり続ける股間の肉芽をしゃぶるように命じた。
クイナは嫌がったが、力任せに彼女の頭に手を回して掴ませると、キツく彼女の頭を握り、奉仕を強要した。
痛みに恐怖を覚えたクイナは、それを止めるように懇願し、渋々泣きながら、マァムの肉芽を、おちんちんを口に含んで舐めだした。
指でする以上に、クイナの温かな口でおちんちんをしゃぶられるのは、舌で舐めさせるのは、この上なく気持ちよかった。
マァムは何度もクイナの口に白濁液を放った。
その度に、ビクッビクッとクイナが体を震わせ、媚薬に陶酔していく様はこの上なく征服欲を満たしてくれた。
最後に残ったファリーナは、腰を抜かし、怯えた表情で動けなくなっていたので、マァムはその全身を使って、愛撫をするように命じた。
彼女も嫌がったが、腕力に物を言わせて腕をキツく握って関節を決めると、涙を流して言うことをきくようになった。
マァムは自らの大きな乳房を愛撫し、その突起部分を指で扱くファリーナの献身的な奉仕をすごく気に入った。抵抗しようとしたのは最初だけで、それ以降は命じるがまま従順に従う彼女は、愛らしかったから。
マァムは至福の時間を味わった。
けれどそれは、突然終わりを告げる。
あの赤髪の少女が、いつの間にかいなくなっていたかと思うと、看守であるカモミールを引き連れて来たのだ。
そして、マァムはカモミールに徹底的に制裁された。
カモミールはどうやら触れた部分に毒を付与できるらしく、マァムは様々な毒を全身に打ち込まれてしまったのだ。
……そして、その毒は今も彼女を苦しめている。
「ぐっ、ううううっ……。あああああっっっ!」
苦しい。苦しくて仕方がない。
この苦しみから開放されるのであれば、死んだほうがましだ。心からそう思う。
しかし、少しずつだが、毒の効果が和らいで来たようだ。
何故なら、手が、腕が、少しずつだが自分の意志で動かせるようになって来たのだから。
もう少しだ。
もう少しで手が動くようになる。
そうすれば呪文が使える。
そう思ってから、数分後には手が動くようになってくれた。けれど体感的には、その時間は異常なほど長くて苦しい時間だった。
マァムは自分の体に、右手で左腕に触れて、解毒呪文を、キアリーを使用した。
そのおかげで、マァムの躰は急速的に楽になっていく。
呪文の効果が完全に全身に行き渡ると、マァムは呼吸を乱しながらも、安堵の表情を浮かべる。
けれど、それも僅かな間のこと。
マァムは自らしてしまったことを思い出し、罪悪感に胸が締め付けられる。
そして、先程フェンネルに言われた事柄がそれに追い打ちを掛けて、心が痛くて仕方なくなった。
レイプをしてしまった。
話すようになって間もないティナ達に、自分に声をかけてくれた人達に、自分はなんてことをしてしまったのだろう。
マァムはあまりの罪悪感に、躰を震わせて涙を流す。
「……知らなかった。男の人の性的衝動が、あんなに強いものだなんて……。抑えられないものだなんて……」
体験して初めて分かった。理解できた。
自分の愚かさを。今までの愚行の数々を。
動きやすいからという理由で、自分は他人から、異性からどのように見られているかを意識していなかった。
だから、露出など気にせずに……。
以前、大破邪呪文――ミナカトールを手にれる為に、破邪の洞窟を訪れた際に、メルルに下着が丸見えであることを窘められたのを思い出した。
『マァムさんがそんなだから、悪影響でポップさんがいやらしいことに興味を持つんですっ…!』
と言われたのだ。
……馬鹿だ。
メルルの言葉が正しいことを自分は分かっていなかった。
いくらあの時は同性しかいなかったとは言え、自分はあまりにも慎みがなかった。
それに、いくら動きやすさを求めていたからとは言え、日常の服装も肌の露出はもっと抑えることが出来たはずだ。
それなのに……。
「ぐっ、あっ……」
負の思考に溺れそうになっていたマァムだったが、不意に左腕に走った鋭い痛みに、顔をしかめる。
何が起こったのかと思う前に、その痛みが全身に広がっていく。
しかも、先程以上に苦しい。痛い、涙が出てくる。
めまいがする、胃から液体が逆流して嘔吐しそうになる。
何故、何故、何故!
毒はもう完全に解毒したはずなのに。
それが、マァムが最後に思った思考。
それから、彼女は数時間、先程までの痛みが擦り傷程度のものだと錯覚するような、圧倒的な苦しみに苛まれ続け、やがて白目を向いて気絶した。
気絶……。いや、結果がそうであっただけで、そんな生易しいものではなかった。
もしも、この場所に女神ルシリスの加護という名の呪縛がなかったら、マァムは絶命していた。それが、死なない……死ねない環境だったから、気絶になっただけ。
マァムは口から泡を拭きながら、ビクンビクンと躰を震わせていたが、少し時間が経つとまた覚醒し、激しすぎる苦しみにまた気絶する。
それを何十回も繰り返した。
(こっ、殺して……)
マァムは心の中で何度もそう願いながら、地獄を味わい続けるのだった。
△
「あ~あっ。そろそろカモミールさんの毒が抜けるはずだと思って来てみれば……」
地下室に戻ってきたフェンネルは、マァムの無様な姿を見て全てを理解し、嘆息する。
「まったく、貴女のせいで、私はため息をつきっぱなしですよ。幸せが逃げたらどうしてくれるんでしょうかね」
フェンネルは頭を手で抑え、首を横に振る。
「私は、しっかり苦しんで反省してくださいねっていいましたよね? もしも貴女が本気で今までの行いを悔やんでいたのなら、カモミールさんの毒の苦しみを受け入れ続けていたはずです。
それなのにまぁ、反省もせずに下手くそな呪文で毒を中和しようとするから、毒が変質してこんな目に合うんですよ」
カモミールのことだから、いくら自分の管理下で事件を起こしたとしても、手心は加えていたはずだ。きっと、毒も後半はそれほど辛いものではなくなるように配慮をしていたに違いない。
それなのにこの浅ましい女は、自分の罪に対する罰を受けるのを拒否し、そこから逃れようとしたのだ。
「ああ、そう言えば、メルルさんがカモミールさんの毒を浄化してくれたんでしたっけ?」
報告書の内容を思い出し、フェンネルはまたため息をつく。
「マァムさん。貴女、どれだけ自己評価が高いんですかね。メルルさんに出来たのだから、自分も当然解毒ができるとか思ってしまったんですか? 無意識でしょうが、メルルさんを下に見すぎですよ。いや、無意識だからこそ、たちが悪いですよね」
フェンネルは、気絶して声の届かないマァムに話しかけ続ける。
「メルルさんは、もうすでに貴女なんかが及ばないほどの実力を身に着けているんですよ。だからこそ、神官になっているんです。自らに足りない面があることをしっかり理解し、それを補おうと懸命に努力を続けたんです。愛する人の力になれるようにって。
貴女のような、言い訳してばかりのクズとは大違いですね」
もちろん、メルルが先にこの国に来ていた事も、マァムとは三ヶ月以上の時間の違いがあることも分かっている。
だがフェンネルは、仮に同じ期間、マァムの方にアドバンテージがあったとしても、メルルのような目覚ましい進歩は望めるべくもないと確信している。
「本当に、何故、ポップ様が貴女のような女に好意を寄せておられるのか、理解に苦しみます。ああっ、メルルさんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいですよ、この雌豚には」
フェンネルはそうぼやくと、マァムの涙や涎、はては胃液と尿で汚れてしまった地下室の掃除を始めるのだった。