その後、マァムはフェンネルにいくつかの質問をされた。
初潮は来た時期、排卵周期、自慰の頻度、性感帯だと思う場所など、同性でもあまり話したくない内容を聞かれた。
マァムは初潮の来た時期と排卵周期は答えたが、他の二つは答えなかった。否、答えられなかった。
自慰などしたことがなかったので、答えようがなかったのだ。
ただ、正直にその事を話すと、フェンネルに
「なるほど。それじゃあ、先程、私がおちんちんを弄って気持ちよくしてあげたのが、初めての性的刺激なんですね。そうですか、女の体よりも先におちんちんで気持ちよくなるなんて、マァムさんてば無様ですね」
そう嘲笑われた。
文句を言いたかったが、質問されたこと以外何も言葉を喋るなと釘を刺されていたので、マァムは黙ってその侮蔑に耐える。
先程は完全にしてやられたが、まだマァムには見せていない技がある。
それを人に向けて放ちたくはないが、人を弄ぶこんな連中には使うことを躊躇わない。
まだ、こいつらに屈したわけではない。
「気持ちよかったですよねぇ、おちんちんに刺激を与えるのって。癖になりそうですよねぇ。でも、先程言ったように、マァムさんには自慰行為をする自由は認めません。
問題ないですよね? 貴女はポップ様に我慢を強いていたんですから、当然自分も我慢しますよね?」
フェンネルは笑顔で言っていたが、すぐに真顔になり、
「答えを口にするのを認めます。答えなさい」
マァムに答えを強要してくる。
「……はい。問題ありません」
マァムは屈辱に耐えながら、端的に答えた。
「それを聞いて安心しました。もしもこれを破れば……。いえ、説明の必要はないですね。マァムさんは守ると仰っているのですから。看守として、時には囚人の事を信じてあげる度量も必要ですし」
フェンネルはそこまで言うと、「少し遅くなりましたが、昼食にしましょう」と言い、マァムを連れて再び食堂に移動するよう促す。
「特別サービスですよ」
そう言って、フェンネルが昼食を用意してくれた。
だが、その内容は朝食と同じ、水と二粒の丸薬のようなもの。
ただ、ここまで全く空腹にならなかったことを考えると、栄養はあるのかも知れない。
最低の食事を前に、マァムはそう考えて我慢することにした。
「さて、それでは明日以降の仕事について説明します。仕事は五人一組で行いますので、マァムさんも明日から参加して下さい。基本的に、雨が振ろうが雪が降ろうが、体調が悪かろうが決行しますので、体調管理には気をつけてくださいね」
非人道的なことを笑顔でいい、フェンネルはマァムに丁寧に仕事の内容を説明した。
「さて、それでは、今日は手術もあって疲れたでしょうから、夕食までは休みにします。こんなに長時間休めるのは最初で最後ですから、しっかりと休んでおいたほうがいいですよ」
フェンネルはやはり酷薄なことを楽しそうに口にし、マァムを再び元の部屋の一室に、監禁部屋に案内する。
「さて、それではお休みなさい」
フェンネルはマァムを監禁部屋に押し込むと、笑顔で手を振った。
ただ、扉にガチャリと鍵を掛けてから、それ越しにマァムに声をかけてくる。
「マァムさん。夜は基本的に見回りを行いません。それは、貴女達が自身で校正しようとする気持ちを育めるようにとの配慮、情けからです。
ですので、絶対にありえないことでしょうが、私と約束したように、決して自慰をしてはいけませんからね。私達はわざわざそれを行ったかどうかの確認はしませんが、もしも約束を破ったことが発覚したら、他の囚人の皆さんにも連帯責任が及びますからね」
フェンネルはしつこいくらい念押しをすると、もう一度「お休みなさい」と言って去っていった。
マァムは足音が遠ざかるのを確認し、小さく息をつく。
「…………」
フェンネルがいなくなったことに安堵すると、マァムの瞳から涙がこぼれ落ちた。
堪らえようとすることさえ出来なかった。
後から後から止めどなく涙が溢れてきてしまう。
汚された。
汚されてしまった。
まだ男を知らない躰を無茶苦茶にされてしまった。
いつかは好きな人の子どもを授かるためにある大切な部分に、手を加えられてしまったのだ。
座っていると、ふとももに接触する大陰唇の部分に、左右に一つずつ、何かの塊があることが分かってしまう。
これが、睾丸。本来であれば、女にはないはずの器官。
「うっ、あああっ……」
こんなことならば、この躰をポップに委ねていればよかった。抱いてもらっておけばよかった。
こんな気持ち悪い異物のある女を、男性が、ポップが愛してくれるはずがない。
そう考えると、一層悲しくなってきて、更に涙が溢れ出してきてしまう。
「ポップ……。助けて……」
心が完全に弱くなってしまったマァムは、助けの言葉を口にする。
マァムはしばらく泣き続けていたが、やがて涙を止めると、頭を振るい、弱気な気持ちを押し込めて、ズタ袋を脱いで下に引くと、気持ちを切り替えて休むことにした。
今は体力を少しでも残しておかないと。
そう自分に言い聞かせて。
いろいろあって疲れていたマァムは、あっという間に睡魔に屈した。
ただ、眠りが浅かったため夢を見た。
しかし、それはいい夢だった。
すごく真剣な表情で、ポップが自分を優しくベッドに寝かせ、夢のような初体験をする夢だったのだから。
そう、それは幸せないい夢だった。
けれど、その幸せながらも性的な夢を見てしまったのが、マァムの悲劇の始まりとなる。
夢を見ながら興奮するマァムの、小さな小さなおちんちんが勃起し、白い液体を吐き出してしまったのだから。