おかしな臭いがする。
いや、空気の流れが少ないこの部屋の臭いは、もともと良くはなかったが、それとは明らかに違う異臭がする。
鼻につく臭い。けれど、不快なようで、どことなく癖になるような臭いだ。
「んっ、んんっ……。何なの、この臭いは?」
何か幸せな夢を見ていた気がするのに、臭いが気になったせいか、目が覚めてしまった。
マァムが静かに目を開けると、石の壁と金属の扉が目に入ってくる。
その光景に、最初は違和感を覚えたものの、そこで寝る前の記憶が怒涛のように蘇ってきた。
「……そうよね。私は、囚われの身に……」
マァムは横向きに寝ていた躰を起こそうと、まず足を動かそうとしたのだが、そこでふともも辺りに、ネチャッとした粘性のある液体の感触を味わった。
「……何、これ?」
マァムはその液体に濡れた部分に右手をやると、手にもその液体が付着した。
ほとんどが透明なその液体に心当たりはなかったが、躰を起き上がらせようとした瞬間、自分の女の部分から、粘性のある液体がたれて来るのを感じ、それが自分の体内からの分泌物だと理解する。
真っ先にオリモノを連想したが、あれはもっと色が濃い。それに、経験上、まだ周期ではない。
マァムは手を見ていたが、ふと視界の端に、正確に言えば床の部分に、真っ白な粘性の強い液体が僅かに飛び散っていることに気づく。
「まさか……」
鏡がないため視認できないマァムは、中腰になり、自身の股間の肉芽付近に右手の指を近づける。
触れないように注意しながら少し待つと、指の先に粘性の強い液体が付着した。
マァムは指に付いたそれを確認しようと顔の前に指を持ってくると、鼻孔に今まで以上に強い匂いを感じた。そして、先程からずっと感じている匂いの正体が、これだと理解した。
「あっ……」
その白濁液の臭いを嗅いでいると、なんとも言えない興奮を覚えてしまう。そして、女の穴から、生暖かな粘性のある液体がじわぁっと溢れ出してくるのを感じた。
「なっ! そっ、そうだ、これは、媚薬だって……」
マァムは慌てて指に付着した白濁液を振り払う。粘性のあるその液体はなかなか指から離れず、床に落ちても、一部が指に付着したままだった。
「……どうしよう、これ……」
気持ちの悪い液体を今すぐにでも洗い流したい気持ちだったが、生憎とこの部屋には水がないし、紙もない。
幸い、上半身の敷物にしていた服代わりのズダ袋は汚れていなかったが、床も、太ももも、指も、体液で汚れてしまった。
マァムはとりあえず汚れていない左手でズダ袋を掴み、部屋の端に避難させ、どうしたものかと考える。
しかし考えているうちに、頭が得も言われぬ陶酔感に侵され始めていく。
先程、床に落ちたものだけでなく、彼女が眠っていた位置の股間部分から先に、白い液体が、媚薬が飛び散っているようだ。
そして、その臭いが狭い部屋にこもり、マァムの思考をぐちゃぐちゃにしていく。
媚薬の効果は、その真価をまだ現してはいなかったのだ。
「なっ、何なの、この突っ張るような感じは?」
股間のある部分が腫れ上がっていくような感じがする。それが、本来であればクリトリスの部分だ。しかし、躰をいじられた今は、小さな男性器の先端に変わってしまっている。
「いやっ、気持ち悪い。突っ張るだけじゃあなくて、ムズムズする!」
空気に触れているだけなのに、マァムの肉芽は敏感に感じ、彼女に未知なる感覚を与え続ける。
「いやっ、さっきまでなんともなかったのに、駄目!」
マァムは肉芽の未知なる感覚に耐えきれず、そこに手を、指を伸ばして掴んでしまった。
その瞬間、彼女の躰に電流のような刺激が走った。
「あっ…んんっ……。なんなの、この感覚は……」
まるで未知の刺激であるかのように口走ったマァムだったが、すでに彼女はこの感覚を味わっていた。その事を忘れていただけで。
つい何時間か前に、フェンネルのしなやかな指による感触で、この気持ちいい感覚を仕込まれてしまっていたのだ。
「いっ、いやっ、何なの、これ……」
言葉とは裏腹に、マァムは自身の肉芽を親指と人差指と中指の三本で刺激していく。
最初はキツくつまんでしまっていたが、優しく擦るような刺激が一番心地よいと学習すると、彼女はその刺激を肉芽に与え続けるようになった。
「んっ、あん……。駄目……。でも、気持ちいい……」
マァムは肉芽の刺激に陶酔してしまう。それがフェンネルに禁じられていた自慰行為だと言うことさえ認識せずに。
「あっ! なっ、何か、何かがせり上がって……あああああっ!」
大陰唇に隠された二つの異物から何かが肉芽に向かってこみ上げてくる。そう感じた瞬間には、マァムは白濁した粘性のある液体を肉芽の先から放出していた。
得も言われぬ、瞬間的な快楽とともに。
「はぁ、はぁ、はぁ、気持ちいい。こっ、こんなの、頭がおかしくな……」
そう口走ったところで、マァムは躰の芯の部分から、何か大きな波が巻き起こるのを感じていた。
それは、本当に未知の感覚。
「なっ、何? まだ、まだ何かが……。あっ、いやぁぁぁぁぁぁっ!」
マァムの思考は真っ白になった。
先程の肉芽から液体を放出したときよりも激しく深い快楽が、彼女の躰を襲ったのだ。
あまりの衝撃に堪えられず、マァムは躰を後方に大きくのけぞらせ、肉芽から再び白濁液を放出するだけでは飽き足らず、今度は女の部分の尿道口から、液体を噴出させた。
あまりの快楽に、マァムは糸が切れた操り人形のように硬い床の上に倒れる。
しかし、痛いと思うことはなかった。
それは、そんなものよりも大きな、大きすぎる快楽が、彼女を支配していたからに他ならない。
自らが発した体液の臭いが、この狭い部屋に充満する。
それは不快なアンモニア臭もあったが、そんなものが気にならないくらいの、頭を刺激する臭いのほうが強い。
「あっ、ああ! また、またあそこが突っ張っていく! あんっ、んんっ、気持ちいい、気持ちいい……」
マァムは再び肉芽を愛撫しながら、「気持ちいい」を連呼する。
完全に媚薬によって、彼女の頭はおかしくなってしまっていた。
目は狂気じみた光を纏い、口の端から涎が溢れることも気にせずに、ひたすら自慰を続ける。
やがて、彼女はまた肉芽から白濁液を、媚薬を放出する。女の体のオーガズムに陶酔しながら。
すると、また部屋が媚薬で満たされ、また自慰を始める。
結果として、四度目の絶頂を最後に、マァムはあまりの快楽と体力の消耗によって、気絶した。
その時の彼女の顔は、普段の愛らしさを感じさせないほど、快楽に狂いきった表情だった。