小早川悠斗は、衣類を脱いで二床重ね置かれたベッドの端に座り、美しい少女の裸身に、新戸緋沙子の一糸まとわぬ姿に見惚れていた。
「あっ……」
しかし、緋沙子の脱いだ服を綺麗にたたむ、薙切えりなの冷たい視線を感じ、悠斗は不安な気持ちになってしまう。
「私の裸から目をそらすとは、許せんな。これでも恥ずかしくて、心臓が破裂するのではないかと思うくらい忙しなく鼓動しているのだぞ。……だから、その、私だけを見てくれ……」
「その、ごめん。あっ、んっ……」
悠斗の謝罪の言葉を遮り、緋沙子は悠斗の上に覆いかぶさり、彼の唇に自分のそれを重ね合わせる。
「んっ、あっ……」
緋沙子のキスは情熱的だった。先程の悠斗からのキスが子供だましに思えるほど、濃厚に唇を重ね合わせて、悠斗の唇を一方的に貪ってくる。
その上、悠斗の唇を優しく何かが刺激してくる。唇よりも少しだけ硬いものが、当たってくるのだ。
その心地いい刺激に、悠斗はキスをしながら口を僅かに開ける。するとその少しだけ硬い、でも弾力性も有る物体――緋沙子の舌が、悠斗の口腔内に侵入してきた。
唇を優しく刺激していたそれは、悠斗の口の中を少しずつ動いて、様々なところを舐めていく。それは、歯であったり、歯茎であったり。けれど、それが目的のものではないのだろう。緋沙子の舌は何かを探し続けて動き続ける。
「んっ、んんっ!」
少し不安で、緋沙子の舌から逃れるように動いていた悠斗のそれが、ついに見つかってしまう。
緋沙子はもう二度と離すまいとせん勢いで、舌を絡ませあってくる。
緋沙子の唾液が流れ込んでくる。
逆に、自分の唾液が緋沙子に流れていく。
体液の交換。
それは、非常に背徳的ながらも心地よかった。
でも、悠斗は心配になる。
緋沙子の甘く芳しい匂いに比べて、自分の、男の体臭は決して心地良いものではないはずだ。
それなら、きっと緋沙子はすぐにこの行為を嫌がって……。
しかし、そんな悠斗の心配をよそに、緋沙子は貪欲に舌を絡ませ合い、悠斗の唾液を飲み込みながら、ベッドの上の悠斗を押し倒していく。
裸の緋沙子の柔らかくて暖かい躰が、自分の体の上に乗っかってくる。それは、幸せな重量で、重いとはまるで思わなかった。
緋沙子の目を見ると、明らかに発情しきっていた。
ああっ、本当に彼女は僕を求めてくれているんだ。
そう理解した優斗は、ホッとして、舌を絡ませ合いながらも、緋沙子の背中を優しく撫でていく。
緋沙子の全てが愛おしい。欲情仕切った瞳も、この平らな胸に押し当てられる事によって感じる女の二つの膨らみの感触も、華奢なのに柔らかさも感じる背中も、そして、この触り心地のよいおしりも。
キスに慣れておらず、自分の愛おしい気持ちをその行為では伝えられない優斗は、愛撫という形で緋沙子に伝えていく。どれほど、自分がどれほど愛おしく思っているのかを。
いきり勃ちっぱなしのペニスに、緋沙子のむき出しの股間が、女特有の股の肉が当たるたびに、そこに挿れたい欲求も生まれてくる。でも、今はもっとこうしていたい気持ちが強い。
彼女の気持ちを感じたい。自分の愛おしい気持ちを伝えたい。
(緋沙子は大丈夫だ。うん。大丈夫だ。僕がこういうことに慣れていなくて、下手くそでも、彼女は……)
悠斗は心のうちから浮かんできたそんな安堵感に戸惑いながらも、緋沙子とスキンシップを交わす事によって、互いの気持ちを確認し合う。
互いにどれほど相手を求めているのか、愛おしいと思っているのか、そして、この先の行為に行きたいと願っているのかも伝え合う。
悠斗は自分が違いしていたことに気づく。この熱り勃ったペニスを、女性器に突っ込んで射精することだけがセックスだと思っていた。
しかし、そんな、ただ自分の性的欲求を満足させて絶頂を迎えることだけがセックスではないのだ。それでは、ただ異性の肉体を使ってマスターベーションを、自慰をしているのと代わりはないのだから。
互いの事を考え、意思疎通をしながら、心と肉体が繋がり合うコミュニケーションの最上にして最難関の行為こそが真の意味でのセックスなのだと、悠斗は理解した。
(ああっ、これを知ってしまったら、もうオナニーなんてできない……)
それは、ある種の絶望感。深みにハマって行く転落。だが、それがこの上なく心地良い甘美な転落だった。
緋沙子の息遣いを感じながら、彼女が喜んでいるか、苦しんでいるか、気持ちよく思っているのか、くすぐったく思ってしまっているのか。いろいろなことを考えながら、自分に奉仕を続けてくれる彼女を愛し続ける。
「んっ! んんんっ……」
緋沙子の舌の動きが突然止まり、躰を小刻みに震わせて全体重を悠斗に預けてくる。
それは、悠斗が今までおしりを愛撫していた手を、そのまま彼女の秘所に、プッシーに、オマンコに触れた瞬間の出来事だった。
彼女の股間から液体が噴出し、悠斗のペニスと下半身を濡らす。
悠斗は何が起こったのかをすぐには理解できなかった。緋沙子の全身から突然力が抜けて動かなくなったことから、軽くパニックになってしまう。
だが、やがて緋沙子が顔を上げて、
「すっ、すみません……。いっ、いきなり、こんなに深く達してしまうなんて思って…いっ、いません…でした……」
と謝罪したことで、悠斗は自分が緋沙子を絶頂に導けたのだと理解した。
「緋沙子……。可愛い。すごく、可愛いよ……」
「あっ、悠斗さ……。んっ、んんんっ、ああっ……」
悠斗は愛おしい気持ちを抑えられなくなり、緋沙子の唇を奪い、見様見真似でディープキスを仕返す。
緋沙子は躰に力が入らないようだったが、悠斗の舌の動きに合わせて自分も舌を動かしてくれる。
悠斗は自分の気持ちを緋沙子に伝える。
愛おしいよと。好きだよと。愛しているよと。
そして、悠斗は緋沙子の頭を優しく撫で、静かに唇を離した。
「緋沙子……。その、もう我慢ができない」
悠斗は緋沙子に言葉で伝える。自分の状況を。これから、何をしたいのかを。
「……はい。嬉しいです。どうか、私を女に……。貴方だけのものにして下さい……」
緋沙子は従順な口調に戻り、応える。
悠斗はベッドに背中を預けていた自分の体を僅かに回転させ、壊れ物を扱うように、大切に緋沙子の躰を横にすると、ベッドから立ち上がった。
緋沙子は逆にベッドに背中を預ける体制に変わり、静かにその時を待つ。
悠斗は天を衝くペニスを、すでに暴発する寸前なほど張り詰めたものを、ベッドに躰を預ける緋沙子に見せつける。
「……はい」
緋沙子は恥ずかしそうに、でも何処か嬉しそうに、ゆっくり股を開く。
「うわぁっ……。これが、女の子の……。緋沙子の……」
初めて生で見る女性器に、まだ穢れを知らないその場所に、悠斗は言葉を失う。
割れ目がピッタリくっついているが、そこから粘性の有る液体が溢れてきている。
これから、自分はこの場所にこの肉棒を挿れるのだと思うと、無意識のうちに喉が鳴った。
なるべく痛くしないようにしないと。
悠斗はそう考え、愛おしい少女の両足の間に体を割り込ませる。
「緋沙子……いいんだね?」
「はい。どうぞ……」
緋沙子は優しく微笑んでくれた。
悠斗は逸る気持ちを懸命にこらえながら、自らのペニスを右手で掴み、緋沙子の股の割れ目に近づけ……。
「待って、小早川くん!」
不意に、そんな声が部屋中に響き渡った。
「えりな……」
緋沙子に夢中になっていた優斗は、完全に存在を忘れていた。
ここに、もう一人の少女がいることを。
「どうなさったのですか、えりな様? これから私達はようやく結ばれるのですから、もう少しだけお待ち下さい」
緋沙子はえりなに慇懃にそう言ったが、すぐに「さぁ、悠斗様」と悠斗に続きを促してくる。
「緋沙子、待って! 駄目! やっぱり貴女ではなくて、私が……。私が、小早川くんと最初に……」
えりなは今までの冷たい表情が嘘のように、懸命な表情で悠斗と緋沙子に訴えかけてくる。
「……駄目ですよ、えりな様。そんな横紙破りは。最初に話をしましたよね。トラウマを植え付けてしまっているえりな様が初めての相手では、悠斗様の一生に一度の初体験が良いものにはならないかもしれないと。だから、最初は私がお相手を務めると、言いましたよね?」
緋沙子はそう言うと、悠斗に向かって微笑んだ。
「悠斗様。ですが、決定権は私にはありません。悠斗様の判断にお任せ致します」
「えっ? その、それって……」
戸惑う悠斗に、緋沙子は微笑んで訪ねてくる。
「私とえりな様。どちらを悠斗様の初めての女にして下さいますか?」
と。