小早川悠斗は我が耳を疑った。
あの新戸緋沙子が、薙切えりなの忠臣が、主人に対してなんと言った?
「緋沙子。次は私の番よ!」
えりなが緋沙子にそう声をかける。
ベッドから立ち上がって場所を代われと言っている。
まだ自分の欲望の塊を、男性器をその身に埋められたままの……処女を失ったばかりで痛いであろう緋沙子に向かって。
イラッとした。怒りを覚えた。
こんなに献身的で、こんな自分のような冴えない男に自らの大切な純血を捧げてくれて、微笑んでくれた緋沙子に、なんてことを言うのだろうと悠斗は憤る。
思わずえりなに文句をいいそうになったが、それよりも先に緋沙子が口を開く。
「はい。申し訳ありません、えりな様……」
謝罪の言葉を口にし、緋沙子は躰を震わせながらもベッドの上部に手を伸ばし、予め準備していたウエットティッシュを手に取る。
「……悠斗様……。名残惜しいですが、どうか私の中から抜いてください。……すみません。本当は、口でお清めしたかったのですが、まだ躰に力が入らなくて……」
「緋沙子……」
もっと、愛しい緋沙子と繋がっていたい。ペニスだけでなく、彼女をこのまま抱きしめ続けて、互いの温もりを感じていたいのに。
「どうか、抜いた後は、悠斗様の逞しいものを近づけてください。私に、最後までさせてください。その、少し冷たいでしょうが……」
「……うん。分かったよ、緋沙子」
悠斗は静かに、緋沙子の女性器の中から、男性器を引き抜く。
何度も精を放っていたはずなのに、思っていたよりも多くの精液を緋沙子の中に出していたようで、白い粘着質の液体が、彼女の薄桃色の秘所からこぼれ落ちた。
「さぁ、悠斗様……」
緋沙子に促され、悠斗は白濁液が先端から垂れるペニスを、緋沙子の腕の範囲まで近づける。
「失礼致します」
緋沙子は壊れ物を扱うように、大切なものを愛おしむように、悠斗のペニスをウエットティッシュで拭いていく。
「ふふっ。この悠斗様の大きな物が、私を女に……。ありがとうございます。私を貰ってくださって。私を、悠斗様の最初の女にしてくださって、ありがとうございます」
「緋沙子、僕の方こそありがとう。最高の初体験だったよ、本当に……」
悠斗は緋沙子が愛おしくて仕方がない。もっともっと、彼女を愛したい。
自分の顔に付いたままの精液はもう乾いてきてさぞ不快だろうに、何よりもこんな男のことを優先してくれる献身的な少女が愛おしい。
それなのに……。
「緋沙子、早くしなさいよ!」
えりなの苛立つ声が、悠斗と緋沙子の幸せなひとときに水を差す。
「このっ……」
悠斗は思わず文句の言葉を口にしそうになったが、緋沙子に強めに手を掴まれて、その言葉を飲み込む。
「はい、えりな様……」
そう応え、懸命に腕に力を入れて立ち上がろうとする緋沙子だったが、それがあまりにもおぼつかなかったので、悠斗が慌ててそれを支える。
すると、緋沙子はそのことを感謝するよりも早くに、悠斗に小声で話しかけてきた。
「……悠斗様、少しだけ、私を抱え起こすのに難儀しているように演技してください。そして、お耳を近くに」
どんな考えを緋沙子がしているのかは分からなかったが、悠斗は言われたとおりにして、緋沙子の言葉に耳を傾けることにする。
それからたっぷり時間を掛けて、悠斗は緋沙子の話を聞きながら、彼女を抱き起こした。
悠斗に抱き起こされた緋沙子は、上半身を起こし、ベッドの端に座る。
「お待たせしました、えりな様」
満面の笑みを浮かべる緋沙子に、えりなは「ええ、そうね」と可愛くないことを言ってベッドに近づいてくる。
「…………」
だが、悠斗は何も言わない。ただ、えりなが自分の隣に来たのを確認し、その時を待つ。
「さぁ、小早川くん。次は、私の番よ。君も待ち望んでいたでしょう? この薙切えりなを抱けるのを」
えりなは傲慢なことを口にし、悠斗の方を向く。
位置関係上、それは、ベッドに座る緋沙子に背中を向ける行為に他ならなかった。
「えっ?」
不意に、緋沙子は立ち上がり、えりなの背後から彼女の脇に両腕を差し込んで、そのまま自分の体重を使って、えりな諸共ベッドに倒れ込む。
そして、緋沙子は、何が起こったのか分からずに驚くえりなの首に右腕を掛けると、そのまま首を締め始める。
「うっ、ああああっ……」
瞬く間に、えりなの美しい顔が苦悶で歪む。
えりなは暴れるが、そうすればそうするだけ緋沙子の腕はえりなの首をよりきつく圧迫し、彼女を一層苦しめる。
悠斗はえりなの苦しそうな姿に不安を覚えたが、やがて緋沙子が腕の力を緩めてくれたようで、えりなは咳き込みながら、酸素を貪る。
「ごほっ、ごほっ! なっ、何をするの、緋沙子⁉」
えりなは目の端に涙を浮かべ、突然首を締め始めた緋沙子に尋ねるが、緋沙子は何も言わずに、
「がっ、ああああっ……」
もう一度えりなの首を締めていく。
えりなの顔が再び真っ赤になり、涙をこぼしながら苦しむ。
そしてまた、気絶する一歩手前で、緋沙子は腕の力を抜いたのだろう、えりなは何度も咳き込む。
「えりな様。私の言うことをよ~く聞いてください。まずは、このまま股を下品に開いて、悠斗様に下着を見せて差し上げてください」
「そっ、そんなの、言われなくても……。これから、私は小早川くんと……ぐっ、ぎぃぃっっ!」
緋沙子は微笑みながら、えりなの首を再び締める。
「……ぐっ、あああっ……」
「……緋沙子……」
えりなは苦しみながら縋るような目をこちらに向けるので、悠斗は緋沙子に首を絞めるのを止めるように促す。
なるべく黙っているように言われていたが、悠斗は苦しむえりなをこれ以上見ているのが辛くて、つい止めてしまった。
「けほっ、けほっ! ひっ、緋沙子……」
「聞こえませんか、えりな様? 今すぐに、股を下品に開いてくださいと言っているのですが?」
緋沙子は笑みを浮かべているが、そのまま再び腕に力を込め始める。
「まっ、待って、緋沙子!」
えりなは、明らかに普段では考えられない緋沙子の行動に恐怖を覚えたようで、言われたとおりに股を開いていく。
「……どっ、どうしてしまったのよ、緋沙子?」
えりなは震えている。
最初は緋沙子とえりなが二人が示し合わせて、自分を謀っているのではと悠斗は思っていたが、えりなの怯え方が演技とは思えない。
「さぁ、股を開いたら、スカートをたくし上げてください、えりな様」
「わっ、わかったわ……」
えりなは躰を震わせながら、スカートをたくし上げていく。
悠斗の視線は、ついえりなの股間を守る三角の白い布に釘付けになってしまう。
そして……。
「あっ……」
悠斗は思わず声を上げてしまった。
えりなのレースの付いた美しい下着の股間の部分が、濡れてぐちゃぐちゃになっている。
無意識にゴクリとつばを飲み込む悠斗に、緋沙子は笑顔で声をかけてくる。
「さぁ、悠斗様。調教を始めましょう」
と。