※この作品はR-18です。

光の女神ルシリスの調教録   作:ルシリス様の下僕

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魔法少女リリカルなのは
Ⅲ(なのはとフェイト)①


 深々と雪が降る中を、ユーノ・スクライアは重い足を動かして、賑わう街をあてもなく歩いていた。

 

 まだ二十代半ばにもなっていない彼は、しかし若くして無限書庫の司書長を務め、人望もある。さらに優しげで整った顔立ちをしている。

 だからこそ、今日という日の夜に一人で歩いているのは似合わないように思えてしまう。

 

 今日は年に一度のクリスマス。

 しかし、ユーノは憂いの表情が浮かんでいた。

 

「……何か食べ物を買って帰らないと」

 ユーノは足を止めないようにと、心のなかで自分に言い聞かせる意味で呟いたのだが、知らずに足が止まり、つい嘆息してしまう。

 

 掛けているメガネの内側に雪が入ったのを拭い、ユーノは再び歩き始める。

 

 やがてコンビニに着いたユーノは、最低限の夕食を購入する。

 当然、クリスマスケーキも目に入ったが、一人でそれを買って食べる気にはなれなかった。

 

「ありがとうございました。またお越しください」

 店員の元気のいい挨拶の言葉を背に、ユーノは家路に就く。

 

 いつも遅くまで残っている自分に、弟子たちが気を利かせてくれたおかげで、今日は珍しく定時で上がれたのだが、特段今晩の予定がないユーノは暇を持て余し気味だった。

 

「……どうして、僕はこんなに鈍いんだろうな。自分の気持ちにも気づかずに、ずっと……」

 別に、ユーノも一人でいることが好きなわけではない。できることならば、年に一度の特別なこの日は、想い人と一緒に過ごしたかった。

 

 だが、その相手にクリスマスの予定を尋ね、どこかに行かないかと誘ってみたのだが、敢え無く断られてしまったのだ。

 

「ごめんね、ユーノ君。クリスマスは、ヴィヴィオを連れてフェイトちゃんと食事に行くことにしているの。また次の機会に誘ってね」

 それが、彼女の、ユーノがようやく自分が好意を持っていると最近自覚できた幼馴染、高町なのはの返事だった。

 

 ヴィヴィオというのは、なのはの義理の娘で、フェイトというのは、なのはの無二の親友の女性の名前だ。

 彼女達三人は本当に仲が良く、一緒に暮らしているのは分かっていたので、断られるのは予想がついた。でも、ユーノは自分の気持ちに踏ん切りをつけるために、敢えて無謀な賭けに出たのだ。

 

 ……そして、彼は賭けに負けた。

 

 クリスマスに異性を誘う意味は、流石になのはも分かっているはずだ。だが、彼女は申し訳無さそうにではあったが、それをきっぱりと断ったのだ。

 

 まったく脈がないということだとユーノは悟り、ようやく気がつくことができたこの胸に芽生えていた気持ちを忘れることにした。

 

 

 だが、そんな傷心のユーノにさらなる追い打ちが続く。

 

「……そんな……」

 本当にただの偶然だった。

 

 たまたま見るとはなしにあたりに視線を走らせていたユーノの目に、その想い人の姿が目に入ってきたのだ。

 

 それは、かなりの高級料理店の中。そこで、なのはとフェイト、そして幼いヴィヴィオが幸せそうに食事を楽しんでいるようだった。

 

 僅かなガラスに隔てられた内と外は、あまりにも対照的だった。

 

 かたや、クリスマスの家族団らんを楽しみ、心から嬉しそうに笑うなのは達。

 かたや、傷心の中、それを見てしまった……見ることしかできない自分……。

 

 

 ユーノは居たたまれなくなり、足早にその店の前から走り去ろうとした。

 だが、そこで危うく人にぶつかりそうになってしまい、ユーノは慌てて足を止めて、なんとかそれを回避する。

 

「その、すみません。前をよく見ていなかったものですから……」

 あわや激突してしまいそうになってしまったその人物は、女性だった。

 

 長い水色の髪が印象的なとても綺麗な二十代前半くらいの女性で、白を貴重とした冬服がとても似合っている。

 

「いいえ。お気になさらないでください。ユーノ・スクライア様」

 しかし、その水色の髪の女性が自分の名前を呼んだことに、ユーノは怪訝な顔をする。

 

 自分は確かにそれなりの役職についているが、それをひけらかしたことはない。ただの司書兼考古学者なだけで、そんな自分のフルネームを一般人が知っているというのは引っかかる。

 

「なっ!」

 ユーノは自分が疑問を持った一瞬のうちに、辺りの景色が色を失っていることに気がついた。

 

 薄青い色一色になった周りは、まるで凍りついたかのように何も動かない。

 人はもちろん、引力によって落ちてくるのが当たり前の雪さえも。

 

 ただ青一色の空間の中に、ユーノと水色の髪の女性だけが、色を持つ存在として立っていた。

 

「高町なのはさん。そして、フェイト・T・ハラオウンさんにも困ったものですね。ユーノ様にこのようなつらい思いをさせていることなど微塵も理解せずにいるとは」

 水色髪の女性はそう言うと、静かにユーノの前に跪く。

 

「あっ、貴女は、いったい?」

 魔法の力としか思えないが、こんな強力な停止魔法をユーノは知らない。

 しかも、何のデバイスもなしに当たり前のようにその力を維持し続けている。

 

「申し遅れまして、大変申し訳ございません。私はルシリス。光の女神と呼ばれている存在です。どうか、お見知り置きくださいませ」

「……光の…女神?」

 ユーノは、規格外の魔法を講師しているにも関わらず、自分に土下座をし、深々と額を地面に擦り付ける眼前の女性の行動に、パニックになって思考が追いつかない。

 

「はい。どうか私のことはルシリスとお呼びくださいませ」

「……あっ! いや、その、とりあえず頭を上げてお立ちください」

 ルシリスからはまったく害意を感じなかったこともあり、ユーノは慌てて彼女に立つように促す。

 

「ご命令とあれば……」

 ルシリスはそう応え、静かに立ち上がり、ニッコリと微笑む。

 そのあまりの美しさに、ユーノは言葉を失う。

 

「さて、ユーノ様。先程申し上げましたとおり、私は女神と呼ばれる存在です。そして、私は一人でも多くの殿方の幸せを願っております」

「えっ? いや、その、いきなりそう言われましても……」

 ユーノには、ルシリスの言わんとしていることが微塵も理解できない。

 

「そして、雌豚の分際で、殿方を悲しませる存在を調教し、殿方に幸せになっていただくことを無常の喜びとしております」

 訳がわからないユーノに、ルシリスはしかし言葉を続ける。

 

「そして、この度は、貴方様をお救いさせて頂きたく、この場に馳せ参じさせて頂いた次第でございます」

 ルシリスは優雅に一礼をしたが、そこで顔を曇らせる。

 

「本来であれば、高町なのはさんとフェイト・T・ハラオウンさんを調教し、ユーノ様の忠実な牝奴隷としてお渡しするところですが、フェイトさんはそれでいいとしても、なのはさんはそれでは不十分だという結論に至ってしまいました。そのため、なにとぞユーノ様にもお力を貸して頂きたく……」

「まっ、待ってください! そっ、その、頭が混乱してしまって……。いったい貴女は何をしようとしているのですか?」

 あまりにも突然お出来事と申し入れに、ユーノは混乱するしかない。

 

「はい。それでは、最初から説明させて頂きます。まず……」

 ルシリスはそう言うと、長い話を始めた。

 

 そして最後にユーノに力を貸してほしいと申し出てきた。

 

 ……正直、にわかには信じられない話だった。

 けれど、ユーノもずっと気にしていた事柄がそれに含まれていたため、結果として、彼は……。

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