カルダモンと名乗った女が部屋を出ていった直後、なのはは躰を動かし、再度拘束している太いワイヤーから逃れることを試みるが、それは徒労におわる。
柔らかく柔軟なはずのワイヤーが、今は固くなり、なのはの幼い肢体をがっしりと掴んで話さないのだ。
唯一動く首を左右に動かして逃れようとしても、躰はまるで動いてくれない。
マシーン機械が動く音が聞こえてくる。
自動操縦で動く技術力を鑑みれば、静音することなど容易いだろう。だが、このマシーンは敢えて音がするように、被験者の耳に聞こえるように作られている。
それは、明らかな悪意によるものだった。
もっとも、なのははそんなことを考えている暇などなかった。
自らの小さく丸いおしりに向かってくるその音が近づいてくるのを怯えて待つことしか出来ないのだ。
「やっ!」
なにか冷たい感触がした。
それは、極太の注射器を刺突するマシーンの横の部分から細いワイヤーが出てきて、消毒液を含んだ脱脂綿で、これから針を突き刺す患部を拭いただけなのだが、後ろを見る術がないなのはには、何をされているのかわからない。それが恐怖を増幅させていく。
(刺される。刺されてしまう。あんな太い注射が……)
なのはは恐怖に震えながらも、懸命に歯を食いしばり、覚悟を決めることにする。
いくら太くても、おしりに打たれるにしても、ただの注射にすぎない。
予防接種を始め、様々な際に注射は打たれたことがある。決して好きにはなれないが、我慢できないはずがない。
なのはは心のうちで自らを鼓舞し、衝撃に備える。
マシーンの駆動で、鋭利な注射針が、年端も行かぬ少女の愛らしいおしりの右部分の真ん中に向かって行く。
何か固いものが当たっている感触を感じ、なのはは奥歯を噛み締め、息を呑んだ。
(大丈夫……。大丈夫。ただの注射……。ただの注……)
なのはの自己暗示は、強制的に中断させられた。
それは、ほんの数ミリ、注射針が尻肉に刺さったため。
ただそれだけのことなのに、なのはは頭が一瞬で真っ白になった。そして、次の瞬間にやってきたのは……。
「……がっ!」
あまりにも痛すぎると悲鳴を上げることさえ出来ないのだと、なのはは知りたくもないことを知る羽目になった。
酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら、ショック死しなかったことが不思議でならないほどの鋭く激しい痛みに全身を痙攣させる。
瞳からは涙のしずくが、口からはよだれが、肌からは汗が、そして股間からは、純白の下着を染める黄色い液体が勢いよく吹き出す。
普通の注射針の針管部分は真っ直ぐであり、痛みを少しでも抑えるように出来ている。だが、今、なのはの体内に侵入し始めた針は、そのような構造ではない。
薬液が通る穴の外部が、スズメバチの必殺の針よろしく、のこぎりの歯のような構造になっているのだ。
それが針が体内に入るに従って、尻肉を傷つけるのだ。そして、その針の外部には、痛みをいや増す炎症剤が塗布されている。
そう。抗炎症剤ではない。ただでさえ痛い患部をより悪化させるための措置がされているのだ。
針は嫌がらせのように……。いや、嫌がらせと言うよりは拷問を強いる確かな目的を持ったプログラムで、ほんの数ミリずつなのはの尻肉にその針管を埋めていく。
決して異物が入ってきていい場所ではないはずの場所に、人の悪意が生み出した拷問器具が入ってくる。
自ら以外の異物を女の部分で受け入れる行為――性行為さえ知らない幼いなのはには、地獄のような苦しみだった。
「いっ、いやぁぁぁぁぁぁっ!」
最初の激しい衝撃で意識が飛びそうになったなのはだったが、やがて意識が戻ってくると、悲鳴を上げる。
意識が戻ってしまったことで、なのはは更に深い苦痛に苛まれる。
針が刺されている部分だけでなく、それが通過した部分が、徐々に炎症を起こし始め、痛みがどんどん広がっていったのだ。
誰もいない部屋に、幼いなのはの悲痛な叫びがこだまし続ける。けれど、それを聞いて手心を加えてくれるものなどいない。
この部屋にあるのは、冷徹に最悪のプログラムを遂行するマシーンだけなのだから。
何度も何度も悲鳴を上げながら、なのはは苦しみ続ける。
せめて一気に針を埋没させてくれればどれだけ楽だっただろうか?
点滴よりも緩やかな動きで尻肉を蹂躙されていく痛みは、なのはに気絶することさえ許さない。
しかも、少し痛みが引いたところで針が進んでいくので、痛みが麻痺することもなく、延々と痛みが続くのだ。
――三十分近くの時間がかかり、ようやく注射針の針管が全てが、なのはの体内に埋没された。
その頃には、なのはの声は枯れ切り、涙も枯れ果ててしまっていた。
目はうつろで、光が宿っていない。
痛みに苦しめられ、泣き叫び続けた幼い躰は、もう限界だった。
けれど、痛みは続いているものの、新たな刺激がなくなったことで、なのはは少しずつ覚醒していく。
「……おっ、終わった…の?」
なのはの声は、確認すると言うよりは、懇願するかのようなものだった。
これ以上なにかされたら、死んでしまうと本気で思った。
だが、そこで……。
<<被験者の覚醒を確認。薬液を注入します>>
そんな無慈悲な機械音声が、なのはの耳に入って来る。
「……やだ! 止めて! もう、止めてぇぇぇっ!」
なのはの絶叫が通じるわけもなく、プログラムは再開される。
そして、針管の侵入によってズタズタにされた傷口に、塩水以上に染みる薬液が少しずつ体内に入って行く。
一時間以上、その拷問じみた行為を味合わされたなのはは、薬液の最後の一滴が体内に移されるまで、気絶も出来ずに悶え苦しみ続けたのだった。