つい、なのはは自分が何をされたのかをユーノに話してしまった。
自分を心配してくれるユーノの真剣な表情に、嘘を口にするのが躊躇われたからだ。
けれど、ただ注射を打たれただけならともかく、打たれた場所が問題だった。
幼くとも、なのはも女の子だ。親しい男の子が相手でも、異性に自分のおしりにそんなことをされたと話すのは恥ずかしくて仕方がなかった。
けれど、ユーノは真剣な様子でなのはの話を聞いてくれて、癒やしの魔法を掛けてくれた。もっとも、患部にではなく上半身を介してだが。
「うっ……」
「なのは。まだ痛むの?」
「うっ、うん。その、魔法はあまり効果がないみたい……。ごめんね。せっかく掛けてくれたのに……」
なのはは申し訳無さそうに謝ったが、ユーノは「そんな事を謝らないで!」と激しい口調で言う。
普段温厚で物静かなユーノからは想像できない行動と驚きに、なのはは少し怖いと思ってしまう。
それが表情に出ていたのだろう。冷静になったユーノは、「その、大きな声を出してごめん……」と申し訳無さそうに顔を俯ける。
「ユーノ君……。だっ、大丈夫だよ。少し驚いただけだから!」
なのははすぐに微笑みをユーノに向ける。
「……ごめん」
「だから、大丈夫だよ、ユーノく……」
「そういうことじゃあないんだ。僕は、また君を助けられない……。それが悔しいんだ」
ユーノは静かになのはの手を握りしめる。
「レイジングハートが使えない今の状況でこそ、僕が君の代わりにどうにかしないといけないのに。攻撃魔法が使えない僕は、君をここから逃がすこともできない。
側にないときだけでなく、こんなに近くにいるのに君を助けることができない! ごめん。本当に……」
歯が砕けてしまうのではないかと心配になるほど、ユーノは忌々しげに歯を食いしばって怒りの表情を見せる。
「ユーノ君。その、ユーノ君一人のせいじゃあないよ。どうやってこの場所につれてこられたのか、全然覚えていないけれど、きっとレイジングハートが何か警戒をしてくれていたと思うの。きっとそれを私が上手く対処できなかっただけ。だから……」
「そんなことはない! もともと君は普通の女の子だったのに、僕が君を魔法に触れさせてしまった。普通の生活を送ることができなくさせてしまった。この誘拐だって、きっと魔法が原因のはずだ……」
ユーノは拳を震わせ、己の行動を悔いている。
けれど、なのはは、そんなユーノを優しく抱きしめた。
「ユーノ君。私は、ユーノ君に出会えて、魔法に関わるようになって嬉しいと思っているんだよ。取り立ててなんの特技もなかった私が、打ち込める、努力したいと思えることに出会えたんだから……」
「なのは……」
「それに、魔法を知らなかったら、私はフェイトちゃんと友達になれなかった。それに、はやてちゃん達とも出会うことも……」
そこまで口にしたところで、なのはの頭に鈍い痛みが走る。
今、自分はフェイトちゃんの他に誰と出会えなかったと思ったのだろう?
顔は思い出せる。幼い頃の顔も、成長してからの顔も。彼女は私の大切な友人で、そして仕事では……。
えっ? どういう事?
仕事?
まだ管理局でのお仕事は始めていないはず……。
「……なのは、大丈夫?」
耳元に聞こえる自分を心配する声に、なのはは今に戻ってくる。
そして、その時には何を悩んでいたのかを忘れてしまっていた。
「うっ、うん。大丈夫……。それに、その、やっぱりユーノ君に触れてもらっていると、痛みが引いていくみたい。それに、さっきよりも……」
頭の痛みもすぅーと消えたことと、一つの推論が浮かんだため、なのはは自分が何に違和感を抱いていたのかさえ思い出せなくなってしまう。
そう。その推論は、それほどまでに魅力的で蠱惑的で、そして羞恥あふれる行いを迫られるものだった。
「……ユーノ君……」
口に出してしまったら最後だ。もう引き返せなくなる。
けれど、ユーノに触れられている事によって和らいだ痛みも、まだ完全になくなったわけではない。
それに、自分以外の体温を感じるのがすごく心地が良い。
痛みだけなら耐えられた。でも、そこに幸せな温もりが加わったことで、拷問のような注射に疲れたなのはの心はそれを求めてしまう。
そして、なのははユーノにそれを懇願してしまう。端ない行為を求めてしまう。
「……お願い。私のおしりに触って……」
なのはは潤んだ瞳で、そうユーノに懇願するのだった。
△
ユーノは我が耳を疑った。
先程もまで罪悪感でどうにかなってしまいそうになっていたのに、それが一瞬で吹き飛んだ。
「そっ、その、なのは?」
ユーノは自分を抱きしめているなのはの躰が小刻みに震えている。そして、真っ赤な顔で、潤んだ瞳を上目遣いに向けてくる。
なのはも恥ずかしいのだ。
その事に気づいたユーノも恥ずかしくなってきて、顔を真っ赤にする。
「いっ、嫌だよね。私のおしりに触るのなんて。そっ、その、忘れて……」
なのはがそう言って顔を俯けて躰を離そうとしたので、ユーノは慌てて彼女を抱きしめる。
「……その、嫌じゃないよ……」
ユーノもそう言うのがやっとだった。
なのはを見ると、彼女は先程以上に顔を朱に染めている。
ユーノとなのはは抱き合ったまま動けずにいたが、このままでいるわけにも行かない。
「そっ、その、なのは……。さっ、触ってもいいの?」
勇気を振り絞り尋ねると、なのはは恥ずかしそうに小さく頷き、
「その、痛いから優しく触って……」
と言ってくる。
なのはは顔を俯けて黙ってしまったので、ユーノは華奢ななのはの肩を抱きしめていた腕を、てろ、彼女の下半身に向けていく。
背中を通り腰を過ぎ、柔らかな弾力のある肉を感じる部分にユーノの指先が触れた。
「んっ……あっ……」
なのはが聞いたこともない声を上げたので、ユーノの手が止まる。
「痛かった?」
「……ううん。大丈夫。大丈夫だから、その……」
なのはにこれ以上恥をかかせるわけには行かないと決意し、ユーノは意を決してなのはの臀部に、おしりに手のひらを当てる。
「あっ、んっ……。ゆっ、ユーノ君。もう少しだけしっかり触って……」
「うっ、うん」
ドキドキしながら、ユーノはなのはの尻肉を両手で優しく掴む。
「あっ! あんっ。凄い。痛みがなくなって……。それに、すごく気持ちよくて、変な声が出て……」
なのはは恍惚とした表情で微笑む。
ユーノはおかしな気持ちが湧き上がらないようにと、懸命に自分の気持ちを落ち着けようと努力する。
けれど、両手に伝わる柔らかな感触と温もり。そして、その相手があのなのはなのだという事実が、ユーノの興奮を高めてしまう。
「ありがとう、ユーノ君……」
けれど、なのはの涙ながらの感謝の言葉に、ユーノは自分の体の反応をなのはに悟らせられないように体の位置を調整するのだった。