※この作品はR-18です。

光の女神ルシリスの調教録   作:ルシリス様の下僕

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Ⅲ(なのはとフェイト)⑫

 まもなく夕食時ということで、ユーノはいつ迎えが来ても良いように準備を終える。

 

 ようやくなのはに会えると思うと、こんな最悪の環境でも幸せを感じてしまう。

 

(やっぱり、僕はなのはの事が大好きなんだな)

 好きにもいろいろな種類があるが、親類や友人に対するそれではない。なのはにはいつも自分の側にいてほしいと想う。

 

 こんな極限状態に置かれて、ようやく自分の心からの気持ちを理解した己の愚鈍さに呆れるしか無い。

 

 カルダモンの目的はわからない。けれど、あの女の課題をこなしていくうちに、自分の魔法がどんどん強化されている。

 もちろんそんな事はあの女も計算しているのだろうが、攻撃系の魔法を使えない自分でも敵と戦うことができるという自信は付いてきた。

 後はレイジングハートを見つけだして、なのはと協力すればどうにかここから脱出することができるかもしれない。

 

 ただ、現在地がわからないのがネックだ。それに、自分が行き来できる区画はほんの一部だけのようで、この施設の規模さえも不明なまま。

 

(……情報が欲しい。そして、一日でも早くなのはとここから逃れるんだ……)

 ユーノは焦る心を落ち着かせようと、深呼吸をする。

 

 それからまもなく、ユーノの部屋のドアが開いた。

 

 そこにはもう嫌というほど見たカルダモンが立っている。だが、いつもと違い、彼女は一人ではなかった。

 その横には、ユーノと同じくらいの年の女の子が、しかもよく見知った顔があったのだ。

 

「……フェイト……」

 ユーノは、金色の長い髪をツインテールにしている愛らしい少女の名前を呼んだ。けれど、フェイトは目の焦点が合っておらず、こちらの呼びかけに応えない。

 

「フェイト!」

 ユーノが声を荒らげて呼びかけると、ようやくフェイトはビクッと躰を反応させたが、

 

「あっ、ああっ! ごめんなさい! ごめんなさい! お願いだから、もう痛いのは止めてください!」

 突然叫びだし、頭を抑えてその場にしゃがみ込む。

 

「……いったい、どうしたんだ、フェイト……」

 ユーノは困惑する。

 

「もう、駄目じゃあない。お薬で症状を抑えていたのに、そんな大きな声を出しちゃあ」

 窘めるような事を言いながら、カルダモンはクスクスと笑う。

 

「……何をしたんだ? フェイトに何をしたんだ!」

 ユーノはカルダモンを睨みつける。

 

「もう、そんなに怒らないの。なのはちゃんと同じ実験をこの娘にもしただけよ。……でも、随分と我慢強い娘だったから、少し実験に熱が入ってしまって。失敗しちゃって、記憶が混濁して、少し幼児退行しちゃったの」

 失敗失敗とカルダモンはおどけたように言う。

 

 ユーノは怒りを覚えたが、賢明に堪える。

 今、この女に逆らっても、状況が悪くなるだけで、好転はしない。

 

「でも、きっとユーノ君が触ってあげれば大丈夫よ。そういうお薬しか使っていないから」

 カルダモンの説明はわからないが、なのはも自分が触れたことで痛みが和らぐと言っていたことを思い出し、ユーノは怯えるフェイトの手を優しく握ることにしたのだった。

 

 

 

△

 

 

 

(遅いなぁ、ユーノ君……)

 私はカルダモンに案内された部屋でユーノ君が来るのを待っていたが、なかなか彼はやってきてくれない。

 

 もしかして何かあったのではと不安になってくる。

 

 早く顔が見たい。そして、私が見たあんな夢は所詮は夢にすぎないと思いたい。

 だって、ドキドキしている。私のこの胸は。

 

 ユーノ君に会いたくて、声が聞きたくて、私に触れてほしくて仕方がない。

 こんな気持ちになるのは、私にとってユーノ君が特別だから。私の大好きな男の子だから。

 

 夢で見た成長したあの女の人は、私なんかじゃあない。

 あんな風に自分のことしか考えていない大人になんてならない。なるはずがない。

 

 だって、私は大切な人を見つけたのだから。

 その人のために私はありたい。そして、その人からの思いを受け入れたい。

 

 そう思えるから。

 

 

 昨日以上におしりがズキズキと痛むせいで、座れずに壁に横向きで体を預けることしかできないけれど、ユーノ君に触ってもらえたらきっと大丈夫なはずだ。

 

(ビッチなんかにはならない。私が好きなのはユーノ君だけだもん)

 私はそう念じながら、部屋のドアが開かれるのを待った。

 

 それからしばらくして、ようやくその時がきた。

 電子的なドアが静かに横にスライドした。

 

 私は笑顔でユーノ君を出迎えようとして――戸惑った。

 

「なのは!」

 私を呼ぶ声はユーノ君のものじゃあない。

 そう。私を呼んだのはフェイトちゃんだったのだ。

 

 私は戸惑いながらも、こちらに向かって来るフェイトちゃんを抱きしめる。

 

「よかった。なのはも無事でよかった」

「フェイトちゃん……。フェイトちゃんもここに連れてこられていたんだね」

「うん。うん。今までずっと一人で……。でも、なのはに会えた。良かった、本当に……」

「フェイトちゃん……」

 私は優しくフェイトちゃんを抱きしめる。

 

「あらあら、仲がいいわね」

 ユーノ君の隣に立っているカルダモンが声を発した途端、フェイトちゃんの躰がビクッと強張った。

 

「久しぶりに友達と再会出来たのだから、嬉しい気持ちも分かるわよぉ。で・も・ね。ご主人様をないがしろにするメスはどうなるのか、私はしっかり教えたわよね?」

 そこまで言われると、フェイトちゃんは無言で私の腕から離れてカルダモンの前に駆け寄ると、冷たい床に土下座した。

 

「すっ、すみませんでした。つい、私は……」

 フェイトちゃんの躰はガタガタと震えている。

 

 それを見てカルダモンはにっこり微笑むと、何かをした。

 

 私の目には、フェイトちゃんの躰が突然消えたようにしか見えなかった。でも、壁に音を立てて背中から叩きつけられるフェイトちゃんと、何かを蹴った体制を取っていたカルダモンに、ようやく何が起こったのかを理解する。

 

「まったく、もう。教えたはずよ。今日からは貴女のご主人様はユーノ君だって。何をするにもユーノ君に許可を頂いてからじゃあないと駄目なの。そんな簡単な事も分からないの?」

「えっ?」

 私には、カルダモンが何を言っているのか分からない。

 

 カルダモンはツカツカと、倒れたフェイトちゃんに近づき、更に踏みつけようとする。

 

 私も慌てて止めようとしたが、それよりも早くに緑の板状の物体がフェイトちゃんの前に現れて、カルダモンの足から守ってくれた。

 

「カルダモン。フェイトは僕のものなんだろう? だったら彼女が何かをしたのなら、それは僕の責任だ。攻撃をするのなら、僕にすればいい」

 カルダモンを睨みつけるユーノ君は凄く格好良かった。

 

 でも、フェイトちゃんがユーノ君のものというのはどういうことだろう?

 それにご主人様って、どういう意味なのだろう?

 

 私は何がなんだか分からぬまま、事の成り行きを見守ることしか出来なかった。

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