♂が性転換したおかげでカップルはハジメテを経験する? 作:風早 海月
この世界には「突発性女性化症」という病気がある。
これは思春期の男子が、突然女子になるという恐ろしい病気だ。
とある学者によると、人口が大きく減る疫病や飢饉や戦争などがある前後に多発する様で、男女比を女性に傾けることで「人類種の保存」のために子供を産むことが出来る女性を増やそうとする働きから起こるのではないかとされている。
現代日本においては、そうそう起きることではなく、近年は5万人に1人の割合らしい。
低年齢だと4歳、上は25歳まで報告例がある。
最も多いのは12~15歳の中学生くらいか。
何が言いたいかと言うと…
俺、
「嘘だろ…!?5万分の1なんだぞ!?まだ息子は致したこともなかったんだぞ!?一生童貞かよ!くそ!瀬那を1度でも抱きたかった…!てかなんだよこれ!総統閣下も唸るほどのおっぱいぶるーんぶるんだぞ!?」
1人ツッコミをしていると、母親が部屋に飛び込んできた。
それもそうだろう。朝クソ忙しい時間に息子の部屋から頭のおかしい女の声が響けば。
その日のうちに、俺は病院に向かうことになった。
チクショー!
それはさておき、病院で突発性女性化症の診断書を数通受け取ると、直ぐに役所に向かい、それを一通提出する。
そして、郵便で父親の会社が入ってる保険組合にも送る。
役所は性別変更のため。
保険組合は保険金の為だ。
突然女になった人はとにかく生活するための服やその他備品のためにお金がかかる。保険組合の多くはこの病気に対して保険金が支払われる。
そして、その足で母が最低限の衣服を購入してくれた。
「あとは瀬那ちゃんに頼みな。あたしみたいなおばさんはファッションセンスが違うからねぇ」
お互いの両親公認だった俺たちの交際。
それはつまり、あちらの両親に、女子になっても交際を続けていいかという試練でもあった。
くそ!ほぼ無理ゲーだろ!
俺はとぼとぼと母親の選んだ女物の服を纏い、瀬那の家へつま先を向けた。
ピンポーン。
少年心を思い出してダッシュしたくなる。
いや、ダッシュしたくなるのはこの姿のせいか。
『はい、どちら様ですか?』
「あ、瀬那さんはご在宅ですか?瀬那さんのクラスメートなのですが…」
嘘は言ってない。嘘は。
『今呼びますね』
インターホンの通話が切れた。
どこかで窓が開いているのか、「せーなー!」と彼女の母親が呼ぶ声が聞こえる。
数分して、ガチャリと玄関が開く。
「えーと…誰?」
「あー、俺だ。俺」
詐欺のような言い方に、自分で笑う。
「その笑い方…こーちゃんなの?」
「まぁ…その…そういうことだ」
珍しくはあるものの、知名度はそれなりにある女性化症。それだけに、瀬那も理解したようだ。
「そんな…」
「とにかく、お前とご両親に報告しようと…な」
「…っ!」
「俺は、こんな姿でもお前のことを愛してる。でも、この姿をお前が受け入れられないなら…」
瀬那は複雑な顔をしてから、キッパリ言った。
「いいから!とにかく母さん説得するわよ!」
グイグイと俺の裾を引っ張って、瀬那は俺を玄関に引っ張りこんだ。