司令官公務室内にて、何時ものように席に着くゲンドウと傍らに立つ冬月の前へミサトが一歩踏み出す。
ミサトの後ろには堅い面持ちのリツコが。
「接近しての A.T.フィールド中和による戦闘が不可能だからこそ、高エネルギー収束体による一点突破の超長距離直接射撃は理解は出来る。撃ち損じた場合を考えて、迅速な第二射の用意と僅かでも A.T.フィールドが張れて砲身その他機器の保護も望めるエヴァでの運用も」
「そうです。これしか方法はありません」
「マギはどういっている」
「賛成一、条件付き賛成が二でした」
「勝算は六・四パーセント、か・・・例え目標のレンジ外からだろうと、射線上にエヴァを晒すことになる」
「はい」
「狙ってくるぞ。確実に」
作戦内容を確認し決行を渋る冬月に対し、余裕を見せるミサト。
その顔に、声にまだ秘策があることを確信したリツコはミサトの後ろで静かにゲンドウへ頷く。
「対応策は?」
ゲンドウの言葉に待ってましたと言わんばかりにミサトの口角が上がる。
「第八格納庫で眠ってた S S T O の底部で盾を急造中です。五十秒は確実に耐えられます」
「誰が支える。右腕どころか両脚すら満足に動かせんレイの体で双役は不可能だ」
「初号機は言わずもがな。弐号機の増援も叶わんぞ」
「盾に関してはエヴァでの運用を考えていません」
「なに?」
「どういうことかね」
「通産省と防衛省の連名で打診がありました」
その一言にリツコとゲンドウの顔が一瞬だけ歪んでしまう。
「もしや・・・日重が極秘裏に開発建造しているという
「その通りです副司令!」
「しかし、アレの動力源は確か原子炉。幾ら運用可能だからといって・・・」
「そうよ。それに A.T.フィールドをも貫くエネルギー算出量は最低で1億8千万キロワット。ネルフのポジトロンライフルでは不可能」
懸念を口にする冬月に便乗する形でリツコが割り込む。
だがミサトの余裕が崩れることはない。
「ありがたいことに戦自研からもプロトタイプの使用を打診されたわ。必要な電力は日本中から」
「成程・・・リアクターを取り外しライフル砲へ送電される電力の一部をそのまま使用する訳だな」
「はい。既に改修は完了済み。 J A の起動と盾を構えて次射準備から発射を含めた数十秒間の防御姿勢だけならば余剰電力でも十分可能です」
「この場合のマギの回答は!」
「賛成二、条件付き賛成が一の勝算九・五パーセント!」
「碇!!」
「司令!!」
ゲンドウに詰め寄る二人は後ろで両腕をクロスさせ大きくバツを作り勢い良く必死に首を振るリツコの姿に気が付かない。彼女の手には何時の間にかクリップボードの裏に書き殴った『起動 暴走確実 変更不可!!』の文字が。
本来ならば反対するどころか進んで許可すべき作戦内容だった。
残り九時間以内で実現可能、おまけに最も確実である作戦だった。
だからこそゲンドウはままならないエヴァ運用の現状と各組織の善意と半年前に J A 暴走計画の草案をリツコに提出してしまった自分を忌々しく呪った。
期待と興奮に満ちた目と中止を訴える目に囲まれ、世界の命運の一助を担う総司令官は決断を下す。
「・・・・・・この作戦」
しかし、続くゲンドウの言葉を三人が聞くことはなかった。
「報告です!」
公務室内へ駆け込んできた青葉が大声で告げる。
「市郊外にて身元不明の巨大人型ロボットを確認!使徒へ向け進攻を開始するも想定する二倍以上の威力を有する加粒子砲を受け爆発大破。周辺地域への被害は計り知れず・・・えっと、皆さんスゴい顔ですがもしかしてロボットに心当たりでも?」