※この作品はR-18です。

逆行者二人による怠惰な使徒防衛戦   作:沼田もんざえもん

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交渉、されど・・・

 

 

 

 

 

 

「目標は!?」

「現在、芦ノ湖上空を通過」

「エヴァ初号機はパイロットの搭乗確認次第発進可能な状態です」

「遅いぞ葛城君」

「申し訳ありません!」

 

 司令副司令とメインオペレーターが出揃うなか遅れて第二発令所指令室へと顔を出すミサトに周りは騒ぐことなく何時ものことだと彼女を交えて指揮を再開。

 きっと普段の勢いで半壊した第一発令所の方に向かってしまったのだろう。

 誰ともなく指令室メンバーはそう考えていた。

 

「報告があります!」

「・・・何だ」

 

 しかし今回は違った。

 その切羽詰まったミサトの顔に、普段ならば遅刻した程度で気にする様子も見せず行動でもって遅れをリカバリーしようとする彼女だったが、今回は動揺がありありと窺えた。

 

「サードチルドレンの容体が悪化。現在、処置室に収容中。今はエヴァの搭乗すら不可能な状態です」

「何っ?!」

「・・・・・・」

 

 泡を食う副司令にオペレーター席の三人も動揺を見せる。

 一人、眉一つ動かさない司令が無言で報告の続きを促す。

 

「赤木博士とファーストチルドレンが零号機の再起動に向かっていますが早くとも一時間。ファーストチルドレンの身体もまだ実戦に耐えられるほどの回復は見られません」

「法案さまさまだな。零号機の運用は諦めていい」

「・・・これから弐号機とそのパイロットの回収交渉に入る」

 

 然しものゲンドウも重い腰を浮かし温めていた案の実行に移るべく指示を飛ばす。

 

「国連軍及び戦自との共同戦線で使徒を足止め。初号機にはファーストチルドレンの搭乗を。肉弾戦は避け A T フィールドの中和のみに専念し N 2 兵器を用いて事に当たれ」

「妥当だな」

「ああ。今から席を外す。葛城一尉、弐号機の増援は交渉次第だ。空輸にも時間がかかる。期待はするな」

「はっ!」

 

 指令室から消える司令副司令に敬礼で応えミサトはメインモニターに向き直る。

 

「二人とも、聞こえたわね」

『了解』

『分かっていると思うけど、初号機の復旧率は未だ六割。レイとのシンクロ率は四十以下で・・・』

「無茶させるな、でしょう?ほーんと、素直じゃないんだから」

「戦自、国連軍共に許可が下りました!」

「戦自からの威力偵察機映像、出ます!」

 

 メインモニターのスクリーンが切り替わり青い正八面体形の巨大な飛行物体が映し出される。

 

「あら、随分とお早いことで」

「この状況見越して司令が手を回してたに違いありませんね」

「ここまでお膳立てされて足止めすらダメでした、じゃあ作戦課の名折れね。日向君は指揮系統こちらで纏めれるか交渉を・・・」

「報告!」

 

 ミサトの指示を遮る形で青葉の声が響く。

 

「目標内部で高エネルギー反応!」

「なんですって?」

「円周部を加速、収束していきます!」

「まさかっ?!」

 

 

 

 

 

 

「なあアスカ、そろそろ乗ってくれないか?」

「・・・・・・」

 

 左腕に包帯を巻いた男、加持リョウジが寝転がるアスカの顔を窺うためベッドに近づこうとするも保安諜報部の一人に止められる。

 軽く両手を上げ立ち止まる加持は笑みを崩さぬまま口を動かす。

 

「本部総司令たってのお願いだそうだ。協力してくれるならアスカの要求も幾らかは呑むとか吞まないとか」

 

 やる気のない、交渉とも言えない加持の口振りに脇を固める黒服達はサングラスの奥で視線を交わす。

 ここ第三支部内では、もう既に元エヴァパイロットから要注意人物という肩書にまで堕とされてしまった少女が再び暴れ出すようであれば無条件発砲が許されている状態である。

 中にはさっさと処分してしまえという声も上がるほど。

 それでも拘束監禁状態で生かされているのは、集められたパイロット候補全員が弐号機とのシンクロに失敗しているからだ。支部で手が出せるのは精々パーソナルデータの書き換えまでで、弐号機をセカンドチルドレン専用たらしめるコアの換装をしようにもそのコアは本部生産であるうえに何故か本部は生産を拒否。よしんば手に入ったとしても随分と小汚くなってしまったこの少女より他が使えるという確証もない。

 三人のパイロットの中で正常さという点では比べるのも烏滸がましいとさえ言える今のセカンドだが、パイロットの能力だけで言えばぶっちぎりのトップである。みすみす処分してしまう訳にもいかなかった。

 二度にわたるエヴァの暴走で二ヵ月近く包帯の取れない車椅子に座るファーストと二度にわたる上官二人の過失により寝たきりのサードと、元から子供に優しくない組織であるからして、支部内で起きた最年少職員の反逆行為もまともな大人達からしてみれば妥当の一言。

 頼みの綱だった子供達が目に見えて壊れ始め、最近までまともだった連中も人類存続は不可能と自棄になり出す始末。更にとち狂った連中は言動のおかしくなったセカンドを未来からの使者と言って祀り上げようとしたりファーストを聖女と言って神聖視し出したりと、別の意味で支部内は壊滅状態だった。

 真っ先に匙を投げた支部の司令は家族を連れ長期休暇に出かけ、残された副司令もカロウシ寸前らしい。

 そんな、第三支部解体まで秒読みの状況下、第五の使徒襲来で人類滅亡にもリーチがかかってしまった。

 本部司令、国連、独日政府と交渉するまでもなく弐号機とそのパイロットの本部回収は決定。

 にも関わらずこの有様である。

 

「アスカ、起きてるんだろ?少しは話だけでもだな」

「チッ・・・何度言ったら分かんのよ。その顔と声であたしの名前を呼ぶなって言ってんでしょ、偽者!」

「はあ・・・」

 

 体を起こすことなく舌打ちと共に返ってきた言葉は、アスカの加持に対する以前の反応を知る者からすれば耳を疑うものだろう。

 やれやれと苦笑いで肩を落とす当の加持には緊張感が無かったが、これは非常に不味い事態でもある。

 弐号機は既にエヴァ専用の空輸機に固定され、後はセカンドを乗せるだけ。だが件の少女は頑として弐号機には乗らないと主張。

 セカンド曰く、もう弐号機は存在せず今在る弐号機は上っ面だけ整えた張りぼてだと。

 セカンド信者は未来で弐号機が大破し今もその状態だと彼女が思い込んでいるのではと考察し、まともな者が取り合わない中、ファースト信者がではなぜ過去である今の万全な状態のエヴァに乗らないのかという至極まともな疑問を投げ掛け、まともじゃない勘の良い者がそれこそ未来でコアごと大破してしまって今がその延長線上だと思い込んでいるからだろうと大正解を引き当てるも、少女に向かう黒服達がそんな与太話を信じる訳もなく。

 

「セカンドチルドレン。君が戦わなければ世界は滅ぶぞ」

「もう滅びてるわよ」

「君の家族や友人も死ぬことになる」

「もう全人類消えてるわよ」

「でもシンジ君はアスカと一緒に生き延びた。だろ?」

「・・・加持特殊監査官、我々の邪魔をしないでもらいたい」

「・・・いや本当にマジで邪魔しないで下さいお願いします」

 

 勝手に付いて来たまともじゃない勘の良い男を二人係で取り押さえながら黒服達は双方に懇願する。

 だが二人の願いは無視され話は進む。

 

「あのバカと初号機が居るでしょ」

「残念ながらシンジ君は今、呼吸器を付けて医療用カプセルの中だ。初号機の復旧率も正直言って心許ない」

「あっそ」

 

 だからどうしたと言わんばかりの少女はゴロゴロとベッドの上で転がり、信者が何時の間にか用意した貢ぎ物、黒髪の少年がプリントされた等身大の抱き枕の腹部を裂いて腕をグイグイと突っ込むという遊びに興じる。

 

「どーせっ、あたしがっ、行かなくてもっ、偽者の三十路女か!可愛いお人形さんが泣いて頼めば!エヴァに乗って戦うわよ!あのバカは!!」

 

 遂には開いたワタの中に顔を埋め叫ぶ少女。

 ゾッとする黒服達と何所か思案気な加持は少女がワタの中で頬を膨らませるという幼い拗ね方をしていることに気が付くことはなかった。

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