黒光りする鞘から刀を抜く。
白銀に染まる刃、少し紫がかってはいるがかつての紫御前の姿そのものだ。
「…また、頼むぞ。」
吾はおもむろに上へ紫御前の剣先を向け、縦から振り下ろす。
重厚な金物の音と共に暴風が吹き荒れる。
「…用意は済みましたか?」
咲夜が此方を睨む。あわよくば、刺し違えないつもりか。部屋はレミリア殿のご意向で少し暴れても良い場所を用意して頂いた。
吾は両手で刀を持ち構えた。
「…いざ、参るッ!!」
地面を足袋で蹴り、そのまま走る。野を駆ける兎のように。
咲夜殿はナイフを此方に投げてくる。
吾はそれを刃で落とし、間合いへと入る。…本当は先に仕掛けた方が負けかねない。だが、それでも仕方がない。
「…ッ!!」
咲夜殿が…消えた。
急激に間合いから気配が消えた。
後ろからナイフの飛んでくる音が聞こえる。
吾はそれを見ずに躱し、後ろへ刀を振り返す。
ブンッという音と共に斬るがそれは虚空。…完全に見失った。
目だけでなく…呼吸や足捌きだけを感じとり、何処からか飛んでくるナイフを躱す。
「…やるわね。咲夜の動きを読んでるよう。」
…レミリア殿の声が聞こえた。
動きを読むなんてそんなことはしていない。ただ聞こえた、感じたことを応用しているだけだ。
しかし、獲物が見えなければ狩りは成功しない。
「…何処だ…。」
ナイフを躱しながら周りを走っていく。
…おかしい。まるで周りが写真をペラペラとめくるような感覚。映像では見えていない。…時が止まっているような。
…瞳を閉じ、感覚を研ぎ澄まさせる。
たった一撃で終わらせないと、おそらくこのままでは此方が不利だ。
周りは硬い灰色のそこまで広くない室内。それを縦横無尽に扱う咲夜に余所者の吾は完全に蚊帳の外だ。
「終わりですッ!!」
周りがナイフに取り囲まれる。
ナイフが吾にたどり着く前に切り崩さなければならない。
「正に…逃げ場なし。だが…。」
吾は刀に力を乗せ、身体を捻り、身体を軸に刀を一周回して、ナイフを落とした。
「なっ!?」
「覚悟…。朱智一刀流『
地面を蹴り、咲夜殿に距離を詰める。
彼女が時を止めるその隙、恐らく1秒にも満たないその瞬間を狙い、彼女の前へ…。
「ッ!?」
…咲夜殿は膝から崩れ落ちた。
「…峰打ち故、御安心を…。」
剣先をゆっくりと下に下ろし、長い刀身を鞘へと収めた。
「何故…トドメを…。」
「生憎と、遊戯で女は斬らぬ主義だ。」
床に倒れる咲夜殿。辛うじて出る声を上げて、凍てつく視線で吾を睨む。
「…女だからと言って…馬鹿にしてるん…ですか…!!」
「…模擬戦に気合入れすぎじゃないか?お嬢ちゃん。よいしょっと…。」
少し腰を下ろさせてもらおう。
「刃物は使い手によって、人を殺すも生かすもする。だが、吾の紫御前は人を斬り伏せはせど、人を護りはしなかった。吾は幕府の番犬に非ず。…身も心も…自由の身だ。」
「…っ…。」
…不器用ながらも笑ってみる。
咲夜殿の顔が少しぽかんとしていた。
「では、咲夜殿。」
吾は膝立ちをして、彼女の手を引く。
彼女はまるで諦めたかのようにその手を取った。
「…その、咲夜殿っていうのやめてくれる?」
「はえ?」
「…生きづらいのよ。普通に咲夜…で良いわ。」
「お、おう。さ、咲夜。ならば、吾も愈咫郎ではなく、ユタでいい。」
「…ゆ、ユタ。」
…何故だろうか。少し歯痒い。
思えば女と話すのはいつの話か。母の顔も知らねば、女の良さもわからない。ユタ…というのは親代わりの幕臣である山内様に呼ばれていた名。それが久々に呼ばれたもんだから、もしかすると懐かしいのかもしれない。
「…咲夜相手に一本取るとはね。」
先程の部屋へと舞い戻った。
レミリア殿…いえ、レミリア嬢のお膝元、ひざまづく形で彼女の言葉を待っていた。
「貴方…もしかして、見切ってたの?」
「…見てはいませぬ。ただ…息遣い、心音、足音や気配で察知し、刀をそこに振った。それだけだ。」
「…涼しい顔で言うけどアンタも化け物ねー…。能力無しで咲夜に敵うなんて。」
そこまで難しいことだろうか。
しかし、長く戦ってはいたがこのような異端な存在に出会ったのは初めてだ。時を止めるなどと…。
「貴方も何か能力があるのかしらね?」
「…吾がというより、
「…へぇ〜。いつか、その道の人に見てもらわないとね。」
…紫御前。
齢15にして、初めて手にした真剣で、そこから使い続けた。刃こぼれもひどく、何度も研いだ為、天下一品の代物とはならなかったが、死んでからあったこいつはあれほど振るったと言うに刃こぼれゼロ。…お前も成長した…というのか。
「…ところで、貴方、これからどうするの?」
「…ん?」
…そうか。考えてもいなかった。
取り急ぎ、衣食住を見つけなければ、流石に飢えには勝てない。
「考えてないのね…。なら、此処に住めば良いじゃない。」
「…はえ?」
吾ながら腑抜けた声が出たものだ。
たしかに衣食住を簡単に揃えられればそれに越したことはないが、それに甘えると言うのは些か…。
「貴方の力と度量を工面して、其れ相応の部屋を与えるわ。どう?このレミリア・スカーレットの犬になる気はある?」
…犬とは大きく出たな。
確かに、此処にいると言うことはそう言うことになる。その立場には慣れちゃいる。
「…吾に選択の余地なしか。」
「悪くないでしょ?」
レミリア嬢が首を傾げる。
吸血鬼とは色仕掛けが得意なのか…?吾にはその良さはわからぬが、このお方には従うことは悪いわけではなさそうだ。
「…御意。吾、朱智愈咫郎は君主、レミリア・スカーレットにこの命、お預けいたします。」
「…なんかむず痒いわね。この紅魔館、好きなようにしてくれて構わないわ。あと、そこまで畏まらないで。もう、家族なんだから。」
「…あ、あぁ。」
…家族か。
吾には永久に疎遠な言葉だと思っていた。
「ならば、風呂を借りて良いか?いい汗をかいたものでな。」
「ええ。どうぞ。」
…今は一度の休息を。
煎茶が飲みたい。
ハーレムって何人まで許容範囲?
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10人以下でおなしゃす!!
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まぁ、ちょっと多いけど20人?
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ハーレム好きだから30人以上でしょっ!!