身体中が痛い。吾は腕を妹紅の肩に回す。足を片方引き摺る形にはなるが致し方ない。不死身というものに身体が慣れていないのだ。今の吾はずっと全力で走っていたようなもの。…これはキツイな。
「大丈夫?…ユタ。」
「あぁ…。」
横から妹紅が話しかけてくれる。
それで多少は気晴らしになれる…というか、嬉しい。
「妹紅、愈咫郎くん!!大丈夫か!!」
前から慧音先生が走ってきた。
…流石は半妖。かなり軽症で済んだようだ。なんにせよ、無事で良かった。
「あぁ。先生も無事で良かった。」
「…君、大丈夫か。無茶しすぎじゃないのか?…ほら、私も肩を貸してあげるから。」
「…助かる…が、それに及ばない。」
「ん?…どういうことだ?」
吾は目線で横の妹紅を指す。先生はそれを見るなり、苦笑いをした。横の妹紅が頬をぷくぅ…と膨らませて、つまらなそうにしているのだ。
「妹紅?だ、大丈夫か?」
慧音先生が少し口元を引き攣らせている。
誰にも相手されないから少しいじけているんだろう。
「…むぅ。慧音もなんで、最初にユタを心配するかな。私だって頑張ったのにさ。」
「す、すまない。しかし、命をかけて守ってくれた愈咫郎くんには、最初にお礼を言おうと思ってな?」
「慧音もユタのこと好きだったりする?」
「ば、馬鹿言えッ!!そ、その…そ、そういうことは…もう少し時間を置いてだなッ!?」
…悪戯な笑みを浮かべる妹紅と顔を赤らめてワタワタし出す慧音先生。先ほどとの空気感の違いについ顔を緩めてしまう。
「へぇ〜?なるほど、なるほど。私と慧音は同じ人のことを好きになったのか〜。でも、残念ながら私のものなんだよねぇ。ねぇ?ユタ。」
「だから違うってばっ!!…そ、それに。愈咫郎くんにはメイドの彼女や花の妖怪の彼女がいるんだぞ?…妹紅だけってわけじゃ…。」
「え?嘘っ。ねぇ、ユタ。私が最初じゃ…。」
…待て待て。身体中が痛いって言ってるのに肩持ってぶんぶんはやばい。それに…酔う。吾は妹紅の腕をパンパンと軽くではあるが叩いて抗議する。
「…お前で…四人目だ。」
「え、うぇぇっ!?」
「待て待て。まずは愈咫郎くんの肩から手を離してやらんか。そのままブンブンしたら愈咫郎くんの首が捻じ切れそうだぞ。」
「え?…ご、ごめん…なさい…。」
…今、とても慧音に感謝している。うん。そして、妹紅は顔をしょぼんとさせているのか、声が小さくなり、少し、気持ちだが、顔が暗くなっている。
「…大丈夫だ。な?」
吾は妹紅の頭を優しく撫でてやる。
すると、照れているのか耳まで真っ赤にして、小さく頷いた。
「そういえば、お前たち。彼女が複数いる男ってどう思うんだ?」
…ふと疑問に思ったことを聞いてみる。
咲夜や妖夢には聞いたことないし、幽香は少し変になってしまったし…。ヤりすぎた…というやつだ。
「ん?…いやぁ、たしかに褒められたものじゃないけど。一人でいるよりみんなでいた方が楽しいじゃん?」
「ま、まぁ。幻想郷だしな…。当人同士が良いなら、部外者が口を出すのはちょっとな。でも、ほどほどにしておくんだぞ?幻想郷全員を愛するなんて出来やしないんだから。」
ピシッと指を立てて吾に忠告する慧音先生。こう見ると先生らしい先生だ。…それはなんだという話だが。
「…大丈夫だ。そこまでのことは考えてない。肝に銘じておこう。」
「ふむ。なら良いが…。ここの子達は人の温もりに飢えているからな。君みたいに誰かれ優しい人にはコロっといってしまうかもしれん。…だが、今日はよく頑張った。ほれ。」
「うおっ!?」「なっ…!?」
…吾の顔が暖かく柔らかいものに埋められる。間違いない。慧音先生の胸だ。その谷間に顔が埋められた。
「よしよし。よく頑張ったな。」
慧音先生の胸に抱かれ、頭を撫でられる。優しい声でそう言われた。なんとなく、暖かい気持ちになる。
「むぅっ…。なんで慧音がそんなことすんのさッ!!」
「ふふっ。頑張ってる人を褒めるのも教育者の務めだ。…しかし、愈咫郎くん。髪の毛がごわごわしているな。妹紅、お風呂で洗ってやったらどうだ?」
「お、お風呂っ!?…そ、それは…まだ早いというか///」
「…慧音先生。…息ができない。」
「おっと、すまん。」
…全く。なんで付き合うことを恥ずかしく思ってこんなことしてもケロッとしているんだ。
「…てか、よくそんなこと。慧音、できるよね。」
「…全くだ。」
「ん?子どもたちにはよくやっているぞ?」
小首を傾げて、キョトンとする慧音先生。妹紅はため息をつくと吾の腕をぎゅっと抱いた。
「とにかく、好きじゃない慧音には渡さないからな!!」
「なっ!?好きとかそういう問題じゃないだろう!?…もしかして、今私、すっごく恥ずかしいことをしたのか?」
妹紅が真剣な顔で顔を縦に振る。すると慧音の顔が見る見るうちに赤く染まっていった。
「うぅ〜。すまない。愈咫郎くん。私はあまり男の人とは親しくなくてな…。」
「…いや。多分、すまないと言うのは吾の方だ。」
「いやいやいや、辱めたのは私であって…。あ、そうだ。今度、何か埋め合わせをしよう。子供たちにすること…例えば…膝枕とかどうだ?」
「それもダメッ!!」
慧音が指を立てて、小首を傾げ吾に問う。それに対して、隣の妹紅が声を荒げた。…というか、妹紅も妹紅で腕に当たっている。当たっているというか…当てているというか、なんというか…。
「むっ…そうか。なら、今度、私のことを好きにしても良いぞ?」
「はっ?」「なっ!?」
「子どもたちにこういうと本を読んでくれとか色々言ってきてなぁ…。愈咫郎くんは私にとっては命の恩人だ。それくらいは妥当だろ?」
何がおかしいと言った顔で吾と妹紅を見る慧音先生。…確かにそれで官能的な方に持っていくのはおかしいかもしれないが…それでも話の流れ的に可笑しくはないだろうか…。
「ダメだってそういうのッ!!」
「むぅ…。しかし、それでは私の気が晴れん。買い物とかそういうのに付き合ってやるつもりだったのだが…それでは私が買いすぎてしまいそうだ。」
…先生の善意を裏切る形にはなるが。仕方ないな。
肩を落としてしょぼくれる先生と安堵する妹紅。…しかし、もう日が落ちそうだな。そろそろ紅魔館に戻らねば。
「すまない、二人とも。そろそろ。」
「…えっ。もう行っちゃうの?」
「あぁ。今日は紅魔館に泊まると言ってなくてな。流石に帰らないと叱られる。」
ギュッと吾の腕を握る妹紅。
顔はどこか悲しげだ。ギュウっと腕を抱きしめて離さない。
「…ふふ。また、必ず来る。絶対だ。」
「ほんと?」
「あぁ。ほら。おいで。」
妹紅の腕を解くように言い、次は吾が手を広げた。すると彼女はギュッと吾に体を寄せ、抱きしめられる。吾の胸板に柔らかな双乳が乗る。そのまま吾は妹紅ごと、竹林の地面へと押し倒される。
「おっと…。」「きゃっ…。」
「だ、大丈夫か。二人とも。」
…イテテ。竹林の地面がそう硬くなくて良かった。
「くくっ。」
「あはははっ!!」
妹紅と吾は腹から大声を上げて笑った。
…笑っている彼女はとてもとても可愛らしかった。
もこたんはもっと可愛い場面書きたい。慧音先生は…どうだろうか。では次回。ではでは。