※この作品はR-18です。

人斬り武者の幻想歌   作:紳爾零士

62 / 99
六十二杯『最終試合』

…両者、ただ見つめ合う。神、八坂神奈子は腕を組み、得意げに微笑む。霊夢は油断大敵と言わんばかりに睨みつける。

 

「…どうしたんだい?蛇に睨まれた蛙みたいに。動けなくなっちまったかい?」

 

「何言ってんの?…なら、私が蛇ね。」

 

「ハッハッハッ。…幻想郷の巫女とは良い酒が飲めそうだ。…さて、そろそろ始めようか。ウチの巫女や友人が頑張ったんだ。私も頑張らないと…軽口も叩けない。」

 

ほぼノーモーション。地面を蹴って、霊夢を殴りつける。

 

霊夢はそれを腕をクロスして、ガードする。

 

少々、霊夢が後ろへ動くが…それでも汗玉一つ、額にも浮かんでいない。

 

「…弾幕勝負には持っていかない…か。」

 

「霊夢も、魔理沙のさきの戦いを見て何か感じたのでしょうね。しかも、同じ神。魔理沙みたいに火力じゃゴリ押せない。」

 

…咲夜がそう言う。…普通ならあの一撃で実力差がわかる。それを受け止められる霊夢は本当に異常なのだ。

 

「…霊夢は霊力を纏っているからね。」

 

「紫姉さん。」

 

急に現れたな。この人。

吾と藍の間に現れ、吾に笑顔で手を振る紫姉さん。

 

「なんだ?霊力を纏うって。」

 

「簡単に言えば、人の力を霊力で補うってこと。身体強化…ってやつね。」

 

「…するとどうなる。」

 

「それを崩さない限り、肉弾戦は纏い方を知っている方がより優位になるわ。人間が神や妖怪を叩ける、ダメージを与えられるのは纏って叩けるから。単純な筋力だけじゃ、妖怪や神になんて人間が勝てるわけない。ダメージを与えられるわけがない。…だから、此処では肉弾戦じゃなくて弾幕勝負という戦いを確立したの。」

 

…霊力が人の体を強くしているということか。だから、霊夢は神奈子の攻撃を防げた。普通なら骨でもいっているであろう攻撃を、無傷で防いだ。今も神奈子からの打撃を手でクロスして受け止めている。

 

「くっ…!!鬱陶しいわね…!!」

 

「ハッハッハッ!!守ってばかりじゃ何もできないよッ!!…最強、なんだろう?だったら、もっと足掻いてくれよッ!!」

 

『圧倒的な神の打撃に霊夢選手、なす術なしかーッ!?』

 

…んなわけない。

霊夢はさっきからおそらく頭の中で何度も何度も神奈子を殴っている。だが、その隙がない以上、頭の中で考えたそれはただの想像に過ぎなくなってしまうのだ。

 

「あーッ!!めんどくさいッ!!」

 

霊夢は神奈子から遠ざかり、お祓い棒とお札を構える。

 

神奈子はニヤッと笑い、来いと言わんばかりに此方も構える。

 

…改めて仕切り直しだ。

 

「はぁー…。」

 

大きく息を吐き、前へと走る霊夢。

 

神奈子はまた前へと右拳を打つ。

 

しかし、霊夢はそれを避け、逆に神奈子の腹に拳を入れた。

 

「おっ?」

 

「…ふふ。」

 

そのまま、霊夢は後ろへ下がり、前へお札を放つ。

 

神奈子はそれを我が物顔で避けようとするが、札は絶えず神奈子を追尾する。

 

「おやおや。流石の巫女さんも、本調子が出てきたかい?」

 

「ふんっ。この程度だと思わないことね。」

 

『追尾する札を御柱が打ち破るッ!!それを隠れ蓑にして、空をかける軍神を巫女が追いかけるッ!!』

 

…すごいな。まるで別次元だ。霊夢は更に虹色の大小様々な弾幕を繰り出す。

 

だが、神奈子はそれを御柱を利用し、御柱でガードしたりそれを隠れ蓑にして、避けたりしている。

 

武舞台がある意味、無茶苦茶だ。砂埃やら黒煙で前が見えない。

 

「…チッ。さっさと終わらすわよッ!!」

 

「あらあら。急かすねぇ。もっと楽しんでいきなさいな。」

 

…神奈子はまるで舞踊。踊っているように霊夢の弾幕を交わす。

 

霊夢はそれに苛つきながらも神奈子に合わせ、お札や弾幕を繰り出す。

 

「そろそろ出すか…ッ!!神霊『夢想封印』ッ!!」

 

「おっ。奥の手ってことかな?」

 

霊夢を中心に色とりどりの大きめの光の玉が放たれる。

 

神奈子はそれすらも御柱を駆使して、叩き落としていく神奈子。

 

「ハッハッハッ。流石は巫女だねッ!!相殺するしか、逃げ場がないじゃないか。」

 

「まだまだ…!!」

 

「…此処の人間は奥の手を用意するのが好きなのかな?…何でも良いさッ!!私を楽しませておくれッ!!神祭『エクスパンデッド・オンバシラ』ッ!!」

 

霊夢を狙って白いレーザーが挟み込むように放たれる。

 

「チッ…!!」

 

「せっかく此処に来たんだ…これぐらいはしないとねッ!!さぁ、博麗の巫女とやらッ!!その力を見せておくれよッ!!」

 

余裕綽々、まるで旧知の友のように笑顔で飛ぶ神奈子。

 

それに対して、霊夢は迫り来るレーザー砲をなんとか避けている。

 

「ええ…!!なら、見せてあげるわよ…!!神霊『夢想封印・瞬』ッ!!」

 

『なんだッ!?霊夢選手、まるで天狗の如き速さッ!!とてつもない速さで、神奈子選手へお札弾を散らばらせていくッ!!まさに豪雨の如き、とてつもない量のお札が神奈子選手へ飛んでいくッ!!これぞ、幻想最強、これぞ博麗の巫女の力なのかッ!?』

 

「なんだこりゃ…ッ!!こりゃ、ちとキツイね…ッ!!」

 

先程まで、大弾幕を余裕の笑みで交わしていた神奈子。しかし、霊夢の高速移動と多量のお札弾の前に、苦痛の表情を浮かべている。

 

その速度は時間が増すにつれ、徐々に加速化していく。

 

その速度はまさに咲夜の時止め並の…認識すらもできないほどの速さ。

 

「…流石は博麗の巫女。こりゃ、次に立ってた方が…。」

 

「速さを得た勝負は決するのにそう時間はかからないわ。…ほら。」

 

大量のお札弾と大弾幕で吾らの視界さえ、覆っていく。…初めて見た。霊夢の本気。

 

『…徐々に光が消えていきます。恐らく、次に武舞台の上に立っていた方がこの試合の勝者となり得るでしょう。…さぁ、守矢神社対博麗神社の神社仏閣争奪戦。…勝者は…。』

 

砂埃すらも切り開かれる。

…そこには。

 

『武舞台に立つは…博麗の巫女、博麗霊夢選手ッ!!最終戦、勝ち星を取ったのは博麗霊夢選手ッ!!よって、この五番戦、制したのは…三勝一敗一分ッ!!博麗神社の勝利に終りますッ!!』

 

…ドッと沸き立つ幻想郷の住人。かく言う吾も握り拳を胸元まで持ってきていた。

 

「やったっ!!」

 

「おっ…!!」

 

隣の咲夜が吾に飛びついてくる。満面の笑みで。よく頑張ったと吾はその頭を優しく撫でると、目を細め満足げな声を上げた。…ふふ。これだけで頑張った甲斐があったというものだ。…まぁ、吾は勝ったわけではないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神奈子様ッ!!」

 

「いやぁ、負けた、負けた。流石は幻想最強、博麗の巫女だね。」

 

見せ物がなくなり、ほとんどの住人が山から降りていく。閑散とし始めた守矢神社。吾ら、紅魔館組と霊夢、魔理沙、太夫は残っていた。

 

先程まで戦っていた神奈子はボロボロになりながらも満面の笑みであぐらをかいて座っていた。

 

「…すみません。こんなことに。」

 

「頭なんて下げるんじゃないよ。早苗。」

 

「そうだよ。早苗は私たちの為にやってくれたことなんだから、どうなろうとも私たちは受け入れるわよ?」

 

頭を下げる早苗を笑顔で宥める八坂神奈子と洩矢諏訪子。

 

「…霊夢さん。…洩矢神社の繁栄はよろしくお願いします。分社として。」

 

霊夢に対しても悲しげな声でそう言い、頭を下げる早苗。霊夢は無表情でそれを見ている。少々、その場を沈黙が訪れた。

 

「…はぁ。」

 

それを遮ったのは霊夢のため息だった。

 

「やるわけないでしょ。そんな面倒なこと。」

 

「え?」

 

「一つで面倒なのに、二つも見れるもんですか。こっちはアンタらで勝手にしなさい。…今度は勝手なことしないこと。良いわね。」

 

人差し指を立てて、唖然とする早苗にそう言う霊夢。…霊夢としては関わるなとは言わないが、面倒ごとは起こすな…ということだ。

 

「…はい…!!」

 

下瞼に少し涙を溜め、ただ頭を下げていた。その様子を少し見ると霊夢は魔理沙と共に上空へと飛び去っていた。…太夫はいつのまにか消えていたらしい。

 

「…さてと。朱智愈咫郎。…いや、朱智愈咫郎さん。」

 

我々もお暇しようと足を進めようとすると、後ろから八坂神奈子に呼び止められた。何事かと後ろを見ると八坂神奈子と洩矢諏訪子は地面に正座をして、此方を見ていた。

 

「…ありがとう。」

 

二人合わせて境内の石畳に額を押し付ける。…所謂、土下座というやつだ。その隣の早苗がワタワタと慌てていた。

 

「…やめてくれ。大層な事はしていない。」

 

「それでも、早苗を守ってくれたことは変わらない。」

 

…あれは、その前にも天狗どもともいざこざがあった。天魔、黒葉の懐の深さにあの場は治ったが…。

 

「あれが本当に良い判断だったかはわからない。ただ、吾が気に入らなかったから声を上げた。…それだけだ。アンタらが頭を下げることはない。神に頭を下げられるほど、出来た人間じゃあないからな。」

 

「…そう言ってもらえると嬉しいわ。」

 

八坂神奈子と洩矢諏訪子が頭を上げ、立ち上がる。

 

「…しかし、礼も無しでは此方としても…。」

 

「ねーねー、神奈子。だったら、愈咫郎くんに加護を上げるってのはどう?」

 

…加護?

 

「…なるほど。それはいいな。」

 

「…加護ってのは…なんだ?」

 

「まぁまぁ、いつでも私たちが君の助けになるようなものよ。私たちと会わなくても話せるようになるし…。はい。終わり。」

 

…なにやら、祈ったりとか…しないのか。

身体に異変もないし…。まぁ、あれだけ強い神様が後ろ盾になるなら、良いか。

 

「ユタ。そろそろ、帰りましょ。妹様が待ってるわ。」

 

「あぁ。そうだな。」

 

…まだ日も傾いていないが、歩いていたら日も傾いてしまうだろうな。

 

「あ、あのっ!!」

 

…早苗が声を上げた。

吾はどうしたのかと思って、その早苗の方を見る。早苗はほのかに赤く色づいた顔で此方を見ていた。

 

「…愈咫郎さん。また…会えますか?」

 

「…あぁ。そのうちな。」

 

そう言うとぱぁーっと花開いたように笑みを浮かべる早苗。…今度こそ、立ち去ろうと帰路に着く。後ろから、早苗と神奈子、諏訪子の声で「ありがとう」と聞こえてきた。




というわけで風神録?編終了です。最後のはいずれ…。次はほのぼのさせながら、儚月抄ルートか、緋想天ルートか…。と言ってもどっちもしっかり異変をするわけではないですけども。その次の地霊殿まではなんとかストックあります。通常話は…絞り出しますねw
では次回。ではでは〜。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。