リアルが普通に忙しくなりまして…。
…手紙をもらって、人里近くの街道へ足を踏み入れる。澄んだ秋の夜にぼんやりつく屋台提灯。ほのかに食欲をそそる匂いが香る。
「いらっしゃい。」
…暖簾をくぐれば、これまた、少し若めの…少女が吾ににっこりと微笑み、そう言った。…レミリア嬢とは違う、鳥の羽が背から生えているのが見えた。
「…来てくれたんですね。」
と、吾を呼んだのはその少女ではない。
客席に着く白髪の少女。ぴょんっと立つ耳と尻尾が人ではない彼女の特徴である。…犬走椛。
その隣に吾は腰を落とす。
「一杯、お酌します。」
「悪い。」
隣の椛が熱燗をお猪口に注ぐ。
それを吾はもらい、椛と乾杯をして、グッと喉に流した。
「…ふぅ…。」
「女将さん。此方の方にも同じものを。」
「はい。」
女将はにっこりと笑うと、長細い皿に乗った…鰻?の蒲焼のようなものを持ってきた。…しかし、吾の知っている鰻ではない。一屋台の肴として、鰻が出てくるのは大変、豪華だが…。箸で掴んで、口に含む。
「…美味い。」
…なんだこれ。口当たりは普通の鰻とは違い、歯応えがコリコリとしていて、まるで牛のモツのようだ。一屋台で終わるのは勿体ないな…。
「…愈咫郎さん。」
「ん?」
食と酒を楽しんでいると、隣の椛がボソリとそう言った。
「…改めて、ありがとうございました。直ぐに私の話を信じてくださって…。更には山の情勢すらも…。」
「あぁ。それだ。…山は今、どうなってる?」
…去ってから若干、気になっていた。神の加護…の件で守矢神社に聞きに行くことも多いかもしれないのに、山に入った瞬間何度も天狗に襲われては面倒だ。
「天魔様中心に改革が進められています。余所者も簡単に入れるように。守矢神社中心に妖怪の山を観光資源とやらにするそうで…。天魔様も天狗や河童などの妖怪に迷惑をかけなければ、良いと。」
「そうか。」
…まぁ、観光客が妖怪の山をゴミで荒らしてしまったりしたら頓挫してしまうかもしれないが…。参拝客が欲しい守矢神社としては、妖怪の山の情勢が邪魔で仕方がない。だから、情勢自体を変えて、山に人間が来れるようにしなければならなかった…というところか。
「愈咫郎さんが来ても、もう襲われずにすみますね。」
「…。」
…にっこりと笑う椛。…吾はその口元を親指で拭う。
「んっ…。なんなんですっ…!?」
「…口元にタレがついていたのでな。」
…それを手元にあった紙で拭き取る。
先程とは一変、椛は少しほんのりと顔を赤らめて、吾を見た。なんというか、困惑しているようだ。
「まぁ、心配することはないさ。…この前、咲夜と玄武の沢に行った。その時に襲われなかったのだから、もう大丈夫なんだ…と確信はしていた。」
「…そう、ですか…。」
…まぁ、中々の場所だったから、あそこが行けなくなるってのは辛いしな。
「確かに。あそこは綺麗ですしね。…恋人同士で行くのにはぴったりです。」
「…ふっ。だな。…女将、もう一杯。」
「はーい。」
…これから、妖怪の山はどうなるのだろうか。…情勢とはそう簡単に変わるものなのだろうか。あやつらの考えることはわからぬが、行ける場所が増えたのは嬉しいな。
「…恋人…ね。お前もそういうのに憧れるのかい?」
「んぐっ!?…ごほっ…ごほっ…!!な、なんですか、急に!?」
…鰻を食べていた椛が顔を赤らめて、びっくりしたような顔で吾を見る。
「なーに。酒のつまみにな。…考えてみりゃあ、天狗ってのとそれほど話したことはないからな。世間話程度に…だ。」
「世間話って…。女の子がみんな、そういうことに興味があるわけじゃありません。…ほら、話が進まないでしょ?」
「なるほど。」
…考えてみりゃそりゃそうだ。
世界中、全ての男女が恋をするわけではない。歳を重ねるにつれて、そういうことを考えることが少なくなるしな…。
「てことは、椛はそういうのに興味ないってことか?」
「うっ…。そ、そういうわけでは…。」
「お客さん?からみ酒ですか〜?」
…口角を上げ、ニコリというよりはニヤリと笑う女将。何処となく、大人の女性に揶揄われているような感覚がある。
「ふふ。この程度では酔わねえさ。…で、女将はどうだい?そういうの、興味あるのかい?」
「うーん。色んな人に聞かれてきましたけどねぇ…。例えば、私は歌が好きですから、静かに聞いてくださったり、一緒に歌ってて楽しい方が良いですね。」
…ほお。女将は歌が好きなんだな。
吾は音楽の類はからっきしダメだ。舞踊は見るのは好きだが、やるのは無理。芸術はわからん。
「椛は?」
「…わ、私は…。そのっ…。」
もう酒が回っているのか、顔が真っ赤に染まっている。耳がぴょこぴょこと動いている。…うむむ。猫じゃらしみたいで少し触りたくなる。
「…例えばの話ですよ?例えば…悪者から守ってくれる…白馬の王子様…とか?…た、例えばですよッ!?」
ほのかに赤かった顔が更に赤く染まった。ぼっ…という擬音が正しいだろう。…しかし、白馬の王子様…か。なんだかんだ、興味あるんじゃないか。
「…案外、可愛らしい答えが聞けたな。」
「うぅ〜…揶揄わないでくださいッ!!」
…グルルと此方を威嚇されてしまった。
こういうところは犬っぽいんだな。
「おや?確か、椛さん、愈咫郎さんにあこ…。」
「わぁーわぁーッ!!」
…なんだ?何か言おうとした女将の口を椛は机に乗り上げながら、咄嗟に押さえる。その顔は湯気でも出ているのか…と思うくらい真っ赤に染まっている。
「…ん?どうした?」
「な、なんでもありませんッ!!ほら、女将ッ!!熱燗、もう一杯ッ!!」
「…ふふ。じゃあ、椛さんにつけときますね?」
「もうッ!!それで良いですからぁ〜ッ!!」
…椛の声が夜空に響く。
なぜ、そうなったのか、わからないまま吾はふかふかの蒲焼に箸を入れていた。
もみもみは今回、かわいそうキャラで書くか?
次は紅魔館陣営か、もこけーね…ちびっ子軍団も書きたいかなぁ…。まぁ、そのうち。ではでは。