※この作品はR-18です。

人斬り武者の幻想歌   作:紳爾零士

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キツネの苦手なものってオオカミらしいですよ。


六十九杯『オオカミ』

「…。」

 

…隣の団子をつまみながら、本を捲る。つらつらと墨で書かれた読本ではある。…他国語の本ばかり読んでいたせいか、こんな本は久方ぶりでとても良い。…とはいえ、このような待ち時間に読み進めるには長すぎるか…。

 

「…やぁ。ユタくん。」

 

…もう一本、注文しようかとでも思った時、吾の待ち人が姿を現した。その娘はいつもの服に身を包み、人ではない反り立つ耳をピンっと立て、立派な9本の尾を広げる。だが、その姿は見し者全てを魅了する。立てば芍薬、座れば牡丹とはよく言ったものだ。

 

「…待たせたね…。ちょっと、手を焼いていて…遅れちゃったよ。」

 

「…どうした?」

 

そんな彼女とのデートの日。…しかし、今日の彼女は少し妙だ。前髪は少し乱れ、何処か焦っているようだ。

 

「いやっ…ちょっと…!!」

 

「ワンッ!!」

 

「ひゃあっ!?」

 

…その刹那、藍は吾の後ろにすっと隠れた。本当に僅か一瞬のこと。…幻想郷を代表する大妖怪、八雲藍が震え上がっている。吾の肩に手を当て、吾を盾にするような感じだ。…しかし、今、人通りがあまり無くて良かったな…。

 

「…お前、そんなに何を怖がって…。」

 

「あ、あれ…っ!!」

 

「…ん?」

 

震えながら前を指さす。

…そこには…。

 

「…犬?」

 

「オオカミだよッ!?お・お・か・みッ!!…あれだけはダメなんだ。昔っから…!!」

 

…なるほど。

立派な白い毛並み。ツンッと立つ耳に凛々しい金の瞳。…見たことはないが、これがオオカミか。

 

「クゥゥン…。」

 

…藍が離れてしょぼくれているように見えるが…。耳を垂らして、少し残念そうに此方を見ている。

 

「…おい。なんだか、残念そうに見ているが?」

 

「ああ言う奴なんだッ!!可愛い見てくれに騙されてはいけない。頭からガブリといかれるぞ!?」

 

「…んな大袈裟なぁ…。」

 

…ブルブルと震える藍。目には少し涙を浮かべている。

 

「あれだけはダメなんだぁ…。何度見ても、身体の芯からブルブルと…。情けないのはわかってる、でもッ!!あれだけはぁ〜ッ!!」

 

「わかった、わかったからッ!!なんとかしてやるからッ!!」

 

…なんというか。恋人になった途端に、甘えるようになった気がする。現に今も泣きそうな顔で吾の服を握って離さない。…このままでは皺ができてしまう。

 

吾はとりあえず、その狼に近寄る。

狼自身も吾を警戒しているのか、少し後退りをして吾に向かって唸り声をあげる。

 

「ガルルル…ッ!!」

 

「…ほら、大丈夫だ。な?」

 

吾は声色を柔らげ、手を伸ばす。狼は吾と吾の手、そして、藍の顔を見比べた。…信用して良いものか。考えているのだろうな。

 

「ね、ねぇ…。あ、危ないから…。」

 

「…ほら。大丈夫。怖くない。な?」

 

「…バウッ!!」

 

「あっ!?」

 

…くっ…。

狼が吾の手に噛み付く。…狼の口元から血が滴り落ちる。

 

「…くっ。こいつ…!!」

 

「…待て…。藍。」

 

「でも、ユタくんの手を…ッ!!」

 

…此処で下手に刺激しては逆効果だ。このまま指ごと食いちぎられかねない。吾は良いが、人の肉の味を覚えてしまえばコイツに逆効果だ。吾はもう一方の手で狼の頭を撫でる。

 

「グルルル……!!くぅぅぅん…。」

 

噛み付いたままだった狼。…だが、吾が敵ではないとわかってくれたのか、また悲しげな声を上げ、ペロペロと噛み付いた手を舐め始めた。…こうなったら、可愛いもんだ。少しこしょばゆい。

 

「ふふ…くくっ…。よしよし。良い子だ。」

 

「…凄いな。狼が…懐いてる。」

 

「…元々、お前にも懐いてたさ。…じゃなきゃ、こうやって此処までついてきちゃいない。怖がりすぎた…ってやつだ。」

 

「…。」

 

…それを聞いてか、藍も恐る恐るではあるが、手を伸ばす。狼は待ってましたと言わんばかりに、尻尾をブンブンと振っている。…なんだろうか。藍や椛に似た感覚だ。…あの子なら一緒にしないでっ!!と起こりそうではあるが…。

 

藍の手が狼へと触れる。

 

「…。」

 

「…どうだ。可愛いじゃねえか。」

 

目を細める狼。藍は先ほどまでとは一変、ゆっくりと優しく撫で回している。

 

「…ふふ。確かに。なんでこんな子が怖かったのだろう。」

 

「まぁ、狐の天敵は狼とも言うしな。本能的なものじゃあねえか?」

 

「むっ。私をそこいらの狐と同じにしないでくれよ。…全く。なぁ?」

 

「ワンッ!!」

 

ぷくっと頬を膨らます藍。かと思えば、先ほどまで怖がっていた狼に向かって、撫でながら問いかける。…吾の目の前にはモフモフが二つ見える。これが眼福というやつか…。

 

「…で?どうするんだ?コイツ。飼うのか?」

 

「むむっ…。そう言われると難しいなぁ…。手放してもいいが、ここまで懐かれていると…名残惜しいというか…なんというか…。」

 

…とはいえ、生き物を飼うのに生半可な覚悟ではいけない。元々、野生だった生き物だ。人に慣れさせていかないと、妖怪に殺されてしまったり、人に撃たれたりしてしまうかもなぁ…。

 

「キャゥゥン?」

 

「くっ…そんな目で見るな…。わかった。私が飼おう。」

 

「…大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ。紫様はああ見えて群を抜く動物好きだぞ?それに、橙もいるし、散歩は私が買い物ついでにしてあげれば良い。…ただそうなると名前だよなぁ…。」

 

…どうやら、真剣に飼うつもりらしい。まぁ、藍なら大丈夫だろう。吾も時折、手伝ってやろう。

 

「…名前…。藍、橙、紫だから…白(はく)なんてどうだ?」

 

「ほう。…そうだな。それでいこう。…白。」

 

「ワンッ!!」

 

心なしか、狼…白はかなり喜んでいるように見えた。藍もあの様子とは打って変わり、橙を見ているかのような…そういう感じの優しい母性に満ちた表情をしていた。

 

「…で?この後、デートはどうするんだ?」

 

「あっ…。…マヨヒガに白を置いてくる。ちょっと待っててくれ…。」

 

…少し決まりの悪そうな顔をする藍。よほど楽しみにしてくれていたのだろう。少し嬉しい。

 

「いや、吾も行こう。どこに行くか、一緒に決めるついでだ。」

 

「ふふっ。そうか。ありがとう。」

 

輝く笑みの中、白が太陽へと吠えた。

…藍は白の美しい毛並みをゆっくりと撫でた。…ちなみにマヨヒガに行った時、紫姉さんと会ったが白の存在に対して、一つ返事で了承してくれた。理由はモフモフしてるから…だとか。




まぁ、九尾の狐だから、狼なんて怖くないやろ…ってのは無しで。次は藍様とデートか、他の子達を出すか…。そろそろ、もこたんとかフランちゃんとか、あとは永遠亭組ともかませたいね。なんか、リクエストあったら是非ください。では次回。ではでは。
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