「改めて歩いてみると長いですね。ここの階段。」
「白玉楼よりマシだ。」
「うふふ。確かに、言えてますね。」
…まだまだ上がある。山道も含めて、博麗神社よりも大分と長いようだが、山道の景色を楽しんでいれば、同程度ほどに感じる。
「ユタローさん。貴方は何故、強くなりたいんです?」
「…唐突だな。何故だ?」
「そうですね。記者として神に力を貸される人間ってのが、気になった…じゃだめですかね?」
少しはにかみながら、そう言う文。
「…それは巫女でもないのに…か?」
「ええ。というか、私の知る前例がないからですかね。」
…この幻想郷では、見た目の年齢なんて当てにならない。文だって大体、二十代か、それに満たないかだが、実年齢は遥かに上だ。それでいて、射命丸文は幻想郷の言わば目に近い。いつから記者をやっていたかは知らないが、その文が知らないとなると、本当に居ないということになる。というか、そんなポンポン居ても困るだけだ。神の力が安売りされるってことだからな。
「…吾はお前と違って弱い人間だ。力の真意を追い求め、それに理由をつけようとするが、力を求める理由はただ一つ。…家族と笑って過ごしたいから、かな。」
「うふふ。貴方らしいですね。…でも、家族か。良いなぁ。」
文が吾の顔を見てうっとりとしている。
「子供ができたら大変だろ?咲夜や妖夢なんか仕事できないし、お前もあっちこっち行けなくなるぞ?」
「むっ。夢は夢のままにしといてください。…例えば、人を愛する感覚だとか、男の人とのアレの感覚とか?」
「…こらこら。年頃の女の子が公共の場でそう言うことを言うんじゃないよ。」
…妖怪が精を欲すは食事のためか。一つ欲を言うならば、自分のことを愛する女と一夜を過ごしたいものだ。人殺しってのは人肌寂しいもんだな…。
「着きましたよ。守矢神社。」
感傷に浸る間もなく、境内へ到着した。話していたからか、道中の階段の長さはそこまで気にならなかった。
「おや?ゆ、愈咫郎さんッ!!」
「よう。早苗。」
中々片付いた境内だとは思ったが、なるほどだ。早苗が竹箒を持って掃除をしていた。吾を見るや否や、竹箒を持ちながら、此方へ小走りでやってきた。
「き、今日は何用でしょうかっ!?」
顔がほのかに赤く、息が上がっている早苗。なにもそこまでの運動はしていない。…様子がおかしいな。
「どうした?早苗。少し気分でも悪いのか?」
「い、いえっ!!そんなことないですっ!!…ふぅ…。失礼しました。愈咫郎さん。」
一息ついて冷静になる早苗。顔の赤さもサッと引き、健康的な肌色に変わる。ニコッと笑うその顔は人里でも人気が高い。そう言われるのも納得だ。
「それで、愈咫郎さんは何用で此方に?」
「あぁ。此処の二柱に少し話を伺いたくってな。」
「そう…ですか。諏訪子様と神奈子様に。そこの天狗さんは差し詰め、取材といったところでしょうか?」
「ええ。そんなところです。」
文がそう言い、にこりと笑う。
「わかりました。お二人にお話をつけてきますのでご自由にお入りください。それでは。」
それだけ言うと早苗は吾々に会釈をし、本殿へと入っていった。…自由に入れと言われたが…いいのだろうか。
「…とりあえず入りましょ。此処で立ち止まっててもなにも始まりませんし。」
「…わかった。」
まぁ、入るとするか。
「お邪魔します。」
「よく来たね。ささ、座んな。」
本殿内はわりと良くある古民家のような佇まいで、大きな部屋に畳が敷かれ、真ん中に机とそれを中心に四方に座布団が置かれている。入ってきたところから対面に神奈子殿が座り、その横に諏訪子殿、早苗が座っている。…お言葉に甘えて、吾は神奈子殿と対面に座り、その横に文が座った。
「早苗から聞いたよ。私たちに用だって?」
「左様でございます。神の加護とやらにふと疑問を覚えた次第で、此方に参りました。」
「へぇ。神の力にねぇ。でも、堅苦しいのはなーし。教えたげるから、ちょっとはリラックスしよ。ね?」
…諏訪子殿が諭すように言ってくる。神だからと言って多少は緊張していたが、中々話のわかる人たちのようだ。まぁ、人では無いが。
「…ふむ。なるほど。吾も崩した方がやりやすい。」
「まっ、そういうことよ。…で?神の力…か。神奈子、どう説明しようか。」
「…ふむ。我々の力自体が超常的なものだからな。だいぶと時間がかかるが、それでもよいか?」
「無論、いくらかかっても構わん。」
…紅魔館にはあらかじめ遅くなると伝えてある。それでいて、夜道は文もいる。取材の代わりに、道案内くらいしてくれるだろう。
「では、説明を始めよう。」
…一息ついて、神奈子が少し微笑んだ。
「先ず、神の力を使える人間はこの世に事例がない。あれば、それは大変なことだ。なんてったって、圧倒的な力の象徴、畏怖の存在たる神に近しい人間がぽんぽん現れることになるからね。…でも、例外がいる。それが『巫女』だよ。」
「…巫女…。」
「そうさ。…心の扉を開けて、自身の身体を神に明け渡す。神はそれに応えて、巫女に力を渡す。信じて、ね。そういう信頼関係をある程度気づかないと、力は軽々しく使えないのさ。」
…しかし、吾は神職に携わる人間ではない。神とは無縁の存在。…その条件に当てはまらない。
「…まぁ、神の力なんて使える人間は私も長いこと生きているけれど、見たことないからね。博麗の巫女ならもしかすると使えるだろうけれど…。」
「…もし、神の力が使えたらどうなる?」
「残念ながら、無敵だの最強だのには絶対にならないさ。…例えば、人が手をバタバタと動かして、鳥みたいになれるかな。筋肉の使い方を習得したとして、あんな風に空を飛ぶなんて無理だろう?…ものにはそれにしか出来ないことがある。神もそれさ。」
「でも、技として昇華することはできるわ。」
神奈子の話を遮り、前屈みになり此方を見る諏訪子がそう言った。
「…技?」
「神の加護ってのは心技体、それぞれを補うものなの。身体が硬くなったり、超常的な技が出たりとかそういうものね。この幻想郷ならそれが可能なの。」
「ふむ。たしかに此処なら可能だな。神が神として姿を保っていること自体が奇妙。こうして、人と会話するなどもっての外だしな。…後はそれに耐え得る器を作らなければならない。」
「…耐え得る器…。」
そうよと諏訪子が付け加える。
「…焼いていない泥のお皿に水が乗るかしら。溶けてドロドロになるわ。…でも、それがカチカチになったら…。お水は乗るわよね?」
「結局は吾の努力次第か。」
…ふむ。努力無しではなにも成し遂げられないものだ。しかし、それで何が出来るようになるかは未知数…か。
「今、愈咫郎くんが何考えてるか当ててあげよっか?」
「…?」
諏訪子が机の横を通り、吾の膝上にちょこんと座る。そして、此方へ見返り、歯を見せて悪戯に笑った。
「す、諏訪子さまッ!!」
「こらこら、諏訪子。客人にそんな…。」
「むふふ。残念。力を貸している以上、私と彼は一心同体よ?神ありて器あり、また器ありて神あり。これくらいお安い御用でしょ?」
「あのなぁ…。」
諏訪子の行動に神奈子が頭を抱え、早苗が何やら恨めしげに睨む。…別に諏訪子は重いわけではない為、此方は迷惑被らないが…。彼方としての面子というのがあるのだろう。難しいものだ。
「兎に角、暫くは特訓ね。早苗も一緒に。」
「ふぇ?私もですか?」
「おいおい…早苗は巫女じゃなくて風祝だ。」
「…まぁ、博麗の巫女ほどになれとは言わないわ。だけど、早苗はなろうと思えば仙人にも神にもなれる。現人神だけれどね。きっと、早苗もあのメイドや博麗の巫女、魔法使いみたいに愈咫郎くんと一緒に戦えるはずよ。」
「…ゆ、愈咫郎さんと…?」
早苗たちが吾を見る。隣の文まで此方を見ている。…確かに腕っ節こそ普通の少女レベルに感じたが、弾幕は流石といったレベルだ。心強い。
「ふっ…。あぁ。早苗が一緒だと心強いな。」
「…っ!?」
…早苗の顔がカァッと赤くなる。…何故だ。疑問に思うも神奈子と膝の上の諏訪子がニコニコと笑っているので、恐らく病気ではないのだろう。
「…わ、わかりました…!!先日の御恩、愈咫郎さんに返せるならッ!!」
「うんうん。それで良し。じゃあ、お夕飯にしようか。」
「「えっ?」」「なにっ?」
吾ら4人は顔を見合わせ、室内にある時計を見る。すると時計の針が午後7時を刻んでいた。
「わ、わわわっ…!!すぐ、お支度しますぅーッ!!」
時計を見るや否や、早苗が血相を変えて、隣の部屋へと入っていった。
「…。」
「ふふ。愈咫郎くんも食べていけば良いよ。そっちの天狗はどう?」
「いや、私は少し先程のアレをまとめたいので。」
「…吾も紅魔館に伝えてないのだが…。」
「あら、そう?それなら…。」
「大丈夫です。私が伝えてきます。」
…それは助かる。この時間帯なら咲夜もまだ飯支度はしていないだろう。まぁ…後々なにかしらは言われるだろうが…。今日は早めに帰ろう。
「…では、夕飯だけ馳走になる。」
「ふふ。そう。」
「では、伝えてきます。」
「あぁ、頼んだぞ。」
文は吾々に会釈をすると、その場を出ていった。
まぁ、次で終わるんですが。
さて、そろそろ異変いきたいですね。
神繋がりで儚月抄いくか、それとも緋想天いくか…。衣玖さん書きたいんですわぁ…。