※この作品はR-18です。

人斬り武者の幻想歌   作:紳爾零士

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異変開幕ですが、まぁ、今回はどうだろって感じです。
4、5話ぐらいの予定です。クリスマスもありますし…。


七十六杯『荒くれ者』

「咲夜、もう良いのか。」

 

「ええ。これで買うものはぜんぶよ。」

 

…ふむ。今日は珍しく咲夜の買い物について来た。何もしないでは、仕事にならないからな。給料泥棒…とか言うやつである。

 

「…あら?おじさん、ちょっと多いですよ?お野菜。」

 

「ハッハッハッ。いつもご贔屓にしてもらってるからね。オマケだよ。オマケ。」

 

いつも使っている八百屋の恰幅のいい店主が笑いながらそう言ってきた。

 

「ふむ。そうか。それは有難い。」

 

「それはそうと、嬢ちゃんらはいつ籍を入れるんだい?ウチのカミさんが気になっててねぇ…。」

 

「…ふぇっ?」

 

唐突に店主がそう言ってくる。他人に言われたのが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にする咲夜。

 

…籍を入れる…か。いつごろだったか、子供が産まれれば籍を入れると咲夜と約束はしていたにはしていたが、それがいつ頃になるかまでは天命に頼らなければならない。

 

「わ、私たちはまだ…そんなっ…。」

 

「そうなのかい?お侍さんは沢山の娘さんと仲良くしてはいるけれど、嬢ちゃんにだけはだいぶとゾッコンだから結婚するならあの人ねってカミさんが言っちゃあいたが…。」

 

「そ、それは違います。ユタは節操無しだけど、私たち全員をちゃんと愛してくれます。そこに優劣を見出せるほど器用な人じゃないので…。」

 

…誰が節操無しだ。と反論したいが言い切れない。たしかに吾が最初から迷わなければ良かっただけのこと。咲夜の優しさに半ば救われたもの。あのまま死んでいたら今度こそ地獄行きだったろう。

 

「お、おう。そ、そうなのかい。」

 

「…店主殿。節操無しは耳が痛いが、それでも吾はこの娘たちを不幸にはさせない。絶対に。」

 

「ハッハッハッ。なに、お侍さんは真面目な人だからね。心配なんざしちゃいないさ。子どもが出来たら言ってくれよ。もっとオマケしてやるからさ。」

 

「…。」

 

咲夜が少し顔を赤く染めて恥ずかしそうに笑った。

 

…子どもか。吾の生きていた時代は生まれてくる性別が一つ違えば、生まれてくる順番が一つ違えば福にも凶にも転がる時代。吾も昔と違う、我が子にぐらい人の生活をさせてやりたいものだ。

 

「…この里の人たちはユタのこと、よく知ってくれてるわね。」

 

「…嬉しい限りだが、どうだかな。人の真意など、吾らが思うよりも難しいものだ。そうだろ?」

 

「まぁね。」

 

そうやって困ったように笑う咲夜。

 

「ユタは里の人たちのこと、好き?」

 

「…生まれて元来、他人を好きになった覚えはない。ここに来るまでは。」

 

「へぇ。私は他人、嫌いだったなぁ。」

 

咲夜がそう言いながら遠いところを見上げた。意外も意外。咲夜は人付き合いが本当に上手い。それ故に意外だ。

 

「…意外だな。咲夜は世渡り上手だから。」

 

「うふふ。私だって苦手なものあるわ。…昔ね?お母さんの前が林檎が欲しいって言ったの。私、早く食べて欲しくって、この能力を使ったわ。そしたら、急にリンゴを持って現れた私をお母さんはびっくりして、それを受け取ったわ。でも、それからお母さんの私を見る目が変わった。この子は急に消える子だって。怖がった目で此方を見ていたわ。でも、それを知らない私はこの能力を使ったわ。…だから、お母さんは私を追い出したの。化け物って悲観して。」

 

「…化け物…ね。」

 

…普通の人から見れば、急にパッと現れたら畏怖の対象になる。化け物という名は適切だろう。

 

「だから、こっちから消えてやったわ。その後は飲まず食わずで立つのもやっとな時に、散歩中のお嬢様と美鈴と出会ったわ。それからは知っての通り…。この話、初めて?」

 

「あぁ。初めて聞いた。」

 

だから、これほどまでに逞しい女性に育ったのだろうな。それほどまでに悲劇的な過去の話を教えてくれたのは、おそらくだいぶと信頼してくれたということだ。心の底から嬉しい。

 

「ありがとう。そんな辛い話を聞かせてくれて。」

 

「ううん。今はあんな母親より、貴方やお嬢様達の方が大切だから。」

 

「…なぁ、咲夜。」

 

「なぁに?」

 

少し笑みを浮かべながら、微笑みながら吾を見て、小首を傾げる咲夜。恐らくもっと雰囲気のあるタイミングで言うのが適切だろうが、ただ先ほどの店主との会話で、こういうのも悪くは無いかと思ってしまった。

 

「…嫌ならいいが、聞いてくれ。吾はお前とッ…「キャァァァッ!!」」

 

言葉を紡ぎかけた時、人里の店内から大きな悲鳴が聞こえた。吾も咲夜も聞こえた方を見る。そこでは、甘味処の目の前に立つ女将とその前で尻餅をつく橙の着物の大男が居た。

 

「イッチチ…!!何しやがるんだァ…?クソババアッ!!」

 

「くそはこっちのセリフよッ!!飯代がないのにたらふく食うだけならまだしも、ウチの看板娘にまで手を…!!」

 

「俺が気に入ってやってんだッ!!感謝して欲しいくらいだねッ!!」

 

「馬鹿はほどほどにしなッ!!アンタみたいな客は初めてだ…!!もうここに近寄るんじゃないよッ!!」

 

「あぁッ!!泣いて詫びてももう来ねえ。」

 

…聞いたことのある声だと思ったが、まさかな。吾は人混みから隠れるように帰ろうとする…が。

 

「おい。テメェ、朱智愈咫郎じゃあねえか。」

 

いつの間に現れた大男に視界を遮られた。

 

「…なんで、お前がここにいる。」

 

「へっ。なんでだろうなァ?もっと喧嘩してこいっつう、神様からのお達しかもなぁ?」

 

「なに?ユタ、知り合い?」

 

咲夜が吾と大男の顔を見比べてそう言った。

…黒と金が交互に入った毛量の多い長髪。右目には傷があり、三白眼から黒色の瞳を覗かせる。大きく開いた胸元に真っ黒な着物と朱い鼻緒の下駄。…そして、口から見えるギザギザとした歯。間違いない。此奴は…。

 

「おいおい?なんだよ。朱智愈咫郎。こんな別嬪といつの間に知り合いになってんだァ?喧嘩の弱えお前がよォ?」

 

「…刀では吾の方が上だ。」

 

「へっ。…嬢ちゃん、そんなつまらねえ男と一緒に居ねえでよォ?俺と一緒に行こうぜ?楽しいぞ?気に食わねえ奴はぶん殴りゃいいし、金はそいつから奪えばいい。夜遊び歓迎喧嘩上等ッ!!つまらねえ人生なんざさよならさッ!!ガハハッ!!」

 

「…へぇ。それは楽しそうね。」

 

大男にそう言う咲夜。

男はニヤリと笑うと咲夜の肩に手を置こうとした。…吾はそれをすかさず振り払う。

 

「あん?」

 

「…やめろ。コイツは吾の…嫁だ。テメェに奪われる筋合いはない。」

 

「えっ!?」

 

…これで引いてくれるといいが。女といえば奴も同じ穴のムジナだと揶揄い始めて結局、元通りだ。いい言い方は無いかと咄嗟に出た言葉が嫁だった。…男は心底気に入らないという顔を一瞬し、またニヤッと笑った。

 

「…嫁…嫁ねぇ。女遊びを少しもしなかったお前がどういう了見だ?ええ?昔のよしみで生かしてやろうと思ったが、どうするよ。」

 

「…先ほども言ったろう。今は夫婦の時間だ。そこに土足で踏み込むつもりならテメェの正義もさぞ汚れたもんだよな?見廻組、長…鬼戸桃寿郎。」

 

…男、鬼戸は歯を見せニヤリと笑った。

ドッと奴から剣圧が出る。背筋が凍るこの感じ。魂の底から吾を殺すと言ってくる殺気。まるで地面が揺れているようだ。吾も負けじと睨み返す。周りの人間は倒れ出すものまで現れ始めた。

 

「…なるほど?どうやら、ほんとらしい。わかったよ。…俺はよ。生き返ってフラフラしてるうちにいいお宿を見つけてよォ…。またいい喧嘩が味わえそうなんだよ。今世紀一番のッ!!喧嘩がよォッ!!」

 

「…次は何をやらかすっていうんだよ。」

 

「いいね、その目。蛇に睨まれた蛙が睨み返してきやがった。悪くねえ…が、俺はそんなんじゃあ止まらねえよ。…具体的にゃ次に会った時に。また会おうぜ?朱智。…もし、首を突っ込むっつうなら、その女を貰うから。覚悟しなよ。…ギャハハハッ!!」

 

そう言いながら鬼戸は吾の元を去っていった。

…そんな後ろ姿を吾は睨みつける。太夫のようにはいかない。…アイツは…正真正銘の化け物にして、悪魔だ。

 

「ね、ねぇ?ユタ、今…よ、嫁って…。」

 

咲夜が吾の着物の袖をキュッと指でつまみながら、照れた顔で吾を見た。…胸糞悪かったが、この子のおかげで全部忘れられそうだ。吾はそんな咲夜の頭を優しく撫でた。

 

「…ことが済んだら、また言うよ。お前に伝えたいことを。」

 

「…うんっ。」

 

…今はアイツのことが気がかりだ。

そう思いながら吾は紅魔館へと帰っていった。




妹紅編以来のオリキャラ悪役登場ですね。
女好き、喧嘩好き、賭博好きのフルコースなのが鬼戸桃寿郎です。しかし、外から来た人間ならば、オリキャラの男性の中ならかなり強いでしょう。それはおいおい。では次回。ではでは〜。

咲夜さん達が人以外になる強化はあり?(不老不死になったり、妖怪や近い存在になって長寿になる等)

  • あり
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