※この作品はR-18です。

人斬り武者の幻想歌   作:紳爾零士

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七十七杯『鬼戸桃寿郎』

「…なるほどな。まっさか、あの鬼戸ちゃんも俺らと一緒でここにやってくるとは。」

 

人里での鬼戸との会話を終えて、吾は鬼戸をよく知る太夫、それと霊夢、魔理沙を紅魔館に呼び出した。

 

「…最近、何か変わったことはあるか?」

 

「さぁな。しかし、今世紀最大の喧嘩…ちゅうのはなんや?あの人らしいっちゃああの人らしいが…。」

 

「…ふむ。」

 

…そうか。

 

「霊夢、何か幻想郷で変わったことはないか?」

 

「ん?…そうねぇ。最近はよく、揺れるわね。地面が。まぁ、どっかの馬鹿が暴れてるんだろうけど。」

 

「魔法の森も似たようなもんだ。…で、話は戻すがその鬼戸桃寿郎ってのはどんな男なんだ?」

 

呆れたように言う霊夢の隣の魔理沙がそう聞いてくる。

 

「鬼戸ちゃんは、一言で言えば化け物や。普段は友好的に話してくるけどな。喧嘩となれば話は別。どんな攻撃も受け止める鋼の身体で拳も剣も、なんなら、銃弾も効いてへんみたいに向かってくる。作法も知らん、無茶苦茶な剣術やら格闘術で攻めてくる。俺の仲間も、よう顔潰されとったわ。」

 

…かと言って、この幻想郷では奴よりも勿論、化け物がいる。それには流石に気づいているはずだ。だからこそ、ここに居る誰かと共にいる可能性がある。

 

「へぇ。咲夜はどう感じたの?その男とやらを。」

 

霊夢がそう言った。

 

「…一言で言えば嫌悪感。私のこと、ちょろい女だと思っているみたいだった。でも、触られた感じは…人の骨なんて握るだけで壊せそうなくらいにガッチリとしてたわ。」

 

咲夜がそう霊夢に言った。

あの一瞬でそこまでわかるのは流石だと思う。元の世界でもあの男は良い噂があまり無かった。喧嘩狂い、賭博狂いに酒好きのくせ酒癖が悪い。妻子がいるにも関わらず、女を取っ替え引っ替え…。

 

「嫌悪感?あの、鬼戸ちゃんが?」

 

「え?」

 

太夫が咲夜の言ったことに聞き返す。

 

「アンタの知ってるその、鬼戸桃寿郎は違うわけ?」

 

「あぁ。出来た人間や無かったが、悪い男でも無いはずや。確かに力一本の生き方はしとった。やけど、あれは女や子どもに関してはそこまで酷いことはしなかったはずやで?」

 

「…どういう事だ…?」

 

…聞いていた話と食い違う。

噂とは所詮、そんなものではあるが、吾から見てもあの男は救いようの無いほどの悪党であった。邪智暴虐、そして、暴力主義の喧嘩狂い。そんなイメージをずっと持っていた。

 

「アレが意味も無しに殴るのは男だけや。女子どもは理由があらな何もせえへん。その理由ってのも、大抵、借金やら御用改やらや。役人を匿ってた遊女とか、子どもを捨てたクソ母親とかそんなんや。…ただ、アレのすることは予想できやん。村一個破壊することなんざ、容易や。」

 

「妖怪か何かなのか?その男は。」

 

魔理沙がそう言った。

…妖怪のようにそこまで強くはない。あくまで、人としての強さ。強さとかよりも凶暴さの方が勝る。だから、怖いってわけだ。

 

「お嬢様ッ!!」

 

バタンッと扉が開かれる。その扉の向こうには焦った様子の美鈴の姿があった。首筋をツーっと垂れる汗。

 

「ど、どうしたの?美鈴。お嬢様なら、まだお休みよ…?」

 

「あ、あぁ、咲夜さん…!!そ、空!!空に…ッ!!石に乗った男と女が…ッ!!」

 

…石に乗った?

美鈴の焦りよう…冗談には聞こえない。見に行ってみるか。

 

「…行くぞ。太夫。」

 

「へいへい。」

 

…ついでに魔理沙や咲夜、霊夢たちもついてくる。紅魔館から足早に飛び出していった吾ら。黄昏の空、そこに浮かんでいるのは…しめ縄のようなものが巻かれた石が数個ふわふわと浮かんでいた。

 

「…なんだこれ。」

 

「ハッハッハッ!!ハーハッハッハッ!!」

 

…高らかに女性の笑い声が聞こえる。偏見で悪いが、とても頭がいいとは思わない。…声の聞こえる方を見ると一際大きな石に腕を胸の前で組んで仁王立ちしている青髪の少女がいた。

 

「聞けッ!!幻想郷の者たちよッ!!我は天人、比那名居天子なりッ!!幻想郷の空も、地面も我のものッ!!我の掌ッ!!もはや、恐るるものはなにもないッ!!我がこの幻想郷を貰い受けるッ!!フワッハッハッハッ!!」

 

「…貰い受ける、ね。アンタ、天子って言ったわね。幻想郷を貰い受けるってそれして、なにがしたいのよ?」

 

「ふっふっふっ…。そんなもの、決まっている。」

 

…件の少女、比那名居天子は少し間をおいた。

 

「暇つぶしよっ!!」

 

「…は?」

 

霊夢が呆れたように声を上げた。

…まるでうちのお嬢のようだ。お嬢も暇潰しで異変を起こしたわけだし…。しかし、こうも具体的に幻想郷に被害を被るようなこと、紫姉さんが黙っているとは思えない。なにかしら、策は講じているだろうが…。

 

「わたっ…こほんっ。我も彼も暇潰しで来ている。我とこの剣、それに彼の力があれば…造作もな…あっ、ちょっとッ!!」

 

もう一つの大きな石から男が飛び降りてきた。

着地地点には少し大きな音とともに、白い砂煙が上がっている。

 

「総領娘様よォ?…ちっと話が長えなぁ。」

 

「勝手なことしないでよッ!!アンタ、私の部下でしょ、一応ッ!!」

 

「あのなぁ。俺ァ、幻想郷なんてどうでも良いのさ。…ただ、俺ァよォ。喧嘩がしてェだけなのよ。人がッ!!人としてッ!!人らしく生きられるッ!!それが喧嘩なのよッ!!」

 

…噂をすればなんとやら…だ。先日あった姿とはなんら変わりなく、狂人、鬼戸桃寿郎がそこに立っていた。

 

「で、デケェ…。これが、人なのかよ…!!」

 

魔理沙がそう言った。

霊夢も信じられないと言った顔で見ている。

 

「ひさびさ…やな。鬼戸ちゃん。」

 

「テメェも此処にいたか、太夫。…どうだ?ここの喧嘩の味は。」

 

「相変わらずの喧嘩狂いやなぁ?…せやけど、殆ど楽しめんかったわ。全力なんていつ以来やろなァ?」

 

「…鬼戸。テメェ、一体なにする気だ。」

 

…吾は鬼戸を睨みつける。太夫も笑っちゃいるが、目は奴を貫かん勢いでキィっと睨みつけている。対して、鬼戸は歯をむき出しにして大声をあげて笑った。

 

「ガハハハッ!!良いねェ…!!研ぎ澄まされた剣圧。不気味なまでの殺意。女と一緒にいるつーのはわからねえが、全員殴っちまえばそれまでさ。」

 

「…変わったな。昔のアンタやったら、そう簡単に女、殴らんはずやろ?」

 

「変わんねえさ。…俺ァよォ。太夫。言葉で聞かねえやつは力で捩じ伏せるゥ…そういう人間なんだよ…!!それがァ…鬼戸桃寿郎っていう生き方だッ!!テメェら全員に見せてやる…!!しのごの言わず、かかってこいッ!!」

 

高らかに響く野太い声。

それを皮切りに吾と太夫は走り出した。




次回は戦闘です。思ったより早く終わりそう…?

咲夜さん達が人以外になる強化はあり?(不老不死になったり、妖怪や近い存在になって長寿になる等)

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