…ようやく、まともに動けるくらいにはなってきた。あれから、太夫が居なくなり、霊夢魔理沙が居なくなり、すっかりいつもの紅魔館に戻ってきた。まだ、少し身体中が硬っている感じがする。あそこまで殴り合ったのはいつぶりだろうか。
「…ふぅ。」
今日の鍛錬を終え、風呂を上がる。
身体中に生々しく残る傷痕の多くは昔、見廻組とやり合った時につけられたものだ。それ以外は…山内様か。ほぼ覚えていないに等しい。
「おかえりなさい。」
「…ただいま。」
部屋に戻ってくるとメイド服姿のいつもの、咲夜がいた。思ったより傷ついていない。戦いの最中、強いからと気にかけていなかったのが悔やまれる。…しかし、「おかえり」と「ただいま」…か。こう聞いてみれば、まるで夫婦にでもなったかのようで、すこし歯痒いというか…嬉しいというか…。
「どうしたの?…ちょっと嬉しそう。いいことあった?」
咲夜が若干はにかみながら、そう言った。
「…ただいまとか、おかえりとか…まるで本当に婚姻…しているようでな。もし、お前とそういうことになったときのことを考えると…胸が暖かくなる。」
…少しふっと微笑んで咲夜を見ると、咲夜は少し顔を赤らめてぷくっと頬を膨らませてこちらを見ていた。…何か、気に触ることでも言っただろうか。
「…ど、どうした?」
「ユタってずるいわよね。…すぐそういうこと言う。もうちょっと躊躇いとか…恥ずかしさとかないのかしら。」
「…ふっ。お前と二人っきりの時に恥ずかしさなんて感じてどうする?」
「むっ…。そうだけど…。なんていうか…私からも言いたいって言うか…。」
「ん?」
咲夜が少し口元をモゴモゴしながら小声で何か呟いた。…聞き取りづらかったので少し身体を寄せてみる。すると咲夜が此方をジトッと見るも、すぐにぼすっと吾の膝に頭を乗せた。横倒しに寝転がるようにである。
「おいおい。どうした?」
「考えすぎてちょっと疲れちゃった。意地悪なユタさんには膝枕を要求しまーす。」
「…はいはい。」
なんじゃそりゃ。…二人っきりの時には高確率で起きる咲夜の甘えたがりだ。基本的に何か理由を見つけると抱きついてくるなり、手を繋いでくるなりしてくる。まぁ、嫌がるわけじゃなく…むしろ嬉しいまであるが。…そこは武士としては不甲斐ないが男だからと言う点で許して欲しい。
「…はぁ…落ち着く…。」
「シャンプーの匂いだろ?」
「んーん。…ユタのお膝だから…落ち着くの。私、ユタといる時だけ甘えられるから。」
「…お前も大概だぞ。」
ずるいずるいと言いながら、こういうことを平気な顔で言う咲夜も咲夜だと思う。
「ねぇ…。そういえば、ピクニック…。」
「…あー。」
ここ数日色々あって忙しかったからなぁ。まだ見れるっちゃ見れるが…。見頃はとうに過ぎているだろう。
「…悪い。今度、行こう。見頃はもう過ぎているかもだが…。」
「…まぁいいわ。どうせ、紅葉なんてただの理由だもの。」
「…すまん。」
…言葉の端々から少し機嫌の悪さを感じられる。相当楽しみにしていたのだろう、すっぽかされていたことに腹を立てているんだろう。…今度からは忘れないようにしようと思うが…。
「んっ…。」
なんの足しにもならないが、咲夜の頭を優しく撫でた。
「…そういえば、人里に美味しい団子屋さんが出来たそうよ。なんでも、月の兎がやってるとか。」
「…。」
連れて行けってことだろうな。さっきの話の手前、断る選択肢は無い。どころか、断ったらどこからか槍でも飛んできそうだ。昨夜からの誘いに断るなど毛頭ないが。
「…明日、食いに行くか。」
「うふふ。今度は忘れないでね?」
…さっきまでの声より少し和らいだ感がある。ご機嫌を取り戻したようだ。釘を刺された感あるが、咲夜が笑顔なので気にしないことにする。勿論、忘れる気などさらさら無い。
「…ねぇ。話は変わるのだけど、この前何言おうとしてたの?」
「この前…?…あ。」
…あの時か。咲夜はキョトンとした顔で此方を見る。あの時、言おうとした言葉…。少し思い出しただけで、顔が赤くなる。別に変なことじゃあないのだが…。
「…二人っきりだし…いいか。」
「ん?」
「…吾は咲夜に会って、感謝してる。改めて、ありがとう。」
「何よ。かしこまって。私だってユタのおかげで色んなこと、知れたわ。…そのっ…エッチなことも…。」
…少し恥ずかしがってもじもじしている咲夜。根は真面目で、でも幼さも若干残っている咲夜。もしかするとこれは彼女を縛り付けてしまうかもしれない…が。
「そうか。…咲夜。吾は咲夜と離れたくはない。」
「うぇっ!?…ちょ、いきなり何言ってっ!?」
「…だから、吾と
真っ赤に染まって驚いている咲夜の手を取って、そう言った。…ついに言ってしまった。咲夜の方をじっと見る。当の咲夜はというと…。
「えっ…めおっ…え?…めおとって…ふ、ふぅ…え?」
急なことで混乱しているようだ。吾はギュッと咲夜の手を握る。
「だ…だめか?」
「う…お…お願い…します?」
…少し混乱気味にそう言った。吾は咄嗟に咲夜をギュッと抱きしめた。…胸の奥がとても暖かい。
「…ありがとう…ッ…。」
「…うん。」
やっと混乱が収まったのか、咲夜は手を吾の背中に回して、そう言った。関係的にはあまり変わることはないだろう。ただ、恋人から夫婦へと変わっただけだ。それでも、吾はこの娘を永遠に愛すと誓った。…それから飯時まで咲夜とくっついていたのだった。
取り敢えず、今日も元気にタイトル詐欺ですw
元々、ダークヒーローをテーマに書こうとして、結局は悲しい過去のある古風な主人公で書き始めたこの小説ですが、この主人公なら一夫多妻制もあまり違和感なく見れるかと思います。江戸時代の一夫多妻制ですが、正室と側室には明らかな格差がありました。しかし、愈咫郎くんはそれほど高貴な人…ではないので、一番は決めてもそれ以下は決めません。なので正室、側室は名ばかりなものだと思ってください。
そろそろ設定にも手を出さないとなぁと思っております。設定集…一本作るのと後書きで書くの…どっちにするか…。
もうすぐ100話が見えてきたこの小説ですが、クリスマス、年末年始を挟みまして、咲夜、幽香、妖夢、妹紅、藍、早苗…それと椛や美鈴、パチュリーなど東方キャラと愈咫郎くんの関係をもっと深ぼった話を書きたいと思ってます。勿論、リクエストBOXで来たものはしっかり書きたいです。…次はパチュリーかな?なんて思いながら、作者は失礼いたします。では、皆さま。次回もよろしくお願いします。ではでは〜。