「…え?」
「だから…。ダイエット、手伝ってくれないかしら。」
…深刻そうな顔で上目遣いで此方を見るパチュリー。…一体、どうしたというのだろうか。確か…紫姉さんか、幽香あたりが女性にとって体重は深刻な問題…とかなんとか言ってたような気がする。
「…ダイエット、とな?しかし、パチュリーは体力が…。」
「それもある…。だけど、ち、ちょっとだけ動いたら、良いから…。」
もじもじしながら吾を見るパチュリー。…しかし、なんでこんな事になったんだ?聞くのは御法度かもしれないが、対処がわからないのも困る。
「どうして、そんな事…。」
「…うぅ〜…。た、体重計に乗ったら…こ、この前よりちょっとだけ増えてて…そういえばお腹のお肉がちょっと…摘めるくらいには出てきたなぁ…と…。」
…まずい。パチュリーがちょっと泣きそうになってきた。
「わ、わかったから落ち着けっ!!」
「…じゃ、じゃあ、手伝ってくれる…!?」
「やれることはやるが…。」
ふんすと鼻息でも出そうなくらい、胸元あたりで軽く手を握り、意を決したかのような顔で吾を見るパチュリー。…とはいえ、ダイエット…か。吾の鍛錬はただの筋肉を増やすためのもの。ただ脂肪を落とす為のものだと…。
「………とりあえず、走り込みか。」
「…え?」
そのぐらいしか思いつかない。
「まぁ、続けてたら体力もつくだろうし。とりあえず、基礎体力も見ておきたい。吾もついて行くから。動きやすい格好で門前へ。」
「え、えっと…わ、わかったわ。」
若干、渋ってる感じもするが…。
まぁ、普段、運動しない人間がいきなり走り込みなんてちょっと…と思うかもしれない。まぁ、とりあえず時間やら道等はその時のパチュリーの様子を見ながら決めるか。
…というわけで、やってきたわけだが…。
「…。」
「な、なに…?」
…確か、ジャージだったか。咲夜がパチュリー用に作った外の運動着。ピンク色の服装。ピチッとしているわけじゃないが、パチュリーのシルエットがよく出ている。…着痩せするタイプ…なのかもしれない。ただ、太っている…とは思えないが…。
「…いや、別に。」
…煩悩は捨て去ろう。パチュリーは吾に真剣に相談してくれたのだから。
「それじゃあ、始めるか。こっから、湖を一周…ぐらいにしとこう。」
「ふぇッ!?い、一周ッ!?そ…それは…最初はキツいんじゃ…。」
パチュリーの目が泳いでいる。まぁ、一周できるかどうかも危ういしな。大丈夫だろう。
「ほら、行くぞ。」
「ちょ、ちょっと待ってぇ〜っ!!」
天候は晴れ。夏は涼しく、冬は乾燥しない霧の湖。道は舗装はされていないが、ぬかるんでもおらず、全然走りやすい。隣のパチュリーにも気を配って、少し緩めに走る。
「パチュリーっ!!大丈夫かっ!!」
「ハァ…ハァ…な、なんとかぁ〜…ッ!!」
おいおい…。
まだ、5分も走っちゃいないぞ?…まぁ、パチュリーだから仕方ないっちゃ仕方ないが…。
「もう10分耐えろっ!!ほら、頑張れ頑張れッ!!」
「ハァ…ぜぇ…お、鬼ぃぃ…っ!!」
…別に鬼じゃないが。まぁ、こういうのは慣れだ。最初のうちは少しずつ…。慣れてきたら、少し激しくしたらいい。要は続かなければ意味がない。パチュリーも外の空気に触れるいい機会だろう。
…しかし、まぁ。変な感じだ。いつものパチュリーはダボっとした寝巻きみたいな薄紫の服にロングヘアーといった様子だが、今は動きやすいジャージに髪を後ろで束ねている。肉付きも健康的には見えるが、本人は気にしているようだ。見ている側としては全然気にならないが…そんなもんなんだろう。
「ん。いいぞ。」
「ハァ…ハァ…ぜぇ…もぅ…だめぇ…っ。」
「おいおい。」
地面に倒れそうになるパチュリーを吾は抱き抱えた。パチュリーは冬だというのに玉のような汗をかき、陽光に照らされ首筋が光っている。まるで風邪でも引いたかのように顔が真っ赤だ。
「…おい、パチュリー。大丈夫か?」
「あうぅ…ごほっ…ちょっと…休ませてぇ…。」
…ダメだこりゃ。完全にバテている。
とはいえ、ここにこのまま寝かすのも…。紅魔館が近いとはいえ、流石に汚すのは気が引ける。…仕方ない。
「…失礼。」
「わっ…!!」
吾はパチュリーをおぶった。
パチュリーはびっくりしたように声を上げた。…背中に柔らかい感触があるのがわかる。
「ちょっ、ちょっと…。」
「非常時じゃないが、土の上に寝かすことはできねえからな。」
「でも…重い…でしょ?」
パチュリーが少し不安げな声を後ろから上げる。吾の首筋に口元を隠すように。
「何言ってんだ?…全然重くなんかないぞ?」
「でもっ…私、太って…。」
「…別に気になるほどじゃない。」
…だが、身勝手なことは言えないな。パチュリーが気にしてるのに、軽率に言ったら火に油を注ぐってやつだ。
「…別にこれからも頑張るってんなら付き合う。なんでも頑張ることは大切だと思ってるし、何か頑張ってる女はいいことだと思うぞ。」
「…なんか、下心ない?」
「ねえよ。とにかく、やるんなら無理せず気長に。やめるんなら、今だが…。」
「…やるっ。」
何かを決意したかのようにそう言うパチュリー。…ふふ。なんだか嬉しいな。個人的にだが、パチュリーとはどこか壁を感じていた。お嬢方よりも美鈴よりも…もちろん、咲夜よりも。…まぁ、ここまでのことを話してくれるようになったってことは、信頼取れたって…こと…かな?
「…それじゃあ、帰るか。」
「安全に、お願い。」
そう言ってキュッと吾にしがみつくパチュリー。さっさと帰ろう。パチュリーが風邪でも引いたら可哀想だ。吾はパチュリーが落ちないように背負うと少々、ゆっくりと紅魔館へ帰ることにした。
ヒロイン入りではまだ無いけれどこれからのあれに繋げられたらなぁって。次は誰にしよっかな。団子か、美鈴か、それとも…。
では、次回。ではでは。