…今日は少し陽気がポカポカとして暖かい。咲夜も買い物に行ったし、流石に毎日、ついていっているわけじゃない。が、よく晴れた日は美鈴と共に門の番をしている。というのも、雨の日は流石に中にいるのだが、こういう晴れた日こそ、門番の仕事のやりどきであるにも関わらず、美鈴は決まって…。
「ぐぅ…。」
「…はぁ…。」
………寝る。レミリア嬢や咲夜も悪い人ではなく、真面目なのだが、こういうところがあるためと少し苦笑いをしていた。ただ、流石は美鈴と言った具合でこの状態でも殴ろうものなら返しが来る。名もない弱小妖怪ならば、寝ていても美鈴に敵うことはない。…まぁ、吾と同じで弾幕を使わないってので馬鹿正直に受け止めるもんだから、すぐに負けるのだが…。
「…おい。美鈴。」
「…すぅ…すぅ…。」
…ダメだこりゃ。肩を持って揺すってみるも、全くもって起きない。…そういや、咲夜はどう起こしてただろうか。…頭にナイフをぶっ刺してたっけ?…一応、暗器として、飛び道具用のナイフは貰っているが…流石に可哀想ではないか。…ふむ。
「美鈴、起きろー。」
「ふにゃ…むにゃ…。」
「…はぁ…。」
立ちながら熟睡とは…。
器用なものだ。ただ…まぁ、同じ屋根の下の住居人をこのような目で見るのもアレだが、鍛えられているだけあって、立ち姿も綺麗なものだ。咲夜や妖夢は優雅さと共に華奢さも窺えるが、美鈴や紫姉さんあたりは華奢なんだろうが、優雅さが勝つ。なんというか…幻想郷の女性たち誰もに言えることだが、引く手数多な感じがする。
…まぁ、そんなことはさておき、早めに起こさないと咲夜にぶすりとやられるからな。
「おい、起きろ。起きろってば。美鈴。」
「むにゃ…んにゃ…しゃくやしゃん…?あれぇ…愈咫郎…さん?」
「やっと起きたか。ったく。」
少し寝ぼけているものの、後半ははっきりしてきたのか、呂律も回り出した美鈴。…起こす方のみにもなって欲しいものだ。
「えらく熟睡してたが、随分と気持ちよさそうに。」
「えへへ〜。」
「褒めてない。」
…少し照れたように笑う美鈴。全くもって褒めちゃいない。
「あー、ここ、気持ちいいでしょ?暖かくって。だから、寝ちゃうんですよ。」
寝ちゃうんですよ、じゃない。人柄はいいが、欲望には忠実なのが美鈴だ。それで門番とはいかがなものかと思う。
「愈咫郎さんもどうです?一緒にお昼寝。」
「せっかくのお誘いだが、断っておこう。」
部屋ならまだしも、外でしかも美鈴と一緒に昼寝したとあれば咲夜にどやされそうだ。美鈴が悪いわけじゃないが、門番の仕事を果たさなければならないからな。
「そうですか。じゃ…。」
「寝るなよ。」
「あはは〜。寝ませんよぉ〜。…多分。」
多分…って。これほどまでに不安なことがあるだろうか。…まぁ、ここに居て暇潰し役にでもなってやれば良いだろう。
「寝ないように吾が暇潰し役になってやる。」
「だから寝ませんってぇ〜。そんなに信用ないかなぁ。私。」
「まぁ、現にさっき寝てたしな。」
ジトーと美鈴を見ると美鈴は頭の後ろを掻きながら照れたように笑った。
「…もう少ししゃんとして欲しいものだな。」
「あはは〜…。よく言われます…。咲夜さんに…。」
「まぁ、そりゃそうだろうな。」
咲夜の性格上、お嬢を守る門番にはしゃんとして欲しいだろうな。
「それだけ、お嬢たちが大事ってことだ。」
「そうですね。…って、私がお嬢様方を大事にしてないように言いますね。」
「そんなことは一言も言ってない。」
ジト目でこちらを見る美鈴。
…まぁ、そんなことはないだろう。現にフラン嬢は咲夜よりも美鈴に懐いているようにも見えるしな。
「はぁ…。あのですね、愈咫郎さんが来る前はちゃんと私もしてたんですよ?」
「ほんとかな。」
「…少なくとも今よりは寝てない…かなぁ〜…?」
目が泳いでいるぞ、美鈴よ。
「…ふふ。大丈夫だ。ちゃんとしてるのはわかってるさ。」
「ホントですか?…まぁ、それなら許してあげます。」
…なんで上から目線なのだろうか。
胸を張って、ふふんと鼻を鳴らす美鈴。
「…でも、ここに立ってるだけってつまんないんですよねぇ…。」
「門番がそれを言うか…?」
「そうですけどぉ〜。…今度、息抜きで遊びに行きません?二人で。」
…顔が近い。キスできる…まではいかないが、目の奥に吾が映っているのがわかる程度には近い。
「…美鈴さんよ。そりゃ、デートのお誘いってやつだぜ?良いのかよ。メイドの旦那をそう誘って。」
「デートなんかじゃないですって。ちょっと遊ぶだけですから。」
「遊ぶつったって、何するんだよ。」
格闘技の心得はないから、そう言ったことは出来ない。遊びで戦うっていうことは不可能なのだ。一応、手合わせ程度にはできるっちゃ出来るが。
「普通ですよ。普通に人里行ったりだとか。愈咫郎さん、咲夜さん達とそう言う場所行ってないんです?」
「…んー。まぁ、知っちゃいるが、お前が楽しめるかどうかは知らないぞ?」
「大丈夫ですよ。私は遊べるだけで良いので。」
そう言いながら、ふっと笑う美鈴。
…まぁ、それなら良いが。せめて行くなら楽しんでもらいたいしな。
「…わかった。空けておこう。」
「ホントですかっ!?…すいませんね。彼女さん達との方が大切でしょうに…。」
「…まぁ、そりゃそうだが…。美鈴とは咲夜と同じくらい一緒に居たしな。なんだかんだ。お前が楽しめるなら、喜んで付き合うよ。」
ふっと美鈴に笑いかける。
…何故か、美鈴の顔がほのかに赤く染まっていたが、まぁ、喜んでくれているのだろうな。それならいい。
「…おおう。これは…咲夜さんが落ちるのも納得ですね…。」
「どういうことだ?」
「いえいえっ!!では、約束ですよ。や・く・そ・く。」
美鈴がはにかむような笑顔で小指を伸ばした右手を突き出してきた。あれだ、指切り拳万ってやつだ。吾も、美鈴と同じようにする。美鈴の柔らかく細い指が吾のゴツい指に絡んでくる。
「「ゆーびきりげんまーん、嘘ついたら針千本のーます。ゆびきった、っ!!」」
その瞬間だけ、美鈴の表情がまるで遊ぶ約束をした子どものように見えた。その後は咲夜が帰ってくるまで、美鈴と語らっていた。…意外とその時間はあっという間で、咲夜が帰ってきたときには既に日が沈みかけていたのだった。
色々書くことありますが、クリスマスまでは紅魔館勢のお話も書こっかなぁと思いまして…。次は咲夜さん。団子の話ですね。夫婦になってはじめてのデート回です。まぁ、クリスマスもそうなりそうな気がする…。
その後は…妖夢か、藍さま?…妹紅も捨てがたいですな。
では次回。ではでは〜。