12月25日。しんしんと降り積もる雪が森や屋根に白く化粧を染めていく。周りの家はそうでもないが、紅魔館…ひいては幻想郷の少女達は違う。その八割ほどはこのイベントを楽しみに待っている。そのイベントというのも、敢えていう必要など無いであろう、勿論、クリスマスだ。
もうすぐ紅魔館ではクリスマスパーティーと称した催しをやるとのこと。何人来るかはわからないが、其々にクリスマスプレゼントを用意しているとか…いないとか…。
「…ふぅ…。」
雪の降る外、口から出る息も真っ白である。ちょうど、最後の一人のプレゼントを買い終わった。親身にしてもらったもの、全員に買うのは骨が折れたが、まぁ、何日かに分けて買ったから実はそこまで苦労していない。
…流石に美鈴はいないな。吾は門をくぐり、そのまま中へと入る。
「「「「メリークリスマスッ!!」」」」
「うお…え?」
もう始まっていたようだ。中へ入ると、サンタ服の美鈴、咲夜、レミリア嬢、フラン嬢が大きな声で口を揃えてそう言った。
「もうっ。愈咫郎、遅いわよ?もう、みんな始めちゃったわ。」
「あ、あぁ…。すまぬ、少し手間取りましてな…。」
少し呆れたように笑うレミリア嬢。
レミリア嬢とフラン嬢はこのクソ寒い12月に肩を出した大胆な格好をしている。対して、咲夜と美鈴は首元まで隠れた感じの…首元の白いモコモコとした部分が暖かそうだ。
「そうね。挨拶参りしてきなさい。愈咫郎。」
「…御意。」
レミリア嬢は吾のやりたいことを知っている。…その為、挨拶参りという自然な感じでプレゼント渡しができるのは嬉しい。取り敢えず、大きな袋を肩に担ぎ、先ずは彼女らの元へ行く。
「楽しんでるかい。」
「あら、アンタか。」
…吾だったら悪いのか…。
少し気だるげに言う霊夢にそう言う目を向ける。そう、ここにいるのは霊夢、魔理沙、早苗、アリスの4人である。そのうちの一人…早苗は吾を見るなり、料理そっちのけで吾へと抱きついてきた。
「ユーターさーんっ!!」
「おっと…ふふ。」
「会いたかったよぉ。ユタさぁん。」
少し甘えたような声でそう言う早苗。吾はそんな早苗の頭を優しく撫でた。早苗は目を細めて満足そうな声を上げると軽く、ぐりぐりと吾の胸に頭を擦り付けてくる。
「げぇ…アンタら、人前でよくやるわね…。」
「ハハッ!!良いじゃねえか。クリスマスなんだし。」
「ええ。全く。」
少し怪訝そうな顔をして、こちらを見る霊夢とそれを見て微笑んでいるアリスと魔理沙。魔理沙に関しては微笑むよりはにかむに似ている。
「…で?何しに来たわけ?」
「あぁ。取り敢えず、クリスマスだからな。ほら、プレゼント。」
「おおーッ!!気がきくじゃないっ!!」
…一番食いつきがいいな。霊夢。周りも苦笑いしている。まぁ、そんな霊夢には…。
「おっ、お茶っ葉と湯呑みじゃない。」
「あぁ。茶っ葉はそれほど高価なものじゃないが、湯呑みは実用的だからな。それで飲んでくれ。」
「ありがと。」
深緑色の湯呑み。それが新聞に包まれているのを霊夢が取り出し、微笑む。お茶っ葉は吾の一番好きになった煎茶のやつだ。それと、魔理沙のやつは…。
「魔理沙はこれ。」
「おお、魔道書じゃねえか。しかも、読んでないやつ。」
…良かった。これに関しては少々探すのに時間かかった。そもそも、本が無いかつ、魔理沙が読んでないもの…という、かなり限られる中で選んだものだ。中々に難しかった。
「サンキュー。」
にぱぁっと歯を見せて笑う魔理沙。…で、次はアリス。
「アリスはこれだな。」
「ありがとうございます♪…あら、お菓子の本ですか?」
「あぁ。この前、パチュリーにフルーツケーキを作ってたろう?好きだと思ってな。」
「はいっ。是非、今度ウチに来た時に振舞わせてくださいね?」
そう言いながら微笑むアリス。ふむ。楽しみにしておこう。…そんなことを思ってると胸の中の早苗が吾の服を指で掴んで、少し軽く引っ張ってきた。
「ねぇ、私のは?」
「うん?あぁ、あるぞ?」
「やったぁ!!なになに?」
袋の中を探る。…早苗はっと…。これか。
「はい。」
「ありがと〜っ!!開けていいっ?」
「勿論。」
早苗は、器用に袋の紐を外し、中身を取り出した。中身はネックレスだ。今どきの子はこういう装飾品が好きなのかと思ったが…。
「どうだ?」
「うんっ!!すっごく嬉しいっ!!…ちょっとつけていい?」
「あぁ。」
早苗がこれまた器用に首元にネックレスをつける。…うん。似合っている。
「どうっ?どうっ?」
「似合っている。」
くるくる〜と回る早苗。こういうところは子どもっぽくて可愛らしい。
「えへへ〜っ。ユタさん、大好きっ!!」
「あぁ。吾も好きだぞ?」
「ううん、私の方が好・き。」
「いや、吾の方が好き。」
「いやいやっ!!私の方が…。」
「いやいやいや、吾の方が…。」
「…アンタら、人目見て話しなさいよ…。胃もたれするわ…。」
早苗とどっちが好きか論争をしていたら、霊夢がジトッとした目でこう言ってきた。…ふむ。言われてみたら少し恥ずかしいな…。早苗もちょっと顔を赤くして、ぷくっと頬を膨らませている。
「…じゃ、吾はそろそろ。」
「うん。…また、守矢神社にも…遊びにきてね…?」
「あぁ。必ず行く。」
そう言って、吾は早苗達に別れを告げて、違うテーブルに向かう。…次はっと…冥界組か?
「よっ。」
「あら〜。愈咫郎くん、お久しぶり。」
「あっ!!ユタさん、お久しぶりですっ!!」
幽々子と妖夢が笑みを浮かべて、吾に対して会釈をした。吾もそれに倣い、挨拶を返した。
「最近、どうですか?お体、壊してませんか?お怪我はなさってませんか?」
「あぁ。大丈夫だよ。」
妖夢が近くに寄り添い、吾の顔を見て心配そうに眺めてきた。…うん、小動物みたいで可愛らしい。吾は微笑み、妖夢の頭をぽんっぽんっ…と優しく叩いた。
「それは良かったですっ。…あの、手…握ってもらってもいいですか?」
「ん?あぁ。」
妖夢がそう言って手を差し出してくる。吾はその小さな手をキュッと握った。指はしなやかで…それでいて柔らかい。
「んへへ…あったかい…。」
「ん?寒かったのか?」
「いえっ…。そのっ…最近…会えてなかったので…。」
…妖夢が顔を暗くして、目線を逸らす。…そういえば、最近、冥界に行けていない。うーん。今度、顔を出すか。
「…寂しかった?」
「…。」
顔を少し赤らめて、妖夢はコクッと頷いた。先程の早苗に対して、妖夢は真面目な子だ。吾が言うのもお門違いな感じがするが、甘えるのが少々…下手な感じがするな。
「…ッ!?」
「あらあら〜。」
そんな妖夢に吾は微笑み、顎を上げて、唇を重ねた。妖夢はびっくりしたように目を見開いたが、次第に目を閉じてゆったりとしていた。幽々子はそんな吾らの様子を見て優雅に微笑んでいた。
「ぷはっ…ずるいですよっ!!…もぉ…。」
「ハハッ。…そうだ。ほら、妖夢。幽々子。メリークリスマス。」
幽々子と妖夢にプレゼントとして買ってきたものを渡した。幽々子には箸置き、妖夢には刀の鞘に結ぶ刀紐だ。妖夢に合わせて、明るい緑色のを選んだ。
「あら、ふふっ。ありがとう、愈咫郎くん。」
「…わぁぁ…。」
幽々子は優雅に微笑んで、礼を言い、妖夢は渡された刀紐を両手で持ち、うっとりしたように見ている。喜んでくれているってのが、一目瞭然だった。
「ありがとうございますっ!!…すっごく可愛い…。」
「ふふ。喜んでくれているなら良かった。…なら、もう行くよ。」
「ええ。また、白玉楼にいらっしゃいね〜。」
「…待ってます。」
そう言って二人はニコッと笑った。吾は手を上げて、別れを告げた。
…さてと、今日来てる分はこんなものかな。後は、紅魔館の住人だけだ。ということで、吾はレミリア嬢達のところへと戻った。
「あら、もういいの?」
「あぁ。後は今度渡すことにするよ。年の瀬くらいに。」
「ふーん。」
レミリア嬢、フラン嬢、美鈴がワインを飲みながらテーブルにいた。見慣れない格好だからか、少し内心戸惑っている。…が、まぁ、似合っちゃいないわけじゃない。
「それで、レミリア嬢達にもクリスマスプレゼントをと。…はい。」
「あらっ。ありがとう。」
レミリア嬢には少し霊夢とかぶってしまうが、新しいティーセットを。これでこれから紅茶を飲んでもらえると幸いだ。レミリア嬢はニコッと笑うと、吾に礼を言ってくれた。羽根がパタパタと動いているから、喜んでくれているのだろう。
「で、これはフラン嬢に。」
「わぁーい!!新しいお人形だぁ〜!!」
フラン嬢は大きなクマのぬいぐるみを持ってニコッと笑った。確か、フラン嬢の部屋には大きなクマのぬいぐるみが沢山あったような気がしたから、少し値は張ったが、買わせてもらった。
「フラン、それは壊さないようにね。」
「はぁーい!!わかってるよ。」
レミリア嬢の諭すような優しい言い方に、フラン嬢は元気に右手を上げて笑顔で答えた。…で、先ほどから私は?私は?と言う風に見ている美鈴は。
「これ。」
「…これ、手袋?」
「あぁ、マフラーは持ってるだろ?だから、これから寒くなるからそれ用に。」
あそこで立ち続けるのはいくら、妖怪でも辛い。だから、防寒具を選んだ。
「…ありがとう…ございます♪」
「…?あぁ。」
いつもなら元気に言うところを、何故か、ふっと柔らかいような笑みを浮かべて、しみじみとそう言った。どうしたんだろうか。そんなに、嬉しかったんだろうか。
「…で?咲夜は?」
「あぁ。…貴方の部屋に行ってみなさい。面白いことが起こってるわよ。」
…?レミリア嬢がいかにも何がありそうな感じでそう言った。面白そうなこととは…?
取り敢えず、部屋の前まで来て、ガチャリとノブを回して開ける。灯りを灯して、部屋を見ると…。
「…なにしてるんだ?咲夜。」
「うぇっ!?…えと…そのぉ…。」
…全裸で白い紙紐をぐるぐる巻にした咲夜がベッドに寝ていた。…寒くないのだろうか。顔が真っ赤である。
「あうう…っ。ぷ…。」
「”ぷ”?」
「プレゼントは…わたしぃ…で…す。」
…あー。なるほど。図書館の本を読んで、やってみたはいいが、実際にやると恥ずかしいと。…だから、今、顔を真っ赤にしていると。
「…へぇ。こりゃ嬉しいプレゼントだ。」
「う、うぅ…。」
そんな咲夜の紐を解く。プレゼントなら、封を開けねばな。
「うぅ…なんか、服脱がされるより…は、恥ずかしいぃ…。」
「ふふ。…で?何がしたいんだ?咲夜。」
「…もぉ…わかってるくせに…。」
吾を押し倒すように咲夜は吾にキスをした。柔らかな唇からは少し甘いような感じがした。
「…エッチ…しよ?」
「…わかった。」
夜が深まっていく中で、吾は咲夜と身体を重ねた。もう二度としないと咲夜は言っていたが、内心、そこが可愛らしいと思っていた。気がついた時にはもう夜は明けていた。
まぁ、書いても良かったんだけど。どうせ書くなら、違う時に。では次回。ではではー!!